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再発する病〜短すぎ、また長すぎた〜
ディソーダー、火星に出没する正体不明の無人兵器群。
かつてナハティガルが大規模発電施設アポルオンを襲撃する際に利用し、コーテックス側のレイヴンに甚大な被害をもたらしたそれらは、再び人類に牙をむいていた。シティ北側のゲートにつながる防衛線には何機もの量産型ACが集結し、進軍するディソーダーに対して火線を構成している。
「全機、友軍の到着まで持ちこたえろ!」
大型のレーダーを装備したクレスト社製の量産型ACが、周囲の機体へむけて指示を出す。周囲の量産型ACたちは腕部と一体化したマシンガンを発射し、ディソーダーの進行を押しとどめていた。尾を引いて放たれる曳光弾が小型ディソーダー、アーマイゼの群れに突き刺さり、無数の弾痕を穿たれたアーマイゼは煙をあげながら停止する。
「今だ! 突撃!」
敵の足が鈍った隙をつき、後方から現れた機体が火線を迂回して前に出る。その機体はなめらかな動きで敵の群れに接近するとレーザーブレードを展開し、撃ち漏らされたアーマイゼを両断していく。ミラージュ社製の量産型ACだった。
「クレスト、ここは俺達が引き受ける。敵の左翼を狙え。砲撃型の奴らが集まっている!」
「了解した。ここは任せる。全機、敵左翼の部隊に火力を集中! 友軍機を援護せよ!」
「友軍機ねぇ……言ってくれるぜ。後ろから撃ってくんじゃねぇぞ!」
「はっ! そっちこそ、流れ弾には気をつけるんだな!」
憎まれ口をたたき合いつつも、両社のAC部隊は見事な連携でディソーダーの群れを押しとどめていた。クレスト社の部隊が後衛、ミラージュ社の部隊が前衛を担当し、ディソーダーの群れを次々と撃破していく。さらにコーテックスのレイヴンたちが各所で遊撃に当たり、強固な防御陣を形成していた。
「何だ、企業の連中結構やるじゃねぇか」
「ああ。これなら、俺らが出るまでも無かったんじゃねぇか?」
そんな戦場から少し離れた位地に、ヒーメル・レーヒェのメンバーたちは居た。クライシスの持ち込んだ対ディソーダー用の弾薬に換装していた為到着が遅れたのだが、友軍の部隊は特に苦戦しているわけでもなさそうだった。
「油断するな。発生装置を破壊しない限り、奴らは無限に増え続ける。戦況が有利なら、なおさら発生装置の破壊に尽力すべきだ」
「そうだな。ミサイルの発射準備が整っても、発生装置が残ってたんじゃ意味が無い。急いで探し出さないと……」
気楽そうなことを言うバーストファイアとケイローンを、クライシスとセイルがたしなめる。もっともケイローンは周囲の緊張をほぐす為にあえてそう言ったのだろうが、それにしても不安要素の少ない状況だった。以前の事で企業も学習したのか、自社の部隊を惜しみなく投入して戦闘に当たっている。
「エマ、敵に対する情報、どのくらいある?」
「発生が確認されたのは三十分前。座標は以前送信した地図に記載してあります。ディソーダー発生装置も、その付近にあると思われます」
セイルは視線を動かし、視界内の戦術画面に地図を表示する。ディソーダーの出現地点と思われる場所は、前線の遥か向こうだった。
「そうか……じゃあ、俺とバーストファイアで捜索に出る。後の二人は、万一のことを考えて、防衛部隊に加わってくれ」
「OK、火力支援と、戦闘指揮だな」
「……了解した。セイル、くれぐれも無茶はするなよ」
「分かってるって。俺もちゃんと学習してるよ」
心配そうな声を出すクライシスと別れ、セイルはバーストファイアと共に移動を開始する。ジャスティスロードとインフェルノの二機はディソーダーの索敵範囲を避け、戦場の奥へと向かって行った。
同時に前線の方から爆音が響き、レーダー上の敵反応が一気に減少する。A・Rがミサイルを一斉発射したようだった。
「ヒュウ、相変わらず派手な事しやがるぜ……」
バーストファイアが後方を振り返りながら口笛を吹く。尤も、派手さで言えば彼の乗機であるインフェルノも負けていない。PLUS専用機の特性をフルに活用したダイナミックな動きは、他のACには真似できないだろう。
『で、だ。ちょっといいかい? リーダーさんよ』
「……」
不意にバーストファイアがセイルに通信を入れてきた。なんとなく予想していたセイルは、同じく個人回線を開く。
『アンタがヒーメル・レーヒェのリーダー……つまり、クラが気にかけてる奴って事だな?』
「ああ……そういう事になるな。済まないな。アンタらのリーダーをとっちまうような真似をして……」
『別に構わんさ。俺達ADAMの戦力があいつに依存してるのは確かだが、そこはあいつだ。自分が居なくても活動に支障がないくらいには、部隊は整えられてる』
それを聞いたセイルは、内心胸をなでおろした。単身でそこまで組織を束ねられるクライシスには、毎度驚かされてしまう。
『そいで本題だが……アンタ、クラと何があった?』
「何、と言うと?」
『あいつは見ての通り、人付き合いの上手い人間じゃない。故にあいつは、人間関係にそれほど価値を見出さない。だがあいつはお前のために行動した。危険を犯して地球に戻るなんて、普通じゃ考えられない。ウチの参謀殿はカンカンだったぜ……』
横合いから飛んできた流れ弾を避けつつ、バーストはそう言った。人と話しながら周囲に注意をはらえる彼に感心しつつ、セイル自身もセンサーの感度を上げる。
『だから、アンタがどうしてそんなにあいつに好かれてるのかを知りたい。どうだ?』
「どうって言われてもな……単に一緒にミッションに行って、ちょっと追いつめられて、それで、協力して脱出しただけだ」
『ほぅん……確かにアレな状況だが、そこまで、って感じじゃねぇな……』
再び飛来したエネルギー波をローリングで回避しつつ、バーストは思案する。相変わらず人間離れした技術で人間じみた動きをしているが、本人は真面目に戦っているのだろうか。
「……あんた、クライシスとは長いのか?」
『ああ……もう20年近くになるな』
「20年? あいつってまだ19歳とかじゃなかったか? それに、生まれた時から一緒って……」
飛んできたミサイルを機銃で迎撃しつつ、セイルはそう呟く。確かクライシスは、生まれてすぐに両親を失った筈だった。
『ああ、俺とあいつは同じ孤児院で育ったんだよ。元レイヴンの牧師が、孤児を引きとって育ててんだ。俺もあいつもそこで育ってよ、苗字もそこの孤児院から貰ったもんだから、マジで兄弟みたいなもんなのさ。ところで……』
バーストがそこで一旦言葉を切った。セイルは、無言でジャスティスロードのセンサーを最高感度まで引き上げる。
『さっきから妙に流れ弾が多くないか?』
「同感だな……8時方向、リュシオル型2、小型約30!」
後方から飛来したグレネード弾が爆炎の花を咲かせ、ジャスティスロードとインフェルノは左右に散開する。侵攻する敵部隊からは距離をとっていたつもりだったが、二機には既にかなりの数のディソーダーが向かっていた。
「俺が抑えこむ! アンタは発生装置へ行け。場所わかるか?」
「今捕捉した。一分で終わらせる!」
無線から外部スピーカーに切り替え、二人は手短に言葉を交わす。インフェルノが追撃してくるディソーダーの群れに飛び込んだのを確認し、セイルは前方を見据える。ジャスティスロードのカメラと同調した瞳には、土煙の中で光を反射するものが映っていた。
「っ!」
セイルはHOBとTOBを同時に起動した。機体後方から放たれたプラズマが光の帆のように展開し、ジャスティスロードは一瞬で水蒸気の壁を越える。
まるで早送りの映像のように後方へと流れていく景色は、しかし静止画のようにはっきりと認識出来た。邪魔になるディソーダーめがけてリニアライフルを撃ちこむと、着弾した部分から装甲がぼろぼろになって崩れていくのが見える。クライシスの持ち込んだナノマシンは、正常に作動しているらしい。
「よし……行ける!」
なおも追いすがるディソーダーたちをソニックブームで吹き飛ばし、ジャスティスロードはディソーダー発生装置に肉薄した。護衛についていたリュシオルをすれ違いざまにブレードで切り裂き、発生装置の機関部にアストライアを突き立てる。
甲高い金属音を立てながら幾度と無く杭が突き出され、高密度三重水素によって溶解した装甲がバラバラと脱落する。やがて発生装置が完全に停止したのを確認し、セイルは杭を引きぬいた。
「ジャスティスロードより本部リグへ、発生装置を破壊した」
『了解しました。クライアントに連絡します。本部リグより全機、間もなく掃討用のミサイルが発射されます。至急、指定……』
「……? どうした? エマ」
元来た道を引き返していたセイルは、不意に言葉を切ったエマに問いかける。ヘルメットのヘッドホンからは、エマ以外の別の声が漏れていた。
『っ! ……本部リグより全機! クライアントから緊急連絡です!』
「何?」
『どうした?』
『………………』
メンバーたちが一斉に反応し、状況を尋ねる。セイルもバーストファイアと合流すべく、ジャスティスロードを加速させつつ問いかけた。
「……全員静かに!……エマ、説明してくれ」
『シティのメインゲートへ続くハイウェイを高速で移動する熱源が確認されました。クレスト製の大型輸送列車と識別。このまま進めば、あと20分でシティに到達します』
エマから送られてきたデータが戦術画面に展開する。SL事件の頃に使用されていたらしい輸送列車で、強固な装甲と大口径のレーザー砲を装備している。積載量も多く、ACなら一両に4、5機は搭載できるようだった。
『輸送列車ぁ? 中身は何だ? 爆薬か? BC兵器か?』
『ナハティガルのこれまでの傾向からして、むやみに市民への被害を増やすとは考えづらいように思います。おそらく増援部隊だと思いますが……』
「待て! メインゲートってことは西側だよな。防衛部隊は……」
『ACを中核とした防衛部隊が配備されていた筈ですが……っ! 現在はその殆どが北側に移動。残っているのは企業軍の量産型ACだけです!』
セイルの顔から血の気が引いていく。データを見る限り、輸送列車はAC級の火力でも短時間では破壊できそうにない。ましてや量産型ACではなおさらだろう。仮にメインゲートを突破されれば、無防備なシティ内へと敵部隊が侵入してしまう。
『コーテックスは何を考えてる! 仮にも主戦場からレイヴンを引き上げさせるなんざ……』
『ディソーダーの発生に過剰反応した結果でしょう。それだけ、前回の戦闘が印象的だったということです。現在、残存の部隊だけで足止めを試みていますが、期待はできません。我々も急いで向かいましょう』
『………………』
「そうだな、追求は後だ。全機、至急本部リグまで……っ!?」
その時、耳が痛くなるほどの激しいノイズが無線から聞こえてきた。セイルは慌てて周波数をコントロールするが、どの周波数も同じだった。
「何だ? 誰か、聞こえていないか?」
「リーダー! 無事か?」
横合いから現れた赤いACがジャスティスロードに並走する。追撃部隊を退けたらしいインフェルノだった。複数のA級ディソーダーを相手にしていたはずだが、驚くほどに損傷は少ない。
「バースト、無線は?」
「通じねぇ。さっきからずっとだ。戦況はどうなってる?」
「メインゲートに敵増援が向かってる。そこに向かうことになった」
「オーケー、そんじゃへぶっ!?」
不意にインフェルノが姿勢を崩し、転倒する。慣性のままに空転し、地面を削りながら停止したインフェルノに、セイルはジャスティスロードを停止させて向き直った。
「何してるんだ、こんな時……」
「逃げろ!」
バーストファイアが声を荒らげて叫ぶ。インフェルノの脚部パーツは、二本とも膝から下が切断されていた。
予想だにしていなかった状況に、セイルの思考が一瞬停止する。その一瞬で、はるか遠方から放たれた光がジャスティスロードへと飛来し、同じ一瞬で、横滑りしながら割り込んできたACが、それを受け止めた。
「クライシス!?」
「クラ! あいつ……あいつが……」
「………………」
割りこんできたAC、アブソリュート・リプレッサーが、展開していたエネルギー相殺シールドを霧散させ、構えを解く。シールド発生装置には一直線に融解した痕が付き、紫電をあげていた。
(大口径プラズマキャノンの直撃すら無効化するシールドを……一体……っ!?)
攻撃を放ってきた存在を確認しようと、A・Rの肩越しに向こう側を見た瞬間、セイルは強烈な頭痛に思わず眼を閉じてしまった。
(何だ……今のは……ディソーダー? 人? 子供?)
土煙をあげながら進軍するディソーダーの群れ。その真っ只中に、まるで流れに取り残された岩のように立っている大きな白い影を、セイルは見たような気がした。
「——————」
「クライシス……あれは一体……」
「………………まさか、な……」
呟いた言葉には、幾つもの感情が込められていた。疑念、恐怖、そして歓喜。相反する思いを発した唇は、震えつつも不敵に歪み……
「火星で十年探して見つからなかったものが……地球に来て一年足らずで見つかるとは…………セイル、センサーの感度を下げろ」
「……え?」
「最高感度状態の長時間使用は控えたほうがいい。それから、すぐにリグへ戻れ。奴は俺が倒す」
「で、でも、すぐにミサイルが発射されるんじゃ……」
センサーの感度を調整しつつ、セイルはそう問いかける。しかしその言葉が言い終わるより前に、上空を飛翔する光が目に入った。既にミサイルは発射されていたのだ。
セイルは慌てて離脱しようとするが、不意に地上から放たれた光がミサイルを貫き、ミサイルは煙をあげながら落下。爆発しないまま地面に激突した。
「……一体、何が……」
セイルは再び地上に目を向ける。そこには一体のディソーダーが、空に向かって腕を伸ばしていた。ACの背丈ほどもある大型のディソーダーで、全身が雪のような純白の装甲で覆われている。セイルは再び頭痛を感じたが、先程のような脳を直接殴られたような凄まじさは無くなっていた。
「——————」
「奴が居る限りミサイルは使えない……行け。バーストを頼む」
「わ、分かった」
セイルはジャスティスロードを操作して、倒れていたインフェルノのボディを抱え上げた。インフェルノはぎこちない動きで頭部パーツを動かし、A・Rの方を向く。
「クラ……無茶はするなよ?」
「……いずれは超えねばならない壁だ」
クライシスはそう告げると、A・Rを駆って白いディソーダーへと突っ込んでいく。セイルもジャスティスロードのブースターを噴かし、インフェルノを抱えて後退して行った。
「バースト、さっきのは何だ? ディソーダーなのか?」
「……フィリアル……全てのディソーダーの上に立つと言われる……最強のディソーダーだ……」
傷ついた機体を必死に制御しつつ、バーストファイアがそう答える。セイルは反射的にジャスティスロードの頭部を後方へと向けたが、A・Rの姿は既に見えなくなっていた。
「大丈夫なのか? そんな奴と単独で……」
「わかんねぇ……フィリアルは半ばおとぎ話の存在なんだよ。どれくらい強いのか、どんな武装を持ってるのか、データは一切存在しない……でも……」
インフェルノがジャスティスロードから離れ、ブースターを巧みに操って浮遊しつつ並走する。同時に、先程までノイズだらけだった無線が回復した。どうやら例のフィリアルが妨害していたらしい。
「あいつに勝てる奴が居るとすれば、クライシスだけだ。今は信じるしかない……」
放たれた拡散ビームをエネルギー相殺シールドで受け止め、A・Rは反撃のレーザーライフルを放つ。フィリアルはそれを桁外れの瞬発力で回避すると、両腕部に発生させたレーザーブレードをふるってブレード光波を発射してきた。
「っ!」
クライシスはそれを相殺シールドで防ごうとするが、寸前で思いとどまって回避に移った。先程、ブレード光波を防御した際、相殺シールドは損傷してしまっている。フィリアルの武装は全てエネルギー兵器であり、下手をして相殺シールドを失うわけにはいかなかった。
(まさかこれ程とはな……)
クライシスは長期戦で荒くなった息を整えつつ、フィリアルを注視する。フィリアルは大型ながら高い機動力をもち、火力も遠近共に充実している。通常のACなら、単独で戦うべき敵ではないだろう。
「だが……」
クライシスは口元を歪ませると、手元のコンソールを操作し、A・Rのミサイルポッドを展開する。本来は一対多数での殲滅戦を目的とした武装だが、クライシスはミサイルをフィリアル一体に集中させるようプログラムし直した。
『全ミサイル、ロックオン完了。一時拡散の後、収束します』
「この攻撃は躱せまい!」
勝利を確信し、クライシスはトリガーを引く。しかし、予想に反してミサイルは発射されなかった。クライシスが視線を移すと、戦術画面にはいくつかのエラーコードが表示されている。
『エラー。無効な記述、L2,L8,L11……』
(プログラムミス? この俺が!?)
クライシスは歯を噛み締め、慌てて後方へと離脱する。それを見たフィリアルは、背部からオービットを射出した。
(こんな物まで持っているのか……)
内装マシンガンで接近するオービットを迎撃し、クライシスは再びコンソールを操作した。A・Rのエクステンションから円盤状の有線オービットが射出され、広域に展開しつつフィリアルを狙う。
(これで……)
クライシスは再びトリガーを引く。が、またしても攻撃は放たれない。それどころかオービットはバーニアの制御を誤り、バランスを崩して落下してしまった。
「何!?」
『エラー。無効な記述、L1,L2,L3,L4……』
クライシスは慌ててオービットを回収し、戦術画面を確認する。またしても多数のエラーコードが表示され、プログラムには支離滅裂なコードが書かれていた。
「馬鹿な! これは一体……」
『——————』
クライシスが驚愕の声を上げた瞬間、まるでブレーカーを落としたかのようにA・Rのコクピットからあらゆる光源が消滅する。すぐに非常灯が点灯し、幾つかの機能が回復したが、コクピット内にはアラートが鳴り響き、戦術画面はエラーコードで埋まっている。機体の全方位を映し出せる筈の球形モニターは、殆どがブラックアウトしていた。
「これは……っ!」
クライシスはディスプレイと戦術画面を交互に確認しつつ、コンソールを弾いた。大量のエラーコードが消えていき、逆にディスプレイはすこしずつ復旧していく。やがて、戦術画面にA・Rの機体情報が表示され、それを見たクライシスは驚愕に目を見開いた。
「有効メモリ……0……」
A・Rは既存のACをはるかに凌駕する性能をもっており、メインコンピューターであるディソーダー・リュシオルのAIと、クライシスの計算能力を併用して初めて制御が可能となる。
しかし、どういうわけかA・Rのメインコンピューターは、その機能を完全に停止していた。
「………………まさか」
「——————」
再度ディスプレイに視線を移すクライシス。そこには、なぜか先程から一切攻撃を行わず、直立したままのフィリアルの姿があった。
そう、あらゆるディソーダーの頂点に立つと言われる、最強のディソーダの姿が……
「まさか……格下のディソーダーであるリュシオルのAIに干渉して……強制停止させた?………………馬鹿な!!」
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