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■ 上代 ■

古事記  (太安万侶)
古代史の定番でしょうか。この本の中で好きなのは允恭天皇・応神天皇・仁徳天皇の辺り。特に「枯野」や「木梨軽皇子と軽皇女の恋」「莵道稚郎子」「隼別皇子と女鳥女王の恋」はチェックが入っています(笑)。枯野の「さやさや」という響きや、隼別と女鳥が手に手を取って倉橋山を登る場面、手に巻いた玉の情景には創作意欲が湧きますね(笑)。「皇子」の表記は『古事記』よりも『日本書紀』に見られるような気もしますが、ももかは「王子」と表記するよりはこちらが好みです♪学生時代の夏の課題に全文筆写したという思い出もあります。
日本書記  (舎人親王)
『古事記』よりは紀伝体で書かれているだけあって格式ばっているようにも思うのですが、『古事記』で補えない部分をこちらから得ているところがあります。記述によっては立場が逆転しているものもあって、「木梨軽皇子と軽皇女の恋」では追いかけてきた方が違っているんですよね。現在は講談社現代文庫版参考資料として活躍中かな。
風土記  (作者未詳)
現存するのは「五風土記」と称される出雲・播磨・常陸・肥前・豊後のものと、断片的に残った逸文風土記。学生の頃の斜め読みしかしてないので、今一つ心に残っているものが少なくて感想も思いつかないです(笑)。
懐風藻  (作者未詳)
日本最古の漢詩集で、大津皇子作の漢詩を調べる為に手にとったのが出会いです。その他どきどきする程の万葉歌人メンバーズ(笑)がそろっていてうっとり♪この中で印象的なのはやはり「臨終」の「金烏臨西舎 鼓聲催短命 泉路無賓主 此夕離家向」ですね。全く関連性はないのですが、この歌と『万葉集』の「ももづたふ」の歌の背景を思い浮かべる時、何故か王之渙の「登鸛鵲楼」の発句「白日依山盡(白日山に依りて尽き)」を連想してしまうのですよ。薄く金色に煙った夕暮れの空に、大きく山を目指して沈もうとしている太陽は、白く輝いているというイメージが彷彿。その柔らかな暖かみの中でこれからたった1人、黄泉路に入ろうとする皇子の姿がそこにあります。
万葉集  (大伴家持ら)
「よろずのことのは」こと『万葉集』。こちらはいつもお世話になっています(笑)。手持ちの『万葉集』(角川文庫)は2セット。1セットは講義用に購入したもので、クラフト紙のブックカバーをつけてあります。もう1セットは『万葉集』を読むサークルに入った時に、知り合いの方からプレゼントされたもの。こちらはお花のブックカバーをつけて大切に使ってます♪ももかは物語的な作品(竹取翁、手児奈物語など)や大伴家持の書簡、七夕の歌などが好きですね。勿論、万葉歌人に好きな人多し!ですよ。現在『万葉集』の成立と流転を研究中(でも自分では邪まに結論づけてるかも)。今後は万葉仮名を勉強したいのですがどうなることやら。おすすめの関連書籍は沢山。その中でも犬養孝先生のものなどは代表的。犬養先生の影響大なんですよ。

■ 中古 ■

日本霊異記  (景戒)
こういう不思議な歴史の小話には興味があります。この本で印象的だったのは長屋王が「長屋親王」と表記されているところかな。最近は資料的に拾い読みする事ばかりです。
続日本紀  (藤原良房ら)
六国史の1つ。奈良時代から平安時代初期の頃に興味のあるももかの参考資料としては欠かせない本です。講談社学術文庫版が出るまでは図書館にある平凡社版を使っていました。それでも不意に読みたい部分もあって宝亀・延暦年間は全文筆写してファイル。このファイルは健在で、人には見せられない乱文の上に書き込みがまた凄いの(笑)。講談社学術文庫は地元にはなかなか普及しない文庫なので見つけた時に即購入。そしてその全てが東京出身だったりします(笑)。
古今和歌集  (紀貫之ら)
『古今』は『万葉集』よりは分かりやすいので、現代語訳は余り必要に感じません。情感で読むっていうんでしょうか。学生時代の夏休みの課題ではこの全文筆写が出たのですが、実はこういう事はお得意で夏休みが始まる前に提出した事を覚えています。『古今』は『万葉集』にはない歌を載せてあるよと貫之はいっていますが、それは「万葉集を知らなければこの良さは分かるまい、ふっ」の裏返し。その実、宮中では『万葉集』を知っていることがステイタスだったのです。『古今』に関するお話の中で思い浮かぶのは『枕草子』に出てくる村上天皇の女御の1人の宣耀殿女御(藤原芳子)。『古今集』を暗記しているという女御に天皇が挑むというものなのですが、これは凄いなと思ったのでした☆
竹取物語  (作者未詳)
お馴染みの「かぐや姫」のお話。昔話でも知られているこの話を改めて読んだのは高校生の頃でした。竹取翁のお話は『万葉集』にもちょっと登場したりして面白いんですが、最後に不死の薬を焼いてその煙が云々という件では「奈良時代、富士山は噴火していたのね」なんて思ったものでした。また前後してNHKブックスの『竹と日本人』を読んで、竹の特性を知ったのです(笑)。竹の花って滅多に咲かないという話もね。そういえばこれ、映画もありましたね。朧ろに覚えてます。時代背景としては奈良時代なので十二単はちょっと違うかも。『竹取物語』ではかぐや姫に求婚する5人の貴公子が奈良時代の貴族と一致している(倉持皇子=倉持氏を母に持ち天智天皇の皇子とも噂された藤原不比等など)といいますよね。また成就する事のない帝の恋のモデルは、文武天皇とその姉で正史にも美貌と記された氷高内親王(元正天皇)とする説もあります。『宇宙皇子』(藤川桂介著)では「なよたけ」の名で登場。あんな感じの描かれ方も興味深いです。
伊勢物語  (作者未詳)
「むかしおとこ」在原業平一代記(笑)。『伊勢物語』は古典の中でも好きな方ですね。業平くんは涙もろいところが面白くって平中と比較しても面白い人物だと思います(笑)。好きなお話は沢山ありますが、「芥川」「面影の友」「狩の使い」あたりがツボにはまりました。「芥川」はつまり「鬼ひとくち」のお話なんですが、あのしらたま(露)の描写が素敵なんですよね。ここにはやはり俵屋宗達画『六段芥川図』が欲しいです(^^;)。あの絵、好きなの〜。「面影の友」は「目離るともおもほへなくにわすらるる時しなければおもかげにたつ」という歌が好きで、結構引用しています。長い事会っていない友達から文もこなくなってしまって自分が忘れられているんじゃないか不安になり、その人にいってやる。そうすると「離れているなんて考えた事もない。いつもそこにいると思うほど君とは近い間柄なのだから」な〜んていう返事が返ってくるんですよ。赤面モノですよ、これ(笑)。
土佐日記  (紀貫之)
紀貫之が自らを女性に模して且つ仮名文字で日記という形をとって著した作品ですね。冒頭の「おとこもすなる」というところ、何故か笑えます。ももか的には貫之って几帳面だけど体格の良さそうなおじさんというイメージがあるので、「私は女の子なの〜、きゃっ」みたいに書き付けているところを想像すると、もう笑いが止まらない・・・(笑)。土佐の国から帰京する時に船に乗るという件は、『源氏物語』で玉鬘が太夫の権から逃れるように船を走らせたという場面が重なってきます。
大和物語  (作者未詳)
『伊勢物語』と張り合うくらいの歌物語といわれ、歌道の教養書とされてきたのだとか。かなり昔に読んだので断片的にしか覚えていませんが印象的なのは「蘆刈」。別れた元夫婦が再会した時、女性は他の家の奥方に納まっているのに対し、男性は蘆を刈って日々を過ごす生活。それぞれの立場を思い知る、という物悲しいお話なのです。
平中物語  (作者未詳)
平中(平仲)とは平貞文の事で、在原業平同様「色好み」のお兄さん♪平安初期の業平がちょっとばかり四角だとしたら、平安中頃の平中は角が取れたような丸というイメージがします。平中のそそっかしいところとマメぶりが垣間見れるお話。『堤中納言物語』の「はいずみ」のようなお話もあって面白いのです。
蜻蛉日記  (藤原道綱母)
時の権力家夫人の赤裸々な回想録。奥様は本朝3大美人の1人といわれ教養の高い女性であるにも関わらず、夫である兼家は女性に目がなくて、いつも嫉妬に悩まされていました。じっと家の中でただおとなしく過ごしているしかない奥様には様々な噂話が聞こえてきます。それに一喜一憂。・・・悲しい、むなしい、酷い。そんな生々しい声が聞こえてくるような気がして実はちょっと苦手な本だったりするんですけど(^^;)。
宇津保物語  (作者未詳)
宇津保といえば音曲の物語ですね。王朝ものの古典ではももかが大好きな一冊です。木のうつほで子供を育てるというその発想も凄いのですが(笑)、父から子へ孫へと音曲というものを伝えるという事も凄いと思うのです。後半の貴宮のお話も好きですよ。かなり厚い本だったのですがさらりと読めてしまいました。古本屋さんで現代語訳の文庫本を見つけ、嬉しくて買ってみたら「俊蔭」の巻。何〜っ、全文訳ではないの?!と落胆(笑)。地元の図書館には現代語訳版の『宇津保』がないんですよ。何処かで探さなくちゃ。
枕草子  (清少納言)
国語のテキストでお馴染み。これも好きな古典の一つで、さらりと読めるところ、妙に納得してしまうところがお気に入りです♪そしていろんなお話の中で、浮かび上がる中宮定子と清少納言の姿がいきいきとしているのが嬉しいのです。実はこれを読んでみてからももかはちょっぴり中国古典を齧るようになったのです。平安王朝の人達の心情を知るには彼等が知っていた中国モノを読んでないと駄目だな、と思いまして(笑)。でもほんのちょっぴりであんまり役に立たなかったような(^^;)。この本を元にして書かれた田辺聖子さんの『むかしあけぼの』は必読?
落窪物語  作者未詳)
平安時代のシンデレラストーリーと呼ばれる継子いじめの物語。この本は母親が落窪の君に対する継子いじめなのですが、父・中納言の不甲斐なさがよろしくない(笑)。『シンデレラ』でも後妻に入った継母の方が男親よりも主導権があったりしてすっかり影をひそめちゃってますよね。日本の場合は女系家族だから男親はこんな感じなんだろうかなんて思う事もあるのですが。でも一応、父・中納言の家に継母が入っている形なんですけどね。経済的バックアップは継母の実家にあったのでしょうか。最後は主人公・落窪の君もやんごとなき貴公子・藤原道頼の奥方に納まりハッピー・エンド♪彼女の乳母子・阿漕の活躍も見ものです。
和泉式部日記  (和泉式部?)
和泉式部といえば為尊親王(弾正宮)と敦道親王(帥宮)との恋物語。作者は和泉式部本人とする説もあり第三者とする説もありはっきりしていません。夫ある身でありながら恋に落ち、それが為に夫婦の間は疎遠に。そして最初の恋人の早すぎる死と、恋人の弟との新たなる恋。この弟宮である帥宮が素敵なんですよね♪誰よりも和泉式部を大事にしてラブラブぶりを発揮。そんな中で北の方は屋敷を出て行ってしまうのですが(笑)。和泉式部のイメージはおとなしやかで寡黙でいつも微笑んでいるような感じがします。この二人は木原敏江さんの漫画にも度々登場しているのですが、まさにこんな感じなんです。これほど相愛になった二人なのに帥宮も若くして亡くなってしまうのですよ。なんて事、あんまりよ〜。
源氏物語  (紫式部)
マダム・ムラサキ作『源氏物語』は読めば読むほどその奥深い世界に没頭できる物語だと思います。ももかが初めて読んだのは谷崎訳で、それから円地訳、瀬戸内訳となります。谷崎訳はピンクと紫がかった装丁が素敵でした。とりどりみどりの魅力的な登場人物の中で心惹かれるのは、源氏の悪友・頭中将、政敵の娘・朧月夜、永遠の人・藤壷宮、幼い姫君・女三宮あたりですね。朱雀帝の異様な存在感も気になります。ももかの地元では進学校しか扱わない作品だったりして、他校出身の友達には読んだ事のないという人もいるんですよね。勿体無い(^^;)。贅沢をいわせてもらうなら女三宮にも素敵な別名があったら良いのにと思います。でもこれって狙いなのかな。そのタイトルの通りにこの物語の世界では「源氏」一族の栄華と天皇家の結びつきが甚だしいのです。紫式部における「源氏(源家)」って何だったのか考えさせられます。
紫式部日記  (紫式部)
紫式部は口には出さないけど心の中に言葉をしまっているというタイプだと思います。表現力が豊かで巧みなのはそんな中で培われていた想像力の賜物ではないかなと。この本はあるところで他者に対して辛辣な件もあるのであんまり好きではなかったりします。いっそ読まなければ良かったという思いの方が強かったくらい(^^;)。因みにももかはこの本の記述でちょっと理解出来ないところがあるのですよ。こんなところをと思うかもしれませんがももか的には謎(笑)。それは一条天皇からいわれる「日本紀の御局」という言葉なのです。やはり謎・・・。
栄花物語  (作者未詳)
「花」と書く場合もあれば「華」とする場合もありますが、『栄花物語』の方がしっくりしているように思えます。宇多天皇から堀河天皇までの約200年の時代を描いたもので藤原道長の栄華ぶりが特に際立ちます。王朝物の時代背景を知る上では重なる部分もある『大鏡』同様に参考になります。
浜松中納言物語  (菅原孝標女?)
『源氏物語』の影響が強い事からか作者は『更級日記』の作者の菅原孝標女ともいわれている作品。主人公の源中納言で、夢と予言に満ちた神秘的な構成になっていますよね。その舞台が日本と中国に渡っているのが他にはない特色かな。三島由紀夫はこの物語にヒントを得て『豊饒の海』を書いたのだそうですが、こちらはまだ未読。
更級日記  (菅原孝標女)
この本は学生時代に『源氏物語』と『枕草子』の時代背景を描いた小説『むかし、あけぼの』(田辺聖子著)と『この世をば』(永井路子著)を紹介した時に並べて出した事があるのです。作者は『源氏物語』が読みたくて読みたくて読みたくて神仏に祈り、とうとうその願いを果たしました。そしてその読んでいる時の情景がももかはとても好きなのです。そして決めセリフは「后の位もなににかはせむ」。こういう気持ちは誰にもあるんだなと思って。大人になった作者は自分が願っていた物語の人物のようには決してなれなかったのですが、少女期の回想部分は「乙女のキラキラ☆」を良く表していると思うのです。また『薄紅天女』(荻原規子著)の物語背景は「竹芝伝説」なのですが、この本にも少しだけそれに触れている部分があります。
狭衣物語  ((示某)子内親王家宣旨?)
狭衣少将による源氏宮への遂げられない恋を描いた作品。波乱に満ちた(?)飛鳥井の女君も出てきます。印象が弱かったのか殆ど覚えていませんけどね(笑)。また読み直してみなくちゃ。さて狭衣少将は恋の遍歴を重ねた後、帝にまで上りつめるのです。やはり当時の第一は「帝」の位であり女性の第一は「皇后・中宮」なんですね。『源氏物語』でさえ源氏を準太政天皇(六条院)としてしまっているくらいですもの。
江談抄  (大江匡房)
実は小野篁さまについての伝承が載っているので読んでみて結構面白かったという記憶がある本です。彼に関しては嵯峨天皇とのやりとりの「子子子子子子子・・(猫の子子猫)」が出ていますね。吉備真備の唐時代に囲碁や野馬台詩などを試されたのだけれど安倍仲麻呂(鬼だった)に助けられて帰国が出来るというお話も伺えます。
物語  (作者未詳)
ももかの永遠の人(笑)小野篁さまの物語です。異母妹との悲恋、異母妹の亡霊、漢才によって権力者の娘を妻にするというお話があります。貧しい大学生時代の篁さまのお姿が脳裏に浮かびますわ。以前に元漫画家さんと隣の席になった時、この物語を主題としたお話の本を頂きました。彼について描かれる方って本当にいなかったので新鮮でしたよ。腐乱していく妹の亡骸を抱いている篁さまがリアルで。卒業論文で「小野篁と『篁物語」を書く事にした時、担当の教授は反対したのです。その理由が「資料が少ない(当時)」こと。そして極めつけは「変な人だから」。確かに変な人ですよ(笑)。否定しません、当時からそう皆が思っていたんですもの。彼の「狂(異なる人)」ぶりには1000年以上の歴史があります(笑)。でも好きなんだから仕方がない。
讃岐典侍日記  (藤原長子)
堀河天皇に仕えた讃岐典侍の日記。この堀河天皇は僅か29歳の若さでこの世を去るのですが、この崩御の場面の様子がとても胸を打ってくるのです。讃岐は堀河天皇から寵愛を受けていたともいわれ、涙も出ないまま呆然としている姿には読んでいるこちらの方が泣けてしまうのです。世は新帝を迎え移り変わっていくのですが、讃岐の前帝への想いは尽きることなく、あたかも前帝が乗り移り予言めいた事を言うが為に精神錯乱ともとられる状態に陥って遂に参内を止められてしまう事に。全体として古い絵巻物の金箔で張られた紙のようにどんよりとしていて雅やかな空間を感じますね。
大鏡  (作者未詳)
四鏡の1つ。文徳天皇から後一条天皇までの時代を、大宅世継と夏山繁樹を含む4人による昔話を側にいる作者が書き纏めたという設定。このご老体は190歳と180歳という超人(笑)で物知り。当たり前か(笑)。王朝の時代背景の参考になりますが、何分にも長いお話だったりします。でも一度は読んでおくと良いと思いますよ。ももかは美貌の貴公子・後少将藤原義孝サマや笑い上戸の藤原時平あたりがおすすめ。また菅原道真との確執や大宰府に下向した道真の怨霊のお話も興味深いです。
今昔物語集  (作者未詳)
これは『今昔物語』ではなく『今昔物語集』なんだと強く教えられたものです。その名の通りいろんなお話が満載であきません(笑)。小野篁さまが閻魔庁の冥官として登場のお話も。安倍晴明のお話も勿論収録。
堤中納言物語  (作者未詳)
この短編集は面白いお話が多くて「虫めづる姫君」や「はいずみ」などは良く知られているところ。虫が好きという異様な趣味を持った姫君は愛らしいのだけれど当時の嗜みである眉も抜かず歯も染めず・・という描写や、泣く真似をする為に硯の水を顔に塗ってみたら墨汁で顔は真っ黒、でも本人は気づかないという描写がいきいきとしているのです。菖蒲の根を批評するお話は『源氏物語』の宇治十帖で薫が中君に手折った紅葉する蔓と重なって、当時の雅さを思い浮かべてしまいます(^^)。
夜半の寝覚  (菅原孝標女?)
『源氏物語』後に出回った一連の物語の中の1つですが、惜しむべくは欠巻があるところですね。権中納言サマと寝覚上の恋物語。この美しいタイトルに惹かれて読んだという記憶があります。しっとりとした情感が神秘的。それは薄く煙った早い春の明け方のような感じなのです。この物語を主題とした『寝覚物語絵巻』も素敵ですよね。桜の咲き乱れる明るい光景の一点が何といっても良いのです。
陸奥話記  (作者未詳)  
古代の陸奥を舞台に、安倍氏や清原氏、そして源氏などが織り成す物語。とても印象深かったのが藤原経清の惨殺でした。話の筋書きはすっかり忘れてしまっていたのですが、この鋸引きの場面は濃厚に残っていて、大河ドラマ『炎立つ』の放映が決まった時、このお話を演るんだとどきどきしたのです。ドラマの方は満足♪ももかが好きな大河ドラマの1つになっています。
とりかえばや物語  (作者未詳)
この物語はとてもはちゃめちゃな気がします。それでいて目を離せないという(笑)。氷室冴子さんの『ざ・ちぇんじ!』がそもそもの入門のきっかけでしたが、原作はもっと大人びていてそして「はちゃめちゃ」(笑)。男君として育てられ出仕もしている姫君と、女君として育てられ後宮に入ってしまった男君が、ある時お互いの立場を取り換えるというお話。姫君は宰相中将に想いをかけられその子供を産んでしまう事になるのですが、物語のラストで登場するこの若君がとても印象に残っています。未練たっぷりの宰相中将は準主役で輝いている(?)のですが、右大臣の四の君と女東宮の運命にはがっかりし、入れ替わり終了後の男君は面白みに欠けました。
苔の衣  (作者未詳)
こちらも『源氏物語』の影響を受けている作品。結構読み応えがあるのですが、全体として物悲しい雰囲気に感じられました。もともとこの「苔の衣」という言葉は出家者を指すんですが、このお話も主人公なのに苔衣大将は妻の死を嘆き悲しんで比叡山に上ってしまうんですよね。この大将の母君が元斎王サマ。旦那様との仲も良くて息子の大将がこんな風に姿を消さなければのほほんとしていられた筈なんですけど。いつかこの母君のイラストを描いてみたいと思っていたりします(笑)。







































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