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辻田館山市長への公開質問
各地区懇談会で合併誘導のためにウソの説明?

2002.5.7   館山市議会日本共産党議員団 神田守隆・丸山定夫


合併問題をテーマに市内15ヵ所で地区懇談会が2月4日から3月1日にかけて行なわれ、その際に住民からだされた意見等と市の答弁の記録がまとめられました。この記録によると、各地の地区懇談会で「合併すれば10年間は交付金が確保されるが、合併しないと減額になる」との説明がおこなわれていました。市のこの説明を本当と信じて、「それじゃ合併は避けられない」と思う市民もでてきました。合併の是非を考え、判断するうえで基本的な財政問題で、市が住民にしていた説明が間違いだとすれば、大変重大な問題です。
(資料を参照。
地区懇談会で住民から提出された意見等の議事録 平成14年2月4日〜3月1日 15回開催  )


合併「特例措置」と「飴とムチ」のありえない話

合併特例法の普通交付税の特例措置は、「合併関係市町村が当該年度の4月1日において、なお当該市町村の合併前の区域をもって存続した場合に算定される額の合算額を下らないように算定した額とし…」となっています。要するに、合併した場合の交付税の算定は、合併しなかったとしたらそれぞれの旧市町村に配分されたはずの交付税の額を合算する方式で計算するということです。これは、合併しない場合よりも交付税が少なくならないようにするということで、合併時の交付税額が保障されるということではありません。しかも、その期間は、合併した年度とその後の10年間に限られています。

合併しない市町村で交付税が減額になるのならば、合併した市町村でも旧市町村毎の額が減額になりますから、それを合算する合併市町村の交付税も減額になります。合併しない市町村が減額になっても、合併した市町村は減額にならないとはどこにもありません。この特例措置の規定をよめばわかるはずです。

この特例措置は、合併市町村の交付税を算出する際の「算定替」といわれるものです。

館山市は、この「算定替」を、「合併すれば交付税が保障される」と誤解して、財政破綻を招いた大失政の苦い歴史があります。館山市は、昭和29年に六村を合併し、その年に大赤字で財政破綻します。その最大の原因は、地方交付税が、合併前の昭和28年度の市と旧六村の合計額46,571千円が34,921千円にと、額で11,650千円、率で25パーセントも減ったことでした。現在の財政規模で考えると9億円ほど減ったことになります。

昭和の大合併の時には、「合併したのに交付税が減ったのは国の約束破り」と館山市だけでなく、全国各地で大問題になりました。

当時の自治庁の鈴木俊一次長(後に東京都知事)と茨城県代表との座談会で、理想的な合併例のモデルといわれた千代田村の村長が「交付税は約束では合併当時の調定額を五年間はくれるということだった。合併前の三村で28年には1,100万円だったのが、29年には900万円に、今年は870万円になってしまった」と詰めよります。これに、鈴木氏は、「交付税は、合併前の状態を基礎にした計算でやるということで、額が同じだということではない」と答えています。(昭和30年9月21日「朝日新聞」より)

なにをカン違いしている。特例措置は、計算のやり方のことで、合併しても交付税額をそれまでと同じにすると国はいった覚えはない。誤解しているのはそっちの方だというわけです。これは46年前のことですが、「算定替」の考え方は基本的に変わりません。



合併は、あくまでも各市町村の「自主的な」判断で決めるべきことです。「合併すれば交付税を保障し、合併しないと減額する」ということは、国が地方自治の理念を否定し、合併を強要することですから、国も県も言えるはずもありません。地方交付税や地方財政制度について知っていれば、このような説明はありえないことです。にもかかわらず、なぜ、こんな間違った説明が地区懇談会で、堂々とされたのでしょうか。


市民の世論を合併に誘導する政治的意図で、ありもしない「飴とムチ」の話を作り出したのか、それとも、地方交付税制度について本当に無知だからできたのか、それ以外には考えにくいことです。いずれにしても、辻田市長は、間違った説明を地区懇談会で繰り返したことで、市民に謝罪し訂正すべきです。辻田館山市長の責任ある回答を求めます。

なお、これは、「公開質問」ですので、回答も公開されるよう申し添えます。

(資料)
「地区懇談会で住民から提出された意見等〜」の文書に記録された市の説明
◎真倉・青柳地区
合併すれば合併時点の交付金を10年間確保するとある。多分、交付金は年々減っていくということであるから、減っていっても合併時の交付税の額を減らさないといっている。はっきりいえることは、かなり差が出てくると思われる。

 ◎西岬地区
合併すると、平成17年から10年間は普通交付税を保障ということ。

◎長須賀地区
合併すれば10年間は確保される。10年間だけでも得をする。合併しないで今から下がるよりも10年間は儲かる。合併しない場合に10年間をどのように耐えていくのか。・・・人口が減れば交付税は減るが、今回合併した場合、人口が減っても交付税は確保される。

記録では上の三地区ですが、この記録は、質問(Q)と回答(A)だけですから、間違った説明をしたのは三地区にとどまらないと思われます。なお、地区懇談会における個々の回答者は明記されていませんが、内容からみると、ほとんどが辻田市長自身と思われます。



公開質問に辻田市長の無責任な回答が寄せられました
(回答書の全文は、下にありますので、およみください)


公開質問に対する辻田市長の回答が13日付けで寄せられました。その内容は、「私の制度についての理解不足等から、市民の皆さんに誤解を与える表現があったといたしましたら、ご容赦をいただきたいと存じます」という無責任極まりない、驚くべき内容でした。


市長が自分自身の「理解不足」から市民に間違った説明をしたことを認めていると好意的に理解しようとするのですが、その結果、誤解を市民に与えたとしたら、「ご容赦ください」というのは、何でしょうか?

市長がたくさんの市民に間違った説明をした以上、その市民に「ご免なさい。あの説明は間違えていました。本当はこうでした」と、謝罪し、訂正する等の措置をただちに取るのが、人間としてあたりまえのことではありませんか。その場限りのおためごかしの言葉だけで済ますことではありません。

辻田市長の無責任きわまりない回答文は、上記のホームページで全文をお知らせします。
市民にとってであれ、だれにとってであれ、合併の是非の判断は、正しい情報がなければできないことです。はじめに合併ありきで、そこに誘導するために間違った情報を垂れ流しているのだとすればとんでもないことです。

 

辻田館山市長からの回答書(全文)は、以下のとおりです。

                            平成14年5月13日
館山市議会日本共産党議員団
神田守隆・丸山定夫 様
                             館山市長 辻田実

 2000年5月7日付け文書で、市町村合併に関する地区懇談会での私の説明に対して、ご質問をいただきありがとうございました。
 ご案内のように、市町村合併については、昭和40年に「市町村合併の特例に関する法律」が制定され、さらに平成11年に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」いわゆる地方分権一括法により、国の政策として市町村合併が推進されてきました。
 そして、平成13年3月には、内閣総理大臣を本部長とする「市町村合併支援本部」が内閣に設置され、千葉県でもこれを受けて知事を本部長とする「千葉県市町村合併支援本部」が設置されました。

 館山市としては、これら法律等に基づき、それぞれの自治体の自主性を尊重し、住民の意志を反映し、市民レベルで市町村合併についての活発な論議が行なわれるよう努めているところです。
 その一環として去る2月から3月にかけて各地区で市町村合併に関する地区懇談会を開催し、その質疑応答のあらましをまとめ、市議会議員の皆様にお配りいたしました。
 市長としては、
 1、明治以来の中央集権的行政から住民主体の地方分権への転換。
 2、高度に進んだ社会になり、情報化・国際化に対応し、多様化した住民の要望に応えるためには、自治体の規模を大きくし、財政基盤を確立する必要がある。

 3、行財政改革を進め、効率的な行政を目指す。安房地域が一本化し人口約15万人の市になれば11人の首長、教育長等が各一人になり、相当の経費が捻出される。
   それを教育や福祉などの住民サービスに直接、振り向けることができる。
 4、法律に基づいて、国や県で市町村合併のさまざまな財政的支援制度が設けられており、これを千載一遇のチャンスとしてとらえ、この恩恵をうけることで、 新しいまちづくりを目指したい。
 などの理由から市町村合併を積極的に推進したいと考えています。


 特に、この特例措置には、「普通交付税の算定の特例(合併算定替)」と「合併市町村まちづくりのための建設事業に対する財政措置(合併特例債)」等があり、これらの優遇措置を受けることのメリットを、千葉県発行「市町村合併制度のあらまし〜自主的な市町村合併を考える〜」等の資料を参考に、地区懇談会で説明してきたところであります。

 その席で、私の制度についての理解不足等から、市民の皆さんに誤解を与える表現があったといたしましたら、ご容赦をいただきたいと存じます。

 当然のことながら、市町村合併は住民のために行なわれるものであり、住民との間にオープンな議論を展開し、住民とともに自分たちのまちの将来を決定することが重要であると考えております。今後とも、よろしくお願いいたします。

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