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秘湯めぐりの旅(29)
<大分県・福岡県の5湯めぐり>
1999.2.13-14
インデックス
2/13天ヶ瀬温泉 | 2/14薬王寺温泉 | 2/14脇田温泉 |
*1999年2月13日(土) 日田市→天ヶ瀬温泉→深耶馬温泉→耶馬渓→柿下温泉
・日田市街を散策する
佐賀大和インターチェンジから長崎自動車道に乗って、一気に東に向かうことにし、鳥栖ジャンクションを通過していったが、今回の旅の全体コースはちょうど8の字を描いたような感じになりそうだ。九州の脊梁部の山脈が迫ってきた日田インターチェンジで下におり、日田市街を巡ってみることにした。まず最初に、歴史民俗資料館に行こうとして、道を間違え、さんざん迷ったあげく、やっとたどり着いたら開館していなかった。仕方がないので、それが建っていたお寺の境内を散策してから、広瀬淡窓の宣義園跡に立ち寄ったが、建物の一部が復元されていて、見学することが出来た。その後、日田市の中心部で昔ながらの街並みが保存されている地域を散策したが、江戸時代の天領で代官所が置かれただけのことはあって、その面影を伝えるものが残されている。明治時代以降もこの地域の中心都市として繁栄した名残があり、昔の芸者置屋や料亭が資料館になっていたのが面白かった。繁栄期の町衆の生活ぶりが忍ばれ、昔の良き時代を彷彿とさせてくれた。そんな古風な町屋の一つに入って昼食を取ったが、カメラをぶら下げていたので、どこかのテレビ局の取材班の一員と間違えられてしまった。郷土料理のだんご汁定食をたのんでゆったりと食事をすませ、裏庭を見せてもらってから、店を立った。
ちょっと時間をとりすぎたので、先を急いで市街を離れ、渓谷沿いに国道210号線を東に走った。目指すは、天ヶ瀬温泉で玖珠川河畔に良い露天風呂があると聞いていた。しかし、天ヶ瀬の温泉街に入ってきて、地元の人に露天風呂を尋ねたが、「河原にどこにでもあるよ。」と要領をえない返事で、仕方がないので適当に車を停めて、河原に下りてみた。たしかに、すぐ近くに、露天風呂らしきものがあって近づいてみたが、浴槽だけでお湯が入っていない。これは困ったなと思って対岸を眺めてみたら、藁掛けの小屋のようなものが見え、浴客が中に入って行くのが見えたので、あそこが露天風呂かと気を取り直して、対岸に行ってみることにした。しかし、上流に車を走らせたものの、橋までは少し距離があって、かなり回り道をして、やっと対岸に着いた。入浴の用意をして、小屋掛けの中に入っていったが、混浴の露天風呂で、入ろうか迷っていた中年の女性が私の姿を見て、外に出ていってしまった。浴槽には、初老の男性が一人悠々と湯に浸かっている。さっそく、服をぬいで、その長方形のコンクリート造りの浴槽に飛び込んだ。硫黄の臭いがし、ちょっと熱めだが、温泉らしい温泉だ。周りが囲まれていなかったら、開放的で、眺めも良いと思うのだが、逆に旅館街から丸見えで入りにくいかも知れない。先客の男性も相当の温泉好きらしく、近在の温泉について話がはずむ。「仕事の休みの時は、温泉に浸かっているのが、金もかからなくて、健康にも良い。」と話してくれた。そんな温泉談義を楽しみながら、のんびり入浴して出てきたら、先に温泉に入りそびれていた中年女性が待っていた。混浴なのだから遠慮しなくてもと思うのだが...。
★天ヶ瀬温泉の河畔の露天風呂に入浴する。<入浴料 無料>
| <源泉60度の単純硫黄泉> *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) 慢性皮膚病、慢性婦人病、きりきず、糖尿病
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再び車に乗って、温泉街をはずれ国道210号線を東に進んだが、途中から国道387号線を北にとり、さらに左の山間にそれて、耶馬渓を目指すことにした。曲がりくねった山道をどんどん進んでいくと、見事な岩壁が現れてきた。この辺りが、深耶馬渓といわれる景勝地で、山国川の支流、山移川に沿って、8つの奇岩一望できるところから、一目八景の名前が付いている。そこの、無料駐車に車を停め、川沿いに少し歩いたところに、目立たないたたずまいの町営温泉センターがあった。温泉センターというと近代的な日帰り入浴施設を連想しがちだが、ここは、地元の人の共同浴場といった感じの木造建造物で入浴料金も200円と安い。しかし、浴室はけっこう広めで、湯口からは時々ぼこぼこと湯が噴き出してくる。地元の人々と語らいながらゆったりと入浴したが、こんな素朴な温泉も良いものだ。近在に何軒かの旅館と土産物屋が並んでいるだけの鄙びた観光地だが、こういう自然の中を散策してみるのもいいなあと感じながらも先を急いで、車を出すことにした。
★深耶馬温泉「耶馬溪町営温泉センター」に入浴する。<入浴料 200円>
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進
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深耶馬温泉「耶馬溪町営温泉センター」の玄関 | 深耶馬温泉「耶馬溪町営温泉センター」の浴槽 |
青ノ洞門と禅海和尚像 |
・耶馬渓、羅漢寺へ
しばらく、走ると山国川に出て、国道212号線を渓谷沿いに車を進ませたが、なかなか良い眺めだ。江戸時代に禅海和尚が岩盤を手掘りで、切り開いたという、菊池寛の小説「恩讐の彼方に」で有名な青ノ洞門に立ち寄ってみたが、もっと深山幽谷としたところかと思っていただけに、案外開けた所で、意外な感じがした。また、手堀りの洞窟も現在の道路の地下のような所に残されているだけで、がっかりしたが、禅海和尚がノミと槌を構えている像には迫力があった。すぐに、そこを立ち去って、禅海和尚ゆかりの羅漢寺に向かったが、岩山の上の方にある寺で、車では行けず、徒歩で登るのは大変そうなので、観光用リフトで上がることにした。上からの長めは上々で、眼下に耶馬渓周辺が一望できる。岩盤を辿りながら、石仏や堂宇に参拝し、境内を一周した。しかし、よくこんな山上に諸堂を築いたものだと感心し、宗教の力をかいま見た思いがした。下山は、長い石段を下っていったが、眼下は目のくらむばかりに悠な絶壁になっている。注意しながら10分足らずで下りきることができた。
「柿下温泉」の全景 |
その後は、宿に着く時間が遅くなるのではと、心配になって来たので、先を急いで車を走らせていく。山国川沿いに下って、中津市を過ぎ、椎田有料道路で時間を稼ぐことにした。さらに、行橋市域を通って、国道201号で新仲哀トンネルを越えて、今日の宿「柿下温泉」にやっとたどり着いた。ここは、周辺を低い山に囲まれた閑静な場所で、そこにポツンと立っているという感じ。外観はヘルスセンターといったイメージの建物で、ついでに宿泊もできるといったような施設だった。受付を済ませると、まず、部屋に荷物を置き、すぐに浴場へと向かうことにした。ここの湯は単純弱放射能泉(ラジウム泉)で、血行を良くし、湯冷めもしにくく、効能も高いと案内に出ていたので、期待して湯船に入る。浴場もけっこう広々としていて、ゆったりと湯に浸かり、長かった1日の旅路の汗を流すことができた。満足!満足!....。湯から上がって来て、ほどなくして大広間での夕食となったが、1泊2食付6,000円という低料金の割には、鯉のあらい、鯉こく、鍋焼きうどんなど、おかずが8品も並べられていて、お酒を冷やでたのんで、飲みかつ食べて満腹となった。後は、部屋に戻って、明日の行程をあれこれ考えてみたり、横になってくつろぎながら、テレビを見たりして、床について寝ることに...。
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) 痛風・動脈硬化症・高血圧症・慢性胆嚢炎・胆石症・慢性皮膚病・慢性婦人病
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「柿下温泉」の夕食 | 「柿下温泉」の朝食 |
*1999年2月14日(日) 柿下温泉→小倉城跡→宗像神社→薬王寺温泉→脇田温泉→帰途へ
・朝、周辺の散歩へ出かける
朝、6時頃に起床し、散歩に出かけようとしたが、表玄関は閉まっているので、非常口を開けて、外に出た。さすがに、九州といえども朝の空気は冷たい。まず、カメラに旅館全体を収めて、周辺を散策したが、これといって見るところがない。しかし、そういう田舎の風景もそれはそれなりに味わいのあるものだ。あてもなくぶらついてみたが、やはり、寒さが気になって早々に引き返してきてしまった。冷えた体を元に戻すために、朝風呂にはいることにし、ゆっくりと、湯に浸かって回復をはかる。上がってきて、しばらくくつろいでから朝食をとり、9時前に宿を出て、国道322号を北上して、北九州市を目指した。
復元された小倉城天守閣 |
・小倉城跡へ向かう
今までに、日本全国の都市を回っているが、大都市の中では、一番巡っていないのが北九州市だ。最初に、中心部にある小倉城趾の勝山公園に行き、城跡と復元された天守閣、二之丸庭園などを見学した。ここは、私が訪れたことのない数少ない近世城郭の一つで、以前から来たいと思っていたのだ。江戸時代の多くは、あの古式礼法で有名な小笠原家の15万石の居城だったところで、高く積み上げた立派な石垣が残されている。まず、鉄筋コンクリートで復元された天守閣に登閣したが、資料が残っているにもかかわらず、外観すら江戸時代のままに忠実に復元されていないのが残念だ。復元当時の市担当者の見識を疑いたくなってしまう。少なくとも、防災設備以外は江戸時代の残された資料のままに復元し、後世に正しく伝えて欲しかった。それでも、内部の展示は、現代風に趣向を凝らしてあって、楽しめたが、城下町の規模の大きさとその繁栄を伺い知ることが出来た。いくつかの貴重な知識を得たことには感謝したい。最上階からは、市中心街が一望でき、近代化した現在の様子を知ることが出来た。下りてきて、二之丸庭園を見学したが、その館には、小笠原流古式礼法について展示がしてあり、新しい知見を得た。庭園はずいぶん大規模なものだったが、後ろの高層ビルがその趣を減殺している。こんなところにビルなど建てなければ良いのにと思って聞いてみたら、市役所の建物だとのことでびっくりした、なぜ北九州市がわざわざ庭園の景観を破壊する市役所を建てたのだろうか、疑問を感じないわけにはいかない。どこの都市庭園に行っても背景の高層ビルが気になるようになってきたが、なんとか規制できないものだろうか?公共機関の建物は、真っ先にそれを考慮してほしいものだ。
松本清張記念館の外観 |
・博物館めぐり
その後は、城跡内を散策しながら、松本清張記念館へと向かった。最近、できたばかりの近代的な建物だが、清張には「或小倉日記伝」など小倉を舞台とした作品もあるので、どんな展示になっているかとても興味があった。結構、大きな展示スペースで、松本清張の事績が網羅されている。圧巻は、書斎と書庫が実物大に復元されていることで、その蔵書の多さに圧倒される。これが、氏のバックボーンになっていたのかと思い知らされた。そこを出て、今度は市立歴史博物館に向かった。大きな建物だが、トンネル状の変な形をしている。内部も大きな空間がとられてあって、なんか異様な感じがする。外観が、変わっている割には、展示内容は斬新ではなく、代わり映えのしない展示スタイルだった。それでも、北九州市の歴史の概略はつかむことができたが、考古分野は別の博物館があるというのでそちらにも立ち寄ってみることにした。一端、駐車場に戻り、車で少し移動して、市立考古博物館の駐車場に入れ直した。さすがに、北九州は考古遺物の宝庫で、縄文から弥生時代にかけての展示が充実している。邪馬台国九州説とも関わるので興味深く見学した。
・宗像神社を参拝
ずいぶん北九州市で時間を費やしてしまったので、先を急ぐことにして、他の見学地を省略して、宗像神社へと向かうことにした。市街地を出はずれたところで、博多ラーメンの店を見つけ、ラーメンと餃子の昼食をとってから神社に到着した。予想以上に大きな境内で、立派な社殿が建ち並んでいる。参拝をすませてから、お目当ての宝物館へと向かった。ここには、以前から一度見てみたかった国宝の沖の島遺跡出土品が展示されているのだ。玄界灘に浮かぶ離島沖の島は古来より祭祀上重要な位置を占め、発掘によって貴重な遺跡群が出土した。いずれもみごとなものばかりで、朝鮮半島との関係、古代の祭祀を知る上で価値の高い物ばかりだ。質量ともすばらしい出土品に圧倒され、しばらく足を止めて感嘆していた。
そこを出て、今度は温泉を目指すことにし、地図で位置を確認したら、薬王寺温泉が近くで面白そうな位置にある。しかし、山間部で、行きにくそうな道筋なので、間違わないように注意して、運転を続けていった。はたして、西山南西麓のどん詰まりのような所に数軒の温泉街があって、私は、最奥の「鬼王荘旅館」で入浴料1,000円を払って、内湯に入れさせてもらうことにした。周囲を山に囲まれ、実に閑静な温泉地で、のんびりと湯に浸かりながら、せせらぎの音を聞いているのが心地よい。今日は朝からずいぶん色々な所を見学してきたので、その汗を流した。しばし、休息の後、飛行機の搭乗時間を考えながら、次の温泉地を目指すことにした。
★薬王寺温泉「鬼王荘旅館」に入浴する。<入浴料1,000円>
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) 痛風・動脈硬化症・高血圧症・慢性胆嚢炎・胆石症・慢性皮膚病・慢性婦人病
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薬王寺温泉「鬼王荘旅館」の全景 | 薬王寺温泉「鬼王荘旅館」の浴室 |
脇田温泉の日帰り入浴施設「湯の禅」の玄関 |
再び、来た道を引き返し、山塊をぐるりと回り込んで、脇田温泉へと車を走らせた。この温泉は、奈良時代からの歴史があるそうで、遠賀川の上流、犬鳴峠の麓にあたる。着いてみると結構開けた所にある温泉地で、数軒の旅館が軒を並べていた。最初に目指した日帰り入浴施設はクローズドしており、地元の人に聞いて、「ホテル楠水閣」の日帰り入浴施設「湯の禅」という新しい施設に行ってみた。山の斜面に、造られた規模の大きな露天風呂で、浴槽がいくつもあるが、日曜日の午後とあって、満員状態で順番待ちをさせられた。しかも、いくつもある露天風呂もいずれもいっぱいで、かなり詰めてもらわないと入浴できない状態だった。ただ、とても開放的な露天風呂で、温泉街も一望できる。それをよしとして、なんとか全部の浴槽に身を沈めた。もう少し空いているときに来て、のんびり浸かれたら気分も良かったのだろうが....。レジャー施設のような感覚で、外人や頭を茶色に染めた若者の一団が入浴していたのが目に付いた。
★脇田温泉の日帰り入浴施設「湯の禅」へ入浴する。<入浴料 800円>
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進
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・帰途に着く
そこを出ると、もう飛行機の離陸時間まであまり余裕はなく、一気に福岡空港を目指すことにした。無事に、レンタカーを営業所に返し、ターミナルビルで夕食をすませて、予定通り、ANA266便で羽田空港へと飛び立って帰途についたが、とても充実した九州北部の温泉巡りだった。
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