このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

王様気分になる為のお話
〜王様の硝子〜
そもそもガラスとは

ガラスの種類


古くは玻璃、硝子とも表記。ガラスとは石の粉を主原料として固まっている液体をいいます。珪石(砂)(酸化珪素SiO、石英砂とも)、ソーダ灰(炭酸ソーダ、NaCO)、石灰(炭酸カルシウムCaCO)の三原料が元になり、それを熔かし、形を作り、様々なものを加え色をつけたり、カットや絵付けなどの装飾を施したりしてそれぞれの用途に応じた物が作られます。ガラスは急激な温度変化で破損してしまう事がある為、冷却はゆっくり時間をかけて行われます。
主なものは以下の通りです。

[ソーダガラス(ソーダ石灰ガラス)] 
珪砂・ソーダ灰・石灰が主成分。硬いのですがやや透明感にかけます。尤も一般的なガラスで、食器や窓ガラスなど日用品に多用。軽く安価。

カリガラス(カリクリスタルガラス)]
珪砂・カリ(炭酸カリウムKCO)・石灰が主成分。鉛が入ったものよりもやや硬め。透明感があってカットガラスに向いています。代表的な物はボヘミアカリガラス(ヴァルトグラス)。これは森林の木灰を原料に用いる事から別名を森林ガラスともいいます。

[鉛ガラス(クリスタルガラス)]
珪砂・酸化鉛・カリが主成分。光の屈折率・透明度が非常に高いものの、柔らかい為に傷がつきやすく、カットに適したガラスです。元々クリスタルガラスとは「水晶のような透明度を持つガラス」を意味します。通常酸化鉛が5%以上のものをバリウムクリスタル、10〜15%以上のものをセミクリスタル、25%以上入ったものをクリスタル・ガラスといいます。光学レンズや切子などの高級ガラス工芸品、高級食器に応用され重量があって音が美しいのが特徴。でも原料や工程、窯に手がかかることもあり高価です。

ガラス(耐熱ガラス)
珪砂・硼酸・ソーダ灰が主成分。熱に強い硼酸を加える事により耐熱性があります。軽くて硬い一方で脆く、また透明度は低いです。耐熱食器、ビーカーなどの科学機器、電球などに応用。


[石英ガラス]
石英が主成分。石英の純度が高いものは水晶と呼ばれています。他の不純物を含まず純度が高い為、透明度が非常に高いガラス。また耐熱性・耐冷性に優れていて、望遠鏡や光学レンズ、光ファイバーなどに使われています。




ガラスの着色


ガラスの着色には主に金属酸化物が使われます。ガラスの場合、絵の具のように赤いガラスと白いガラスを混ぜればピンク色のガラスになるという訳ではありません。発色の仕方や材料費によりコストが割高になるものは当然製品も高価。金で赤色を発色させている赤ガラスはその典型的なものです。また現在、着色ガラスが回収されても再生利用が難しいのは内に含まれる金属とその含有量が関係しているといえ、課題となっています。
主な着色金属には以下のものがあります。

■赤■ 銅・金・セレンなど
■青■ 銅・コバルトなど
■黄■ 鉄・銀・セリウム・ウラニウム・チタン・ニッケル・カドミウムなど
■緑■ 銅・鉄・ウラニウム・クロムなど
■紫■ 銅・マンガン・コバルトなど


主な技法(成形)

[キャスティング]casting(英語)

「鋳造」の意。まず原型を作り、砂などにそれを押し付け型をつくります。その中に熔けたガラスを流し込み鋳造、冷却して完成。砂を使う方法をサンド・キャスティング(砂型)といいます。古代メソポタミアの頃には既にあった古い技法です。

[コア技法]core glass(英語)
砂芯技法とも。「コア」は「芯」の意。耐火粘土などに色ガラスを巻きつける方法です。焼成後に砂粘土をかき出します。技術的に大きなものは出来ません。古代メソポタミアや古代エジプトの作例がよく知られているところですが、吹きガラス技法が広まると衰退してしまいます。出土品には香水瓶として使われた形跡があるものも。

[ステンドグラス]stained glass(英語)
「着色ガラス」の意。色ガラスの小片を下絵にあわせて切り取り、鉛桟(レッドケイム)に嵌めこんで組み立てる技法。鉛桟との境目はハンダで繋ぎ、ガラスと鉛桟の隙間をパテで埋めていきます。教会の薔薇窓などに応用された他、パネルやランプシェードなどに例を見ます。理論的には大きなパネルの作成は可能ですが、重量が伴う為に難しいようです。

[パート・ド・ヴェール]pate de verre(仏語)/paste of glass technique(英語)
「練り粉のガラス」の意。鋳造法の一つで、古代メソポタミアや古代エジプトでその例が見られましたが吹きガラスの登場によって衰退。アンリ・クロやフランソワ・デコルシュモンを始めとする19世紀末のガラス作家などにより復元されました。しかし再び途絶え1970年以降に再現されるまで余り知られない技法となっていました。砕いた(色)ガラスフリット(粉)を糊料と混ぜ石膏などの型に入れて焼成。多彩な色合いが特徴で大きな作品も出来るものの、量産には不向きだった事が前者の、その方法が秘伝とされ伝わらなかった事が後者の衰退の原因でした。この時使用するガラスフリットの細かさで色合いが微妙に変わってきます。細かいフリットよりも目が粗いフリットの方が透明感があるのです。

[バーナーワーク]burner work(英語)
またの名をランプワーク、フレームワークともいいます。棒ガラスを熱して曲げたりしながら小作品を作る方法でバーナーを使う事からこの名がありますが、昔は炭火やガス、石油、ランプの炎を使用していたようです。アクセサリーの蜻蛉玉(ガラスビーズの一種で日本のみの単語)などはこの技法で作られ、コア・ガラスもここに分類されます。出土例は多く、古代メソポタミアでも例が確認されています。

[吹きガラス技法]blowing(英語)/blown glass(英語)
熱したガラスの塊を竿に巻き取り、息を吹き込み成形するもので、宙吹き・型吹きなどの方法があります。宙吹きは一切の型を使わず熟練した職人の手によって色々な形を作り出していく方法。ガラスが重力によって垂れないように絶えず竿を回し続け、温度が下がらないうちに鋏やこてなどで形を作っていきます。型吹きはあらかじめ作った型の中に、竿に巻き取ったガラス塊を吹き付ける方法で、同じ大きさの作品を量産させるのに適しています。この場合の型は金型や石型、石膏など様々。型から抜き出した後は表面を磨いて仕上げる事が多いようです。多くが鉄竿を使うこの作業の前身はガラス管から来ていたという説もあるもののはっきりした事は分かっておらず、材質も年代によって異なります。いずれも量産が可能な事から方法が確立すると瞬く間に広まり、ガラスの歴史を塗り替えました。

[プレス]press glass(英語)
「型押し」の意。金属などの凹凸型に溶けたガラスを入れ、圧力をかけて成形、型を外して完成。ガラス表面に文様をつけたい場合はあらかじめ型に文様を刻んでおきます。始めはイギリスで開発され1827年にアメリカで採用、機械による大量生産の為、広く普及していきました。吹きガラスでの型吹きガラスに比べ複雑な文様の表現が可能で職人が持つ高度な技術は不要ですが、出来上がりの素地はやや荒く、透明度は低く繋ぎ目が目立つ作品もあります。

[モザイク技法]mosaic(英語)
粘土製の凹凸型にモザイク片を敷き詰めて加熱溶着したもの。大きなものが出来ますが、焼成後に型は壊される為に量産に不向きです。ガラスにおけるモザイクとは、「ガラス片を合わせて作る模様」の意。ミルフィオリガラスはモザイクガラスの一種。



主な加飾方法

加飾にはコールド・テクニック(ガラスが冷却した後に装飾を施すもの)とホット・テクニック(ガラスが熱いうちに装飾を施すもの)があります。

[アッシド・エングレイヴィング]acid engraving(英語)
一説に1670年頃ドイツのガラス彫刻家が発見したといわれる酸化腐食彫り技法でエッチングの一種。アッシド(acid)とは酸をさし、エングレイヴィングとは広義の意味で「削り取る、彫刻」。薬品(フッ化水素と硫酸の混合液)に浸しガラスを腐食させ文様をつけます。昔は保護膜にワックスやゴム、ニス、パラフィンなど使い、それをを腐食させたくない部分にあて薬品に漬けていました。


[アプリカッシオン(アップリケ)]application(仏語)
ある程度作ったガラスの塊を熔着し、冷却後に細かい彫刻を施す技法で「押し付ける」の意。宝石の加工方法で半球形に磨かれたカボッションカットに似ているものは、その名からカボッションと呼ばれます。語意は「飾り鋲、お坊さんの禿頭」。アール・ヌーヴォー期のガラスによく用いられた方法で、ガラス器の表面に立体的な装飾を施す事が出来ます。

[ヴィトリフィカシオン]vitrification(仏語)
ガラスがまだ熱いうちに細かなガラス粉をまぶし再加熱して生地に馴染ませる方法。複雑な色合いを素地に表現する事が可能です。ローマングラスにも多用されていましたが、不純物が混じりあい透明度が低くなる事からその後余り見られなくなりアール・ヌーヴォー期に再び見直されるようになりました。部分的にまぶしそこに斑紋を生じさせたものをサッシュールと呼びます。

[エッチング]etch、
etching(英語)
「腐食、食刻、彫刻」の意。化学作用によってガラス表面を腐食させる技法。艶消しとも。一般にガラスでのエッチングは酸を使用するアッシド技法を指す事が多いようです。

[エナメル彩]enamel(英語)/email(仏語)/琺瑯・七宝(日本語)
エナメル彩はエマイユ彩ともいい、陶磁器の装飾としても知られています。色ガラスの粉を油や松脂で練ってガラスの表面に絵付け、低温で焼き付けるという技法です。エナメルには透明なものと不透明なものがあります。

[カッティング(エングレイヴィング)]cutting(英語)/engraving(英語)/切子(日本語)
「切り取る」の意。カッティングはもともとは水晶などの貴石類などの加工技術から発展したと考えられます。ガラスの表面にグラインダーを押し当てて傷をつけ、それを装飾として確立させたもの。グラインダーの形は平板形・菱山形・蒲鉾形となっていて、これにより様々なカッティングがなされていきます。

[被せガラス]cased glass(英語)
「ガラスを被せる(きせる)」という技法は二色以上の色ガラスを重ねたもの。三色を使っている場合は「三層の被せガラス」と呼びます。こうして作られたガラスを削ったり酸で溶かしたりして陰陽をつけ作品に仕上げていきます。多く色を重ねた作品は華やかですが、ガラスの着色は酸化金属物。それぞれの熱膨張率が異なる為、これを知っておかないと作業の途中や完成後に破損する危険もあるのです。

[グラヴィール(ホイール・エングレイヴィンク)]gravure(仏語)/wheel engraving(英語)
「彫刻」の意。ガラス表面を回転する円盤にあてて削り、模様を彫り出す方法。円盤の大きさを替えたり力の強弱で彫刻の深さを調節できる。レリーフ・インタリオ・サーフェスの彫り方があり、緻密な絵柄の表現が可能。

[サンドブラスト(サンドブラスティング)]sand blasting(英語)
サンドは「砂」、ブラストは「爆風、突風」の意。ガラス表面に金剛砂を圧搾空気を吹き付ける方法。金剛砂は柘榴石を粉末にしたものをいいます。デザインしたシートをガラスに貼り付け、そこにサンドを吹き付けます。吹き付けられた部分は白く削り込まれるのです。1870年にアメリカのテイルマンによって発明され、ガラスに転用されたのは1910年以降。サンドは吹き付けの強弱によって陰影が美しく出る上、短時間で作品は完成。エッチング技法の作品に比べ表面はざらざらとしています。


[ダイヤモンドポイントグラヴィール(グラスリッツェン)]
gravure a la pointe de diamant(仏語)/glasritzen(独語)
ダイヤモンドなどの硬物素材の小片を使い、ガラスの表面に傷をつけて細かな装飾を施す方法。ローマ時代から知られており、線刻(スクラッチング)・点刻(ステップリング)があります。力を使わない作業の為、女性にも人気です。17世紀のオランダが有名。

[ラスター彩]lustre(英語)
古代ガラスの出土例を見ると、ガラスは風化や腐食で虹色に変化しています。土の成分や気候がこれを促していると考えられます。これを一般に「イリデッセンス(ガラスの自然銀化)」といいますが、金属の化学変化により人工的にこのような色合いを出したものがラスター彩です。ラスターとは「輝き」の意。8世紀頃には既にガラスへの使用が確認されていますが、陶器に多く用いられるようになりました。ガラスの表面に金属酸化物を塗って加熱すると化学反応により虹色の効果が得られます。ルイス・カムフォート・ティファニーはこれをファヴリル・グラス(Favrile Glass)の名で世に送り出しました。

ちょっとしたお話
人が使ったガラスたち
人類にとって常に身近なものであったガラス。古くは装飾から、陶器などの釉薬に、そして日用品として存在し続けました。古代から18世紀までのガラスの歴史を簡単に紹介。
■神の空間のガラスたち
  (工事中)
教会が造られ始めた頃、窓といえはトリフォリウムと呼ばれる明りとりの為に開けられた小さなものでした。隙間風が当たり前だった教会にガラス文化が入り込んだ時。透明なガラスが描き出すステンドグラスの世界は実用性、装飾性と共に宗教性を高め、家屋とは違った独自の発展を遂げました。
■人が覗いたガラスたち
  (工事中)
板ガラスの発展とガラス鏡の量産。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間はフランスの国力とこうした時代背景から生まれました。しかし庶民にとって鏡は貴重品でありつづけ、イギリスではヴィクトリアン期に至っても鏡の普及は限られた人々に留まっていました。税金がかけられていたのも理由とされます。
王様のガラスたち
ルイ15世やポンパドゥール侯爵夫人が奨励したフランスを代表するガラスにはこんなものがあります。

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