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徒歩の長距離乗換の功罪について考える
−西武鉄道秋津駅⇔JR武蔵野線新秋津駅間の乗換について考える−
TAKA 2006年12月01日
旅客を運ぶ鉄道において「乗換」の存在は好ましくなく障害では有りますが、致し方ない宿命と言える物です。
鉄道網が幾らネットワーク化されていても、大量輸送機関として結ばれていて需要の多い区間を結ぶ運行が主体となる旅客輸送の場合、効率の側面から必然的に直行しない地点間の移動はネットワーク上での乗換が必要になります。
基本的に「自分で移動できない」貨物の場合、ヤード方式での貨物列車組成による輸送もしくは直行輸送方式で、目的地間を確実に結んであげる事で貨物の輸送を行わなければならなく非常に手間がかかります。
しかし旅客輸送の場合は貨物とは異なり「自分で移動してくれる」と言う点が大きな差になります。旅客は自分で駅に集まってきてくれて、駅からは目的地に自分で向ってくれます。加えて直通する列車が無くても自分の足で乗換が必要なネットワーク上の駅で目的地に向う列車に乗り換えてくれます。
実際鉄道には「乗換」と言う物は多数存在していますが、「乗換」に対して鉄道会社はその様な「自分で乗り換えてくれる」旅客に甘えて一番楽で分かりやすい対面移動の乗換だけでなく、複数のバリアが有る乗換例えば上下移動の乗換・ラッチ外の乗換・迷路の通路を通る乗換・長距離を歩く乗換等を設ける例も多々存在します。
私は運動が苦手な上に動くのも好きではなく体も大きいので、長距離の移動や上下移動は得意では有りません。その為乗換移動に関しては「辛口」であり「大の苦手」で、乗換の負担を減らす為に知恵を絞りながら電車に乗っています。
その様な私ですが、今年夏偶々約2ヶ月間通勤で西武池袋線〜武蔵野線〜南武線と言う経路を使用しましたが、その時に秋津⇔新秋津間の徒歩ラッチ外乗換を経験しました。
武蔵野線は首都圏外郭の4分の3を環状で結びしかも線形が良いので速度が速くかなりの広範囲を高速で結んでくれる為に利便性が高く良く利用します。その場合西武池袋線から乗換をするとなると必然的に秋津⇔新秋津乗換ルートを使用することになります。そういう訳でこの乗換ルートは比較的良く使う乗換ルートですが、今回約2ヶ月間この乗換をかなり継続して使用した結果「長距離乗換の功罪」等を色々考えさせられ、今回この秋津⇔新秋津乗換について取り上げてみる事にしました。
参考資料:
「秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会」報告書
(国土交通省関東運輸局)
西武鉄道秋津駅
(wikipedia)・
JR武蔵野線新秋津駅
(wikipedia)・
JR武蔵野線
(wikipedia)
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☆ 西武鉄道秋津駅とJR武蔵野線新秋津駅
西武池袋線秋津駅
と
JR武蔵野線新秋津駅
は、近くで交差する西武池袋線・JR武蔵野線の交差地点の近くに有る駅で両駅間は徒歩5〜7分程の距離が有ります。(
秋津・新秋津周辺の地図
)
西武池袋線秋津駅は相対式2面のホームを有する駅で、ホーム西側半分と南口は東村山市、北口とホームの一部は所沢市、ホーム東側半分は清瀬市に有る駅で1都1県3市にまたがって居る駅です。
利用客は69,204人/日
で西武線の中では清瀬・ひばりヶ丘・石神井公園並の利用客が有ります。列車は普通・準急・快速・通勤準急が停車しますが飯能方面への輸送の主役である急行は停車しません。その為飯能方面から秋津へ向う事が非常に不便になっています。
又近年駅のバリアフリー工事が行われ駅の跨線橋にエレベーター・エスカレーターが整備され、武蔵野線乗換のメインルートで有る南口⇔2番ホーム間の移動が非常に便利になったり、2003年に南口脇にアーケード型の商業施設が出来て新秋津駅への徒歩ルートの一部が整備される等の駅全体の整備が行われ、駅の設備自体はかなり整備されてきています。
左:(1)西武池袋線秋津駅 右:(2)JR武蔵野線新秋津駅
JR武蔵野線新秋津駅は掘割の中に相対式2面+貨物退避用中線1本が有る駅で、貨物線としての機能も有る武蔵野線の駅として標準的な駅です。駅舎は掘割の上に蓋をかぶせる形で有り、掘割のホームと階段・エスカレーターで結ばれています。新秋津駅は秋津駅と異なり全域が東村山市市域に入り、駅前には駅前広場があり駅前広場の無い西武池袋線秋津駅の変わりに新秋津駅に久米川・所沢東口行きの西武バスが発着しています。
新秋津駅の利用客は
65,948人/日
で西武池袋線秋津駅とほぼ変わらない利用客が有ります。武蔵野線内で見ると乗換駅としてはワンランク落ちる乗降客で有ると言えます。秋津⇔新秋津乗換と同じラッチ外乗換である東武東上線との乗換の朝霞台⇔北朝霞両駅は10万人前後の乗降客が有りますし東武伊勢崎線との乗換の新越谷⇔南越谷は9万人台:11万7千人台と言うレベルや同じJR間でラッチ内乗換の西国分寺・南浦和等の乗換の混雑から比較すると「乗換駅としては乗換客が少ない」と言う事が出来ます。
☆ 秋津⇔新秋津間の乗換状況
西武池袋線秋津駅とJR武蔵野線新秋津駅の乗換は基本的にラッチ外の徒歩乗換になります。この間駅の改札を出て駅前商店街を構成している普通の道路を(私の足で)歩いて7〜8分の距離です。この距離は東京圏で公式に案内されている乗換駅の中では、所要時間的にも長い部類に入ると言えますし普通の道路を歩く距離も長い部類に入ると言えます。
この間の道路は歩道・車道の区別の無い道路であり、全体の乗換道路の西武駅よりの半分は多少道路が広い物の1本のルートしかなく中間〜新秋津駅間は2本の経路が有る物のその分道路幅員が狭くなり、普通に徒歩で通る道として見ても「歩きやすい道」とは御世辞にも言えない道です。その道路を乗換道路として1日数万人の人が通るのですから現状はかなり過激な状況で有ると言えます。
左:(3)朝の西武池袋線秋津駅前 右:(4)秋津⇔新秋津間の乗換道路
左:(5)秋津⇔新秋津間の乗換道路 右:(6)朝のJR武蔵野線新秋津駅前
この区間の乗換客はの流れは、朝私がこの乗換区間を利用(池袋線池袋方面⇔武蔵野線西国分寺方面)すると西武線→武蔵野線の流れが圧倒的に多く感じますし、秋津駅では跨線橋を渡ってくる人が多く新秋津では武蔵野線外回りのホームで待つ人が多い状況、夕方から夜の利用時にはその逆の流れが圧倒的に多いことを考えると、西武池袋線所沢・飯能方面⇔JR武蔵野線北朝霞・南浦和方面の乗換が秋津⇔新秋津間の乗換客のかなりの部分を占めるようです。
実際「秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会報告書」によれば、乗降客の7割が池袋線⇔武蔵野線乗換客でうち5割が所沢⇔浦和方面の乗換客で占めているとの事です。この実際の数字を見れば、私が新秋津で感じた事は裏付けられていると言えます。
左:(7)夜の秋津⇔新秋津間の乗換道路 右:(8)乗換道路に有る飲食店
又秋津⇔新秋津駅間の乗換経路は秋津商店街の中を通る経路になっており、乗換経路の両側には立ち飲み居酒屋・飲み屋・ラーメン屋・本屋・物販店等のお店が並んでいます。ここは元々は西武の秋津駅が有って商店街が有った物が昭和48年の武蔵野線新秋津駅開業に伴いJR新秋津駅への動線に商店街が広がりこの形路上には、今では5万人/日も通る乗換客相手をメインにした商店が集まり形成されたのではないかと推察します。
実際朝は飲食店や閉まっている店舗の前で弁当が売られていたりしていますし、経路上に有る立ち食い蕎麦屋はかなり賑わっていました。又夜はサラリーマンを中心に居酒屋や立ち飲み居酒屋は満員になるほど賑わっていましたし(私も2〜3回寄りましたがなかなかgoodな店が有りました)、経路上のドラッグストアには女子高生などが買い物をしていました。
この様な「乗換経路に乗換客目当ての商店が集まっている」と言う秋津⇔新秋津の形態はそんなに多くは無い形態で有ると言えます。東京で見て地下街・ビル内・ペデストリアンデッキを通って乗り換えてその経路上に店が有るという例は幾つも思い浮かびますが、公道を数分歩く乗換経路上に自然発生的に乗換客目当ての商店が集まったと言う例は南武線稲田堤⇔京王相模原線京王稲田堤間の乗換道路上にその様な状況が多少見られますが、それ以外は思い当たりません。只稲田堤の場合も秋津ほど「乗換狙い丸出し」と言う店が有る訳では無いので、秋津⇔新秋津間の乗換経路上の商店街の商店構成はかなり個性的で有ると言えるのではないでしょうか?
☆ 西武池袋線・JR武蔵野線の交差地点の状況
上記の様に普通の道路を7〜8分歩いて乗換をしている秋津⇔新秋津の状況ですが、実際西武鉄道と武蔵野線は秋津・新秋津でどのような形で交じっているのでしょうか?
秋津・新秋津では西武池袋線は地上を走り武蔵野線は掘割の中を走っています。先に開業したのは西武池袋線で開業したのは大正4年で武蔵野線との交差区間は昭和35年に複線化されています。武蔵野線はその後の昭和48年開業なので、既に地上を走っていた西武の下を潜る形で走っています。(武蔵野線は全線立体交差と言うのも有る)
左:(9)JR武蔵野線新秋津駅掘割内から見た交差地点 右:(10)西武池袋線線路脇の地上から見た交差地点
西武池袋線と武蔵野線の交差地点は武蔵野線から見ると新秋津駅の北側のホームの先直ぐの所に有ります。(写真(9)参照)武蔵野線のホームの端から見れば西武池袋線は直ぐ其処に有ります。しかし武蔵野線の駅舎は逆の南側に有ります。
本来はホームの北側に新秋津駅の駅舎が有れば乗換に関しては便利だったのかもしれません。しかし秋津の場合先に池袋線の駅が大正6年に開業していた為既存市街地が成立していて新秋津の駅舎を北側には作りづらく、南側の武蔵野線の路線の上に人工地盤を作りJR新秋津駅の駅を作ったのが実情で有ったと思います。
この事は否定できません。実際秋津駅には駅前広場が無くバスもタクシーも停まっては居ません。同じ系列の西武バスですら秋津駅には入らずJR新秋津駅の駅前広場に発着している状況です。既存の秋津駅がその様な状況なので、後から出来たJR新秋津駅がスペースを求めて今の場所に駅舎を作ったのは有る意味必然と言えます。
加えて、西武池袋線秋津駅が既に開業していた点が大きな制約で有ったと言えます。武蔵野線と私鉄の接続駅は秋津⇔新秋津の他に北朝霞⇔朝霞台・東川口・南越谷⇔新越谷・八柱⇔新八柱・東松戸と6箇所有りますが、「武蔵野線が影も形も無い時代から民鉄の方に駅が有った」のは秋津と八柱だけです。朝霞と越谷は武蔵野線開業に合わせて交点に新駅を建設して居る為乗換は便利ですし、東松戸は北総建設時から連絡駅建設を視野に入れていましたから便利な乗換駅が出来ています。しかし西武の秋津だけは武蔵野線が交点の直近に有った秋津駅を「極めて微妙な距離」で外して線路が引かれたため、現在の様な7〜8分歩く乗換が出来てしまったと言えます。しかし西武の秋津駅周辺には既存市街地が広がっていたので、西武秋津駅移転と言うのは元々貨物線として計画された武蔵野線の旅客化で新秋津駅が出来たという側面から考えれば困難で有ったと思いますし、これだけ乗換需要が付くと予想するのも困難だったでしょう。そう考えると今の秋津⇔新秋津の配置関係は「致し方ない」と言う事が出来ます。
そうなると後は「より便利な連絡通路を作ること」と言う事になりますが、これは不可能では有りません。新秋津駅ホームから西武線の走る北側を見ると地上へのアプローチとなる階段を造るスペースは有るのは写真を見れば分かります。又西武池袋線⇔武蔵野線の交点の立体交差の周囲が駐輪場等の空き地になっているので、池袋線下り⇔武蔵野線内回り・池袋線上り⇔武蔵野線外回り間の構内連絡通路を作る事は費用は掛かりますがそんなに困難では無いと言えます。只スペース的に作る事は出来ても50,000人/日が通る容量の通路が出来るか?と言うとスペース的に厳しい点も有ります。又この通るを作るとそれは乗換通過客の需要が大きなウエイトを占める「秋津商店街への死刑宣告」になりかねません。その様な点が足かせとなり、今の現状になっていると推察します。
☆ 秋津⇔新秋津間乗換の問題点とは?
その様な足かせがあり、今のような狭い公道を7〜8分歩いて乗換を行う形態が改善されずに30年以上も継続していますが、今の状況が好ましいと言う訳では有りません。今の状況には「危険」と言う事も出来るほどの決定的な問題点が有ります。
それは5万人/日の乗換客と地域を通過する自動車交通が錯綜し危険な状況が有るという事です。その錯綜する状況は写真(12)でも有りますが、特に乗換経路がクランクになっている中間部では東西にクランク部を横断して行く乗換客とその道路を南北に通過する自動車がクランク部で完全に交差する形になり、此処には歩道・信号が有る訳では無いので自動車も気を付けて運転していますが、一歩間違えば接触事故になりかねない状況が毎日発生しています。
左:(11)規制で朝のみ歩行者用になる乗換道路 右:(12)乗換客と車が錯綜する乗換道路
本来は都市計画で秋津の駅前広場と幅員16mの都市計画道路2本が決定されており、これが整備されていれば歩車分離が行われこの様な危険な状況は解消されていたと言えます。しかし現実は秋津の駅前には店が立ち並び道路はいつになったら出来るかわからない状況で、この都市計画道路の実現が問題解消の特効薬になる可能性は低いと言えます。
又根本的解決にはならない物の西武池袋線秋津駅前〜クランク部までの道路は朝は「スクールゾーン」の規制をかけて車を入れない様にしています。その為乗換客が(御行儀が良いとは言えませんが)道路全面に広がり歩く事が出来ます。しかし問題のクランク部は西武池袋線を超える自動車の南北流動が抜ける唯一の道の為規制を掛ける訳にはいかず、加えて此処に信号を付けると前後の道路が乗換客で溢れる形になり現実的では有りません。その為現在はクランク部を乗換客は「皆で渡れば怖くない」と言う数の理論で押し渡り、車がその切れ間を縫うように通過して行くと言う危険な状況が続いています。
加えて写真(6)のJR武蔵野線新秋津駅前には、クランク部〜新秋津駅間で2ルートに別れた経路が合流し乗換客が全員通る場所が有りますが、道路の幅員が僅か3mしか無い狭隘部が有り此処で両方向に向う人たちがぶつかり合う事を良く見ます。此処は駅前広場経由の迂回ルートが有りますが、迂回ルートは60m遠回りになる為この狭隘部に乗換客が集中する事になり朝ラッシュ時はかなりの混雑になります。此処も既存の店舗等が有るため拡幅が難しく改善の方策は限られていると言えます。
要は秋津⇔新秋津間の乗換経路の最大の問題は「5万人/日の人々が極めて狭隘な道路を通って乗り換えなければならない」と言う点に集約されていると言えます。しかしこの問題は簡単に解消される物ではありません。実際都市計画では迂回の大通りが計画されていても未だ完成していなく秋津駅前では工事も始まっていない状況です。この様に問題は深刻だが解消の方策も今では未だ立っていないと言う点が、秋津⇔新秋津間の乗換に存在する問題の重要な点で有ると言えます。
☆ 秋津⇔新秋津間乗換の改善策は?
さてそのような問題点を抱えている秋津⇔新秋津間の乗換ですが、解決策はあるのでしょうか?実際武蔵野線で現在乗り換え駅の構造に重大な問題を抱えているのは秋津⇔新秋津間だけであり、ここの乗換構造に関しては問題意識も強く国土交通省関東運輸局が主体となり「
秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会
」が作られて検討も行われています。
しかし現実として秋津⇔ 新秋津の乗換問題は「30年近くも今の乗換構造が続いた為商店街が乗換客相手に営業する様になり既得権が発生している」「JR東日本・西武鉄道という鉄道事業者だけでなく位置的に都県境に有る為、東京都・埼玉県・東村山市・清瀬市・所沢市が関係自治体として関係するようになり関係が複雑化している」「実際改善が必要なのは東京都東村山市に有るが、最大の受益者は埼玉県・所沢市であると言う受益と負担の非同一性が有る」等の問題が複雑に絡まり、改善に向けて上手くは動いていません。
その様な中でこの乗換のバリアを解消し安全にかつ快適に乗換ができて、しかも関係当事者が納得するような方策は有るのでしょうか?その点について改善の方策を検討をしてみたいと思います。
左:(13)西武池袋線⇔JR武蔵野線間の連絡線 右:(14)西武池袋線秋津駅脇の西武運営の店舗
先ずは「直通運転による乗換の解消」と言う方策が浮かびます。実際「自分で動いてくれない」貨物は西武⇔(旧)国鉄間で所沢⇔新秋津間に連絡線を作り、西武の機関車が新秋津のヤードまで乗り入れてセメント等の輸送をしていた過去はあります。また所沢⇔新秋津間の連絡線は今も現存しており、所沢まで別線による三線化で建設されているので、西武池袋線本線に干渉せず所沢まで乗り入れ可能です。しかし「武蔵野線の線路容量」「連絡線が単線のため本数に限界がある」「旅客の流れは所沢⇔南浦和方面だが、線路の配線は所沢⇔西国分寺方面に向いている為新秋津の貨物ヤードでスイッチバックの必要がある」と言う制約があり、「
快速むさしの号
」の様な日に数本の列車の運行であれば可能ですが、数万人の需要を満たす列車設定は不可能で「象徴的なイメージリーダー」としての意味しか成さない施策であると言えます。
その次は「乗換道路の完全な改善」と言う事になりますが、これもまた都市計画との絡みが出てきてなかなか一筋縄ではいきません。地元自治体である東村山市の「
秋津駅南口地区事業
」では「秋津駅周辺を住宅都市としてふさわしい地域核として再開発等を誘導」「秋津駅周辺地区については、都市計画道路3・4・27号線と連携した整備の方向について検討」と言う方針を打ち出していますが、都市計画で設定されている新しい乗換のメイン街路の一つである「
東村山都市計画道路3・4・27号東村山駅秋津線
」はいまだに秋津駅周辺では整備の目処も立っていませんし、秋津駅周辺を再開発と言っても実現どころか計画すらない段階であり、「都市計画の中で秋津⇔新秋津の乗換の改善を図る」と言うのは、今の段階で短期的にはきわめて難しいと言う事ができます。
本来なら西武線・JR武蔵野線・都計道3・4・27号線に囲まれた地域を大規模に再開発と区画整理ができれば、今の商店街と乗換通路を再開発ビルの2階に入れてその中を乗換客を通すような形に作り変え、西武が秋津駅脇に作った写真(12)の商業施設の様な物の拡大版が出来れば、「雨に濡れず簡単に乗換が出来てすべての問題は解決」と言えますが再開発・土地地区画整理の困難さと費用から考えればこれ又容易な物ではありませんし、短期的に出来る物でもないのは自明の理であるといえます。
こうなると「短期的な効果の出る方策で容易に実現可能な方策」を探さなければなりませんが、これもまたよく考えると「万人が納得する特効薬が無い」と言えます。
本来費用対効果が高く一番良い方策は「西武池袋線秋津駅跨線橋から直接西武線上を通り、武蔵野線交差地点で武蔵野線の上で左折し武蔵野線ホームに直接結びつける連絡通路の建設」です。これにはかなりの費用がかかることは否めませんが、あわせて動く歩道等が整備されれば極めて楽な移動手段が作られ、加えて西武池袋線秋津駅跨線橋はエレベーター・エスカレーターでバリアフリー化されているので、連絡通路⇔新秋津駅ホーム間の2フロア分のバリアフリー設備を整えてあげれば今の状況を大幅に改善することが出来ます。この費用は受益者の埼玉県・所沢市等にも求めつつ「
鉄道駅総合改善事業費補助制度
」を活用し、加えて連絡通路に「駅ナカ店舗」を作りその収益にも期待すれば費用の捻出は困難ではないと考えます。
ただ此れは「乗換客相手に商売をしている地元秋津商店街の大反対」を引き起こすことになるのは容易に想像できますし、実現すると乗換客はみんな秋津を通過することになり地域の衰退を招くことになります。こう考えると「連絡通路新設案」はNGになり、少なくとも今の乗換に使われている街路を生かして行う改善策でなければ困難であると言う事になり、その前提で考えると出来る方策は限られてきます。
実際「秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会」でも新秋津駅前の狭隘部の拡幅・新秋津駅改札口の増設・クランク部への対策・通過交通への迂回路の新設等の対策が提案されていますが、なかなか特効薬が無い状況です。しかし「連絡通路もNGでこのまま危険な状況を放って置く」と言う訳にはいきませんから、何か実現可能な方策を考えなければならないと言えます。
そうなると「長期的には都市計画上での再開発・土地区画整理事業での改善を図る」と言う方策に行き着くにしても、短期的には既存街路の改良をするしかないと言えます。その中でも秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会」で提案された「新秋津駅前の狭隘部の拡幅・新秋津駅改札口の増設」に加え、乗換経路の全区間カラーリングによる歩行者通行帯の新設での片側通行の実施(方向別通行帯の明示)・クランク部の部分的改修による一部拡幅等比較的安価に出来るであろう方策を早急に実現すべきであると考えます。
此れで改善される効果は限定的であると言えますが、それでも何もしないよりはマシであると言えます。現在有る色々なしがらみに縛られて一番損害をこうむっているのは不便な乗換を強いられている秋津⇔新秋津間の乗換客です。ここの乗換が非常に便利になれば今まで「西武池袋線沿線〜バス〜中央線立川八王寺方面」と流れていた人が定時性の高い秋津⇔新秋津乗換に回ってくる可能性も大きいと言えます。(地元民の私もそうするだろう)その点まで考えて地域だけでなくもっと広い視野で物を見て、鉄道事業者・国土交通省・関係自治体・関係官庁・地元は対応策を考えてほしいと思います。
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この様に秋津⇔新秋津間の乗換に存在する問題について今回検討を加えましたが、この問題も「一面から見ていると解決しない問題」であると言えます。元に「西武の秋津駅が先に有った」「其処から微妙にずれて武蔵野線が建設された」と言う歴史的側面に加え、東京都・埼玉県・東村山市・清瀬市・所沢市と多くの自治体が絡み、商店街が乗換客目当ての商売と言う既得権益を抱えている等の要素が非常に複雑に絡み合い、今の状況で身動きがとれず30年間も放置されたと言うのがこの問題の実情であると考えます。
しかしこの乗換の問題は何れ解決しなければなりません。現状が「不便で有る」と言うレベルを超えて「危険が有る」と言う状況が有る以上、最低限経路内のクランク部で歩行者と自動車を分離しながら交差させる様にしないと、この場所で何時車と歩行者の接触事故が起きても可笑しく有りません。(実際に起きているが私が知らないだけかも知れない)又雨天時の新秋津駅前狭隘部も傘がぶつかり合い怪我をしかねないほどの混雑です。この現実は絶対に早急に解消しなければなりません。
その乗換の改善をするに当たり色々な事を考慮しなければなりませんが、当然利用者の利便性向上・乗換抵抗減少を第一に考えなければなりません。しかしそれだけでは事業は前に進みません。他の要素特に地元の意向には十分な配慮をしなければなりません。
その様な配慮をする事は乗換客にもメリットが無い話しでは有りません。街中を7〜8分歩いて乗換をする秋津⇔新秋津間の商店街には乗換系路上だから成立する独特の商店が幾つも有ります。この秋津商店街に立ち飲み居酒屋や飲食店が多いのは明らかに乗換客目当てであり、他の西武池袋線各駅の駅前と異なる商店街が出来ているのは偏に乗換客の存在が有るからです。
左:(15)新秋津駅前での街頭コンサート 右:(16)乗換客目当ての立ち飲み屋
この様な乗換客目当ての商店街の構成は、商店街の賑やかさをもたらすという点では地元にもメリットがありますし、乗換時に買い物や飲食が出来ると言う点では乗換客にもメリットが有ります。実際は約5万人/日の乗換客のどれだけがこの商店街で買い物や飲食をしているかは不明ですが、店の賑わいを考えるとかなりの乗換客がこの商店街で買い物をしている事は間違いないと言えます。
この乗換客の消費行動が有るからこそ有る意味地元と乗換客が共存しているとも言えます。もしこの乗換客を乗換通路建設で鉄道施設内に囲い込んでその上今流行の「駅ナカ店舗」を作ったら、乗換客と鉄道事業者にはメリットが有りますが地元には金が落ちず衰退を招く事になります。その点は今までラッチない乗換がずっと主流でその「駅から出ない客」を目当てに「駅ナカ店舗」を作った大宮・品川・立川とは根本的に状況が異なります。秋津の場合地元・乗換客両方にメリットの有る「商店街通過の乗換」を捨てる事は出来ず、今の商店街を生かしながら乗換の改善を図るしかないと言えます。
其れが「言うは易し行うは難し」で有るのは間違いないでしょう。それは「鉄道駅総合改善事業費補助制度」等が出来て他の駅では改良が進んでいるにも関わらず、先駆け的に「秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会」が開かれ、平成16年3月に報告書が出ているにも関わらず、未だにこの報告書で出ていた改善案が2年半以上経つのにどれも動き出す気配が無い事が示しています。
しかしその様な状況に甘んじている事は決して正しく有りません。此処で動かなければならないのは地元です。今まで地元に配慮して「囲い込み的連絡通路」が作られず、商店街内を乗換客が通る形態か続けられてきたのです。これが消費機会の提供と言う形で乗換客にメリットをもたらしてきましたがそれ以上に危険・乗換抵抗と言うデメリットも乗換客にもたらしてきたのです。その点では地元はメリット享受者ですが乗換客はメリット享受者で有ると同時にそれ以上の損失を蒙る犠牲者でも有るのです。
その状況を考えると今状況の改善に向けて決断しなければならないのは地元ですし、その地元が自治体を動かさなければなりません。其れが地元に乗換客の抵抗減少でできた余裕を商店街での購買に振り向ける可能性と言う形で恩恵として戻ってくる可能性も有るのです。その様に考えて地元が出来る限りの対応策を行うべきであると考えます。有る意味「「秋津駅・新秋津駅の乗り換え利便性向上検討会」が行われたのに何も改善されない」と乗換客に思われ、「地元の恩恵より乗換の利便性」と言う主張が世論として形成される前、正しく今こそ最後の機会なのかもしれません。
地元の主張も分かりますし、乗換客の不便さは私も身に染みて感じました。地域の商店街の発展も乗換利便性もどちらも大切にしなければなりませんが、その間で身動きが取れなくなっている事は地元・乗換客両方にとって大きな損失です。その点を考えて両方の利害を充たせる改善策を考えなければ、その先に待っているのは「乗換客の秋津商店街passing」になり一番貧乏くじを引くのが地元と言う事になってしまうのでは無いかと危惧するのは私だけなのでしょうか?
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