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一般にm,n,p,q角形の4枚の窓ガラスからなる窓枠型の炭化水素を[m.n.p.q]fenestraneといいます。"fenestra"は「壁面に穿った窓」の意ですから、さしずめ窓枠炭化水素でしょうか。方形の窓枠は[4.4.4.4]fenestraneになります。構造式で描くと平面のように見えますが、実際の分子は残念ながら平面ではありません。中心炭素はトランス形(1a)ではsp3様であり、シス形(1b)ではピラミッドの頂点様であると予想されます。この[4.4.4.4]fenestraneはその 誘導体 も含めてまだ合成には成功していませんが、窓ガラスが1枚五角形になった[4.4.4.5]fenestrane誘導体(2)が合成されていて、これが現在のところ最も平面に近い炭素ということになっています。1) それぞれの構造をクリックするとChimeで分子モデルが表示できます。
この2について、
加水分解
後p-ブロモアニリンとの
アミド
をつくって
X線結晶解析
が行なわれました。それによると、中心炭素の
結合角
は長手方向が128.0〜129.2°、曲がり方向が94.0〜116.1°となっています。Chimeでの分子モデルを見ても、ちょっと平面には程遠い感じです。
ついでに合成ルートをご紹介しておきます。
アルドール縮合
で左上の五員環をつくり、
[2+2]光環化
で左下、右下の四員環を一挙に構築した後、
カルベン
の挿入反応で右上の五員環をつくり、最後に左上の環を
ジアゾ
ケトンの
縮環
で四員環にするというルートです。
ところで、平面四配位炭素の構築という点で全く異なるアプローチの化合物が最近合成されました。2) Al4C-というイオンはほぼ平面であることが知られていましたが、中性分子としてCAl3Si、CAl3Geが同様に平面構造だそうです。ちなみにAl4Cは テトラヘドラル です。
1) V.B.Rao, C.F.George, S.Wolff and C.Agosta,J. Am. Chem. Soc.,1985,107, 5732.
2) L.-S.Wang, A.I.Boldyrev, X.Li and J.Simons,J. Am. Chem. Soc.,2000,122, 7681.
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