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北海道自転車旅行 2000年 夏

屈斜路湖〜野上峠〜知床半島・宇登呂

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     和琴半島一周

 屈斜路湖の最南部、和琴半島の基部にあるキャンプ場。4時45分に起きて、和琴半島の遊歩道(2.4キロ)を一周する。天気は曇りで、夜中には雨も降ったようだ。
 この遊歩道はもう何度も歩いたが、お目当ては日本最大のキツツキ、クマゲラである。まだ一度も会ったことがない。今回も会えなかった。天然記念物の希少種だから、そう簡単には姿を現わさない。
 原生林の中は蚊の襲撃が凄まじく、エゾアカガエルも大発生していた。一歩踏み出すごとに小さなカエルが2匹、3匹と両脇に飛びのくのだ。カエルが苦手な人なら卒倒するだろう。まさに「カエルの子、そこのけそこのけ人間が通る」状態。
 そんなカエルだらけの道を1時間歩いて、アカゲラ1羽とエゾリス1匹を見かけた。どちらもお馴染みの顔ぶれではあるが、自然の中で出会えば、やはりそれなりに嬉しい。

丸木舟     和琴半島を出発

 和琴のキャンプ場を出発したのは8時。駐車場で右翼の人たちが朝礼をしているのを横目に走り出す。
 天気予報によれば、今日は北海道全域が曇りや雨らしい。今はまだ降っていないが、いつ雨が落ちてきてもおかしくない、そんな空模様だ。一応の雨対策はしておく。

 屈斜路湖の水が滔々と流れ出す釧路川源流を渡り、昨夜、アイヌ詞曲舞踊団「モシリ」のライヴを観た「丸木舟」(写真)の前を通過して、屈斜路湖東岸沿いに川湯へ向かう。林の中の道で、湖はあまり見えず、起伏も多いが、今のところはまだ快調だ。

     川湯

屈斜路湖・砂湯 砂浜を掘ると温泉が湧き出す砂湯でしばらく休憩。雪の季節にも来たことがあるが、湖面が凍っていても、このあたりだけは凍らず、ハクチョウたちが集まっていたのを思い出す。
 さらに北へ走るうちに、ついに雨が落ちてきて、たちまち本降りとなった。
 まもなく川湯の温泉街に着き、川湯エコミュージアムセンターで雨宿り。時刻は9時を回ったところ。ここは屈斜路湖や硫黄山など川湯周辺の自然を紹介する施設で、セルフサービスのコーヒーや紅茶が用意されていて、自由に飲めるのが嬉しい。雨がなかなか止まないので、紅茶を飲みながら、情報検索用のパソコンをいじって時間をつぶす。

     野上峠を越える

 1時間近く雨宿りしたが、降り止む気配がないので、覚悟を決めて10時に走り出した。
 噴煙を上げる硫黄山を右に見て、まもなく国道391号線に突き当たり、左折。
 広大な屈斜路カルデラは釧路川が流出する南東部(弟子屈方面)以外はぐるりと外輪山に取り巻かれ、どちらへ脱出するにも峠越えがある。今日は知床へ向かうので、野上峠を越える。この峠は去年も反対側から越えた。標高は320メートルで、ほかの峠(美幌峠、小清水峠など)よりもずっと低いし、今日は暑くもないから、さほど苦にはならないだろう。たぶん。
 というわけで、国道を北へ行くと、やがて平地が尽きて、峠への上りが始まる。曲がりくねった道をグイグイとペダルを踏んでいるうちに雨が止んだ。ミソサザイの声がする。振り返ると、男女混成の自転車集団が追ってくるのがチラッと見えた。抜かれるのはカッコ悪いので、気合いを入れ直してスピードアップ。一気に峠まで上りつめる。
野上峠から屈斜路カルデラを見る。 峠の寸前で反対側から勢いよく下ってきたチャリダーが「もうすぐだぞ〜」と励ましてくれた。

 峠を越えると、弟子屈町から小清水町に入り、急にまた雨になった。フードをかぶって、ダーッと下る。こんな天気ではちっとも楽しくないし、メガネに水滴がついて前がよく見えない。

     清里町

 鬱蒼とした森の中を10キロほど下って、国道から右折。山林を抜けて、清里町に入る。清里とは良い名前だが、ここは隣接する小清水町と斜里町の町域の一部が分離してできた町で、町名も小水と斜から1字ずつとってつけたものである。
釧網本線・札弦駅 最果ての名峰・斜里岳の麓の農業地帯で、沿道の風景もカラマツの防風林で整然と区画されたジャガイモ畑がどこまでも続くようになる。斜里岳の姿は雲に隠れて全く見えない。

 右から釧網本線の線路が近づいてきて、その踏切を渡ると、小さな集落があり、そこに札弦(さっつる)駅がある。ここでちょっと休憩。ホームにはアジサイやコスモスが咲いている。もう正午だ。

 札弦からは線路と並行して、雨の中、水飛沫をあげて突っ走る。
 途中で1両きりのデーゼルカーに追い抜かれ、12時半に清里町のレストハウスに到着。道の駅のような施設で、レストランもあるので昼食にしよう。
 びしょ濡れのレインウエアを全部脱いで、一応身なりを整えてからレストランで食事をして、同じ敷地内にあるヨーロッパの清里町のじゃがいも焼酎工場お城のような建築のじゃがいも焼酎の工場も見学。ちょっとだけ試飲。地元出身で長野五輪スピードスケート女子500メートルの銅メダリスト岡崎朋美選手と、北海道のあちこちに出没する作家立松和平氏の色紙が飾ってあった(立松氏の色紙は阿寒湖畔の郷土料理店「奈辺久」にもあったし、知床の喫茶店でも見たことがある)。

     くだらない思考

 13時半に再びレインウエアに身を包んで走り出す。
 走りながら、立松和平氏の色紙を探しつつ北海道をめぐる壮大なオリエンテーリングなどという下らない企画についてなぜか一生懸命に考える。たとえば、参加者全員が札幌を一斉にスタートして、道内各地の食堂などを手当たり次第に回り、決められた枚数(5枚とか10枚とか…)の色紙を発見できたら所定のゴールをめざす、というような。北海道全体で立松氏の色紙が一体何枚あるのか知らないが、たぶん相当な枚数があるに違いない。でも、こんなことをすると、「釧路湿原の××で立松和平の色紙発見!」なんていう情報がインターネット上で飛び交うことにもなるのだろう。味気ない世の中になったものである。そんなことまで考えた。

 しかし、自転車で長い距離を走っていると、時折、こういう下らない思考に頭が占拠されることがある。今回の旅でも東京から大洗まで走った時にラジオでKinki Kidsの曲が流れていて、愛川欣也にソックリな子どもを集めたキンキン・キッズなる新アイドルグループ結成計画について考えたりしたものだ。あほ。

     知床半島へ

 清里町の駅や役場がある中心集落を過ぎ、沿道にコスモスが咲く道を釧網本線の線路ともつれ合うように進む。
 斜里町に入ってすぐ川上の交差点の角にあるローソンで休憩。雨は小康状態になった。時刻は14時。

 川上からは道道「越川中斜里線」を東へ向かい、製糖工場がある中斜里集落を抜け、斜里川の支流の猿間川、秋の川を渡って、北へ折れ、今度は幾品川を渡り、以久科(いくしな)の集落で国道244号線を越えて、さらに北へ進むと国道334号線に出る。これを右折して宇登呂へ向かう。あと30キロぐらいだ。
 このあたりは見渡すかぎりのジャガイモ畑や麦畑が広がっていて、晴れていれば気分がいい道だが、今日の天候ではあまり楽しくはない。電線でノビタキが1羽、ジャッジャッと鳴いていた。

チャシコツ岬(亀岩) さて、あとは宇登呂まで国道の一本道で、もう走り慣れた道でもある。しかし、工事区間が多くて、気分的に疲れる。しばらくは畑の中を行き、峰浜でオホーツクの海岸に出ると、あとはひたすら海沿い。この辺から知床半島である。
 立松和平の色紙がある喫茶店を通過し、オシンコシンの滝も過ぎ、亀の姿にそっくりなチャシコツ岬の切通しを抜けると、宇登呂市街。知床観光の拠点で、いつも観光客で賑わっている土地である。

     しれとこ自然村

 さらに2キロ行って、幌別のしれとこ自然村の海岸キャンプ場に到着。一昨年、昨年と、この自然村を利用したが、いずれも高台の上のキャンプ場にテントを張った。しかし、そこまでの急な砂利道の上り下りが非常に大変なので、今回は新たに開設された海岸キャンプ場にテントを張ることにする。自然村の温泉に入るにはやはりあの坂を登らねばならないが、受付の兄さんが車で送迎してくれるそうだ。実に有り難い。
海岸キャンプ場 ここには連泊するつもりなので、2泊分のキャンプ料と入浴料の合計2,400円を支払い、砂利の海岸にテントを設営。ほかにも家族連れなどの大きなテントがすでにいくつか並んでいる(写真は翌朝撮影)。

 宇登呂に着いた頃、海上に少し晴れ間が見えたのだが、今はまたまた曇り。受付の兄さんによれば、明日の予報も芳しくないようだ。僕はどうも知床半島とは相性がよくないらしい。

 温泉で汗を流した後、夜は宇登呂の回転寿司店で食いまくる。
 本日の走行距離は113.0キロ。


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