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鎌倉夢語り 〜 大姫 編 〜


〜 早苗月から水無月の頃 揺れる想い 〜


はじめに。

今回の物語の主な登場人物の年齢です。

大姫は、十六歳。

海野小太郎幸氏は、二十一歳。

以上を想定して書きました。




物語の世界へどうぞ・・・




今は仲夏。


ここは、鎌倉。


雨の降る時間や曇りの多い日が続いている。

蒸し暑さを感じる日が増えている。


ここは、小御所。


大姫の部屋。


大姫は心配で僅かに落ち着かない様子で居る。


海野小太郎幸氏は普通に訪れた。


大姫は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「小太郎がお父様の護衛役として富士の巻狩りに行くと聞いたの。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

大姫は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「理由は分からないけれど不安なの。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「私は戦いに向かう訳ではありません。安心してください。」

大姫は海野小太郎幸氏を心配して見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「私は頼りないので、私の話では安心できませんね。」

大姫は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「小太郎は頼りになるわ。理由は分からないけれど、小太郎は頼りになるのに、心配なの。」

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「小太郎。気を付けてね。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

大姫は海野小太郎幸氏を心配して見た。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。


幾日か後の事。


ここは、鎌倉。


雨の降る時間や曇りの時間は減り、晴れの時間が増えている。

晴れの時間が増えるにつれて、暑さを感じる時間が増えている。


ここは、小御所。


源頼朝が実施している富士の巻狩りの最中に仇討ちが起きた報告が届いた。


仇討ちの詳細が分からない。

源頼朝を含めた安否が分からない。


小御所は落ち着かない様子になっている。


数日後の事。


ここは、小御所。


大姫の部屋。


大姫は不安な様子で居る。


海野小太郎幸氏が怪我をして心配な様子で訪れた。


大姫は海野小太郎幸氏を不安な様子で見た。


海野小太郎幸氏の怪我は治療が済んでいる。


海野小太郎幸氏は大姫に申し訳なく話し出す。

「大姫様に気を付けると約束をしたのに、怪我をしてしまいました。申し訳ありません。」

大姫は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「小太郎。怪我は痛い? 怪我は辛い?」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

大姫は海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「小太郎は怪我をしているのよ。大丈夫な訳がないわ。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様に逢える状況の怪我です。大丈夫です。」

大姫は海野小太郎幸氏を心配して見た。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。


翌日の事。


ここは、小御所。


大姫の部屋。


大姫は辛い様子で床に横になっている。


海野小太郎幸氏が心配して現れた。


大姫は辛い様子で床の上に体を起こすと、海野小太郎幸氏を心配して見た。


海野小太郎幸氏の怪我は新たな治療が済んでいる。


海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「大姫様。昨夜は余り寝ていないと聞きました。」

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で話し出す。

「小太郎の怪我が悪化していないか心配になるの。小太郎が無事か心配になるの。」

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「私の怪我は悪化していません。安心してお過ごしください。」

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で話し出す。

「仇討ちを実行した兄弟は、一人は仇討ちの後に斬られて亡くなり、一人はお父様が打ち首を決めて亡くなったと聞いたわ。」

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「はい。」

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏を辛い様子で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「頼朝様は、仇討ちを起こすまでの想い、仇討ちを起こすまでの経緯、を聞いて、助命を考えたそうです。しかし、仇討ちされた家族に請われたため、斬首を決めました。」

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で話し出す。

「お父様が小太郎を富士の巻狩りに同行させなければ、小太郎は怪我をしなかった。兄弟が富士の巻き狩りを実行する日の仇討ちを考えなければ、小太郎は怪我をしなかった。兄弟を恨む気持ちを抱くの。兄弟を恨みながらも、羨ましい気持ちを抱くの。私は小太郎を怪我させた兄弟に、恨みと羨ましさを抱くの。私は酷い心の持ち主なの。」

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「大姫様は酷い心の持ち主ではありません。」

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で話し出す。

「鎌倉では、お父様を含めた行方の分からない状況が暫く続いたの。私はお父様の行方が分からなくても気にならなかったの。小太郎の行方が分からなくて、心配で辛くて苦しかったの。小太郎が怪我をしたと分かった時は、心配で辛くて苦しかったの。お父様の行方が分かった時は、僅かだけど安心したの。義高様を討つ命令を下したお父様なのに、小太郎が怪我をする原因を作ったお父様なのに、無事を知って僅かだけど安心したの。私は酷い心の持ち主なの。」

海野小太郎幸氏は大姫に心配して話し出す。

「頼朝様は大姫様の父上です。大姫様が頼朝様の無事を知って安心するのは当然です。大姫様は酷い心の持ち主ではありません。」

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で話し出す。

「義高様は、私の許婚よ。義高様は、小太郎が大切に想う主よ。私は、義高様を討つ命令を下した人物の無事を知って、僅かだけど安心したのよ。私は酷い心の持ち主なの。」

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は床の上に体を起こし、辛い様子で静かに泣いた。

海野小太郎幸氏は大姫を心配して抱いた。

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で静かに泣いて話し出す。

「私は小太郎の怪我が心配なの。小太郎の姿が見えないと不安なの。私は酷い心の持ち主なの。」

海野小太郎幸氏は大姫を抱いて、大姫を心配して見た。

大姫は床の上に体を起こし、海野小太郎幸氏に辛い様子で静かに泣いて話し出す。

「小太郎。苦しいの。悲しいの。」

海野小太郎幸氏は大姫を抱いて、大姫を心配して見ている。

大姫は床の上に体を起こし、辛い様子で静かに泣いた。


数日後の事。


ここは、小御所。


大姫の部屋。


大姫は心配な様子で居る。

海野小太郎幸氏は微笑んで居る。


海野小太郎幸氏の怪我は新たな治療が済んでいる。


大姫は海野小太郎幸氏に心配な様子で話し出す。

「小太郎。怪我は順調に快復しているの?」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「政子様が大姫様の私の怪我を心配する様子を知りました。政子様から、私の医師の治療と私の休養を含めて、様々な気遣いを受けています。」

大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様の笑顔が見られました。安心しました。」

大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見ている。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。仇討ちを実行した兄弟は、仇討ち後も生き続けたいと考えていたのかしら?」

海野小太郎幸氏は大姫を困惑して見た。

大姫は海野小太郎幸氏を不思議な様子で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に言い難い様子で話し出す。

「仇討ちを実行した兄弟は、父親が納得いかない状況で亡くなり、家族の後の生活が大きく変わってしまったそうです。兄は弟に、仇討ちを実行すれば、兄弟共に新たな仇討ちの対象になると話したそうです。弟は兄の話を聞いても、仇討ちを実行したいと話したそうです。弟は仇討ち後に、兄の話す意味が分かったと話したそうです。兄は仇討ちを決めた時から、切腹などの覚悟を持っていたと思われます。弟は兄より後に切腹などの覚悟を持ったと思われます。」

大姫は海野小太郎幸氏を考えながら見た。

海野小太郎幸氏は大姫に言い難そうに話し出す。

「兄には恋人が居たそうです。兄は恋人に仇討ちについて何も話さなかったそうです。兄は恋人に別れを告げたそうです。弟は、兄と恋人に対して、何かしらの気持ちを抱いた様子があったけれど、何も語らなかったそうです。」

大姫は海野小太郎幸氏を考えながら見ている。

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は海野小太郎幸氏に考えながら話し出す。

「小太郎。私は義高様を討つ命令を下したお父様を恨んでいるわ。私は助ける言動しながら誰も助けられないお母様も恨んでいるわ。私は小太郎が怪我をする原因を作った仇討ちを実行した兄弟も恨んでいるわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見ている。

大姫は海野小太郎幸氏に考えながら話し出す。

「小太郎。私は、小太郎を怪我させた原因を作った仇討ちを実行した兄弟を、僅かだけど羨む気持ちが有るの。想い人の傍で思いどおりの言動をするお母様を、僅かだけど羨む気持ちが有るの。私は義高様を討ったお父様を羨む気持ちは無いの。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様は酷い心の持ち主ではありません。大姫様は優しくて純粋な心の持ち主です。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。私をおだてても何も起きないわよ。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「私は大姫様をおだてていません。私は事実を話しています。」

大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏も大姫を微笑んで見た。


すると、どこかから囁くような声が聞こえてきた。

「義高様・・・」

「鎌倉から離れた場所で、仇討ちが実行されました・・・」

「小太郎が仇討ちを実行した兄弟のために怪我をしました・・・」

「小太郎の怪我は無事に治りました・・・」

「安心してください・・・」

「義高様・・・」

「鎌倉から離れた場所で実行された仇討ちが、私の心を様々な思いで溢れさせました・・・」

「義高様に逢いたいです・・・」

「義高様に逢いたいです・・・」

「私と小太郎は、麦秋の頃も麦秋が過ぎても、鎌倉で待っています・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

鎌倉幕府の実績関係が書かれた書物に「吾妻鏡(“あづまかがみ”、または、“あずまかがみ”)」があります。

治承四年(1180年)〜文永三年(1266年)の頃の鎌倉幕府津の実績関係が書かれていて、初代将軍の源頼朝から六代将軍の宗尊親王の将軍記の内容で書かれています。

吾妻鏡の成立時期は、鎌倉時代末期といわれています。

建久四年五月二十八日(1193年6月28日)の夜に、「曾我兄弟の仇討ち」が起きます。

「曾我兄弟の仇討ち」は、源頼朝が行った富士の巻狩りの最後の夜に起きた、曾我十郎祐成と曾我五郎時到の兄弟が、父親の敵の工藤祐経を討った事件です。

海野小太郎幸氏が源頼朝の護衛役を務めて負傷した記録が吾妻鏡に書かれているそうです。

曾我十郎祐成は、工藤祐経への仇討ち直後に討たれて亡くなります。

曾我五郎時到は、翌日の建久四年五月二十九日(1193年6月29日)に、源頼朝に仇討ちをした心境などを語ります。

源頼朝は助命を考えましたが、工藤祐経の家族に請われたなどの状況があり、斬首を決めます。

鎌倉幕府では、「曾我姉兄の仇討ち」から暫くの間、源頼朝の消息の確認ができなかったそうです。

曾我十郎祐成と曾我五郎時到の兄弟は、北条時政(北条政子の父)の縁者にあたり、北条時政は曾我五郎時到の烏帽子親になっているそうです。

「曾我兄弟の仇討ち」は、父親の敵の工藤祐経を討った後に、源頼朝を襲おうとする言動がある、夜に仇討ちを実行しているので現場に関係者が居たのではないか、曾我兄弟の背後には黒幕が居て父親の敵の工藤祐経の他にも討つ人物が居たのではないか、などの疑問があります。

「曾我兄弟の仇討ち」について公式に書かれた書物は、吾妻鏡のみに近い状況のようです。

「曾我兄弟の仇討ち」は、後に、能、書物、浄瑠璃、歌舞伎、などで広まります。

吾妻鏡の記録と後に書物などで広まった内容は、違う部分があるようです。

工藤祐経が曾我兄弟の父の敵として討たれた理由、曾我兄弟の生い立ち、などの詳細は、各自でご確認ください。

「早苗月(さなえづき)」は、「(早苗を植える月の意味から)陰暦五月の異称」です。

夏の季語です。

「水無月(みなづき)」は「陰暦六月の異称。田植えに多くの水を必要とする月の意味とされる。」です。

夏の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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