このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

─ 自給自足 ─


電気機関車や電車は架線から電力の供給を受けないと動くことができない。ディーゼルエンジン による動力車はエネルギ源を軽油として車両に搭載している。が、始動や制御電源として蓄電池の お世話になっている。
蒸気機関車は、というと、蓄電池を持っていない。すべてのエネルギ源を石炭を燃やしてつくられた 蒸気から得ている。前照灯は蒸気タービンで発電機を回して電力を得ている。
蒸気機関車が前照灯を点灯するとき、「パッ」と点くのではなく「ボワッ」と明るくなる。スイッチ で入切しているのではなく、蒸気バルブを開いて、蒸気を発電用タービンに送り込んでスタートさせ ているから。
保安装置としてのATS(自動列車停止装置)でさえ、専用の蒸気タービン発電機を備えている。 当然のことながら、前照灯とは別の発電機を備え、運行中はATSの電源を切ることは許されないから、 ATS用の発電機は常時運転している。
汽笛も蒸気で鳴らしている。D51やC57など近代機は5音階式といって、「ボォーッ」という図太い音が する。熊本から阿蘇へ運転していた8620型など古い機関車は3音階式といって「ピョーッ」という カン高い音がする。

以前、取り扱った発電用のエンジン(燃料は都市ガス)はエアモータによる空気始動で、しかも、 エンジンをスタートさせるためのシーケンス(順序よく燃料遮断弁や点火プラグを始動させるための 制御装置)が空気圧機器で構成されていた。始動弁を開くと、空気溜の空気が供給されてピストンに 押されてピニオンギヤがエンジンのギヤと噛み合い、ギヤが噛み合うと、空気の通路が形成されて エアモータが回り、エンジンのクランク軸を回す。次に空気圧で点火プラグのスイッチが入り、火花 を飛ばし始める。プラグの電気はカム軸のところにオルタネータ(発電機)が付いていて、自力で 発電して供給されていた。続いて、燃料弁を開く空気圧が少しずつ上昇して、燃料弁が少しずつ開き、 エンジンに燃料が供給されていく。
始動して徐々に加速していくときの排気音は蒸気機関車のようだった。始動するのに蓄電池を必要 としないところは、蒸気機関車を連想させた。
※写真は電化前の中央西線の貨物列車。蒸気ドームの横から蒸気を吹き上げているのが汽笛。

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