このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
コーテックスシティを覆う巨大な外壁。古代の城塞都市を思わせるその巨大な壁には今、何機もの作業用MTがとりついて作業をしている。 消耗した機銃が取り外されて新しいものにすげ替えられ、壊れた投光器は分解修理を受けている。また、老朽化した防壁を解体しているのか、どこか遠くから爆発の音が響いてきていた。 「…………」 再生のために行われる破壊。セイルはその様子を、ジャスティスロードのカメラを通して観察していた。外壁の内外にはヒーメル・レーヒェのメンバーを始めとする多くのレイヴンが配置され、外壁を守っている。 <ミッション:防壁修復工事防衛> reward:30000C mission cord:Jericho client:グローバル・コーテックス この度、コーテックスシティを覆う外壁の修復工事を行うことが決定しました。それに伴い、各レイヴンには修復工事中の外壁の防衛を依頼します。 施工期間は約一ヶ月を予定しており、その間持ち回りで防衛を行なってもらいます。 工事期間中、テロリストによる激しい攻撃が予想されます。十分な装備のうえ、参加を願います。 ジャスティスロードの足元を、作業員を乗せたトラックが通りすぎていく。映像をズームして見ると、トラックの荷台で笑いあう作業員達の様子が見えた。 頻発するテロと、それに伴う生活水準の低下にも関わらず、彼らは日々を力強く生きているようだった。 「…………」 「セイル、交代だ」 「ん? あ、カロン……」 ジャスティスロードを旋回させると、背後にはカロンブライブのAC、ファイヤーバードが立っていた。既に馴染みとなった先輩レイヴンの機体に、セイルは笑みを漏らす。 大規模戦闘の連続によって多くのレイヴンが死亡・行動不能になっている中で、彼は数少ない現役のベテランだった。 「久しぶり。この前の戦闘にも出てたよな? 戦ってるところ、見たよ」 「ああ、お前こそ無事だったみたいだな。アリーナの順位も上がってるし、ひよっこだった頃が懐かしいぜ……」 カロンブライブは軽口を叩きながら、ACの拳をぶつけてくる。一時期は引退の噂もあった彼だが、既にケイローンと同様に、若手を引っ張っていく存在になりつつあった。 「そんじゃあな。また控え室で」 「ああ、また今度……」 カロンブライブと別れ、セイルは帰還の途に着く。帰り際、再びシティの外壁に視線を移すと、瓦礫につまづいて転んだMTを起こそうと四苦八苦している作業員達が見えた。 本部リグに帰還したセイルは、パイロットスーツを着たままリグのブリッジに入って行った。ブリッジでは、レナが操縦席に座ってのんびりと外の様子を見ている。 「レナ〜、帰ったぞ〜」 「ん〜、おかえり〜」 帰還報告をほんの一言で済ませ、セイルは隣の座席に腰を下ろす。レナは手早く記録をつけると、再び外に視線を移した。 「始まったね、工事……様子どう?」 「今の所は特に何も……しかし、本当に大丈夫なのか? 今工事に踏み切って……」 先日の会議で判明したナハティガルが大規模攻勢に出る可能性を、セイル達は即座にコーテックスへと報告した。 しかし、外壁の整備状況が不完全なままで襲撃を受けるのは避けたいとの判断から、レイヴンを総動員しての厳重な警備態勢のもとで工事を行うという結論に至ったのだ。 「ん〜、正直、そこまで不安要素があるわけじゃないのよ。シティ外壁の防衛システムは二セットあって、常にどちらかが稼働するようになっているの。だから、工事のために片方の防衛システムを停止したからといって、シティの防衛能力が即座に低下したりはしないわけ。勿論、バックアップを失うことでの不安は出てくるけどね」 そう言うとレナは、セイルの目の前にあるディスプレイに外壁に関する情報を転送してきた。外壁には、弾道ミサイルの迎撃機構や、シティ全域を覆う超大型エネルギーシールド等、戦略兵器に対するあらゆる備えが施されている。 その規模は三大企業が直轄する複合都市のそれに匹敵し、仮に企業間での直接対決が起こっても対応できるレベルだった。 「大した防衛機構だけど……こんなもの本当に必要なのか? コーテックスに真正面から喧嘩売ろうなんて、三大企業でも考えないだろ?」 「馬鹿ね、現に今そんな考えを持ってる組織が出てきてるじゃない。まあ、そんな時に限って、こんな……ちょっと待って。はい、こちらヒーメル・レーヒェ本部です……」 レナは会話を中断し、無線に応答し始める。なにか起こったのかとセイルは窓からシティの方を見るが、特に動きはない。やがて、レナがため息をつきながら無線を切った。 「……どうした?」 「うん……バーストファイアが何かやらかしたみたい……ちょっと行ってくるわ……」 レナは席を立つと、座席に引っ掛けてあったバッグを引っ掴んで出ていった。ヒーメル・レーヒェに客分として参加しているバーストファイアだが、手綱を握っているクライシスが不在なせいで度々暴走していた。 「まったく……同じ火星移住民だっていうのに、何でこうもクライシスと違うかな……」 セイルはそうつぶやきながら、コンソールをいじって暇つぶしを始めた。セイルの警備担当時間は既に終わっているのだが、有事の際はすぐに出撃できるようにしておく必要がある。レナが帰ってくるまでの留守番も兼ねて、セイルはライブラリ内の情報を眺めはじめた。 「…………」 静寂の中にキーボードを弾く音が断続的に響き、遠くからは時折、発破解体の爆発音が聞こえてくる。 「………………」 リグのライブラリには、参加しているレイヴン達のACの情報が記録されていた。ジャスティスロードを始めとする特殊ACのデータにはロックが掛けられているが、セイルはロックを外して閲覧を始める。 「……………………」 ジャスティスロードの左腕には、最大の特徴とも言える武装、左腕部射突ブレードのアストライアが装備されている。直撃すればACすら一撃で破壊しうる協力な武装だが、セイルは今後の戦闘の激化に備え、アストライアのさらなる強化を考えていた。 「…………………………ん?」 と、考えを巡らせていたセイルは、不意に妙な違和感を覚えて視線を上げた。窓の外、遠くに見えるシティの外壁に、何体かのパワードスーツが取り付いている。 「あれは……」 セイルは再度ディスプレイに視線を移すと、リグのカメラを操作して映像をズームする。パワードスーツにはコーテックスのエンブレムが描かれており、外壁の解体を行なっていた。 しかし、その内の一体が、明らかに他とは違う動きをしている。無数にいる他のパワードスーツに混ざるようにして、そのスーツは外壁のあちこちに解体用の爆薬を設置している。 「! まさか!」 セイルは反射的に無線を起動すると、全周波に向けて叫んでいた。 「敵だ! パワードスーツの中に紛れているぞ!」 その瞬間、ほとんどのパワードスーツが驚きに動きを止める中、何体かのパワードスーツが弾かれたように外壁から離脱していく。 「くそっ!」 セイルはリグの戦闘システムを起動し、離脱していくパワードスーツ達を補足する。しかし、敵は味方の中に紛れるようにして移動しているため、むやみに攻撃することができない。護衛についていた他のACやMTたちも、突然のことに混乱しているようだった。 そうこうしているうちにパワードスーツ達は味方の群れの中に紛れこんでしまう。 「しまった、見失っ……」 「代われ!」 セイルの背後からケイローンが体を滑り込ませ、コンソールを操作する。同時にリグに装備されているレーザー砲が光弾を発射し、何体かのパワードスーツが消し炭になった。 それらは全て、先程まで逃げ回っていた敵の機体だった。 「おっし、成功!」 「すげぇ……よく見えてたな……」 「へへ、スナイパーは目が命ってな」 「二人とも! ここはいいから出撃して!」 遅れて駆け込んできたレナとエマが、息を切らせながらシートに座る。ディスプレイに無数のウィンドウが現れ、表示される情報が二人の手によって瞬く間に整理されていく。 「ヒーメル・レーヒェより全機へ、味方の中に敵が紛れ込んでいます。作業員は、至急作業を中止し、避難して下さい」 「シティ北方より熱源多数接近。敵部隊と思われます。護衛部隊は戦闘態勢に移って下さい」 情報管制を開始する二人を一瞥し、セイルとケイローンはハンガーに駆けていった。 ジャスティスロードに乗り込んだセイルは、ジェネレーターが暖気されるのをもどかしく思いながら送信されてくる情報に目を通し始めた。 作業員の中に紛れ込んでいた敵部隊によって、シティの外壁の一部が破壊されたが、防衛システムは第一、第二共に無事らしい。 ただし、第一は現在修復のために機能を停止してあるため、実質シティを守っているのは第二システムのみということになる。 敵部隊の狙いは、残る第二システムの停止と見てまず間違い無いだろう。 「ジャスティスロード、反応定常化。行けます!」 準備が整ったことを告げる整備員の声に、セイルは即座に機体を発進させた。リグのハッチから外に出つつ、専用のヘルメットをかぶる。ジャスティスロードの感覚素子とセイルの五感が同調し、セイルの感覚は戦場の真ん中に降り立った。 「こちらジャスティスロード、まもなく外壁に到達する。指示を乞う」 『了解、セイル。外壁付近で敵機体が暴れています。撃破して下さい』 レナの誘導に従いシティの外壁に向かうと、一体の作業用MTがコーテックスのトラックを追い回していた。おそらく、紛れ込んでいたのがばれてヤケになったのだろう。トラックには、何人かの作業員やパワードスーツが乗り込んでおり、必死でMTから逃げ回っている。 「止めろ!」 ジャスティスロードはTOBで急加速すると、作業用MTを蹴り飛ばした。作業用MTは横転し、二本の足をばたつかせるが、立つことはできない。 セイルは武器として使えそうな装備を手早く破壊すると、トラックの方に向き直った。トラックは既に離脱していたが、映像をズームしてみると、荷台に乗った作業員達が手を振っているのが見える。 「……ふ」 セイルはその光景にわずかに微笑むと、まだ敵が残っていないかと付近を捜索する。程なくして、先程と同様に暴れているMTを発見するが、そのMTはセイルが見つけた途端、二本のレーザーブレードに貫かれて爆散していた。 「よぉ、いい腕してんじゃねぇか。サイボーグかい?」 「そっちこそ、生身で大した動きじゃねぇか。地球人も捨てたもんじゃねぇな」 赤いボディに赤いレーザーブレードを構えた機体は見覚えがある。バーストファイアのインフェルノだった。もう一体の、青いボディに青いレーザーブレードを持った機体は知らないものだったが、セイルはすぐに誰のものか見当がついた。 肩に描かれた日本刀のエンブレムと、先程の豪快な声は間違えようがない。 「ハヤテか? 久し振り……その機体は?」 「よぉ、セイル。お久だな。こいつは、ワダツカザスサ(海颯素佐)、俺の新しい愛刀だ」 ハヤテは、以前のディソーダーとの戦闘によって失った機体を新調していた。以前の機体、アメノカザナギは機動力を重視した細身の機体だったが、このワダツカザスサはそれに比べてかなり重厚な構成になっている。加えてバーストファイアの言葉からすると、機動力も低くないようだった。 「セイル、アンタも友だちが多いもんだな……ここは任せて、アンタは前線に行きな。外壁は俺たちが……」 「守ってやる……よ!」 二機のACは、まるで申し合わせたかのように同時に動き出した。インフェルノの放ったグレネード弾が爆発し、遠方から飛来したミサイルを迎撃する。その爆風を抜けて現れた戦闘用MTを、ワダツカザスサのレーザーブレードが両断した。 「すげぇ……初対面なのにあそこまで連携できるなんて……」 『馬鹿同士気が合うんじゃない?』 セイルが感心していると、スキウレから通信が入った。スキウレは元から別行動を取っており、シティの反対側に配備されていたのだ。 『セイル、さっきコーテックスの観測所が、弾道ミサイルの発射を感知したわ。目標は、間違いなくシティよ』 「弾道ミサイル!? 一体何をする気だ? ナハティガルは一般人への被害を出さないようにする筈なのに……」 『そうね……あまりその傾向を信じきるのも危険だと思うけど、私も不可解に思うわ。セイル、奴らの狙いは何だと思う?』 スキウレに尋ねられ、セイルはジャスティスロードを操作する手を止めて思索した。普通なら、弾道ミサイルの弾頭は、核兵器かそれに準ずるものだと考えていいだろう。だが、ナハティガルは一般人に被害を出さないという傾向がある。 無論スキウレの言うとおり、そう決めつけるのは危険なのだが、セイルは何故か今回もそうなのだろうと思えていた。だが、だとするとそのミサイルは一体何なのだろうか。 「熱核ナパームみたいな戦略兵器じゃないとすると……あ、そうだ、高々度爆破によるEMP攻撃は?」 『電磁パルス! ……ありうるわね……でも、外壁の防衛機構なら、シティ全域にパルスガードをかけることも可能な筈よ』 「そうか……何にしても、ミサイルに関しては防衛機構に任せるしか無いな。そして、俺たちはその防衛機構を守ればいい、と……」 話しているうちに、ジャスティスロードは前線に到達する。後方から火力支援を行う重装型ACの部隊をすり抜け、ジャスティスロードは敵中に踊りこむ。BISから発振された四本のレーザーブレードが、次々に敵MTを切り裂いていった。 「チェッカーナイトか?」 「マジで? あれがか?」 前線に出ていたレイヴン達が、ジャスティスロードを見て口々に驚きの声を上げる。既にセイルとジャスティスロードは、コーテックスでも名の知れたレイヴンとなっていたのだ。 瞬く間に敵の先鋒を殲滅し、ジャスティスロードは動きを止める。敵部隊は進行を止め、遠距離からの砲撃を開始した。 『セイル、下がってろ!』 後方からサジタリウス改とギルティジャッジメントが現れ、砲撃を返す。敵戦線は、たまらずにジリジリと後退を始めた。 戦況は有利だと判断し、セイルはジャスティスロードを後方に下げる。 「レナ、ミサイルは?」 『そろそろ迎撃のミサイルが発射され……撃ったわ。見て!』 ジャスティスロードをシティの方に回頭させると、シティ外壁に設置されたミサイルランチャーから、迎撃ミサイルが発射されたのが見えた。計三発のミサイルは、推進剤の尾を引いてまっすぐに上昇し、あっという間に見えなくなる。 『着弾まで、13……12……』 『セイル、パルスガードをつけて。EMPが来るわ』 『やり方分かるかぁ?』 「分かるよそれくらい!」 からかってくるケイローンに怒鳴り返しつつ、セイルはAC用のパルスガードを起動する。装甲表面の防御スクリーンが一瞬輝きを増し、機体を電磁波の幕が覆った。シティの方を見ると、こちらも同様に光の傘を広げている。シティ全域をカバーする程の巨大な傘だった。 『3……2……1……着弾!』 レナのカウントが終わると同時に、遙か空高くで爆発が起こる。閃光が、続いて爆風と轟音が押し寄せ、コンピューターが僅かに電磁波の異常を訴えてきた。どうやら、地上に到達した電磁パルスは極僅かだったらしい。 『敵ミサイルの消滅を確認』 『放射性物質、及び電磁パルス、許容範囲内。迎撃成功です』 二人の声を聞き、セイルはほっと胸をなで下ろした。敵部隊は撤退を始め、友軍部隊も一部は撤退を始めている。シティの方も被害はなかったらしく、シティを覆っていた光の傘はゆっくりと消えていった。同時に、再び外壁からミサイルが発射される。 「…………何?」 二発、三発と、迎撃用のミサイルは続けて発射されていく。既に敵のミサイルは迎撃したはずであり、そのうえこれほどの数のミサイルを同時に発射するのは異常だった。 「レナ! 一体何だ?」 『え? 何って……え? どういう事? 迎撃ミサイルが……ザッ!』 シティの外壁から放たれた無数のミサイルは、一定高度まで上昇すると、全てがほぼ同時に爆発を起こした。無線が途切れ、計器が悲鳴を上げる。パルスガード越しでもACが異常をきたすほどの濃密なEMPが、ミサイルの爆発地点から発せられていた。 「セイル!」 ジャスティスロードの前にギルティジャッジメントが滑りこんでくる。ジャスティスロードをと同様に、パルスガードを使っていたせいでEMPを耐え切ったようだった。 「アメリア、無事か?」 「わたしは何とか。でも、何機かはパルスガードを切っていたせいでやられてしまったわ」 ジャスティスロードの背後で、一体のACが転倒する。他にも、四肢が異常な動作をしていたり、立ったまま動かなくなっているACが何機もいた。おまけに、はるか遠方からは、撤退したはずの敵部隊が転身して向かって来ている。 「一体何があったの?」 「シティの外壁から放たれたミサイルが爆発したんだ。はじめから罠だったんだよ。弾道ミサイルも敵部隊も囮で、本命はこれだったんだ! ナハティガルの工作員は、もうコーテックスの深部まで入り込んでいるんだ」 「なんて事……防衛機構そのものに攻撃されるなんて……オペレーター、聞こえてる? 指示は?」 「駄目だ。まだ無線は使えねぇ!」 ケイローンのサジタリウス改が、後方から現れる。四本の足の内一本が動かなくなったらしく、ぎこちない動きでブーストダッシュしていた。 「急げ! 撤退するぞ!」 ケイローンが急かすように大声で叫ぶ。同時に、生き残ったACたちも慌てて後方へ引き返していった。敵部隊は既にすぐ近くまで迫ってきていた。先ほどまでは見当たらなかった、ゴーストらしきACや大型兵器の姿も見える。 「くそっ、大盤振る舞いだ。本気で大進行をかけるつもりか……」 「セイル急いで! 逃げ切れなくなるわ」 「駄目だ、誰かが殿にならないと逃げ切れない。俺が残る。ジャスティスロードの足ならギリギリまで大丈夫だ」 セイルはジャスティスロードを回頭させ、敵部隊へ向けてブレード光波を放つ。反撃に放たれる砲撃をサイドステップで躱し、リニアライフルを連射した。 「無茶だ! そんな紙みたいな装甲じゃ持たん。俺が代わりに……」 「……俺が行こう」 ジャスティスロードの隣に黄金のAC、ケルビムが並び立った。ケルビムはロケット砲を連射し、敵部隊の脚を鈍らせる。遠方から飛来するグレネード弾を両肩部のエネルギーシールドで難なく受け止め、飛び込んできた高機動型MTをブレードで貫いた。 「キース!?」 「先に行け……エマを頼む」 「…………分かった」 あらゆる攻撃を受け止める智天使の城塞。それを目の当たりにしたセイルは、即座に踵を返していた。最強のレイヴン、キース・ランバート。彼ならば単独で敵部隊を抑えこみ、その上生還することも可能だろう。 「行こう! シティに戻るんだ」 「ったく、決断の速いやつだぜ……」 「それもまた、彼のレイヴンとしての強さの一部なのでしょうね……」 ジャスティスロードに続き、サジタリウス改とギルティジャッジメントも撤退を始める。途中、セイルはちらりと後方を振り返った。無数の敵部隊が津波のように押し寄せてきている様は、まるで旧世代の世界大戦を思わせる。 高度な情報操作と、企業軍に匹敵するほどの戦力。さらに用意周到な計画に至るまで、ナハティガルはコーテックスを打倒するために、まさに戦争に挑むほどの準備を整えていたのだ。 そして、既に前哨戦はナハティガルの勝利で終わっている。高濃度のEMPにより、シティ内部は大混乱に陥っているだろう。意図的ではないにしても、一般人に被害が出ている可能性もある。 「終わりだナハティガル……この戦いで、お前たちを打ち倒す!」 セイルは、拳を強く握り締めながらそう言った。
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