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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜
〜 夢現 秋の鎌倉 薪能 幽玄の時 〜
始めに。
簡単ですが、今回の物語に登場する神社とお寺などの説明をします。
「段葛」
鎌倉の若宮大路の中央に在る一段高い参道です。
鎌倉駅の近くに在ります。
段葛を歩くと鶴岡八幡宮にたどり着きます。
大姫の弟の万寿(後の源頼家)の安産祈願のために造られたそうです。
大姫や源義高や海野小太郎幸氏達が居る時代に出来た参道です。
現在は段葛の一部が残されています。
「岩船地蔵堂」
大姫の守り本尊と伝えられている30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。
一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊ともいわれているそうですが、一般的には大姫の守り本尊として知られています。
いつ頃から在るかについては確認が取れませんでした。
いろいろな点から考えると、源義高の死後に造られたと考えられます。
数年ほど前(2005年頃から数年ほど前)に外装が造り直されました。
「鎌倉宮」
大塔宮護良親王を(おおとうのみやもりながしんのう)をお祀りしている神社です。
大塔宮護良親王は、後醍醐天皇の皇子として生まれています。
明治四年(1871年)の建設です。
「物語に登場するお店や施設」
2008年10月上旬の設定です。
物語の掲載時、または、物語を読まれている時には、設定などが変わっている場合があります。
では、本文へどうぞ。
* * * * * *
時は平成と呼ばれている頃。
今は秋。
ここは、鎌倉。
土産物を売る店や飲食店や寺院などが在り、観光名所の一つとして知られている。
観光客がたくさん訪れている。
過ごしやすさを感じる時間が増えてきた。
ここは、鎌倉駅。
たくさんの人達が居る。
二人の少年と一人の少女の姿も見える。
少年の名前は、義孝。
少女の名前は分からない。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「両親から、鎌倉宮で行なわれる薪能に、私と義孝さんと幸氏さんを連れて行ってくれると話していたの。楽しみね。」
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「俺も両親から聞いた。チケットは親が手配すると話していた。薪能を行なう場所は少ないように思うんだ。俺も薪能が観られるのは楽しみだよ。」
義孝は幸氏と少女に普通の表情で頷いた。
少女は義孝と幸氏を微笑んで見た。
幸氏は義孝と少女を微笑んで見た。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「歩きながら話の続きをしましょう。」
義孝は少女に普通の表情で頷いた。
幸氏は少女に微笑んで頷いた。
少女は微笑んで歩き出した。
幸氏も微笑んで歩き出した。
義孝は普通に歩き出した。
それから何日か後の事。
ここは、岩船地蔵堂。
大姫は笑顔で居る。
海野小太郎幸氏は微笑んで居る。
源義高は普通に居る。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「義高様! 小太郎殿! 今夜は鎌倉宮で薪能が行われる日です!」
海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで話し出す。
「今回の鎌倉宮で行われる薪能は、五十回を記念して特別な企画になるそうです。」
源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「鎌倉宮で行われる薪能を観たいな。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「はい!」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。
源義高は大姫と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「薪能を観る観客は切符が必要だが、俺達の姿が見える人物は居ないに等しい。念のために後ろから観よう。」
大姫は源義高に笑顔で話し出す。
「はい!」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで軽く礼をした。
源義高は大姫と海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。
それから暫く後の事。
ここは、鎌倉宮。
境内。
たくさんの観客が薪能を観るために居る。
義孝、幸氏、少女の姿が見える。
少女の背負っているナップザックは膨らんでいる。
少女は空を見ながら、微笑んで話し出す。
「空の色が橙色に変わり始めているわね。天気予報では夜も雨の降る心配がないと話していたわよね。薪能が楽しみね。」
幸氏は空を見ると、微笑んで頷いた。
義孝は空を見ると、普通の表情で頷いた。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「有名な料理屋さんが薪能のためにお弁当を販売しているわね。どのお店のお弁当が食べられるのかな? パンフレットも販売しているわね。パンフレットが早く観たいな。楽しみね。」
幸氏は少女を見ると、微笑んで頷いた。
義孝は少女を見ると、普通に話し出す。
「ナップザックが膨らんでいるな。ナップザックの中に何が入っているんだ?」
少女は義孝に微笑んで話し出す。
「鎌倉宮の薪能を以前に観た人の感想を参考にして、寒くなった時のために、上着と膝掛けを用意したの。義孝さんと幸氏さんは用意しなかったの?」
義孝は少女に普通に話し出す。
「十月上旬なのに、膝掛けや厚めの上着を用意したんだ。俺は上着だけ用意した。」
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「俺も寒さ対策をするように言われたから、上着だけ用意した。」
義孝は少女に普通に話し出す。
「寒くなると風邪をひくかも知れない。念のために用意するのは良いと思う。」
幸氏は少女に微笑んで頷いた。
少女は義孝と幸氏を微笑んで見た。
義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。
「両親が呼んでいる。早く行こう。」
少女は義孝に微笑んで頷いた。
幸氏も義孝に微笑んで頷いた。
義孝は普通に歩き出した。
幸氏は微笑んで歩き出した。
少女は微笑んで歩き出した。
それから暫く後の事。
ここは、鎌倉の町。
綺麗な月が浮かんでいる。
今夜は普段より多くの人の足音と話し声が聞こえている。
普段より見かける多くの人達は、鎌倉駅に行くために歩いている。
義孝、幸氏、少女も歩いている。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「薪能が始まる前に、演じる人達だけなく、私達もお祓いを受けたわね。神事の一つだと改めて思ったわ。舞台の後ろが山になっていて、澄んだ虫の声が静かに聞こえいて、幽玄という言葉を思い出したわ。」
義孝は少女に普通に話し出す。
「俺も薪能が神事の一つだと改めて思った。幽玄という言葉も思い出した。月が客席の後ろ側ではなく、舞台側に在れば、更に幽玄な感じが増したと思った。」
幸氏は義孝に微笑んで話し出す。
「俺も同じように思った。月の位置については、時季や時間や場所で変わるから仕方がないよね。」
義孝は幸氏に普通の表情で頷いた。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「薪能の蜘蛛の糸が現れる場面は、綺麗で動きがあって良かったね。もう一つの能の演目は馴染みがある内容よね。狂言は面白かったわね。親しみやすい演目の舞台だったのね。薪能が始まる前の説明通りだと思ったわ。」
幸氏は少女に微笑んで頷いた。
義孝は少女に普通の表情で頷いた。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「薪能のためのお弁当も美味しかったわね。」
義孝は少女に微笑んで頷いた。
幸氏は少女に微笑んで頷いた。
義孝は少女に普通に話し出す。
「防寒対策のために、膝賭けを用意したのは正解だったな。季節的に厚めの上着を持ち運ぶのは大変だから、膝掛けを用意する方法もあると思った。」
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「膝掛けは上着の代わりにも使えるよね。次に薪能を観る時の参考にするよ。」
義孝は幸氏に普通の表情で頷いた。
少女は義孝と幸氏を微笑んで見た。
それから少し後の事。
ここは、段葛。
今夜は普段より多い人達が歩いている。
義孝、幸氏、少女も歩いている。
義孝は夜空を普通の表情で見た。
月が綺麗に輝いている。
義孝は幸氏と少女を普通の表情で見ようとした。
幸氏と少女の姿が見えない。
義孝は辺りを不思議そうに見た。
義孝以外の人の姿が見えない。
義孝は辺りを不思議そうに見ている。
大姫の元気な声が、義孝の横から聞こえてきた。
「お兄ちゃん! こんばんは!」
義孝は横を微笑んで見た。
大姫は義孝を笑顔で見ている。
義孝は大姫に微笑んで話し出す。
「姫ちゃん。こんばんは。」
大姫は義孝に微笑んで話し出す。
「薪能を観ていたのですか?」
義孝は大姫に不思議そうに話し出す。
「なぜ分かったの?」
大姫は義孝に微笑んで話し出す。
「今夜は鎌倉宮で薪能が行なわれていました。この時間にご家族やお友達と歩いています。薪能を観ていた可能性が高いです。」
義孝は大姫に微笑んで話し出す。
「なるほど。」
大姫は義孝を微笑んで見た。
義孝は大姫に不思議そうに話し出す。
「姫ちゃん。もしかして、一人なの?」
大姫は義孝に微笑んで話し出す。
「一人ではありません。」
義孝は大姫を微笑んで見た。
大姫は義孝に微笑んで話し出す。
「姫は行きます。」
義孝は大姫に微笑んで話し出す。
「またね。」
大姫は義孝に微笑んで話し出す。
「はい。」
義孝は大姫を微笑んで見た。
大姫は微笑みながら静かに居なくなった。
義孝は辺りを不思議そうに見た。
辺りに居る人達の姿は、先程と同じ状態になっている。
少女は義孝を不思議そうに見ている。
幸氏も義孝を不思議そうに見ている。
義孝は幸氏と少女に不思議そうに話し出す。
「少し前に姫ちゃんと会ったんだ。」
幸氏は義孝に不思議そうに話し出す。
「姫ちゃんは一人だったの?」
義孝は幸氏に普通に話し出す。
「俺が会った時は姫ちゃん一人だったけれど、姫ちゃんは一人ではないと話していた。少しだけ話して居なくなったから、両親や義高君や小太郎君が傍に居たと思う。」
少女は義孝に微笑んで話し出す。
「義孝さんの言う通り、姫ちゃんの年齢ならば、家族の誰かが近くに居るわよね。」
幸氏は少女に微笑んで頷いた。
義孝は幸氏と少女を普通の表情で見た。
少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。
「私の両親と連れてきてくれた義孝さんの両親に、お礼を言わないとね。」
義孝は少女に普通に話し出す。
「俺の両親への礼なら少し前に言っただろ。」
幸氏は少女に微笑んで話し出す。
「何度もお礼を言うと失礼になる時があるから、家に着く前に改めてお礼を言おう。」
少女は幸氏に微笑んで頷いた。
義孝は幸氏と少女を微笑んで見た。
それから僅かに後の事。
ここは、岩船地蔵堂。
大姫は笑顔のまま、静かに現れた。
源義高は普通の表情のまま、静かに現れた。
海野小太郎幸氏は微笑みながら、静かに現れた。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。
「義高様! 小太郎殿! 楽しかったですね!」
源義高は大姫に普通の表情で頷いた。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏に普通に話し出す。
「薪能を観ていたら、幽玄という言葉を思い出しました!」
源義高は大姫に普通の表情で頷いた。
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。
大姫は源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。
すると、切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「幽玄という言葉の似合う、素敵な秋の夜でしたね・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
「夢の中の出来事だったのでしょうか・・・?」
「それとも現の中の出来事だったのでしょうか・・・?」
「義高様はどのように思いますか・・・?」
「ねぇ、義高様・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
平成時代の鎌倉が舞台の物語です。
「薪能(たきぎのう)」についてです。
薪能の起源は、陰暦二月六日から一週間、奈良興福寺の修二会(しゅにえ)の際に、大和猿楽四座の大夫によって夜ごと薪を焚いて演じられた神事能になります。
幕末で廃絶したそうですが、近年になって復興したそうです。
現在では、5月11日・12日に行なわれるそうです。
上記の説明の薪能は、夏の季語です。
戦後になってからの事になりますが、上記の説明の神事能を参考にして、多くの社寺で行なわれるようになったそうです。
現在は、夕方から夜にかけて野外で薪を焚いて行なわれる能を薪能と呼ぶ方が多いと思います。
「鎌倉薪能(かまくらたきぎのう)」についてです。
鎌倉宮の境内で行なわれる薪能をいいます。
1959年10月に始まったそうです。
私は2008年10月に行なわれた鎌倉薪能を観ました。
50回目を記念して特別プログラムとなっていました。
「素謡」は「翁」で、狂言は「地蔵舞」で、「能」は「羽衣」と「土蜘」でした。
奈良興福寺の御薪能の長所を取り入れて行なわれていました。
今回の物語の登場人物達が、鎌倉薪能の内容(50回目)を簡単に話しています。
演目などの詳細については各自でご確認ください。
今回の物語では、「鎌倉薪能」ではなく「薪能」としました。
「幽玄(ゆうげん)」には、幾つか意味がありますが、今回の物語では、「物事の趣が奥深くはかり知れないこと。深い余情のあること。」そして、「中世の文学・芸能における美的理念の一つ。能楽論では、優雅で柔和な美しさ、妖艶な情趣。美女・美少年などの優美さ、または、寂びた優美さ。」になります。
「夢現(ゆめうつつ)」は、「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」という意味です。
「現(うつつ)」は、「現実」という意味があります。
「現」は「夢」に対して良く使われる言葉です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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