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(3)「未来編」"富山市内電車環状線化計画"の完成は富山にコンパクトシティを実現させ街を活性化するのか?



 「1」"富山市内電車環状線化計画"建設予定地を行く(丸の内→大手町モール→西町)

 
  富山市内線の訪問 をして居る最中、富山市内線の富山駅前〜大学前〜南富山〜富山駅前の単純往復では面白くないので、建設構想が発表された「富山市内線環状化計画」の現地を訪問してみる事にします。
 「 富山市内線環状化計画 」は「富山駅周辺地区と平和通り周辺地区のアクセス強化・都心地区全体の回遊性と魅力の向上・南北路面電車連結後のネットワーク形成」を目的として丸の内〜大手町モール〜西町間に路面電車を新設し、中心市街地の富山駅前・市役所及び県庁前周辺・総曲輪及び西町地区を取り囲む路面電車路線を新設し、中心市街地へのアクセスを向上させる構想です。(市発表の イメージ図
 この地域元々は、旅籠町経由で丸の内〜旅籠町〜西町と言うルートで"西部線"という富山市内線が存在していましたが、路面電車縮小の中で昭和48年に廃止になりその時に環状運転も廃止されていました。今回の構想は経路こそ違いますが基本的には昔の「環状運転」の復活と言う事になります。
 そう言う訳で今回「今有る中で一番先に具体化する可能性の高い路面電車新線構想」とも言える「富山市内線環状化構想」(以下"新"環状線と略します)の予定地を訪問してみる事にしました。

     

左: [1]富山城址公園と大手町周辺(正面のビルがANAホテル)    右: [2]環状線分岐予定の富山市内線丸の内電停

 先ずは西側の分岐点となる丸の内の交差点です。此処では富山市内線が此処の交差点で曲がって西〜北の方向に走っていますが、此処から"新"環状線が分岐して行く事になります。昔の環状線はこの交差点を南北に直進して旅籠町で東に曲がっていましたが、今回の構想では県道44号線を経由して大手町モール経由で西町に向かう構想です。
 富山市発表のイメージ図では路線は単線になっていますし、電停の置かれている位置(今のやり方では進行方向左側に電停が来るはず)から考えて「反時計回り」で丸の内〜大手町モール〜西町と回る環状線が作られる公算が高いと言えます。
 丸の内交差点は比較的幅員が有りますし曲がる方向の北東角に今公園を整備しているので、これを上手く使えば今以上のスペース捻出も可能です。そう考えるとやる気になればこの地域に"新"環状線建設へのネックは少ない(しいて言えば県道の斜線を減らす事がネック)と言えます。

     

左: [3]導入空間の県道44号線と富山城址公園    右: [4]導入空間のひとつ大手町モール

     

左: [5]大手町モールに在る市民プラザ    右: [6]富山一の商店街"総曲輪"入り口(西側)

 今回の"新"環状線は県道44号線と大手町を経由する事で、富山市内の新しい中心を通る事になります。大手町モールは 大手町地区大手町6番地区 と言う2つの再開発地区と富山国際会議場・ANAホテル・市民プラザと言う再開発地域内の中核施設と、富山の中心商店街である総曲輪の西の入口を通る事になります。この様なある施設の重要性を考えれば大手町経由は正しい選択と言えるでしょう。
 又大手町モールは写真に有る様に2車線の車道+かなり幅広の歩道で形成されている為、もう一度再構築する必要が有りますが、導入空間をひねり出す事は難しく有りません。一つの方策としては道路の一方通行化とLRT単線をセットで整備し、同時に歩道にある小さな水路や植栽を上手く生かして整備すれば、市街地の顔とも言える「トランジットモール」的な極めてアニメティの高い道路とLRT走行空間が演出できるでしょう。そういう意味でも大手町モール経由案は優れていると言えます。
 只問題は上手く作れれば「富山の顔」ともなれる可能性を秘めているポテンシャルを持っているのですが、再開発ビルはあれども商業集積が弱く待ちに賑やかさがない点です。人手が少ないのは写真を見れば明らかですが、これは大手町モールにビルと住宅は有れども商業店舗はほとんど無い事に起因しています。これでは賑やかさに乏しくなってしまいます。もう此処にビルは要りません。大手町モールに必要なのは、カフェやブティック等のチョットしゃれた感じの欧風的な店舗です。低層の街並みでもその様な流行の一歩先を行くような店舗が有れば、大手町モールの優れた環境と現代的風景が何倍にも引き立ちます。大手町モールの活性化の為に、インフラ整備だけでなくその様な店舗を優先的に此処に集積するようなソフト的な施策を考えるべきではないかと思います。

     

左: [7]大手町モールとコミュニティバス「まいどはや」   右: [8]大手町モールのコミュニティバス「まいどはや」バス停 

 大手町モールは富山市の ミュージアムバス とコミュニティバス「 まいどはや 」の経路になっていて、市民プラザ前にバス停があります。「まいどはや」は2ルート設定されており、交通軸の富山市内線を補完する感じで設定されています。富山地鉄のバス路線が郊外向けの路線の為、国道41号線等の道路軸に偏った設定であるのでこの様な補完路線としてのバス路線は重要であると言えます。
 但し「まいどはや」は路線が重なり合うところが富山駅前と西町地区にあり、大手町モールには1ルートしか入っていません。"新"環状線建設前にこの地域を活性化するためには大手町モール唯一の公共交通機関である「まいどはや」の増便(現在20分間隔)や新ルートの設定による交通の利便性向上が必要ではないかと感じました。

     

左: [9]平和通りと総曲輪通り南地区再開発事業地    右: [10]西町大和百貨店前の風景(ここで市内線と再合流)

 大手町モールを北に向かうと平和通りにぶつかります。"新"環状線は此処で曲がり平和通りを西進し西町を目指す事になります。平和通りと国道41号線(城址大通り)の交差点の所が現在「 総曲輪通り南地区再開発事業 」として再開発が行われていて、完成すると西町交差点にある 大和富山店移転新規開業 する事になっています。
 この再開発が完成する事になると、富山市内唯一の百貨店である大和富山店が路面電車沿いの西町から、一歩奥まった一番町に移転する事になり市の中心市街地の中心も西町から東に移動する事になります。そうなると路面電車から百貨店が離れてしまう事になります。そうすると百貨店・路面電車ともに利便性が低下する事になるので、それを防止し中心市街地の利便性を向上させる為にも"新"環状線建設は必要と言う事です。
 しかし西町の平和通のアーケード街も暑い夏の日の昼間でしかもお盆期間中ということも有ってか、大和百貨店富山店共々人出は多く有りません。この地域の人手が増えないと富山の中心市街地は活性化されません。もっと根本的な側面での中心市街地への人の流入を増やす活性化が必要であると言えます。

 その意味でも"新"環状線建設は中心市街地の活性化の対策であると言えますし、逆に"新"環状線建設の成功には利用者を呼び込む為の中心市街地活性化が不可欠と言う事になります。"新"環状線建設構想自体はツボを押さえた良いプランと言う事が出来ますが、完成はまだ先の話です。その前に出来る中心市街地の活性化方策を実施し、西町・総曲輪地区に賑わいを取り戻す方策を打つ事が必要になると言えます。そのキーポイントは「総曲輪通り南地区再開発事業」の完成です。
 再開発事業完成と大和富山店移転でこの地域の人の流れが変化します。その変化に対応しつつ再開発事業の成功と"新"環状線建設と総曲輪商店街の活性化が一つになって行われる事が重要であると言えます。その意味でも「中心市街地活性化」はいろいろな意味で重要なポイントであるといえます。


 「2」富山の中心市街地活性化の方策は有るのか?

 さて"新"環状線建設が計画されている富山の中心市街地ですが、今の状況は残念ながら中心市街地に人が集まり賑わいが有る状況では有りません。他の都市と同じ様に富山も例外に漏れず中心市街地の衰退が現実の問題となっています。
 富山の中心市街地は、西町・総曲輪地区です。(中心市街地: 地図航空写真
 この地域は西町交差点角の大和富山店・総曲輪商店街入口の富山西武の2百貨店を核にして、アーケード商店街の総曲輪があり、「2核1モール」を中心として商業ゾーンが構成されており、名実ともに富山の中心商店街でした。しかしその一端である 富山西武が平成18年3月末で閉店 し、総曲輪商店街入口の 再開発ビル が1棟丸ごと空き家の状況になっています。加えて昭和7年開店の大和富山店が建物の老朽化ということも有り、前述の様に「 総曲輪通り南地区再開発ビル 」に移転し、富山の中心市街地の中心である西町から百貨店が消える事になっています。

     

左: [1]西町にある大和百貨店富山店    右: [2]閉鎖された富山西武百貨店と"総曲輪"入り口(東側)

 しかし富山市内の状況は「郊外の大規模店舗に流れているから中心市街地が衰退する」と言う構図とは限りません。「 大規模小売店舗の概況 (平成16年6月現在)」によると、(旧)富山市内の10,000㎡以上の大規模小売店舗は8店舗で内富山駅前2店舗・西町地区2店舗・稲荷町駅周辺1店舗・(中心街から数km程度の)郊外3店舗と言う配置で、隣接地域(市町村合併で富山と合併した地域)でも婦中町下轡田のフューチャーシティ ファボーレ(34,954㎡)が有る程度で、イオンの大型ショッピングセンターがある高岡に比べると大規模自体が小売店舗が少ない状況です。
 郊外に流失する店舗も乏しいのに(郊外スーパーは丁度良い感じで市街地を包囲しているが、他の都市に比べると少ない)何故富山市の中心市街地は衰退の傾向をたどるのでしょうか?「 10年前から歩行者が半分に減った 」と言う話もあることを考えると、衰退が深刻な事は間違いありません。
 正直言って衰退の理由は良くわかりません。富山県内自体高岡に5万㎡を超えるイオン高岡ショッピングセンターがある以外驚くほど大きな郊外店舗はありません。ですから「郊外店舗に人が流れた」と単純にはいえないでしょう。可能性としては「中心市街地自体に人口が減って大規模商業施設の日常利用が減った」と言う可能性は有りますが、今私は立証の資料を持ち合わせていません。それとも中心市街地の商業店舗自体に魅力が無く購買力が低下しているのでしょうか?それも私には立証が出来ません。本来なら原因が特定できないと対処は考えられませんが、そこは「謎」と言う世界になっています。

 しかし富山市や地域も黙ってみているわけでは有りません。色々な方策を打ち出して生きています。富山市は人口定着の為に「 富山市まちなか居住推進事業 」と言う定住促進策をはじめていますし、「 優良建築物等整備事業 」を受けた建物作りが始まっています。
 加えて民間でも 再開発の機運が高まって いて、西町・総曲輪周辺で新たな再開発の動きが出てきています。これらの再開発はマンション建設に偏っているのでは?と言う懸念はあるものの、 過去に行われた&現在進行中のこの地域の再開発 と合わせれば、かなりの再開発が行われる事になります。
 その様な事をあわせて富山市や地域が主体となり「公共交通の利便性向上・賑わい拠点の創出・街なか居住の推進」を柱に各種事業も行われていますし(参照: 中心商業地区における主要プロジェクト )、「 まちづくりとやま 」と言う第三セクターのタウンマネージメント機関(TMO)も作られ、具体的に「 レンタルサイクル 」「 越中大手市場 」等の事業も行われていますしそれ以外にも地域・市民を巻き込んだ活性化事業が行われています。
 けれども今の段階で「成果が上がっているか?」と言われれば、Yesとは答えられません。よく答えて「道半ば」と言う事になります。「ローマは一日にして成らず」では有りませんが、やはり簡単には成果が出ないと言う事なのでしょう。只これから成功への道のりを辿って行くか?となると難しい側面も有ると思います。

 今後「富山の中心市街地を如何に活性化させていくか?」と言うポイントは4つ有ると思います。
 一つ目は月並みな感じもしますが、西町〜総曲輪商店街〜大手モールを中心とした地域の商店街の活性化という事になると思います。如何にシャッター通りに近くなりつつある総曲輪商店街と住宅が多い大手モールに個性のある商店を誘致し、地域全体のキーテナントである"新"大和富山店を核にしてそれを補完して、市内だけでなく県内全域の人たちが魅力を感じて買い物に来てくれる様な街を作れるかと言う点がポイントであると思います。
 二つ目は現在空きテナントの富山西武跡の 総曲輪3丁目地区再開発ビル への対策です。総曲輪3丁目地区再開発ビルは昭和51年竣工で築約30年しかも延べ床面積24,500㎡で店舗としては20,000㎡取れるか取れないか?と言うある意味中途半端なビルです。このビルをどうするか?取り壊してもう一度再開発と言うには築年数が浅い感じがあります。しかしテナントを誘致するにはビルが古いと言えます。それに専門店ビルとなると総曲輪商店街に展開するかもしれない店舗を全部吸収してしまうかもしれなくそれはマイナスです。その中で街づくりと整合性を持たせながらどのような対応策をとるか?これが一つのポイントです。
 三つ目は近い将来空きビルになる"旧"大和富山店ビルへの対策です。このビルに関しては解体がすでに決まり「西町南地区市街地再開発準備組合」が出来ています。又この場所に関しては組合の前進の「西町南地区再開発協議会」が「地下1階地上19階、地下駐車場・1〜2階商業店・3〜7階は公共図書館、8階以上は分譲マンション」と言う構想を出し、地元の西町商店街振興組合も「1〜2階バスターミナル・4〜5階図書館など公共施設とする七階建て複合ビル」と言う構想を出し、両者とも富山市に働きかけています。この場所は中心市街地西町の顔となるスペースで此処にどんな建物が入るかで街づくりは大きく変わります。私は出来るなら両者の折衷案「高層マンション+低層は専門店と公共施設+1階2階はバスターミナルで地下が駐車場」と言う交通・街づくり両面で地域の核となるビルを作るべきであると思います。少なくともバスターミナルが富山駅前広場しかない富山市に、中心市街地南部に交通結節点としてのバスターミナルが出来るのは大きいと言えます。(参照:北国新聞 北陸の経済ニュース

     

左: [3]富山駅前で右折する富山市内線(将来は直進の分岐ができ富山ライトレールと直結予定)
右: [4]富山駅北口風景(2013年にはJR高架化が完成しここから延伸され[5]の場所で市内線と直結する)

 最後の4つ目の課題は如何にして中心市街地への足を作るかです。いくら魅力を高めても足が無ければ人は来てくれません。この地域は 総曲輪2丁目築再開発ビル (400台収容の駐車場ビル)や 西町・総曲輪CUBY (駐車場収容台数630台)などの大規模駐車場が整備されているので、これ以上駐車場はいらないでしょう。そうなると後はバス・路面電車・LRTの整備が重要になってきます。
 その為にも「西町南地区再開発ビルにバスターミナル」と言うのも一つの方策です。それと同じぐらい期待が持てるのが、中心市街地への既存輸送手段である市内線の「富山ライトレールのレベルまでの近代化」と今回訪問してきた所で見てきた「"新"環状線建設+富山ライトレールの市内線乗り入れ」です。市内線乗り入れは2013年の富山駅高架化が完成しないと出来ませんが、これが出来れば富山駅での乗り換えも楽になり北陸本線(この時には平行在来線第三セクター?)からの乗り換えも楽になり、同時に富山ライトレール沿線からは乗り換えなしで中心市街地に来る事が出来ます。又LRTで富山駅北の業務地域・富山駅・官庁街・中心市街地の西町や総曲輪が結ばれるのは「都市に基軸が出来る」と言う点でも評価する事が出来ると思います。ですから人を集め中心市街地の活性化させ 火災危険度の高い総曲輪地区 の再開発を進めると言う都市計画の側面からも、「市内線近代化+"新"環状線建設+富山ライトレールの市内線乗り入れ」の3点セットは成し遂げる必要が有るといえます。
 加えてさらに話を進めれば、新幹線開業で「高山本線」の取り扱いも問題になる可能性があります。その時に(チョット大風呂敷になりますが・・・)「JR西日本区間高山本線の第三セクター化&富山市内線の五福地区への延長+西富山周辺での高山本線乗り入れ( 超低床電池駆動路面電車(LRV) を採用すれば電化は最低限で済む)」や「南富山での市内線と富山地鉄上滝線との直通運転」を行い、富山市の郊外地域からもLRTで乗客を中心市街地に運んでくる事が出来れば、都市としても車の使用量を減らせ鉄道線沿線への人口誘導を進めれば散村形態が多少でも解消されコンパクトシティに近づくと言うメリットもあります。

 中心市街地活性化の話が、大風呂敷の話も有り抽象的な話も有りになってしまいましたが、「中心市街地の活性化」は極めて重要な問題です。それは富山市もよく気が付いていて色々な方策を打ち出していると言えます。
 しかし同時に「中心市街地だけを集中投資して活性化させていいのか?」と言う考えも有ります。同じ市の中で山村地域にすんでいる方も居ます。それらの方にも恩恵がある「中心市街地活性化」で無ければなりません。そうなると「中心市街地は投資(再開発)と都市計画と住民活動(空き店舗解消等)による活性化」「周辺・山村地域には魅力ある中心市街地までの便利な公共交通整備」と言う形で「市民全員が恩恵を受ける中心市街地活性化」であるべきだと思います。
 その為にも都市計画と公共交通整備を上手くリンクさせながら、市民全体が納得し満足する方策を考える必要が有ると思います。中心市街地活性化もLRT導入もその一つのツールに過ぎないと言えます。そのツールを上手く使いこなし都市計画と公共交通がリンクした新しい街づくりが出来た時、インフラ・設備だけが"未来"の公共交通機関があるだけでなく公共交通も街づくりも都市計画も未来的な、「真に日本の先端を行く未来の街づくりを行う都市」と富山市がなるのではないでしょうか?私は富山市にその様な"未来"が遠くなく来るで有ろうと楽しみにしています。

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