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鎌倉夢語り 〜 大姫 編 〜


〜 桜月 桜襲と桜花 〜


はじめに。

今回の物語の主な登場人物の年齢です。

大姫は、十歳。

海野小太郎幸氏は、十五歳。

熊谷次郎直実は、四十七歳。

以上を想定して書きました。




物語の世界へどうぞ・・・




今は春。


ここは、鎌倉。


桜の花の咲く姿が見られるようになった。


今日は青空が広がっている。


ここは、小御所。


大姫の部屋の前に在る庭。


桜の花がゆっくりと咲き始めている。


大姫は桜を微笑んで見ている。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。


大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


海野小太郎幸氏は庭の少し遠い場所を普通の表情で見ている。


大姫は海野小太郎幸氏の視線の先を不思議な様子で見た。


大姫と海野小太郎幸氏から少し離れた場所。


熊谷次郎直実が大姫と海野小太郎幸氏を普通の表情で見ている。


海野小太郎幸氏は大姫を見ると、大姫に微笑んで話し出す。

「熊谷次郎直実殿が大姫様と私を見ているようです。」

大姫は熊谷次郎直実を僅かに不機嫌な表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は海野小太郎幸氏を見ると、海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「勝手に長く見られると気分が悪くなるわ。小太郎。呼んできて。」

海野小太郎幸氏は大姫に心配な様子で軽く礼をした。

大姫は熊谷次郎直実を僅かに不機嫌な表情で見た。


海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実の元へと心配な様子で歩き出した。


大姫は桜を僅かに不機嫌な表情で見た。


辺りに微かな風が吹いた。


大姫は空を僅かに不機嫌な表情で見た。


青空の中に白い雲がゆったりと浮かんでいる。


大姫は青空と白い雲を微笑んで見た。


海野小太郎幸氏の心配な様子で声が、大姫の横から聞こえた。

「大姫様。熊谷次郎直実殿をお連れしました。」


大姫は横を僅かに不機嫌な表情で見た。


海野小太郎幸氏は大姫に僅かに心配な様子で軽く礼をした。

熊谷次郎直実は大姫に心配な様子で軽く礼をした。


大姫は熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「少し離れた場所から、私と小太郎を見る理由は何かしら?」

熊谷次郎直実は大姫に申し訳なく話し出す。

「大姫様は体調の優れない日があると聞きました。大姫様がお元気な様子に見えたので、安心しました。気付いたら、大姫様を長々と見ていました。」

大姫は熊谷次郎直実を僅かに不機嫌な表情で見た。

熊谷次郎直実は大姫と海野小太郎幸氏に申し訳なく話し出す。

「申し訳ありませんでした。」

大姫は熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「突然だけど、昨年の秋に鶴岡八幡宮で行われた流鏑馬の的立役を固辞したそうね。お父様が説得したにも係わらず固辞したから、領地を一部没収されたそうね。」

熊谷次郎直実は大姫に困惑した様子で軽く礼をした。

大姫は熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「お父様に逆らったのに、領地の一部没収で済んだのね。運が良かったわね。」

熊谷次郎直実は大姫を困惑して見た。

大姫は熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「お父様の説得を無視して固辞した理由は何かしら?」

熊谷次郎直実は大姫に真剣な表情で話し出す。

「武士の誇り、そして、武士の意地です。」

大姫は熊谷次郎直実に僅かに呆れて話し出す。

「武士の誇りと武士の意地のために、一族と家臣と領地で暮らす人達も巻き込んだのね。最低ね。」

熊谷次郎直実は大姫を困惑して見た。

大姫は熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「更に突然だけど、一ノ谷の戦いの中で、平敦盛殿という人柄の良い少年を討ったそうね。」

海野小太郎幸氏は大姫に困惑した様子で話し出そうとした。

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏を真剣な表情で制止した。

海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実を困惑して見た。

大姫は海野小太郎幸氏と熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「私に隠し事をするのね。」

熊谷次郎直実は大姫に真剣な表情で軽く礼をした。

海野小太郎幸氏は大姫と熊谷次郎直実を困惑して見た。

大姫は熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「平敦盛殿を討った理由は、武士の誇りと武士の意地なの?」

熊谷次郎直実は大姫に真剣な表情で話し出す。

「武士の誇り、そして、武士の情けです。」

大姫は海野小太郎幸氏と熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「義高様が討たれたのは、武士の意地と武士の情けが理由なの? 平敦盛殿が討たれたのは、武士の意地と武士の情けが理由なの? 小太郎が助かったのは、武士の意地と武士の情けが共に必要のない人物だと判断したのが理由なの?」

海野小太郎幸氏は大姫に困惑した様子で話し出そうとした。

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏を制すると、大姫に真剣な表情で軽く礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏と熊谷次郎直実に僅かに不機嫌な様子で話し出す。

「私に再び隠し事をするのね。気分が悪いわ。二人を見ると、更に気分が悪くなるわ。私は桜を落ち着いて見たいの。二人共、私の邪魔をしないで。私を一人にして。」

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏を困惑した様子で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。調子が悪くなった時は、無理をせずに侍女を呼んでください。」

大姫は桜を僅かに不機嫌な様子で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。失礼します。」

熊谷次郎直実は大姫に困惑して話し出す。

「大姫様。失礼いたしました。」

大姫は桜を僅かに不機嫌な様子で見ている。


熊谷次郎直実は大姫と海野小太郎幸氏に軽く礼をすると、困惑した様子で去って行った。

海野小太郎幸氏は大姫に軽く礼をすると、微笑んで去って行った。


大姫は桜を寂しく見た。


幾日か後の事。


ここは、鎌倉。


桜は見頃になって咲いている。


今日は朝から青空が広がっている。


ここは、小御所。


縁。


海野小太郎幸氏は普通に歩いている。


熊谷次郎直実が桜の小枝を持ち、海野小太郎幸氏の前に心配な様子で現れた。


海野小太郎幸氏は立ち止まると、熊谷次郎直実に普通の表情で軽く礼をした。


熊谷次郎直実は桜の小枝を持ち、海野小太郎幸氏に心配な様子で軽く礼をした。

海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実を不思議な様子で見た。

熊谷次郎直実は桜の小枝を持ち、海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「大姫様は体調を崩されずにお過ごしでしょうか?」

海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実に微笑んで軽く礼をした、

熊谷次郎直実は桜の小枝を持ち、海野小太郎幸氏に申し訳なく話し出す。

「私の言動で大姫様と海野殿に迷惑を掛けてしまいました。」

海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実に微笑んで話し出す。

「私は迷惑だと思っていません。安心してください。」

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に桜の小枝を差し出すと、海野小太郎幸氏に申し訳なく話し出す。

「私がつたない話しをしたために、大姫様がご不快な思いになってしまいました。大姫様の気持ちが僅かでも明るくなればと思い、綺麗に咲く桜を探しました。大姫様が桜を用意した人物が私と知って、辛い出来事を思い出されると困ります。私のためにお二人の関係に悪い影響が現れたら困ります。私が桜の小枝を用意した出来事と今の話は、秘密に願います。」

海野小太郎幸氏は熊谷次郎直実から桜の小枝を受け取ると、熊谷次郎直実に微笑んで話し出す。

「承知しました。」

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「良く考えると、今は桜の見頃です。桜以外の花を用意するべきでした。気が利かなくて申し訳ありません。」

海野小太郎幸氏は桜の小枝を持ち、熊谷次郎直実に微笑んで話し出す。

「庭で桜を見る他に、部屋でも桜が見られます。大姫様は喜ばれると思います。」

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に真剣な表情で話し出す。

「失礼いたします。」

海野小太郎幸氏は桜の小枝を持ち、熊谷次郎直実に微笑んで軽く礼をした。

熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏に真剣な表情で軽く礼をした。


海野小太郎幸氏は桜の小枝を持ち、微笑んで歩き出した。


熊谷次郎直実は海野小太郎幸氏とは反対の方向に向かって、普通に歩き出した。


少し後の事。


ここは、大姫の部屋。


障子は開いている。


障子の開く所からは、桜が見える。


大姫は桜を微笑んで見ている。


海野小太郎幸氏が桜の小枝を挿した器を持ち、微笑んで現れた。


大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。桜を用意したのね。庭の桜と器に挿した桜の小枝を一緒に見ましょう。」


海野小太郎幸氏は桜の小枝を挿した器を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。


大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は桜の小枝を挿した器を大姫の前に置くと、大姫に微笑んで話し出す。

「出掛ける最中に、綺麗な桜を見付けました。大姫様の部屋の前の庭に桜の花は咲いていますが、障子を閉めると桜が見えなくなります。部屋の中でも桜が楽しめるように用意しました。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。ありがとう。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は桜の小枝を挿した器を机に微笑んで置いた。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


すると、どこかから囁くような声が聞こえてきた。

「義高様・・・」

「小太郎から受け取った桜は綺麗でした・・・」

「小太郎から受け取った桜は、小太郎が私を気遣って用意したのでしょうか・・・?」

「義高様・・・」

「私は理解したくない出来事がたくさん有ります・・・」

「私は理解したいと思わない出来事もたくさん有ります・・・」

「義高様は理解した方が良いと思いますか・・・?」

「小太郎から受け取った桜の花を見て、いろいろと考えてしまいました・・・」

「不思議ですね・・・」

「義高様・・・」

「私と小太郎は、桜花の咲く間も桜花が散った後も、鎌倉で待っています・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

今回の物語は「熊谷次郎直実(くまがいじろうなおざね)」が登場します。

簡単ですが、説明します。

「熊谷直実(くまがいなおざね)」の名前でも知られています。

法名は「法力房 蓮生(ほうりきぼう れんせい)」です。

生没年は、元治元年二月十五日(1141年3月24日)〜承元二年十月二十五日(1207年12月4日)です。

熊谷直貞の次男として生まれました。

幼い時に父親の熊谷直貞が亡くなったので、母方の叔父の久下直光(くげなおみつ)の元で育ったそうです。

保元の乱では、源義朝の指揮下にいました。

平治の乱では、源義平の指揮下にいましたが、平治の乱の後は、平知盛に仕えたそうです。

源頼朝の挙兵の前は、平家側に属していました。

治承四年(1180年)の石橋山の戦いまでは、平家側に属していましたが、石橋山の戦い以降は、源頼朝に仕えるようになりました。

治承八年(1184年)の一ノ谷の戦いでは、源義経に従っていたそうです。

一ノ谷の戦いの中で、平敦盛と一騎打ちをします。

熊谷次郎直実は平敦盛を勝ち討ち取ろうとしますが、少年という年齢や優しい性格をしているなどの理由から逃がそうとします。

しかし、逃がす事が出来ずに、熊谷次郎直実は平敦盛を泣く泣く討ち取ります。

文治三年(1187年)八月四日に、鶴岡八幡宮の放生会で、流鏑馬の的立て役を命じられましたが、拒否したため、所領の一部を没収されたそうです。

建久三年(1192年)十一月に、久下直光と境界線問題で、源頼朝前で口頭弁論をする事になったそうです。

質問責めにあった熊谷次郎直実は激怒したと伝えられています。

熊谷次郎直実は出家をしています。

出家をした理由は、平敦盛を討ち取ったため、境界線問題での口頭弁論での出来事のため、手柄を立てる事や人を騙す事に耐えられなくなった、などといわれています。

出家をした時期は幾つか説があるようです。

境界線問題の口頭弁論後で、息子の熊谷直家(くまがいなおいえ)に家督を譲った後に、出家をした可能性が高いようです。

建久六年(1195年)八月十日に、京から故郷に戻る途中に鎌倉に立ち寄ったそうです。

鎌倉では源頼朝と対面したそうです。

熊谷次郎直実は、勇ましい性格、口下手な性格などと伝わっているそうです。

今回の物語の時間設定は、文治三年(1187年)八月の鶴岡八幡宮の放生会で流鏑馬の的立て役を拒否して所領の一部を没収された翌年の春を想定して書きました。

「桜襲(さくらがさね)」は「重ねの色目の名前。表は白色。裏は、赤色、葡萄染め(えびぞめ)、紫、二藍(ふたあい)、など諸説ある。陰暦十一月から三月に掛けて用いる。」(春の季語)です。

「桜花」には「さくらばな」と「おうか」の読み方があります。

「さくらばな」と「おうか」では、意味が少し違います。

「さくらばな」と読むと「桜の花」と「(枕詞)桜の花のように美しく栄える意味から、“栄え少女(をとめ)”にかかる」になります。

「おうか」と読むと「桜の花」(春の季語)になります。

「桜月(さくらづき)」は「陰暦三月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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