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「かしてつ」を救うことは出来るのか?

−鹿島鉄道廃止問題と「かしてつ応援団」の活動について考える−



TAKA  2005年02月22日




   
(左:鹿島鉄道石岡駅と待合室に書かれた応援メッセージ  右:「かしてつ応援団」のラッピングトレイン)


 ※本文は「 交通総合フォーラム 」「 TAKAの交通論の部屋 」のシェアコンテンツです。


 近年日立電鉄・名鉄岐阜線区・北海道ちほく高原鉄道・南海貴志川線・近鉄北勢線等、地方ローカル鉄道の廃止問題が深刻化しています。これらの鉄道は廃止されてしまったり、代わりの運行主体が見つかり存続する等、辿った運命は明暗を分けていますが、今此処で又存続問題の崖っぷちに立たされた鉄道会社が出てきました。
 それは茨城県の鹿島鉄道です。この鉄道は石岡〜鉾田間を結ぶローカル鉄道で、関東鉄道が分社化した関東鉄道の100%子会社です。前々からこの鉄道の経営は苦しく赤字が続く状況で、今は関東鉄道の内部補助のほかに茨城県・石岡市等から赤字補填の補助金を受けて運行している状況です。
しかし関東鉄道自体は元々そんなに経営内容の悪い会社では無かったので、この前の補助受入・存続決定時には内部補助継続が可能でしたが、肝心な関東鉄道自体が昨年9月のTX開業でドル箱の「高速バスつくばセンター線」が大打撃を受け、収益の3本柱の内鉄道とバスが大打撃を受けると言う、極めて厳しい状況に追い込まれています。
 その様な状況から、今回関東鉄道が内部補助打ち切り→運行補助の切れる07年3月での廃止(06年3月の廃止届け提出)に踏み切り、 関東鉄道が2月20日にでも自治体と関東鉄道などが形成している「鹿島鉄道対策協議会」に通告するとの新聞報道 が流れる事になりました。
 
 この事態を予測できなかったか?と言えば私は「NO」であると言えます。前に「 交通総合フォーラム 」「 TAKAの交通論の部屋 」の「 つくばエクスプレス訪問記 」「 TX開業に伴う優勝劣敗が明らかに 」の中で述べましたが、親会社の関東鉄道のTX開業における大打撃を受けた事で、内部補助をしていた関東鉄道の苦しさと連結決算の浸透から、遠からず関東鉄道が鹿島鉄道を切離す方策を取るだろうとは想像できました。
 ましてタイミング悪く(関東鉄道にとってはタイミング良くだが・・・)TX開業のダメージが関東鉄道決算に通年で最初に反映される07年3月が茨城県の補助金見直しの時期であったので、此処で「廃止」のアクションが取られても、何も不思議はありません。
 しかし同時に鹿島鉄道の存続問題は、普通の地元の大人たちの存続運動だけでなく、「かしてつ応援団」と言う「日本鉄道賞特別賞」まで受賞した学生による存続運動と言うきわめて特殊な形での存続運動も行われています。
 一度は茨城県へ「補助金獲得」の運動を行い、今鹿島鉄道を支えている「運行補助」に関しては、獲得の形はどうであれ「鹿島鉄道を守る会」「かしてつ応援団」の運動により獲得し、存続を何とか達成したのは間違いない事実です。
 
 その「かしてつ応援団」などの特殊な活動や今の鹿島鉄道の状況を含めて、今まで現地を訪問する機会がなかったので、今回「廃止通告」の報道を見て慌てて訪問することにしました。
 今まで私も岐阜問題等で、色々地方鉄道交通の廃止問題について述べてきましたが、今回は特に「かしてつ応援団」の運動を絡めながら、鹿島鉄道の廃止問題と鹿島鉄道の存続の道はあるのかを、今回の訪問の内容を基に考えてみる事にしました。


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 「鹿島鉄道概要」 [  鹿島鉄道HP  ]

 「鹿島鉄道主要指標」   
年度営業キロ輸送人員定期客貨物量輸送密度職員資本金営業収益営業費用営業損益
94年27.2km1360千人834千人55千トン100百万円483,494千円529,026千円-45,532千円
97年27.2km1185千人711千人54千トン869人/日43名100百万円433,538千円493,681千円-60,143千円
01年27.2km946千人549千人678人/日45名100百万円265,460千円413,722千円-148,262千円

 ※上記数字は「数字で見る鉄道2003(01年度)」「鉄道ピクトリアル96年4月増刊号「関東地方のローカル鉄道」(94年度)」「年鑑日本の鉄道2000(97年度)」から引用(一部は引用資料から算出)しています。(04年度の定期通学人数のみ「年鑑日本の鉄道2004」から算出根拠資料を引用しています)
 ※空欄は「03年の鹿島鉄道貨物量→貨物輸送廃止・それ以外の所→上記資料にデーター無し」を示しています。

 「鹿島鉄道沿線市町村の人口」
 [石岡市→ 83,564人 ] [玉里村→ 8,864人 ] [小川町→ 19,501人 ] [鉾田市→ 52,721人

 「今回の関連サイト」
 [  かしてつ応援団(小川高校HPから「かしてつ応援団」に入って下さい)  ] [  鹿島鉄道を守る会  ]
 [  石岡市HP  ] [  玉里村HP  ][  小川町HP  ][  鉾田市HP  ]
 ※小川町・玉里村は18年3月27日に合併の予定。( 合併協議会HP

 「参考文献」[数字で見る鉄道2003] [鉄道ピクトリアル96年4月増刊号「関東地方のローカル鉄道」]

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 「1」   鹿島鉄道訪問記

 「2」   鹿島鉄道存続の為の運動「かしてつ応援団」「鹿島鉄道を守る会」について

 「3」   鹿島鉄道存続の具体的方策を考える

 「付録」  鹿島鉄道の車両写真集

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 以上のように今回の「鹿島鉄道存続問題」について、現地の訪問記を元にして、市民団体の側面と存続の可能性の2つの側面から色々な事を考えてみました。
 正直言って今まで「ローカル線存続問題」に関しては、私は自分で今でも非常にドライな考えを持っていると自覚しています。今でも根本の考え方としては「鉄道は大量輸送機関。ローカル輸送には不適。不適な所で赤字を垂れ流して公的補助で生き残るのならより適当な交通機関(バス等)へ切り替えるのが社会的にも好ましい」「その鉄道の社会的な必要性を判断する基準は「社会的便益・税金投入額まで含めて鉄道単体でなく社会全体で収支均衡して運営できるか?」と言う点にある」と考えています。この考え方の根本はこのレポート内では変わりません。(昔の発想からは変わったが・・・)
 その視点から言えば鹿島鉄道は正しく「バスに転換する事が社会的にも適材適所で好ましい」とも思います。鉄道のインフラを維持するには、残念ながら現在の利用者数は少なするので、鹿島鉄道に巨額の税金を投入しても、社会的投入費用以上の便益を鹿島鉄道から得る事は極めて困難です。

 しかし今回現地を訪問して沿線で展開している「かしてつ応援団」の中高生の存続運動を見て、私個人として感銘を覚えました。彼らは自分たちのできる範囲内で「如何にして鹿島鉄道を盛り上げて生き残らせるか」努力しています。彼らの活動は未熟で色々な問題点は有れども、鹿島鉄道存続への努力の足跡が鹿島鉄道沿線の各所で見ることが出来ました。
 今回は私もその感銘を胸に、「如何にすれば鹿島鉄道を存続させられるのだろうか?」と言う側面から本文を書いたつもりです。しかし本文を書くにつれて具体的なことを考えれば考えるほど「鹿島鉄道を存続させることの困難さ」が前面に出てきます。
 このレポートで存続に必要な費用を簡単にシュミレーションして見ましたが、存続への費用として16.5億〜46.5億円(経営安定化基金30億円の計上方法で差額が出る)が必要です。鹿島鉄道は果たしてこれだけの費用を投じても存続させなければならない鉄道なのでしょうか?その数字の「現実」に直面すると、鹿島鉄道の存続は極めて厳しいと思います。
 今最後のまとめを書いている段階でも、正直言って「かしてつ応援団」の活動の一端に触れたことでの「自分の地元の路線を守りたい」と言う健気な活動への率直な感銘と、「必要費用を踏まえての現実問題として社会的合理性の側面から、この路線の存続は難しい」と言う自分が改めて見出した現実との狭間で葛藤しています。

 (昔の私の主張を知る方々から見れば信じられないかも知れませんが)私の本心から言えば、「かしてつ応援団」の中高生の活動を無にしない為にも、可能ならば何とか鹿島鉄道は存続させたいと思います。日立電鉄の時には「学生の存続運動」を「地に足の着いていない上辺だけの行動」「大人に踊らされている学生の存続運動」と見て居ましたが、(日立の場合は今でもそうだと思いますが)鹿島の場合は明らかに違います。これだけ地道に活動している学生達に「廃線と言う挫折」を味わせたく有りません。
 しかし無力な私には「鹿島鉄道を存続させる社会的合理性」を見出す事が出来ません。多分「かしてつ応援団」の彼らにも「社会を説得できるだけの鹿島鉄道存続の社会的合理性」を見つけられていないでしょう。これでは社会を納得させる事はできません。

 今鹿島鉄道存続問題と「かしてつ応援団」に必要なのは、社会を納得させるだけの存続事由を見出して、存続の為のスキームを提示してあげる事が出来る「参謀」と必要な費用を集める事が出来る「リーダー」です。それが無いと本年3月末の廃線届出と来年3月末の廃止と言うカウントダウンが進む存続問題の中で「かしてつ応援団」は迷走するだけになってしまいます。
 果たしてその様な優れた「参謀」「リーダー」を見つける事が出来るのでしょうか?高岡や岐阜には「神」が降臨して存続運動のリーダーシップを発揮しましたが(それでも岐阜は失敗した)鹿島鉄道には「神」は降臨しないのでしょうか?(高岡や岐阜に降りた「神」はLRT専門だから降臨しないでしょうが・・・)
 今回このレポートを書いていて、自分の無力・無知さを改めて感じると同時に、最後にはファイナルカウントダウンが始まってしまった鹿島鉄道の存続運動に「何とか光明が開けて欲しい」と神に祈る心境になりました。
 本心から「かしてつ応援団」の彼らの健気な努力と「輸送密度が678人/日しかなく年間約1.5億円の赤字を出す鉄道の存続の社会的合理性を提示する」「存続のための巨額の費用を集めるスキームを作り実行する」が何とか両立・融合して鹿島鉄道を存続させる事が出来ないかを祈りつつ、同時に私以外にその回答を見出せ・リーダーシップを発揮できる人が現れる事を信じ、又その回答を見つけられなくリーダーシップを発揮できない愚かで未熟な自分を恥じつつ責めながら、今回は静かに筆をおきたいと思います。





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