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鎌倉夢語り 〜 大姫 編 〜


〜 秋の出来事 真澄みの想い 〜


はじめに。

この物語の主な登場人物の年齢です。

大姫は、十二歳。

海野小太郎幸氏は、十七歳。

源頼朝は、四十三歳。

北条政子は、三十三歳。

源義経は、三十一歳。(※名前のみ登場)

河越重頼の娘[仮名−真澄]は、約二十二歳。(※名前のみ登場)

以上を想定して書きました。




物語の世界へどうぞ・・・




今は初秋。


ここは、鎌倉。


暑い日が続いている。


ここは、小御所。


奥州藤原氏を討つための準備が進んでいる。


大姫の部屋。


大姫は詰まらない様子で居る。


海野小太郎幸氏が部屋を微笑んで訪れた。


大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。来てくれてありがとう。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小御所が落ち着かない日が続くわね。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「小太郎。お父様に遠慮しているから、言葉で返事をしないのね。」

海野小太郎幸氏は大姫を僅かに困惑して見た。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「鎌倉側は、奥州藤原氏に義経様を討たせる方向に圧力を掛けたわ。奥州藤原氏は、鎌倉側の圧力に耐え切れず、義経様を討ったわ。鎌倉側は、奥州藤原氏が鎌倉側の許可が無いのに義経様を討ったと言い出したわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を僅かに困惑して見ている。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「真澄は、鎌倉側の思惑に巻き込まれて、義経様と祝言を挙げたわ。鎌倉側が義経様を邪魔になったら、河越家から真澄に義経様を見捨てる連絡を取らせたわ。真澄が戻らないために、河越家は政治の表舞台から消え掛けているわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を僅かに困惑して見ている。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「真澄が、河越家の連絡に同意して戻っていたならば、河越家は今も政治の表舞台に居たのかしら?」

海野小太郎幸氏は大姫を僅かに困惑して見ている。

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「小太郎はお父様に仕える立場だから、お父様の悪口を話すと危険よね。小太郎の複雑な立場は分かるわ。小太郎と話したくて部屋に呼んだのに、小太郎は黙っているわ。小太郎を呼んだ意味が無いわ。」

海野小太郎幸氏は大姫に申し訳なく話し出す。

「申し訳ありません。」

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「小太郎。一人で部屋に居ると詰まらないの。暫く戻らずに部屋に居なさい。」

海野小太郎幸氏は大姫に申し訳なく軽く礼をした。

大姫は海野小太郎幸氏を僅かに不機嫌に見た。


暫く後の事。


ここは、小御所。


源頼朝の部屋。


源頼朝は机に真剣な表情で向かっている。


北条政子が部屋の中に普通に入ってきた。


源頼朝は北条政子を普通の表情で見た。

北条政子は源頼朝に普通に話し出す。

「大姫が奥州征伐に小太郎も加わるか心配しています。大姫の気持ちが落ち着かず、小太郎殿にきつい内容を話したそうです。」

源頼朝は北条政子に普通に話し出す。

「大姫の様子を教えたのは誰だ?」

北条政子は源頼朝に普通に話し出す。

「私付きの侍女と大姫付きの侍女が、心配して教えてくれました。」

源頼朝は北条政子に普通に話し出す。

「今は忙しい。急ぎの内容でなければ、後で話を聞く。」

北条政子は源頼朝に普通に話し出す。

「頼朝様は、大姫が義高殿を慕い続ける気持ちを、鎌倉の評判を良くするために利用しています。頼朝様は、小太郎は義高殿を逃がしましたが、海野家を味方に付けて鎌倉側を有利に導くために、処罰せずに鎌倉側に仕えさせました。頼朝様にとって、大姫と小太郎は、忙しいから後で話を聞く程度の人物なのですね。情け深いと喩えられる頼朝様を見損ないました。」

源頼朝は北条政子に普通に話し出す。

「話しを続けろ。」

北条政子は源頼朝に普通に話し出す。

「はい。」

源頼朝は北条政子を普通の表情で見た。


数日後の事。


ここは、鎌倉。


夏のような暑さが続いている。


ここは、鶴岡八幡宮。


境内。


大銀杏の傍。


緑色の葉が茂っている。


大姫は微笑んで居る。

海野小太郎幸氏は微笑んで居る。


海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。今日も暑いです。辛くなった時は、直ぐに教えてください。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は大銀杏を心配して見た。

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は海野小太郎幸氏を見ると、海野小太郎幸氏に心配して話し出す。

「小太郎は奥州征伐に参加していないわ。お父様は、奥州征伐を不参加した御家人に、処罰をしたとか処罰をする考えがある話を聞いたわ。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「全ての御家人が鎌倉から遠い奥州征伐に参加は出来ません。私は頼朝様から鎌倉を護る命令を受けました。処罰を受ける御家人、処罰を受ける可能性のある御家人は、奥州征伐に不参加の表明をした、鎌倉側からの奥州征伐への参加の命令に対して不参加の返事をした、になります。私は奥州征伐に参加しませんが、状況が違います。」

大姫は海野小太郎幸氏を安心して見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「私は、頼朝様から、大姫様のご機嫌が悪くなった時の対応を頼む、との依頼を受けました。私は、頼朝様から、鎌倉を護る命令と大姫様の対応に関係する依頼、を受けた状況になります。」

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに呆れて話し出す。

「私が不機嫌になった時に対応できる人物は、小太郎のみ、という内容に聞えるわ。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「話の内容は事実です。」

大姫は海野小太郎幸氏に拗ねて話し出す。

「小太郎。酷いわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫も海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見ている。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎が奥州征伐の間は木曽ではなく鎌倉に居る命令の内容になったのは、お母様が関係しているのかしら?」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「政子様は大姫様を心配しています。政子様は義高様を逃がしきれなかった出来事を忘れていません。頼朝様も大姫様を心配しています。政子様が頼朝様に何かしらの内容を話して、頼朝様が政子様の話の内容を了承した可能性はあります。」

大姫は海野小太郎幸氏に僅かに不機嫌に話し出す。

「お母様が私を心配する気持ちは伝わる時があるけれど、お父様が私を心配する気持ちは全く伝わらないわ。」

海野小太郎幸氏は大姫を心配して見た。

大姫は海野小太郎幸氏を僅かに不機嫌に見た。

海野小太郎幸氏は大姫に普通に話し出す。

「大姫様が私に数日程前に質問した一部のみですが、答えたいと思います。」

大姫は海野小太郎幸氏を不思議な様子で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に普通に話し出す。

「頼朝様は、貴族に仕えずに過ごせる武士の世の中を目指しています。鎌倉側の目指す処と奥州藤原氏の目指す処は、違います。鎌倉側と奥州藤原氏は、末永く共存できる関係ではありません。奥州藤原氏に共感する武士が増えれば、鎌倉側が不利な立場になります。河越家は、頼朝様の乳母を務め、更に、頼家様の乳母も務めています。頼朝様は河越家を信頼しています。頼朝様は河越家に長く仕えて欲しい気持ちがあるはすです。真澄様が鎌倉側に戻らないのに、河越家が鎌倉側の表舞台で仕える状況は、頼朝様の目指す世の中と違ってしまいます。真澄様が、河越家の頼みを受けて、河越の家に戻っていれば、河越家は今も政治の表舞台に居た可能性はあります。」

大姫は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に普通に話し出す。

「父も嫡男の兄も、義仲様に従い戦いの中で亡くなっています。父は義仲様の最期まで従い亡くなりました。私は、義高様に仕えて、義高様を逃がす手伝いをしました。私の立場と私の命は、鎌倉側の考えで変わる可能性が高かったです。私は、頼朝様から忠義者と評価され、鎌倉側に仕えました。父も嫡男の兄も亡くなっているので、海野家を利用したい考えがあれば、私が一番に最適な人物になります。私は頼朝様に信頼されている評判があります。奥州征伐に不参加を表明した御家人は、鎌倉側から見れば信頼の出来ない部分があります。奥州征伐に有力御家人がたくさん参加する状況は、鎌倉側に不測の事態が起きた時に、対処できる御家人が減る状況になります。私が鎌倉に残るのは理由に、大姫様は関係していると思いますが、他にも理由があると思います。」

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。他の理由を教えて。」

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「秘密です。」

大姫は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏も大姫を微笑んで見た。


奥州藤原氏が滅亡するのは、文治五年九月三日。

今から数ヶ月ほど後の出来事になる。


すると、どこかから囁くような声が聞こえてきた。

「義高様・・・」

「鎌倉側は、義経様を許し無く討ったとして、奥州征伐に向かいました・・・」

「義高様・・・」

「小太郎は私に全てを話していないと思います・・・」

「小太郎の本当の気持ちが知りたいです・・・」

「小太郎の本当の気持ちを知るのが怖いです・・・」

「私の心の中に二つの気持ちが混在しています・・・」

「義高様・・・」

「小太郎の本当の気持ちが分かりますか・・・?」

「私は小太郎の本当の気持ちを知らない方が良いですか・・・?」

「義高様・・・」

「真澄の所在を知っていますか・・・?」

「真澄の産んだ姫の所在を知っていますか・・・?」

「義高様・・・」

「みんなに今の世で早く逢いたいです・・・」

「みんなで今の世で大銀杏を見ながら、たくさん話したいです・・・」

「義高様・・・」

「私と小太郎は、様々な姿に変わる大銀杏を見ながら、鎌倉で待っています・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「河越重頼の娘(名前不祥)(“鎌倉夢語り”では“真澄”)」は、源義経の正室です。

源義経の正室ですが、名前や生没年が分かりません。

源義経が奥州で亡くなった時に一緒に居た女性と同一人物らしいと伝わるため、この女性の年齢から河越重頼の娘の年齢を想定してドラマや小説などに登場しています。

源義経は、文治五年閏四月三十日(1189年6月15日)に奥州で亡くなったと伝わっています。

源義経が亡くなった時には、女性と幼い女の子も一緒だったと伝わっています。

幼い女の子は、源義経と女性との間に生まれた子と伝えられています。

源義経は三十一歳、女性は二十二歳くらい、幼い女の子は四歳くらい、で亡くなったと伝わっています。

この女性の詳細は分かっていません。

そこから、源義経が亡くなった時に一緒に居た女性は、河越重頼の娘との説が広まりました。

鎌倉に源義経が亡くなった報告が届いたのは、文治五年五月二十二日(1189年7月7日)だそうです。

鎌倉側が源義経の亡くなった確認をしたのは、文治五年六月十三日(1189年7月27日)で、場所は「腰越浦」だそうです。

鎌倉側は亡くなった人物が源義経本人かはっきりと確認できなかったそうです。

この一連の経緯から、源義経は生きている伝説が広まったと考えられています。

源頼朝は、源義経を許可無く討伐した事を理由に、奥州征伐を奏上しました。

後白河法皇は、院宣の発給をしませんでした。

大庭景義は、奥州藤原氏は源氏の家人なので、家人の誅罰に勅許は不要などと主張します。

源頼朝は、大庭景義の主張を受けて、全国に動員令を発します。

源頼朝は、文治五年七月十九日(1189年9月1日)に奥州征伐のために鎌倉を出発しました。

後白河法皇は、この日付で藤原泰衡追討の院宣を発給したそうです。

奥州藤原氏は、文治五年九月三日(1189年10月14日)に滅亡したと伝わっています。

源頼朝は、全国統一を完了した事になります。

源頼朝は、藤原泰衡追討に不参加の御家人には処罰を行ったそうです。

今回の物語より前の出来事になりますが、海野小太郎幸氏の父と兄の一人は、源義仲(源義高の父)に従い、戦いの中で亡くなっています。

この物語は、海野小太郎幸氏が奥州征伐に参加した詳細が分からないため、奥州征伐に海野小太郎幸氏が参加していない前提で書きました。

この物語は「鎌倉夢語り 大姫 編 夏の出来事 真澄みの想い」より後の出来事として書きました。

「真澄み(ますみ)」は「非常に良く澄んでいること」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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