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秘湯めぐりの旅(52)
<静岡県・山梨県の5湯めぐり>
2003.5.24-25
インデックス
5/24(土) | 5/25(日) | |||
朝霧高原温泉 | 新稲子川温泉 | 佐野川温泉 | 南部アルカディア温泉 | 十枚荘温泉 |
*2003年5月24日(月) 朝霧高原温泉→新稲子川温泉→佐野川温泉
牧水の旅姿 |
・富士山麓へと向かう
また、富士山の写真が撮りたくなって、急に旅に出ることにした。朝6時半前には自宅を出たが、都内に入って環状8号線が渋滞していたから、東名高速に乗ったのは8時過ぎになってしまった。それでも、その後は順調に走って、静岡県境を越え、9時半前には沼津インターで下りた。
・「若山牧水記念館」へ立ち寄る
南に向かい、まず千本松原にある「若山牧水記念館」へ立ち寄った。私は、牧水が大好きで、 「みなかみ紀行」 など、その足跡を訪ねる旅に何度か出たことがある。牧水は旅と酒をこよなく愛したそうなので、私と似ているところがあるかなと思っているのだが...。この記念館を見学するのは、3度目のこととなるが、訪れるたびに新しい発見がある。今回は、牧水が千本松原の伐採計画に反対し、市民大会で反対演説をしたことに興味を持った。全国を旅し、自然の風景をこよなく愛した牧水のこととて、許し難いことだったのだろう。また、戦前は日本領土だった朝鮮半島を、長期にわたって旅していることも面白く思った。
・朝霧高原へ至る
その後は、駿河湾沿いに西へ走っていったのだが、富士山は薄雲がかかって全く見えない。仕方がないので、富士市、富士宮市と通り過ぎ国道139号線で一気に朝霧高原へと上っていったのだ。ここは、富士山西麓に位置し、標高700m前後で、林と牧場、滝と高原ムードにあふれていた。これで、富士山でも見えていたら言うこと無しだったのだが...。もう昼を過ぎていたので、食事の出来るところを探していたら、国道脇に手打ち蕎麦屋の道順を示す看板が出ていたので、思わず左折して、林の中に入り込んでいった。そうして矢印に沿ってしばらく走っていたら、別荘地の一角に蕎麦屋を見つけた。なんか、林間のログハウス風で別荘のオーナーがついでに蕎麦屋をやっているというような店だったが、ともかく入ってみることにした。とても蕎麦屋にはみえない建物だが、出てきた蕎麦はコシも強い手打ちでなかなかの味で、びっくりした。
朝霧高原温泉「グリーンパーク」の外観 |
思いがけず、美味しい蕎麦にありついて腹を満たしてから、次に朝霧高原温泉「グリーンパーク」を目指した。国道139号線沿いにあるスポーツセンター(今は営業していないようだったが)を左折した奥に、鉄筋コンクリート造2階建の「グリンパークホテル」が見えてくる。ホテル前の駐車スペースがとても広く、できるだけ建物に近い方へ車を停めた。ここ富士山西麓の標高800mの地に湧くのが、朝霧高原温泉で、1997年(平成9)に掘削に成功し、雄大な富士山を望める露天風呂が名物だと聞いていた。受付で、1,000円也を払って、2階へと階段を上がっていくと男女別の浴室に至る。中に入ると、結構広めで、全面に大きな窓がある。その脇から外に出ると長方形の露天風呂がしつらえてあった。しかし、ほんとうに残念なことだが、正面に見えるはずの富士山はかすんでしまって、全く姿を現さないのだ。仕方がないので、のんびりと湯に浸かりながら旅の汗だけは流すことにした。源泉温度が27.2℃と低いので加熱循環させているようだが、浴槽の縁からも一定量が溢れ出していたので、半循環といったところか...。ぬるぬる感のある入りやすい湯で、気分は悪くなかった。1階には、無料休憩室や隣接して食事処、売店もある。周辺にはフィールドアスレチックやゴルフ場、テニスコート、総合グランドなどのスポーツ施設も完備しているようなので、高原でのレジャーを満喫した後で、富士山を見ながら温泉で汗を流すには良いかも知れない。再訪するときには、雄大な富士山が顔を出していて欲しいと願いながら、「グリンパーク」を後にした。もうこうなったら、富士山の写真はあきらめ、今回は滝巡りをメインにしようと考えた。
★朝霧高原温泉「グリーンパーク」に入浴する。<入浴料 1,000円>
朝霧高原温泉「グリーンパーク」の内湯 | 朝霧高原温泉「グリーンパーク」の露天風呂 |
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病
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・朝霧高原を巡る
まず、少し南下して陣馬の滝へ行ってみたのだが、規模はそれほどでもないものの、幾筋もの流れがとてもきれいな構図を作っていた。ちょうど中学生が遠足に来ていて、はしゃぎ回っていたのがなんか懐かしい光景だった。その後は、田貫湖へも行ってみたが、逆さ富士の名所も全く見えなければただの高原の湖で、釣り人ばかりが目立った。ついでに、その近くにある小田貫湿原へも行ってみることにした。田貫湖の北にあるこの湿原は、静岡県側の富士山麓では唯一の低層湿原で、大小125余の池が点在し、70種余の蝶、20種余のトンボ、蛙などが生息し、野鳥のさえずりも聞けるという。湿原は、東・中・西の3ヶ所に分かれ、最大の西側湿原は 約1.5ヘクタールの広さだ。この時期は、あまり花は咲いていなかったが、風がさわやかで、木道の上を歩いていても清々しかった。鳥がさえずり、カエルの声がし、珍しいハラビロトンボが飛んでいて、高原の風情を醸し出していた。
陣馬の滝 | 小田貫湿原 |
・音止めの滝、白糸の滝へ
湿原散策後は、音止めの滝、白糸の滝へも行ってみたのだが、こちらはとても迫力のある滝だった。音止めの滝の方は、ものすごい水量で落差25mをゴッーとすごい音を立てて流れ落ちていた。白糸の滝の方は落差20mなのだが、幅が100mほどあって馬蹄形に落下していて、白い糸が幕を作っているような感じで素晴らしかったのだ。しかし、案内に出ていたけど、滝の上には流下する川がないとのこと。とても不思議な感じがするが、川は無くても、富士山の伏流水が崖のところで地層の中から溢れ出して、滝を作っているらしいのだ。ここでは、風景に感動して、何枚も写真を撮った。
音止めの滝 | 白糸の滝 |
その後は、国道とは名ばかりの車1車線がやっとの469号で桜峠越えをした。ガードレールもなく、勾配もきつく、ヘアピンカーブが連続していて、ほんとうにひどい国道もあったものだ。峠を下りきったところに、新稲子川温泉「ユー・トリオ(U-TRIO)」という、日帰り入浴施設があったので、一浴していくことにした。この温泉は、1990年(平成2)に芝川町が掘り当てたもので、当初は近くの老人憩いの家「せせらぎ荘」だけで使用されていたとのこと。しかし、湯量も豊富なので1994年(平成6)3月に町営の「ユー・トリオ」が造られたと聞く。富士川の支流稲子川の渓流に沿い、森に囲まれ、木を随所に使った平べったい大きな建物だ。この施設には、男女別の内湯と露天風呂の他に、温泉プールがあるが、水着が必要だ。私は、水着を持ってこなかったので、(レンタルもあるが)内湯と露天風呂のみに入ることにした。浴室に向かうと、そこには、源泉浴槽と、加熱浴槽があり、大きな窓があって明るい。やはりぬるめだが源泉浴槽がいい、やわらかで透明な湯が肌に心地よいのだ。ドアを開けるとすぐ露天風呂に出られるが、高い塀があって眺望はあまりよくない。せっかく川沿いにあるので、渓流を望める造りだと良いと思ったのだが...。他にも、和室の休憩室、ラウンジ、地場産品のギャラリー、食処「湯楽里」、体験工房「遊竹庵」があり、隣接する公園にはテニスコート、バーベキュー場、遊歩道が整備されている。少し交通の便の悪いところだが、森と清流に囲まれ、いろいろな楽しみ方が出来るので、家族連れで来て、1日過ごすには良い施設かも知れない。
★新稲子川温泉「ユー・トリオ」に入浴する。<入浴料 500円>
新稲子川温泉「ユー・トリオ」の玄関 | 新稲子川温泉「ユー・トリオ」の露天風呂 |
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病
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佐野川温泉の外観 |
入浴後は県境を越えて、山梨県南部町へと入っていった。その日泊まったのは、「佐野川温泉」といい、1974年(昭和49)の開業で、そんなに温泉としての歴史があるわけではないが、秘湯の一軒宿と言って良い。周辺には全く人家はなく、佐野川沿いの緑深い林の中、自然環境豊かな所に立地している。1泊2食付き9,967円(込込)で泊まったのだが、もてなしもよく、感じがいい。しかし、なんといっても特筆すべきは、その泉質の良さだ。源泉31.5℃、pH9.68、ラドン含有量0.1マッヘ/kg、溶存物質総量636mg/kgの単純硫黄泉(アルカリ性・低張性・低温泉)で、毎分98.3リットルの掘削自噴泉なのだ。それが、内湯の源泉浴槽と混浴露天風呂に掛け流しになっていて、浴槽から常に溢れ出している。特に、岩造りの混浴露天風呂は広くて開放的で、大量に源泉が掛け流しになっていた。ただ、源泉は31.5℃しかないからとてもぬるいのだ。最初は冷たいくらいで、とても耐えられなく思うのだが、長く入っているとじわっと温かくなってくるから不思議なものだ。それに、泡付きがすばらしく肌ざわりがいい。後で聞くと、硫化水素の泡だそうで、この泡を集めると火がつくとのこと。内湯は、加熱した熱い浴槽もあるので、交互にはいるととても気持ちがいいのだ。1時間近く長湯して、じっくりと温泉を味わった。飲泉も出来るし、ほんとうに気に入った。上がってきて、ほどなくして部屋での夕食となったが、鮎の塩焼、マスの天ぷら、蕗、山ウド、竹の子、刺身などが出てきてとても美味しかったのだ。お酒もたのんで、気持ちよく、飲みかつ食べた。後は、翌日のコースを考え、テレビを見ながら床に就いてしまった。
★佐野川温泉に宿泊する。<1泊2食付 9,967円(込込)>
佐野川温泉の男性用浴室 | 佐野川温泉の露天風呂(混浴) |
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) きりきず・慢性皮膚病・慢性婦人病・糖尿病
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佐野川温泉の夕食 | 佐野川温泉の朝食 |
*2003年5月25日(日) 南部アルカディア温泉→十枚荘温泉→帰途へ
・朝の散策に出かける
翌日は、朝6時に起きて周辺を散策したのだが、とても空気が澄んで、清らかな感じだった。どんどん、佐野川の清流を遡って行くと、吊り橋があり、徐々に谷も険しくなって、深い緑に包まれていく。道端にある野草や川の流れにカメラを向けて、写真を撮りまくった。小1時間ほどで、戻ってきたが、ほんとうに清々しかった。その後は、朝風呂に入って汗を流しながら、再度名湯を味わった。朝食を食べて9時過ぎに出立したが、とても満足出来た宿で、機会が有れば再訪してみたいと思った。
佐野川の清流 | 佐野川に架かる吊り橋 |
しかし、翌日も富士山は見えず、仕方がないから、また温泉巡りをすることにして、まず南部アルカディア温泉「なんぶの湯」に立ち寄った。ここも、町営の日帰り入浴施設で、1999年(平成11)にオープンしたとのこと。建物は立派で、大浴槽、ジャグジー、寝湯、気泡浴、打たせ湯、かぶり湯、サウナそして、露天風呂と施設はいろいろと揃っているが、お湯は循環されていて、浴感も乏しく、カルキ臭もして今一だった。144畳の大きな休憩室もあるが、入浴+休憩だと大人 1,500円になってしまうので、ちょっと高い感じがする。
★南部アルカディア温泉「なんぶの湯」に入浴する。<入浴料 500円>
南部アルカディア温泉「なんぶの湯」の外観 | 南部アルカディア温泉「なんぶの湯」の露天風呂 |
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進
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・南部町立美術館を見学
それから、対岸にある「南部町立美術館」を見学したが、図書館と併設された「南部町アルカディア文化館」の2階にあった。郷土ゆかりの日本画の近藤浩一路と小宮山俊の絵画を中心に展示してあった。展示数も多く、大作もあり、久しぶりにすばらしい美術品を見て、目の保養になった。
十枚荘温泉の外観 |
その後、再び国道52号線から山中へ3kmほど入って、十枚荘温泉へも立ち寄り入浴した。戸栗川の清流に沿った山里にあり、緑に包まれた一軒宿だ。入口に小さな水車小屋があり、少し坂を下った所が玄関になっている。出迎えてくれたのは数匹のイノシシ、といっても剥製だがとても立派なものだ。ロビーには、クマ、シカ、タヌキなどの剥製も並べられていて圧巻だ。すべて、宿の主人が猟師仲間と共にしとめたものだという。ちなみに、ここの名物はイノシシ料理で、鹿刺や鹿ステーキなども出て、囲炉裏端で食すると聞いた。なかなか、山里らしい個性的な宿だ。入浴料500円を払って、案内されて浴室へと向かった。男女別の内湯のみだが、男性浴室の湯船はちょっと変わっている。船をかたどったもので、渡船風呂と称し、かつて富士川で活躍した渡し船をイメージしているとのこと。そういえば、この町は鉄道開通以前は富士川舟運の要地として栄えていたことを思い出した。湯口は、獅子の頭の形をしていてなかなか立派だ。温泉は、1992年(平成4)に本館東側の地下1,500mより掘削したもので、源泉32℃、pH9.1のナトリウム・カルシウム-塩化物泉(低張性・アルカリ性・低温泉)で、毎分110リットル湧出しているという。源泉温度が低い分、加熱循環させているようだが、浴槽には結構湯の花が舞っていた。客室13室の内、6室には家族風呂が設置され、それぞれに温泉が引かれているそうだ。また、十枚荘温泉には別館があり、小宮山駿美術館となっている。ここの主人が、築100年の酒蔵を、日本画伯小宮山駿氏のアトリエ&ギャラリーとして提供しているものだと聞いた。ほんとうにユニークな宿で、今度来るときは泊まって、山里の風情を満喫しながら、イノシシ料理を賞味したいと思いつつ、帰途についた。
★十枚荘温泉に入浴する。<入浴料 500円>
十枚荘温泉のイノシシの剥製 | 十枚荘温泉の男性浴室(渡船風呂) |
| *一般的適応症(浴用) 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え症・病後回復期・疲労回復・健康増進 *泉質別適応症(浴用) きりきず・やけど・慢性皮膚病・虚弱児童・慢性婦人病
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・帰途につく
それからは、国道52号線に復し、沿線で昼食に天ザル蕎麦を食べ、道の駅でお土産を買った。前回の旅は帰路渋滞にぶつかってひどい目にあったから、今回は早めに甲府南インターから中央自動車道に乗った。そうしたら、ほとんど渋滞にもぶつからずスイスイと戻ってきてしまった。
今度の旅は、残念ながら期待していた富士山を全く見ることが出来なかった。しかし、朝霧高原といくつもの滝の写真を撮り、温泉も5湯に入って、美味しい山の幸も味わえたので、まずまずだったと思う。
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