このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

グーデ・デ・ロワ
〜人が使ったガラスたち〜


紀元前3000年頃には人類はガラスと出会ったといわれています。古代ローマの博物学者プリニウスの『博物誌』を引用すると「昔、フェニキアの商人がシリアの浜で船を停泊させ、積荷のソーダ塊を竃の材料として使い火を焚いたまま一夜を明かした。翌朝そこにきらきらと光る半透明のガラスがあった(炉の熱によって溶けたソーダと白砂が混じり合いガラスになった)」のだとか。これを起源とする事は出来ませんが一説として覚えておいても良いかもしれません。古代ガラスの痕跡は古代エジプトの副葬品やメソポタミアの遺蹟から出土した宝飾品、またそういった小さな物であれば紀元前2000年頃のボヘミアの出土品にも見ることが出来ます。

製造の始まりは古代メソポタミアで、コア技法(砂芯技法とも。コアは「芯」の意。耐火粘土などに色ガラスを巻き付けて成形。焼成後に中の砂粘土をかき出す)・モザイク技法(凹凸型にモザイク片を敷き詰めて加熱溶着)・鋳造技法などが用いられました。コアガラスの例は古代エジプトが良く知られているところですが、エジプトに技法が伝わったのはトトメス3世によるシリア遠征時と推測されています。陶磁器に施す釉薬としてのガラスは古代エジプトの例に見られ、中国でも紀元前1500年頃に使用されていたことが知られています。また鋳造法の一つで、19世紀末にフランス人アンリ・クロによって一度復元が見られ、20世紀に再確認されたパート・ド・ヴェール(フランス語で「練り粉のガラス」の意)技法も紀元前15世紀頃に起こりました。これは砕いた(色)ガラスフリット(粉)を糊料と混ぜ型に入れて焼成したものです。
紀元前1世紀頃、シリアの地で画期的な吹きガラス技法が生まれました。熱したガラスの塊を吹き竿に絡ませ息を吹き込み膨らませ成形するもので、宙吹き・型吹きなどの方法で製品を作ります。現在は鉄竿を使うこの作業の前身はガラス管から来ていたという説もありますが、はっきりとしたことは分かっていません。この技法の確立によりガラス製品の量産が容易になりました。また大作の制作も可能となりました。それまでのコア技法やパート・ド・ヴェール技法が衰退したのも吹きガラス技法の出現によります。またこの技法から透明ガラスの製造が可能となり、不透明なガラスから透明なガラスが好まれるようになったといわれています。

[ローマ・ガラス(ローマンガラス)]
ヨーロッパの中世はゲルマン民族の大移動から始まるといわれています。寒冷化による異常気象の為、アジア系フン族がウラル山脈を越え、375年ゲルマン系東ゴート族を征服。翌年フン族の圧迫を受けた西ゴート族は、ドナウ川を越えローマ領内へと移動していきました。378年西ゴート族はローマ軍を破り、皇帝に定住を認めさせました。そして395年。ローマ帝国は西ローマ帝国
、ビザンチン帝国(別名ビザンツ帝国または東ローマ帝国)に分裂。ゲルマン民族により西ローマ帝国が滅びるのは476年の事でした。因みに異民族の影響を西ローマ帝国ほどは受けなかったビザンチン帝国はオスマントルコに滅ぼされる1453年まで存続します。
ローマ帝国では東西に分裂する395年までの約400年の間に、吹きガラス技法を中心とするローマ・ガラスの文化が栄えました。ローマ・ガラスとはローマ帝国で製作流通したガラスの総称で、量産されたガラスは大衆に広まり宝飾品や食器はもとより木枠を用いた窓ガラスも使われるようになりました。モザイクガラスの一種ミレフィオリガラス(イタリア語で「千の花」の意)やカメオガラスもこの頃作られています。またローマ・ガラスは交易商品の対象でもありました。しかし帝国が東西に分裂すると、瞬く間に衰退してしまいました。

[ササン・ガラス(ペルシャ・ガラス)/イスラム・ガラス]
7世紀に日本に伝わり正倉院の
宝物として存在する白玻璃碗や安閑天皇陵出土の瑠璃碗はササン・ガラスです。ササン・ガラスとはササン朝ペルシア(現イランイスラム共和国)で作られたガラスを指します。ローマ・ガラスの製法を受け継ぎながらも原料の違いから色合いは淡褐色なものなどが殆どです。そして重厚で円文にカットされた切子器が代表的で、他に紐状の物や突起形の物などがあります。これらは交易によってシルクロードを通り各地で出土の例を見ます。
651年にササン朝が滅びると代わってイスラム勢力が台頭してきます。それに伴いガラスにも更なる発展がありました。12世紀にダマスカス地方で生まれたイスラム・ガラス。後にヨーロッパで珍重されるヴェネチア・ガラスはローマ・ガラスの伝統を受け継ぎイスラム・ガラスの技法を取り込み発展させた物といっても良いでしょう。特徴は何といってもエナメル彩。ガラスに描かれた華麗なアラベスクやアラビア文字などの文様は「イスラムの華」と絶賛されています。エナメル彩はエマイユともいい七宝のことで、陶磁器の装飾としても知られています。色ガラスの粉を油や松脂で練ってガラスの表面に絵付け、低温で焼き付けるという技法です


(以降、工事中)
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