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本当に「LRT新設」は必要なのだろうか?

-堺市内のLRT新設構想を検証する-



TAKA  2007年06月04日




何故堺市の中心市街地交通機関に「(ノンステップ)新型シャトルバス」では良くないのか?@堺駅前


 昨年4月に開業した 富山ライトレールの成功 によりLRTが注目を集め、今や日本の色々な都市で「路面電車のLRTへの転換」や「新規LRTの建設」と言う導入計画が検討されています。
 その中で「新規導入」に先頭を走っている街が大阪の堺市です。堺市の場合阪堺電鉄と言う半路面電車が有る物の、阪堺電鉄を含め市内を走る鉄道路線が殆ど全て大阪を目指し南北に走り市内の東西交通を賄う軌道系公共交通が無かった為、東西間を結ぶ公共交通機関としてLRT導入を検討しています。
 この事業は「堺臨海部〜JR堺市駅間の全体計画区間8.3kmのうち、臨海部〜堺東駅間の6.7kmを段階整備区間と位置付け、さらに堺駅〜堺東駅間を早期開業区間(1.7kn)として計画」されており、早期開業区間に関しては「 経営予定者の特定 」まで行われるほど堺市が検討している計画は進んでいます。
 この堺LRT計画は、堺の市街地と玄関口と言える3つの「堺駅」を貫くだけでなく 臨海部堺東駅西 と言う2つの「都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域」が入っており、堺市が示す「都市としての中心軸」を東西に貫く路線設定になっています。
 その様に「先頭に立つ新規LRT計画」とも言える堺市のLRT導入計画ですが、実際の所どの様な場所をどの様に走るのでしょうか?又既存線である阪堺線との関係を含めて現地がどうなっているのか?今回和歌山訪問の帰りに堺に立ち寄り、堺LRTの建設予定地の現状と一体経営が構想されている阪堺電鉄の状況について見て、堺LRTについて考えて見る事にしました。

 「参考サイト」 
 (堺LRT計画)・堺市役所 鉄軌道企画担当・鉄軌道推進担当 HP
         ・堺市東西鉄軌道事業公募型プロポーザル 経営予定者の特定経営予定者事業計画案
         ・堺市役所 平成18年度第一回市長定例記者会見
         ・ みんなで考えよう『ネットワーク・みはら』堺の路面電車LRTの新線計画の記事 (読売新聞)」
         ・ 南海電鉄堺東車庫跡地、超高層マンション建設の見直しを訴える
         ・ 国土地理院地図2万5千分の1「堺」
         ・ 内閣官房都市再生本部   都市再生特別措置法の適用状況
         ・ 荒れ野からの出発 トランスロール試験線訪問記 (Straphanger's Eye)
 (阪堺電車関係)・ 阪堺電車HP
         ・ 堺のチンチン電車を愛する会HP
         ・ 阪堺電車を見る (Straphanger's Eye) ・ 阪堺電車レポート (IDO Style)
 「参考文献」  ・鉄道ピクトリアル1995年12月増刊号「南海電気鉄道」及び2000年7月増刊号路面電車〜LRT

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☆ 「堺LRT計画」の建設予定地を訪ねる

 今回堺を訪問したのはGW連休後半の初日である5月3日の午後でした。和歌山電鐵・水間鉄道を訪問した後で岸和田から南海電鉄のラピートに乗り南海本線の堺駅に到着したのは16時過ぎでした。今や 人口約83万人の政令指定都市 である堺市でその中でも一番最初から有るターミナルと言える南海本線堺駅ですが、駅の西側に 再開発ビル が拡がり、駅東側には南海の駅ビルと駅前広場が有りチョット離れた所にはイトーヨーカドーも有るのですが、駅前は閑散とした感じで街としての賑わいがチョット無い感じです。
 堺の町は元々は戦国時代からの港湾都市であり海岸寄りの地域が中心街でしたが、今は内陸部の住宅地が比重的に重くなり、それに応じて泉北ニュータウンや中百舌鳥・北野田方面へのアクセスルート上の南海高野線の堺東駅周辺が堺市の中心街のようです。そういう訳で堺市の中心街に向かい移動する事にします。

  
左:南海本線堺駅前  右:堺駅前から東に延びる大小路

 南海本線堺駅から中心街の南海高野線堺東駅の間は直線距離で1.5km程度ですが、この両駅間をほぼ直線で結ぶ「大小路」には南海グループの南海バスの「堺シャトルバス」が運行されています。「堺シャトルバス」は堺LRTの早期開業区間と完全に被っています。取りあえずは「堺シャトルバス」で南海高野線堺東駅を目指します。
 専用のノンステップバスで運行されている「堺シャトルバス」は平日10本/時・土休日7〜8本/時の頻度で運行されていて頻度的には「待たずに乗れる」非常に便利なバスとなっています。運賃は210円均一で距離から考えるとチョット割高ですが、それ以外を除けば車両・頻度共に市内の拠点間を結ぶシャトルバスとしては「文句なし」と言うレベルです。私もこの日は堺駅→堺東駅→堺駅の間で使用しましたが、どの便も10名〜15名程度の利用客がありました。短距離のシャトルバスでこれだけ利用があれば採算的には十分で有ると思いますし、利用者の数こそ利用者から支持を受けて居る証でしょう。

  
左:大小路と阪堺線の走る大道筋の交差点  右:熊野小学校付近の大小路

 取りあえず駅前バス停に停車中のシャトルバスに乗車して堺東駅を目指す事にします。バスは堺駅前から東に一直線に伸びる大小路を東に真っ直ぐ進みます。暫くすると大通りにぶつかります。此処は昔の紀州街道筋に当る大通筋です。南北を結ぶ大通筋東西を結ぶ フェニックス通り と並んで戦災復興事業で造られた幅員50mの大道路で、大通筋には阪堺電車がセンターリザベーションで走っており、もし堺LRTと阪堺電車が一体運行される様になると此処で堺LRTと阪堺電車が乗りいれるようになるのでしょうが、阪堺と南海本線が並行して走っていることから考えると阪堺⇔堺LRT堺東方面との乗り入れになるのでしょう。
 その戦災復興事業で堺の町には南北に結ぶ「大通筋」東西に結ぶ「フェニックス通り」と言う2本の大通が出来ましたが、今の堺東駅を中心とする堺の市街地から見るとLRTの導入空間に困らない両方の大通共に既存市街地と微妙に外れているのが実情です。導入予定空間の大小路も「片側1車線+広めの路側帯+車道に近い広さの歩道」と言う広さが有りますが、此処にLRTを導入すると路側帯と歩道を有る程度犠牲にする必要が有ります。堺LRTの場合「堺〜堺東間の導入ルートは提言のルートがベストだが、道路の幅員は広い道が他に有る」と言う点は、自動車の規制等の何かしらの方策を考えなければならないと言えます。
 又大小路周辺はビジネス街が多いのか?休日と言う事も有るのか?人出が非常に少ないと感じました。それは沿道に商店が少ない事が一番の理由で有ると思います。堺〜堺東間の「早期開業区間」で沿道に商店を見たのは堺東駅周辺だけでした。その様に見るとLRT導入予定空間は「基本的にはビジネス街?」と言うのが私の得た感じです。ビジネス街であれば流動は隣の大都市大阪を意識した物になるでしょうし、其れならば「堺駅・堺東駅と便利に結ぶ」と言う機能だけで有れば、近ければ徒歩・チョット距離が有ればシャトルバスで十分な感じがします。(ビジネスマンが遅い阪堺の路面電車で大阪へ移動するとは思えない)そういう点で見ると「ビジネス街にLRTが必要なのか?」と感じさせられました。

  
左:南海堺東駅前(右の大きな建物が堺市役所)  右:堺駅前広場と堺東駅ビル(テナントは高島屋)

 堺駅から「堺シャトルバス」で約10分程度で高野線の堺東駅に到着します。堺東駅周辺は南海高野線と阪神高速堺線に挟まれた場所を中心に、堺市役所・官公署・南海高野線堺東駅・バスターミナル・商店街・商業施設も有り、南海本線堺駅前と比べても格段に人出も多く名実共に「堺の中心地」と言える場所です。
 又南海高野線の堺東駅には駅ビルのテナントとして高島屋が入っています。南海と高島屋は高島屋が南海の難波(高島屋の本店)・和歌山市・堺東にターミナル百貨店として出店しているなど関係が深いですが、堺市にとっても堺東・泉北に高島屋が2店舗有るなど極めて関係が深い百貨店で有ると言えます。その様な百貨店が駅ビルのキーテナントとして入っている事も有り、駅の利用者も多く駅周辺には多くの商店やオフィス等も有り街として賑やかさな状況に成っていると言えます。
 加えて今堺東駅前では、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域として「 堺東駅西 」が認定されていて、「堺東中瓦町2丁地区市街地再開発事業」「南海車庫跡地開発」が再開発事業として行われています。これらの開発が進めば堺東駅前への官公署・商業の集積が大幅に高まる事は容易に想像できます。堺LRT計画はこれらの再開発計画とも密接に関わりあっているのでしょう。

  
左:堺東駅〜堺市駅間を結ぶ府道12号線(右側奥は大阪刑務所)  右:駅前再開発が行われたJR阪和線の堺市駅

 堺東駅前を一通り見た後、次は「全体計画区間」と言う位置付けで一番低い位置付けに成っている南海高野線堺東駅〜JR阪和線堺市駅間の状況を見る事にします。本来「大阪に向く既存各路線を市内で横で結びつける」と言うのが堺LRTのコンセプトで有ると思いますが、何故か堺東〜堺市間の整備レベルが低い状態に成っています。その辺を含め実際に見てみようと思い堺東駅から堺市駅へ移動して見る事にしました。
 この移動時丁度堺東駅前でカメラの電池が切れたので、カメラ屋さんに寄り電池を買ったついでに「JRの堺市駅に行きたいんだけど歩いてどれ位?」と聞いてみると「歩くと30分近く掛かるよ。バスも分かり辛いし一番良いのはタクシーか電車に乗り三国ヶ丘乗換だよ」と言われました。確かに三国ヶ丘乗換で行く事は出来ますが、わざわざ徒歩で1.5km程度の移動で「一駅電車に乗り乗り換えて又一駅電車に乗る」と言うのは抵抗感が有ります。仕方なくタクシーで堺市駅へ移動して徒歩で堺東駅へ戻る事にしましたが、第一印象として堺東駅〜堺市駅の移動に関して「移動抵抗が有るな」と感じさせられました。
 タクシーで堺東駅前からJR堺市駅前に着くと堺市駅前は西側は 再開発ビル も出来ていてバスロータリーも出来ており近代的な町並みですが、駅の東側は狭い道に商店街が広がっており下町的な風情を感じる駅前風景です。しかし「街の賑やかさ」と言う点では高野線堺東駅前には劣る物の南海本線堺駅前よりは賑やかな街であり、駅前はそれなりの拠点性を感じる街です。
 しかし駅前から西に向かい府道12号線に出ると、いきなり低開発の住宅地に風景が一変します。「堺市駅・堺東駅両方が徒歩圏内の地域なのに何でこんなに低開発地域なのかな?」と思いましたが、沿道を良く見ると道路の奥に大阪刑務所が有ります。流石に刑務所が有っては開発が進まないのは良く分かります。この様な駅間が低開発地域で有るならば確かにLRT導入の優先順位が低いのは良く分かります。今や刑務所も色々な所でキャパシティが足りない状況ですから、大阪刑務所の港湾地域等への拡大移転と跡地再開発を一体化した上でのLRT導入構想が必要なのかもしれません。
 その先「導入予想区間」である府道12号線を西に進むと、南海高野線を越す陸橋にぶつかります。LRTの堺東駅〜堺市駅間への導入の第二のネックが此処にありました。堺東駅周辺では連続立体交差かが行われておらず南海高野線は地上を走っています。その為府道12号線は陸橋で越えていますが、この陸橋をLRTが通ってしまうと陸橋は南海高野線と同時に駅前の県道大阪和泉泉南線を一気に越す為陸橋の降り口が駅前から1本西側の阪神高速堺線との交差地点まで進んでしまい、メインである堺東駅への接着をするのに遠回りとなります。その為にLRT計画では「堺東駅〜堺市駅間については、南海高野線との交差方法やまちづくりの動向を見ながら検討」と言う事に成っているのだと言えます。

 この様に堺LRTについて、今回その導入空間の内南海本線堺駅〜南海高野線堺東駅〜JR阪和線堺市駅の間を見て回りましたが、確かに今の状況で「堺東駅前が市街地の中心である」「堺駅〜堺東駅間は堺シャトルバスで比較的に密接に結びついている」「堺東駅〜堺市駅間は間が低開発地で公共交通機関での結びつきも強くない」と言う事は言えると思います。その点から見れば「市役所を中心とする官公署と中心市街地へのアクセスに公共交通機関整備が必要」と言うのも間違いないですし、「特に堺東駅〜堺市駅間の公共交通での結びつきを強化する必要が有る」と言うのも必要であると思います。
 その様な事においては「この区間には如何なる形で有るにしても公共交通機関が必要」と言うのは今回訪問して改めて感じました。その点今南海バスが運行している「堺シャトルバス」は今回2回利用しましたが、短距離の拠点間を結ぶシャトルバスとして(210円と言う運賃を除いて)高い完成度を示していると思います。その様な高い完成度を持つ公共交通が有る中で如何にして新しい軌道系公共交通を成立させるのか?と言うのが、堺LRTの課題だと思いました。


☆「どの道抜本的改善が必要?」大阪唯一の路面電車 阪堺電車の現状

 堺LRTの導入予定区間を見た後最後は大阪方面に戻るのでその序でに、堺LRTと一体経営が構想されているが同時に堺市内路線の廃止と言う考えも出ている阪堺電車を一通り訪問して見る事にしました。
 阪堺電車に関しては、弊サイトリンク先のエルアルコン様の「 阪堺電車を見る (Straphanger's Eye)」及びKAZ様「 阪堺電車レポート (IDO Style)」にて詳しく取り上げられており、私は地元で無くしかも駆け足訪問で有ったため、今回はエルアルコン様・KAZ様のサイトの内容とダブル事も有るかと思いますが、廃止問題が浮上しているのと同時に堺LRTと一体運営が構想されている路線である為、今回阪堺電車を取り上げて見る事に致しました。

 「阪堺電気軌道 主要指標」
年度営業キロ輸送人員輸送密度従業員営業収益営業費用営業損益
平成13年度18.7km9,587千人4,987人/日133人2,909,466千円2,909,466千円▲1,039,433千円
平成16年度18.7km8,310千人4,262人/日119人1,391,824千円1,437,319千円▲45,495千円

※数字は「数字で見る日本の鉄道2003・2006」依り引用・算出しています。

 ・イマイチ存在意義がハッキリしない堺市内区間?

 先ずは堺LRTと関係が深いながら、阪堺線の中でも廃止協議が起こされている阪堺線堺市内区間について取り上げます。阪堺線は堺市内では丁度南海本線と南海高野線の中間である紀州街道沿いを走っています。堺シャトルバスのルートとは大小路電停が丁度乗換ポイントになるので、堺東駅前からシャトルバスで移動します。
 シャトルバスを降りて阪堺線の電停に向います。この区間の大通筋は旧紀州街道で阪堺電車が開業した明治時代には中心街だったのでしょうが今は賑わいの中心は堺東に移ってしまった感じがします。この区間は幅50m(片側3車線+歩道+センターリザベーションの阪堺線)の南北の幹線道路上にあり「戦災復旧事業」で拡幅された道路上にセンターリザベーションの阪堺線が走っています。「戦災復旧事業」で出来た道路と言う事はこの地域は空襲で焼けたと言う可能性が高いと言えます。昔の旧市街地は空襲と共に消滅してしまい賑わいが失われてしまったのかもしれません。
 その様な事もあり、大小路電停は堺の中心にありながら寂しい感じがします。実際この区間は「路面電車」と言うのは寂しい12分毎の運転間隔ですし、浜寺方面に向う電車を待っていた時に来た恵比寿町行き電車からも数名の乗降しかなかったですし、私が待って乗った浜寺方面行き電車は乗降ゼロでした。

  
左:センターリザベーション区間の大小路電停  右:大小路電停の浜寺公園行き電車
  
左:阪堺線の終点浜寺公園駅  右:阪堺浜寺公園駅(手前)と南海浜寺公園駅(奥)

 大小路電停で待って乗った浜寺公園行きは20名近くの人が乗っており私の思いより「乗っているな」と言う感じでした。しかし堺の中心街の近くと思われるセンターリザベーション区間では殆ど乗降が有りませんでした。只専用区間に入った東湊・石津で数名の降車があり終点の浜寺駅前に着いた時には約10名程度の降車客が有り、その内7〜8名が徒歩で1分程度の南海浜寺公園駅に向いました。
 しかしとんぼ返りで乗る予定の折り返しの恵美須町行き電車の車内で他の乗客を待っていると、数人の人が三々五々集まるだけで発車する事になりました。その後も堺市内区間では少しずつ乗降が有りますが最終的に大和川を越えて大阪市内に入る頃にも数名程度しか乗客が有りません。堺市内区間合計で延20名程度の利用客と言う事でしょう。そんなに多数の利用客はない事は明らかです。
 元々堺市内で見ても阪堺電車で大阪に向かう人は決して多くない事は間違いないでしょう。元々大阪に向うのであれば堺〜新今宮8分の南海本線が数百mの距離で平行している以上、特に距離の有る堺市内では駅まで多少歩いても南海本線を利用するでしょう。何せ阪堺電車では大小路〜南霞町間で27分掛かりますから南海本線の駅までプラス10分歩いても南海本線の方が早い状況です。大需要地大阪へは平行路線が有りしかも早く安い、堺市内路線として使うにも中心街を外れている、この様な状況では誰が利用するのでしょうか?そう考えると今の阪堺電鉄阪堺線堺市内区間の存在意義は乏しいと言えます。

 ・天王寺アクセスの上町線が主役の大阪市内区間

 阪堺電車は専用鉄橋で大和川を渡ると大阪市内に入ります。大阪市内に入っても「阪堺電車の駅勢圏は南海本線・高野線に挟まれている」と言う状況は変りません。有る意味南海本線との間隔はもっと狭くなると言っても過言では有りません。しかし都市の人口密度は上がれど南海本線の駅間が空いているのと同時に大阪市街地への所要時間差が縮まる為、南海本線の取りこぼし客が有る事もあり利用者は一気に増えます。
 今回デジカメの電池が切れた為、恵美須町行き電車を一度我孫子道で降りて駅前に広がる商店街に入りやっとの思いで電池を売っているダイエーを発見し購入して駅に戻りましたが、この辺りの雰囲気は典型的な「下町」といった感じで商店街にも賑やかさを感じないですし一言で「衰退している」と言って御仕舞に成る感じです。
 しかし阪堺電車の運転的には此処に本社と車庫があり、上町線の電車の半分が我孫子道折り返しになっている為、恵美須町・南霞町と言う阪堺線のターミナルだけでなく天王寺駅前と言う上町線のターミナルにアクセスできる為、天王寺に向う客がプラスされる為、堺市内区間に比べれば利用者が明らかに多い感じがします。

  
左:阪堺電軌の運転の拠点我孫子道駅  右:規模は有るが寂れているあびこ道商店街
  
左:住吉鳥居前電停に止まる電車  右:住吉の阪堺線・上町線の分岐点

 我孫子道を過ぎると次の阪堺電車の拠点は住吉になります。此処は住吉大社の前に南海本線の住吉大社駅が有りますが、阪堺電車も上町線の終点住吉公園・住吉大社の目の前の住吉鳥居前・阪堺線と上町線のジャンクション住吉の3駅が集まり、宛ら「住吉大社の眼前は駅だらけ」と言う状況になっています。
 阪堺電車も住吉を「乗換駅」に指定していて、此処で上町線方面に乗り換える人も見受けられます。しかし住吉駅には上町線は専用軌道の為ホームが有りますが、阪堺線は路上の為安全地帯がチョコンと有るだけで「一寸マシな名鉄岐阜市内線」といった感じです。しかし阪堺線はこの先の併用軌道区間では恐ろしき「ペイント電停」も登場します。エルアルコン様・KAZ様も御指摘されていますが、阪堺電車の大阪市内区間は一部専用区間を除き「インフラに多いに問題あり」と言う状況です。
 住吉からは阪堺線で恵美須町に向かい、恵美須町から天王寺に移動して上町線を住吉公園に向かい、再び住吉から阪堺線で南霞町へ向い其処から御堂筋線で新大阪へ出るルートを選ぶ事にします。阪堺線は東粉浜・塚西の「典型的路面電車区間」を過ぎた後高野線の下を潜った後今一度専用軌道に入り南霞町・恵美須町と言うターミナル・乗り換え拠点を目指します。
 阪堺電車は都心に阪堺線南霞町・恵美須町と上町線天王寺駅前と言う3つのターミナルを持っていますが、どれも「ターミナル」と呼ぶのには中途半端な感じです。南霞町は大阪環状線新今宮・御堂筋線動物園前駅と直近で乗り換え可能で乗り換えターミナルとして機能しています。又恵美須町は通天閣にも近く地下鉄堺筋線の駅も近くにはあるのですが、東京人から見ると恵美須町駅前の交差点に立つと通天閣も見えて「This is Osaka」と言う感じはしますけれども、実際阪堺線が開業した明治・大正の時代は大阪屈指の繁華街だったのかも知れませんが今は「ターミナルとしては弱い」と言わざる得ません。それに対し上町線の天王寺駅前はJR・地下鉄の天王寺駅に近く隣は大阪屈指の大百貨店「 阿部野橋近鉄百貨店 」が有りターミナルの立地としては申し分無しです。しかし駅舎は路上に1線2面の簡素な乗降場と小さな切符売り場が有るだけの駅であり、ターミナルとはとても言えない規模で有ると言えます。

  
左:通天閣が見え地下鉄堺筋線にも乗り換えられる阪堺線恵美須町ターミナル  右:阿部野橋近鉄百貨店の脇の上町線天王寺駅前電停
  
左:意外に利用者が居る?阪堺線堺市内(17時過ぎ石津付近)  右:立ち客も多い上町線下り列車(19時半頃天王寺駅前)

 只実際利用客の数はターミナルの利便性に比例している様でやはりJRと地下鉄に乗換が可能で百貨店もあり商業も集積している天王寺駅が一番利用者も多く、それに比例して天王寺をターミナルにしている上町線の利用者が一番多いという感じはしました。これは阪堺線を挟み込んでいる南海本線・高野線がどちらも難波をターミナルにしていて天王寺をターミナルにしている阪堺上町線は南海各線と差別化が出来ている事が大きな要因で有ると言えます。
 この日阪堺電車は夕方〜夜にかけて全路線乗車しましたが、一番乗車客が多かったのは時間も有るでしょうが19時過ぎの上町線下り電車でした。観察する限りは上町線でも住吉以遠に向う客が意外に多く、究極を言えば「阪堺は上町線と天王寺へのアクセス客で持っている」と言うのが実情かも知れません。
 如何見ても阪堺電車に関しては「堺市内区間」だけで無く、阪堺線住吉〜恵美須町間も存在意義に乏しい感じがしました。堺LRTとの絡みがある堺市内区間の存廃問題は紆余曲折が有るにしても、思い切って阪堺線住吉〜恵美須町間と上町線住吉〜住吉公園間も廃止して阪堺線はバス代替して天王寺〜住吉〜我孫子道〜(存続するなら浜寺公園)間に絞り込んで、同時に旧式車両も淘汰して南海各線と差別化して生き残る方策を考えるのが適当では無いか?と考えさせられました。


☆ 何故「堺駅〜堺東駅」間の都市内輸送は「LRT計画」でなければならないのか?

 今回堺LRT建設予定地と阪堺電車の2つに分けて現地を訪問してきましたが、現地を訪問して何か「引っかかった」感じがしました。それは「何故LRTでなければならないのか?」と言う点です。
 先ず「堺駅〜堺東駅」間に公共交通機関が必要な理由は、南海本線堺駅の寂れかけた状況と南海高野線堺東駅前の賑やかな状況を見ると、色々な意味で市の中心街である堺東駅前に堺市内から遍く人を集めると言う点に有るのでは無いか?と思います。実際堺市内から市役所も有る中心街の堺東に向う交通手段となると西区の東側からは三国ヶ丘乗換でJR阪和線が使えますし、北・東・中・南の各区からは南海高野線(泉北高速)でアクセスできますが、阪堺電車・南海本線沿線の堺区・西区の中部・西部からは軌道系の交通機関で堺東駅前へは直接アクセスできません。その状況を打開し堺東駅前に人を集める為のツールとして公共交通機関が必要なのでは?と感じさせられます。
 しかも臨海地区で都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域として「 堺臨海地区 」が認定されています。開発が行われれば其処への公共交通機関が必要と言う事になりますから、臨海地区〜堺駅〜堺東駅を結ぶ東西公共交通機関を整備して両端の臨海地区と堺東駅へ人を集めようと言う事で、今回の構想がでてきたのだと思います。

  
左:LRT建設予定区間の大小路を走る南海バス堺シャトルバス  右:もう車齢80歳?老朽車両の多い阪堺と直通運転・一体経営でLRTは機能するのか?

 確かに堺市の公共交通網を見れば殆ど全ての軌道系公共交通が大阪を目指し南北に数km間隔でほぼ平行に走っており、その間の東西間の連絡は南海バスによるバス輸送に頼っているのが実情です。その様な状況ですから「大阪の衛星都市としての堺」から脱出し政令指定都市に相応しい都市機能を整備する為に東西公共交通が必要であるという考えには一定の理解はできます。
 しかし問題なのは「何故LRTなのか?」と言う点です。その点に関して残念ながら詳しい説明が無いと言えます。
 実際この堺駅〜大小路駅〜堺東駅の大小路には現地訪問で利用した「堺シャトルバス」が走っています。このバスは料金こそ普通のバスと同じですが、低床の専用車両を使い高頻度運転を行っておりかなり使いやすいバス路線で有ると言えます。このバスを本数増加・バス停整備・路線延長等を行い基幹バスとして整備して、堺市中心部の東西連絡機能を持たせるのでは不足でしょうか?
 少なくとも5月4日午後に1往復+α(計3回)利用した限りでは、乗車率はそんなに高くなく座席定員が埋るか埋まらないかと言う程度の利用率でした。毎時7〜10本と言う高頻度ですが中型ノンステップバスで十分運べる位の利用客なのですから、この東西連絡と言う機能だけで見ると敢て軌道系システムを整備する理由が私には見当たらないと言えます。

 しかし其処に「南北輸送機関のうち唯一の路面電車である阪堺電車とのリンク」と言う点で考えると、東西交通機関はバスでOKと言う事に一概には言えなくなります。確かに阪堺電車は路面電車ですから、其れと相互乗り入れの出来る路面を走る軌道系交通システムの整備(要はLRTの整備)と言う物が一定の意味を持つ事になりますし、阪堺電車・南海グループが阪堺電車・堺LRTを一体経営するならばスケールメリットも発揮できると同時に営業成績が低迷している阪堺線堺市内区間の活性化にも役に立ち大きなメリットが有りそうに見えます。
 実際に今の堺市の「経営予定者の選択」「経営予定者事業者案」を見ると、正しく阪堺電車と南海グループが阪堺線堺市内区間・堺LRTを一体運営すると言う案が現実の物となろうとしています。しかし堺LRTの連携先として阪堺電車は相応しい存在なのでしょうか?確かに見て来たとおり、阪堺電車堺市内区間は専用軌道orセンターリザベーション区間でありインフラ的には優れていますが、車両は「低床車ゼロ」「旧型車両が多く車齢80年と言う車両も走っている」と言う燦々たる状況で有ると言えます。この様な状況で堺LRTと一体運営をしても効果が上がるのでしょうか?阪堺電車と堺LRTが直通運転となれば1編成数億円する車両をより多く増備しなければなりません。其処まで考えると東西交通にLRTを導入して阪堺電車と堺LRTの一体運営を行うと言うことに対してのメリットに関しては疑問が浮かびます。

  
LRTだとJR堺市駅には如何にして乗り入れさせるのか? 左:南海高野線を平面交差の踏切で越すか?  右:府道12号線の陸橋に強引に接続路を造るか?

 まして問題なのは阪堺線に投資をして堺LRTと一体運営させる事で、東西交通にLRTを導入すると言う事になった場合、「如何にして阪和線堺市駅に乗りいれさせるか?」と言う問題が浮上してきます。
 実際堺市も「 堺東駅〜堺市駅間については、南海高野線との交差方法やまちづくりの動向を見ながら検討 」と言う事を表明していますが、確かに地平を走る南海高野線を如何にして越すかと言う問題も有ります。又導入空間に関しても府道12号線が有りますが、このルートを使うと急勾配に比較的弱いLRTでは堺東駅への接着が難しくなります。
 又府道12号線を使わないにしても、堺東駅〜堺市駅間に広がる北三国ヶ丘・南三国ヶ丘の町に道路を整備して導入空間を造るとなると、街中に控える反正天皇陵が「 大仙古墳(仁徳天皇陵)・百舌鳥古墳群の世界遺産登録 」と言う課題を抱えており、街の再開発の足枷となりつつあります。そうなると既存の府道12号線の立体交差経由しか堺市駅へのアクセスルートは無くなってしまいます。
 そうなると軌道系LRT導入は厳しくなってきます。堺市はトランスロール導入に最後まで興味を示していましたが、この様な問題が有ったからこそ勾配に強いゴムタイヤ系輸送システムに最後まで興味を持った可能性が高いと言えます。

 この様に考えると、堺市の東西公共交通には少なくとも「バス輸送がベスト」とも断言は出来ませんが、「軌道系LRTがベスト」とも言い切れない状況に有ると言えます。要は「堺市駅乗り入れ」と「阪堺線直通」は現状では両立が困難な物ですから、何を重視するかで最適なシステムが決まると言う事になりますが、その中で堺市は「堺市駅乗り入れ」は将来解決すべき課題と考えて阪堺線との乗り入れ・一体経営を重視したからこそ軌道系LRT導入と言う事に成ったのでは無いかと推察します。
 けれどもこの選択に関して、堺市は市民を含めて社会に意見を求め理解を求めたのでしょうか?それに関しては調べる限り疑問が有ります。現実はそれだけの市民への理解を求めた上でのLRT導入計画では無いのではないか?と言う気がします。実際は「阪堺電車と南海グループ主体の阪堺線との直通一体経営」と言う結果が最初から有ってのLRT計画ではないのか?と言う疑問が今でも頭の中を走り回っています。
 その様に考えると堺市の東西交通である「堺駅〜堺東駅」間の都市内輸送は、「LRT計画」でなければならないのか?と言う必然性は必ずしも無いのではないか?と言う気がしてきます。其処に「隠された事情」が有るのでは無いか?だからこそ必ずしも「市民の同意を得ていないLRT計画」が今の形で公になってきたのでは無いでしょうか?その裏に有る物は重く暗い物であるな?と今回考えて見て感じさせられました。


☆ (あとがきに変えて)既存交通事業者との「公的資金投入の上での公設民営」の関係の難しさとは?

 今回LRT建設計画の有る堺市と堺市内〜大阪市内を走る阪堺電車を訪問してその実情を見てきましたが、今回の訪問で一番に感じた事が「このLRT建設計画は何故必要か?」と言う事です。少なくとも色々調べ物はして予習をした上で「さぞかし軌道系導入に相応しい所なんだろう」と思いながら堺市を訪問しましたが、訪問した上での感想は「少なくとも公共交通機関は必要で有るがLRTに拘る必要性は無い」と言う感じを抱きました。
 少なくともLRTは今流行の交通機関で「新交通システムより低コスト」で「バスより編成単位の輸送力が有る」と言う特徴が有りますが、建設費用とコストパフォーマンスを考えると、其れ相応の導入空間の余裕と「バスでは不足」と言う程度の需要が無いとLRTは事業として成立はしずらいと言えます。
 堺の場合一番需要の有りそうな南海本線堺駅〜南海高野線堺東駅間には南海バスの「堺シャトルバス」が走っていますが、少なくとも今回の訪問では(GWと言う事も考えなければならないが)「バスでは足りない」と言うほどの需要が有るとは思えませんでしたし、「堺シャトルバス」の経路である大小路は片側1車線+路側帯+広い歩道が有るのでLRT導入は可能な広さが有るとは思いますが、LRTの複線軌道を導入するとなると「何かを犠牲にする必要が有る」必要が有り、大小路沿道が「地方都市のビジネス街」といった感じでこの区間には基本的には「堺駅〜堺東駅間の通過交通しか無いのでは?」と感じさせる事からも、「果たしてLRTが必要なのか?」と言う感じを抱きましたし「今の堺シャトルバスの(路線を含めた)拡充で十分なのでは?」と感じました。

  
左:堺市と南海の怪しい関係の象徴?堺市駅のマンション再開発予定地  右:堺LRT計画は阪堺線近代化と堺市区間切捨てのツールとして南海&阪堺に利用されるのか?

 その中で何故堺市ではLRTが導入されようとしたでしょうか?その堺市の「LRT導入の動機」を最後に考えて見ました。
 先ず第一は前にも述べた様に都市再生緊急整備地域に認定されている「 堺臨海地区 」の新日本製鐵㈱の堺製鉄所開発事業の為に、そのアクセス機関として軌道系の公共交通機関が必要であると言う「開発の手段」としてのLRTの必要性が今回のLRT構想に存在するのは否定できないと言えます。その為に堺駅〜臨海地域間を「段階整備区間」として堺東駅〜堺市駅間より優先度を高く設定しているのだと思います。
 もう一つは廃止問題が浮上している阪堺電車堺市内区間との兼ね合いです。確かに阪堺電車の堺市内区間は昭和36年のピーク時の6分の1にまで減っており、今や 利用者は年500万人を大きく下回っています 。その為全社的にも赤字の事も有り比較的好調な大和川以北を残して以南の堺市区間の廃止に関しての協議の申し出が阪堺電車から堺市になされる状況になっています。これが堺市のLRT計画に絡んでくるのではないでしょうか?
 実際堺市の「東西鉄軌道経営予定者」に内定している南海・阪堺が提案している 事業計画書 では、東西鉄軌道と阪堺線堺市内区間を一体経営する事で「単独で82億の投資が必要に対し、一体経営の場合東西鉄軌道78億+阪堺線堺市内区間LRT化31億の計109億円掛かる」物の「個々の単独運営に比較し一体経営では1.65億〜1.84億円の収支改善が期待できる」と主張しています。確かに既存軌道と一体経営すれば重複投資を省けて合理的な経営が可能ですし南海・阪堺が言うように「直通運転による利便性向上・既存施設の活用による初期コスト削減・効率的な人員配置による効率的経営」と言う効果が期待できます。
 しかし堺LRT計画の根本には阪堺堺市内区間救済の為に「公設民営で東西鉄軌道を引き、阪堺線をLRT化」すると言う考えが当初から有ったのではないでしょうか?今までの LRT計画の経緯 を見ると、LRT導入の可能性を調査・検討し出したのは平成11年の4月ですが、「鉄軌道」と言う動きが大きくなるのは平成15年に入ってからです。この時期は阪堺が阪堺堺市内線の廃止を最初に公式にアピールした平成15年3月と言う時期と見事に符合します。
 しかも事業公募に関しても「公募の公示から締切までが1ヶ月」と慌しい上に応募者は南海・阪堺の1グループしか無く審査会でも「 南海・阪堺を経営予定者と特定できるか出来ないかの審査 」と言う形だけの物であり、状況証拠を掻き集めるとあくまで「阪堺の堺市内区間と東西LRTを一体経営化」する事で赤字の阪堺堺市内区間を切り捨て同時に堺市内区間の新たな投資の原資もLRT計画で堺市から獲得すると言う南海・阪堺の筋書きが有りLRT計画を行いたい堺市が上手く利用されたのでは?と感じさせます。

 確かに「南海グループと堺市の関係」と言う物に関しては「疑問を持つ」所がLRT計画だけでなく他にも少なからず有ります。それが「堺東駅東側車庫跡地開発」問題に関わる一連の動きです。
 南海は堺東駅に有った車庫を撤去しその跡地に42階建ての高層マンションを立てる計画を持っています。しかしこの地域は「第1種住居地域、第1種低層住居専用地域」でありこの様な高層建物が建てられる場所では有りません。しかし都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域「 堺東駅西 」では 西と歌いながら東側の車庫跡地だけが線路を跨いで不自然に指定を受けており しかも御丁寧に「指定地域のうち南海車庫跡地において土地利用の転換を行い、都市型住宅を供給する」と言う様に南海グループの高層に沿った都市再生の計画が組まれています。
 確かにこの場所は堺の一等地で不動産開発に取っては垂涎の土地で有る事は間違い有りません。しかし本来ならば地区全体は住宅地でありLRT導入も困難なほど道路が狭い状況です。この様な状況を打開して都市全体の開発を図るのであれば「車庫跡地単独の開発」ではなく「車庫跡地を含めた総合的な開発」が必要な筈です。しかし地区全体には目を向けず、南海の利益になる車庫跡地の開発だけに便宜を図る都市再生とは如何なる意味が有るのでしょうか?
 結果的にはこの都市開発は「 大仙古墳(仁徳天皇陵)・百舌鳥古墳群の世界遺産登録 」への障害になる事と敷地の南北に上町断層が走っており高層マンションへの安全性が懸念され地域住民から反対を受けて結局15階建てのマンションの開発にスケールダウンしましたが、この構想の今までの経緯を見る限り「地域に影響力を持つ公共交通事業者」と「その沿線の自治体」の間で、金を伴わない「阿吽の呼吸」による「便宜供与に近いもの」が有ったのではないか?と下衆の勘ぐりをされても致し方ない経緯が有ったと思われても仕方ないと思います。(実際堺市は当初は推進→反対運動劇化後は反対と立場を上手く替えている)
 この様な南海グループと堺市の「阿吽の呼吸の関係」は「私の状況証拠からの推測」に過ぎません。しかし堺LRT計画に関しても何故LRTで無ければならないのか?と言う疑問を追及して行くと堺LRTと阪堺線堺市内区間の問題を合わせて対応する事が最初に有り、だから鉄軌道LRTが選択されたのでは?と言う「先ず始めに結論ありき」と言う感じを現地を見て受けました。
 確かに地域の大企業で地域交通を担う交通事業者と沿線自治体は上手く連携して地域の開発を進めていかなければならない事は間違い有りません。その点においては交通事業者と自治体は「連携しなければならないパートナー」で有る事は当然の事で有ると言えます。しかし現実問題として今回の「堺LRT計画」にしても「堺東駅車庫跡地再開発計画」にしても、南海グループと堺市の間で「不透明な関係」を感じてしまいます。それは地域住民から支持を受けなければ事業の推進にマイナスを引き起こすと言う点で南海グループ・堺市両方に取り好ましくない事で有ると思います。
 総論として「堺市内の東西公共交通は必要である」「阪堺線と東西交通を一体運営すれば相乗効果が有る」と言う事は間違い有りませんが、その前に「何故LRTが必要なのか?」「バスで十分なのでは無いか?」と言う点に関して十分な議論と説明がなされていない感じはします。その為今後より事業が具体化してきた時に市民から反対を請ける可能性も有ると言えます。そう考えるとまだ事業が形として具体化されていない今の段階でもう一度市民に説明をして「何故バスでなくLRTなのか?」「何故南海・阪堺に運営をさせるのか?」と言う事について、「如何に今の方策がベストなのか」を含めて再度説明をする必要が有るのでは無いか?と感じました。



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