このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
大阪港探訪
毎週金曜日と毎月20日は、ノーマイカーデー。大阪市営の地下鉄バスが乗り放題の1日乗車券が ノーマイカーデーフリーチケットとして普段より安い600円で販売されます。という訳で、 まだ乗っていない地下鉄、バス路線、渡船に乗って、ついでに出航日にあたる大阪〜釜山のパンスターフェリーも 見てしまおうと出かけた、とある金曜日でした。
我孫子道で南海電車を降り、バスを乗り継いで天王寺〜八尾南が未乗のままの谷町線の駅へ向かう。地下鉄乗車など 窓外は暗いだけなのでなるべく短い時間ですませたいと思った結果、たどりついたのは出戸バスターミナルだった。
赤バスに寄り道をした後で地下鉄に乗って八尾南へ向かい、改札を出ただけですぐに引き返す。 車内ボーっと座っている間に電車が天王寺まで走り、これで大阪市交通局の開業区間(鉄道)は ニュートラムを含めて全区間を乗ったことになるのでまずは目出度い。 という訳で地下鉄に用は無くなったので、フェリーを見に港へ行くために 大国町から四つ橋線に乗った。パンスターフェリーが発着する国際フェリーターミナルの最寄駅は OTSのコスモスクエア駅なのだが、市交の1日乗車券ではOTS線に乗れないので、 ニュートラムをポートタウン東で降りる。 バスを乗り継いでフェリーターミナルに近づくとフェリーの姿が見えたが、 時計の針は既に出港時刻の16時を示している。とりあえず船が見える岸壁を探して走りまわると、 すぐにお誂え向きの場所が見つかった。造成途中の公園みたいな所である。フェリーは まだ動き出してはいなにので、どうにか出港にも間に合ったようだ。それにしても、何にも無いところだ。周囲には人影も見えず、昨今の国際情勢から考えると、 ほとんどあり得ない話だろうとは思うものの、こう、なにか工作員みたいなものの出没を 想像させるような風景である。こういう場所ではあまり他人には会いたくない。会うと想像が 現実になりそうな恐怖感に襲われるであろう。
誰か来た。
自転車を押した初老の男性。半分警戒心を抱きながら、なんとなく会釈すると話しかけてきた。
「何を見てんの?」
私:「あの(と言いつつ、動き出しそうにないフェリーを指差し)船の写真でも撮ろうかと思って・・・」おじ(ぃ)さんは自転車の荷台から立派な三脚を取り出してデジタルビデオらしきものを設置した。 聞けば、今日の良い天気に誘われて夕方の風景を撮るために住之江から来たという。 船と風景で目的は多少違うが、同好の士のような感じらしい。 カメラや港などの世間話が始まった。
話が進むうち、こちらが学生だと分かったからなのか、おじさんが言う。
「最初、兄ちゃん(私のことである)を見たときは、何か監視してるんかと思った」
なにかヤヤコシイ船(例えば密輸をしてそうな船とか)が入港する時などに、 海保やらなにやらの人が私服で張り込んでいることがあるらしい。そういうおじさん自身も 港で働いていたそうだ。そしてしきりに「海の仕事はえぇで〜」と言う。「最初はこっちも、(おじさんが)工作員ではないかと思っていた」 とは口が裂けても言えない。
パンスターの方も、いつまでたっても荷役が終わらない。
中略 ゆっくりと、そして急に速度を上げてパンスタードリームが出港して行ったのは、 定刻から1時間以上遅れているはずの17時を過ぎてからだった。 いい物を見れたが、おかげでこっちの予定まで狂ってしまった。 この後、コスモスクエア駅から再び市バスでポートタウン東駅へ移動し、ニュートラムで 住之江公園へ向かう。途中、南港フェリーターミナルを出て行く名門大洋の1便が見えた。
住之江からは、懲りずにバスに乗る。大阪市バスの港湾地帯を走る路線には 大きな橋を渡る路線がいくつもある。代表的なものには港大橋や千本松橋、 なみはや大橋、そしてこれから渡る木津川橋等である。これらの橋は下を船が通過できるように 高い所に桁が渡してあるので、取り付け部分がループ式になっていたりして面白いし、 もちろん見晴らしも良い(一瞬で通過してしまうが)。
日が暮れてきた木津川橋はさながら銀河鉄道のようであった。ただし乗っている客は、 「大阪のおっちゃん、おばちゃん」である。バスの終点、鶴町四丁目から少し歩くと、 大阪市建設局の千歳渡船場がある。大阪市にはこの他にも7つの渡船が残っているが、 先ほどのおじさんの話では、千歳渡船場の上に橋がかかり、3月末には開通するらしい。 ここは元々架かっていた橋が、昭和の中ごろに大正区内を内港化するために撤去されて誕生した 渡船である。橋の工事は20世紀末から始まっていたが、いつになっても出来上がらない ことで有名であった。しかし、ついに開通。開通しても橋に歩道が無ければ木津川橋や千本松橋の ように渡船は生き残るのだが、まずいことにここは歩道もあるらしい。
渡船乗り場の上の闇には、威圧的なトラスが架かっていた。自動扉を備えた天保山丸から、橋を見上げながら2分程のクルージングは、 乗りごたえがあったものの、一抹の寂しさを感じさせるものだった。
余計な事だが、これで大阪市内の渡船も全航路完乗である。
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