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鎌倉夢語り 〜 大姫 編 〜
〜 仲秋 白萩の咲く頃 〜
はじめに。
この物語の主な登場人物の年齢についてです。
大姫は、十七歳。
海野小太郎幸氏は、二十二歳。
法力房 蓮生(熊谷次郎直実)は、五十四歳。
以上を想定して書きました。
では、物語の世界へどうぞ・・・
今は秋。
ここは、鎌倉。
日中は夏のような暑さは残っているが、陽が落ちると暑さは感じなくなってきた。
白萩の花の咲く姿が見られるようになった。
ここは、小御所。
大姫の部屋の前に在る庭。
白萩の花が咲き始めた。
大姫と海野小太郎幸氏が居る。
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「白萩が咲き始めたわね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「白萩の咲く姿を見ると、秋の季節と僅かに涼しさを感じるわね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「白萩が見頃か見頃に近くなったら、白萩を見に出掛けたいわ。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「良い時季に出掛けられるように、白萩の咲き具合を確認しておきます。」
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「無理しないでね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「承知しました。」
大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏も大姫を微笑んで見た。
大姫は白萩を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は大姫と白萩を微笑んで見た。
それから何日か後の事。
ここは、鎌倉。
白萩の花の咲く姿を見掛ける機会が増えてきた。
ここは、白萩の花が咲く場所。
白萩の見頃には少し早いため、白色の花より緑色の葉が僅かに目立つように感じる。
大姫と海野小太郎幸氏が到着した。
大姫は辺りを微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「見頃より少し前ですが、良い雰囲気に感じたのでお連れいたしました。」
大姫は海野小太郎幸氏を見ると、微笑んで話し出す。
「今の咲き具合も綺麗よ。見頃の時季が更に楽しみね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「小太郎。白萩が見頃になったら再び来ましょう。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は少し離れた場所を不思議そう見た。
大姫は海野小太郎幸氏の視線の先を不思議そうに見た。
一人の僧侶が大姫と海野小太郎幸氏に向かって歩く姿が見える。
大姫は海野小太郎幸氏を僅かに不機嫌そうに見た。
海野小太郎幸氏は大姫を見ると、困惑した様子で話し出す。
「今の時季は落ち着いて見られると思ったのですが、細かい確認をしていませんでした。」
大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「小太郎も含めて、出掛ける予定の日に白萩を見に来る人を全て把握できないわ。気にしないで。」
海野小太郎幸氏は大姫に困惑した様子で軽く礼をした。
大姫は白萩を見ると、僅かに不機嫌そうに軽く息をはいた。
海野小太郎幸氏は大姫に僅かに困惑した様子で話し出す。
「熊谷次郎直実殿は、何年か前に仏門に帰依されて、今は蓮生殿と名乗っているそうです。熊谷に戻る途中に鎌倉に立ち寄られたそうです。頼朝様と対面されたそうです。」
大姫は海野小太郎幸氏を見ると、納得した様子で話し出す。
「だから、白萩を見る日を今日にしたのね。」
海野小太郎幸氏は大姫を僅かに困惑した様子で見た。
大姫は海野小太郎幸氏に呆れた様子で話し出す。
「私と小太郎に向かって歩いているから、話しがあるのかも知れないわね。私と小太郎に話し掛けなかったら、気付かない振りをして話し掛けないようにしましょう。」
海野小太郎幸氏は大姫に困惑した様子で軽く礼をした。
蓮生が大姫と海野小太郎幸氏の前に真剣な表情で来た。
大姫は蓮生を僅かに不機嫌そうに見た。
海野小太郎幸氏は蓮生に僅かに困惑した様子で軽く礼をした。
蓮生は大姫と海野小太郎幸氏に真剣な表情で軽く礼をした。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「今回は何を見て近付いてきたの?」
蓮生は大姫に真剣な表情で話し出す。
「頼朝様と話しをしました。大姫様を心配される想いを感じました。私にも妻子がいます。頼朝様のお気持ちが分かるように感じました。」
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうな表情で話し出す。
「二人は似ているから、お互いの気持ちが分かるのね。」
蓮生は大姫を不思議そうに見た。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「お父様は義高様を当然のように討つ命令を下した。私の目の前に居る人は、平敦盛殿を討った。お父様も私の目の前に居る人も平然と生きている。」
蓮生は大姫を困惑した様子で見た。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「私の目の前に居る人は、境界線争いで不利になったら、怒って髷を切ったそうね。家族や家臣や領民の生活を考えたら出来ない行動よね。怒った勢いで出家したそうだけど、全てが解決したの?」
蓮生は大姫を困惑した様子で見ている。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「以前に武士の意地と誇りのために行動していると言ったけれど、境界線争いで不利になって怒った勢いの出家も武士の意地と誇りなのね。」
蓮生は大姫を僅かに困惑した様子で見た。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「私は誰が何を言っても義高様が亡くなったと信じない。私は義高様を鎌倉でずっと待ち続けるの。」
蓮生は大姫に困惑した様子で軽く礼をした。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「私の目の前に居る人は、気性の荒い性格だと聞いたけれど、全く違うわね。」
蓮生は大姫に僅かに困惑した様子で話し出す。
「申し訳ありません。」
大姫は蓮生に僅かに困惑した様子で話し出す。
「何が申し訳ないの?」
蓮生は大姫に僅かに困惑した様子で話し出す。
「私のためにご不快な思いをさせてしまって申し訳ありません。」
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「私は白萩を落ち着いて見たいの。思い切り時間が経ってから来て。」
蓮生は大姫と海野小太郎幸氏に僅かに困惑した様子で軽く礼をした。
大姫は蓮生を僅かに不機嫌そうに見た。
海野小太郎幸氏は大姫と蓮生を僅かに困惑した様子で見た。
大姫は蓮生に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「言い忘れていたわ。詫びとして花を用意する必要はないわよ。」
蓮生は大姫を僅かに驚いた表情で見た。
海野小太郎幸氏も大姫を僅かに驚いた表情で見た。
蓮生は僅かに困惑した様子で去って行った。
大姫は僅かに不機嫌そうに軽く息をはいた。
海野小太郎幸氏は大姫に心配そうに話し出す。
「蓮生殿が何度か花を用意したのをご存知だったのですね。」
大姫は海野小太郎幸氏に僅かに呆れた様子で話し出す。
「小太郎自身が私のために用意した花と、小太郎以外の人が私のために用意した花は、違うわよ。はっきりとした確証はないし、花は綺麗だし、花に罪はないし、いろいろな理由から受け取っているの。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「蓮生殿は今でも細やかな話しは苦手で気性が荒いそうです。大姫様に何を話して良いのか分からなくて、余り話しが出来なかったのだと思います。」
大姫は海野小太郎幸氏を不思議そうに見た。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「熊谷に戻るためには、京を背にしますよね。京には大切な師が居るので、師に背中を向けるのは無礼だと言って、京を向いて馬に乗り続けたそうです。馬に反対に乗って鎌倉まで着たのですね。蓮生殿の性格ならば、馬に反対に乗り続けて熊谷に戻られると思います。」
大姫は海野小太郎幸氏を僅かに呆れた様子で見た。
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。
大姫は海野小太郎幸氏に僅かに呆れた様子で話し出す。
「季節の花が手に入ったら、遠慮なく持ってきて。でもお礼は言わないわよ。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は辺りを見回しながら、微笑んで話し出す。
「白萩が見頃になったら、ぜひ見に来たいわ。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。
「私も見頃の白萩を見たいです。」
大姫は海野小太郎幸氏を見ると、微笑んで話し出す。
「楽しみね。」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
それから数日後の事。
ここは、鎌倉。
小御所。
大姫の部屋。
海野小太郎幸氏が白萩の花と萩の花を挿した器を持ちながら、微笑んで訪れた。
大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。
海野小太郎幸氏は大姫の前に白萩の花と萩の花を挿した器を置くと、微笑んで話し出す。
「見頃の白萩と萩です。お部屋でも涼しさと美しさを感じられると思い用意しました。」
大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。
「ありがとう。」
海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。
すると、どこかから囁くような声が聞こえてきた。
「義高様・・・」
「私の部屋に見頃の白萩と萩が飾ってあります・・・」
「義高様と私と小太郎の三人で、白萩と萩を見たいです・・・」
「義高様・・・」
「私は今でも理解したくない出来事がたくさんあります・・・」
「義高様はそれでも理解した方が良いと思いますか・・・?」
「小太郎に質問すると返事に困ると思うので、一人で考え続けています・・・」
「義高様と話したいです・・・」
「義高様に逢いたいです・・・」
「義高様・・・」
「私と小太郎は、白萩の咲く季節も他の花が咲く季節も鎌倉で待っています・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
今回の物語には、「熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)」が登場します。
簡単になりますが、説明をします。
「熊谷直実(くまがいなおざね)」という名前でも知られています。
法名は「法力房 蓮生(ほうりきぼう れんせい)」です。
元治元年二月十五日(1141年3月24日)〜承元二年十月二十五日(1207年12月4日)の人です。
熊谷直貞の次男として生まれました。
幼い時に父親の熊谷直貞が亡くなったので、母方の叔父の久下直光(くげなおみつ)の元で育ったそうです。
保元の乱では源義朝の指揮下に、平治の乱では源義平の指揮下にいましたが、平治の乱の後は、平知盛に仕えたそうです。
源頼朝の挙兵の前は平家側に属していました。
治承四年(1180年)の石橋山の戦いまでは平家側に属していましたが、石橋山の戦い以降は、源頼朝に仕えるようになりました。
治承八年(1184年)の一ノ谷の戦いでは、源義経に従っていたそうです。
この戦いの中で、平敦盛と一騎打ちをします。
熊谷次郎直実は平敦盛に勝ち討ち取ろうとしますが、少年という年齢や優しい性格をしているという理由などから逃がそうとします。
しかし、逃がす事が出来ずに、熊谷次郎直実は平敦盛を泣く泣く討ち取ります。
文治三年(1187年)八月四日に、鶴岡八幡宮の放生会で、流鏑馬の的立て役を命じられましたが拒否したため、所領の一部を没収されたそうです。
建久三年(1192年)十一月に、久下直光と境界線問題で、源頼朝前で口頭弁論をする事になったそうです。
質問責めにあった熊谷次郎直実は激怒したと伝えられています。
熊谷次郎直実は出家をしています。
出家をした理由は、平敦盛を討ち取ったため、境界線問題での口頭弁論での出来事のため、手柄を立てる事や人を騙す事に耐えられなくなった、などといわれています。
出家をした時期については幾つか説があるようです。
境界線問題の口頭弁論後で、息子の熊谷直家(くまがいなおいえ)に家督を譲った後に、出家をした可能性が高いようです。
建久六年八月十日(1195年9月15日)に、京から故郷に戻る途中に鎌倉に立ち寄ったそうです。
鎌倉では源頼朝と対面したそうです。
熊谷次郎直実は、勇ましい性格、口下手な性格などと伝えられているそうです。
今回の物語の時間設定は、建久六年(1195年)八月十日に、京から故郷に戻る途中に鎌倉に立ち寄った頃を想定して書きました。
物語の中に登場する馬に反対側に乗った出来事は、基になった逸話があります。
京から熊谷に戻る時に、師事している法然上人に背を向けないようにするために、馬に反対側に乗ったという出来事です。
勇ましさや気性の荒さを表す逸話だと思います。
「仲秋(ちゅうしゅう)」は、「秋の三ヶ月の真ん中という意味から“陰暦八月の異称”」になります。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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