このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
毒ガスの島、大久野島。 〜自国民まで欺く旧陸軍〜 Ohkunojima Island 資料館の屋外に展示されている、毒ガス工場で使用された陶製のパーツ等。 原料として多用される硫酸等の酸は金属を腐食する為、陶製のパーツで構成される施設が多かった。 ここで実際に製造されていた化学兵器とは…
南国風味豊かな国民宿舎「くのしま荘」。 戦時中はこの辺りにイペリットやルイサイトを製造する大規模な工場、 プールがある場所に「赤筒」と呼ばれるジフェニールシアンアルシン入りの兵器を製造するがあった。 マスタードガスとして有名なイペリットは糜爛性ガスであり、辛子の様な臭気を発する事からそう呼ばれている。皮膚に触れて数十分経過すると皮膚が爛れ、水泡が形成される。水疱の中の液体の成分は体液とイペリットが混合した物であり、下手に水泡を破ると患部が広がってしまうので注射器で吸い出す必要がある。蒸気を吸入した場合は呼吸器系に炎症が起こり、最悪の場合呼吸器系が機能しなくなる。又、イペリットは放射性物質である為、成分が分解される迄細胞組織を破壊し続ける。 イペリットに含まれる硫黄の変わりに窒素を使用した窒素マスタード(こちらは大久野島では製造されていない)というものもあるが性質は殆ど同じである。この性質に着目したある科学者は世界初の抗癌剤を開発する事に成功したという逸話もある。毒をもって毒を制す…という事か…。 もう一つ、糜爛性ガスとしてルイサイトが製造されていた。こちらは寒冷地に於ける凍結を防ぐ為、砒素が添加されている。イペリットと違って即効性の毒ガスである。ルイサイトについて、以下のような実験記録が残っていた。 ルイサイト一滴を毛を刈り取られた実験用ウサギの皮膚に垂らすと、数分後には液体の流れに従って皮膚が青紫色に抉れていた…。 …凄惨な実験結果を物語っている。如何に毒性の高いものかが窺えるだろう。青く抉れるというのは砒素系毒物独特の症状だそうだ。 この島の主要生産物が以上2種類の糜爛性ガスであり、これらは液体の色から「黄」と呼ばれていた。ここで製造された糜爛性ガスは北九州の軍需工場へ送られた後爆弾に装填され、毒ガス弾として戦地の中国大陸へ送られていた。 国民宿舎横にある貯蔵庫跡。コンクリート製の台座が今でも残っており、 その上に内壁を鉛でコーティングした鉄製のタンクが置かれていた。 ここで保存されていたのは液体の糜爛性ガスである。 くしゃみガスと呼ばれるジフェニールシアンアルシンは加熱すると猛毒の嘔吐・窒息性のガスが発生する。名前に「アルシン」と付いているだけに、これも砒素が含まれている。「赤筒」と呼ばれるのはジフェニールシアンアルシンが充填された缶状の兵器である。発炎筒と呼ばれる兵器にもジフェニールシアンアルシンが充填されていた。壕等へ向けて発射し、相手を窒息死させるという物だ。 赤筒は島の北側にある海岸で試験・実演に使用される事もあり、工員には煙幕で視界を遮断する為の兵器であると説明されていた。 |
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |