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サロマ湖〜知床半島・宇登呂 1999年8月
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サロマ湖畔のキムアネップ岬を6時15分に出発。今日の目的地は知床半島の宇登呂。
アオサギのいる湿地帯を抜け、湖畔の広葉樹林の緑のトンネルの中を浜佐呂間へ。
5キロほどで、かつて湧網線の駅があった浜佐呂間の集落に出て、ここからはまた国道238号線に合流。あの母子チャリダーが泊まっているはずの民宿前を通過して、一路常呂町へ向かう。
早朝の悲劇
ジャガイモ畑の中を浜佐呂間から12キロ走って、常呂市街に入る。
道路の真ん中で首輪のついた黒い大型犬(シベリアンハスキー?)が車にはねられ、ドタリと横たわっていた。早朝で、飼い主はまだ愛犬の悲劇に気づいていないのだろう。
北海道ではやたらに飛ばす車が多いが、その陰でこんな悲劇は日常的に起きているのだ。犬も猫もシカもキツネもリスも、そして、人間も…。2,3日前には紋別市内で本州からきた若いライダーが事故で死んだというニュースを聞いたばかりである。
湧網線跡サイクリングロード
常呂から網走までの30キロは湧網線の廃線跡がサイクリングロードになっている。もうお馴染みのコースだが、走るたびに自転車旅行の楽しさを感じさせてくれる道である。
オホーツクの海岸からジャガイモ畑の中を突っ切り、常呂町から網走市内へ。並行する国道を行くライダーが手を振ってくれる。
古い客車とホームの残る能取駅跡を過ぎ、ここから周囲32キロの能取湖を半周する。
ここで今回の旅で初めてエゾフウロの淡いピンクの花に出会った。釧路・根室地方では珍しくない花なのに、サロベツ原野でも浜頓別のベニヤ原生花園でも紋別のオムサロ原生花園でも全く見かけなかった(見落としたのかもしれないが)。道東では頻繁に会うキツネやシカにも今回はまだ会っていない。ずっと走ってきて思うのは、やっぱり北海道の自然に触れるなら道東が一番ということだ。
能取湖畔ではノビタキも見かけたし、エゾミソハギも咲いていた。また、路上にはトンビ(だと思う)の羽も落ちていた。茶色に白い斑があって、長さは40センチほど。立派な羽なので、拾ってリュックにさしておく。
網走にて
キムアネップ岬から50キロ、9時に網走駅前に着いた。市内観光でもしようかと思っていたら、浜頓別のキャンプ場で知り合った80歳のチャリンコ爺さんとまた会った。駅前の階段に座り込んでいる。そばに紫色のマウンテンバイクも一緒で、ヘッドライトのはずし方が分からないというので、教えてあげる。僕より1日早く浜頓別を発って、昨日網走に着いたそうだ。80歳なのに猛暑の中、250キロを3日で走破している。これはやっぱりスゴイというべきだろう。15日に銀行で年金を受け取らないといけないので、それまで網走に滞在するそうで、郊外の網走湖畔のキャンプ場に泊まっているらしい(今日は11日)。
とにかく、話好きのジイサンで、暇つぶしの相手が見つかったとばかりに一方的に喋り出す(話に熱が入ると、たびたび入れ歯が飛び出しそうになる)。戦争で兵隊にとられて東南アジアのジャングルを歩き回った悲惨な体験談など貴重な話ではあったけれど、駅前に突っ立ったまま、あっというまに1時間が過ぎてしまった。
小清水原生花園
結局、ジイサンとの立ち話だけで、あとは何もしないまま、10時に網走を出発。
ここからは国道244号線を行く。ずっとオホーツク沿いで、右には釧網本線のレールが続いている。稚内からずっと廃線跡ばかりで、まだ生きている鉄道を見るのは久しぶりだ。
釧路行きの快速「しれとこ」に追い抜かれ、喫茶店「トロッコ」になっている藻琴駅や同じく喫茶店「停車場」になっている北浜駅を過ぎ、左手に涛沸湖の湖面が広がると、北海道の数ある原生花園の中でも最も有名な小清水原生花園にさしかかる。
ここはオホーツク海と涛沸湖にはさまれた砂丘が美しい花々に彩られ、その花園に沿って列車が走るので、昔から列車と花と海や湖を組み合わせた写真の撮影名所になってきた。
ただ、8月ともなれば、花の盛りは過ぎて、ヒルガオがぽつんと咲いていたり、ハマナスがわずかに残っているほかは、帰化植物が目につく程度である。
その小清水原生花園の真ん中にログハウス風の原生花園駅がある。5月から10月までの間だけ営業する臨時駅で、並行する国道にも駐車場が設けられ、売店もあって、観光バスが次々とやってくる。花は咲いてなくても、いつも賑わっているところで、今年は新たに「小清水原生花園インフォメーションセンター・HANA」という立派な施設ができていた。小清水町の四季を紹介する大画面シアターのほか、原生花園の花々や小清水の見どころをパソコンで検索できるコーナー、花や流氷と一緒に合成写真が撮れるバーチャルスタジオなどが備わっていて、要するにどうでもいい施設である。
あぁ、浜小清水駅…。
さて、今日のお昼は浜小清水駅の駅舎を利用したレストラン「汽車ポッポ」で食べようと決めていたのだが、11時45分に駅前に着いて、愕然とした。
すっかり更地になっている。懐かしい駅舎は跡形もなく姿を消し、代わりに工事現場の事務所みたいなプレハブの待合室が置いてあって、そこに「浜小清水駅」の表札が貼ってあるのだ。
唖然、呆然…。
浜小清水では過去に通算12泊もしていて、この駅にも思い出は多いので、ショックを受けたが、どうせ、そのうちにトンガリ屋根だの時計塔だのがついた、いかにも平成風の新しい駅舎が建つのだろう。
止別
好きだった浜小清水が思い出の彼方に遠ざかっていくのを感じながら、国道を離れ、海岸砂丘に沿って続く町道「オホーツク海岸道路」を隣の止別駅に向かう。
この5キロ余りの道も昔は細い土の道で、冬は除雪もされず、スキーを履いて歩いたものだが、今は立派な2車線道路になっている。
止別駅の小さな木造駅舎も今はラーメン屋「えきばしゃ」として繁盛していて、ここで塩ラーメンを食べる。店内に元バレーボール選手の益子直美のサイン色紙が飾ってあった。
斜里
止別からは再び国道に出て、セブンイレブンで水を買って、斜里町をめざす。滋賀県のチャリンコ母子は斜里が今回の旅のゴールだと言っていたが、今頃はどの辺を走っているのだろう。
キムアネップ岬から90キロ走って、13時43分に知床斜里駅前に到着。もう汗だくである。洗面所で顔を洗い、ふと思いついて、タオルを濡らして首に巻いてみる。初めてやったが、こうするといくらか涼しい。オヤジくさいが…。
国道334号線
14時ちょうどに再びスタート。宇登呂まではあと40キロほどだ。
斜里市街を抜け、国道334号線に入って、見渡すかぎりの畑の中を行く。天気もいいし、気持ちのよい景色が広がるが、交通量が多く、道幅も狭く、工事区間もあって、あまり楽しくはない。
峰浜でオホーツク海岸に出て、日の出地区の海を見下ろす喫茶店でしばらく休憩。
日の出を過ぎると、畑はなくなり、人家もほとんどない海辺を行く。道路の幅も広がって、歩道もあるから走りやすい。道路の両側にはシカの飛び出し防止のためのフェンスが延々と続いている。
オホーツク海に沈む夕陽
岩礁の多い海岸風景を横目に眺めながら、坦々と走って、16時過ぎには宇登呂に着いた。
今日は宇登呂市街から北へ2キロの幌別地区にある「しれとこ自然村」でキャンプ。高台にあって、そこまで上るのが大変だが、温泉もあり、居心地はいい。
宇登呂の街まで夕食に出かける途中、オホーツク海に沈む夕陽を眺める(北海道でオホーツクに夕陽が沈むのは宇登呂だけ)。
夜はきれいな星空が広がり、しばらく見上げていたら、スーッと長い軌跡を描いて星が流れた。
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