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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜


〜 雨水の頃 桃の節句へ紡ぐ想い 〜


桃の節句には早い頃。


ここは、鎌倉。


春の始まりを感じるようになってきた。


大姫は年を越したので六歳になっている。


源頼朝は、武士の世を創る志のために、戦や政に忙しい日々を過ごしている。

北条政子は、源頼朝の志を助けるために忙しく過ごす時間が増えている。

源頼朝は、伊豆に居た頃から忙しく過ごしていたので、大姫と過ごす時間は少なかった。

北条政子は、伊豆に居た頃から忙しくても大姫と過ごす時間は作っていたが、嫡男の万寿が生まれてからは、時間に余裕が出来ると、嫡男の万寿の乳母達と話すようになった。

大姫の傍に居るのは侍女だけの時間が増えている。


ここは、小御所。


大姫の部屋。


大姫と侍女が居る。


大姫は寂しそうに呟いた。

「姫は寂しいです。」

侍女は大姫に心配そうに話し出す。

「大姫様。何かありましたか?」

大姫は侍女に微笑んで話し出す。

「何もないです。」

侍女は大姫を微笑んで見た。

大姫は侍女に微笑んで話し出す。

「お人形で遊びたいです。一緒に準備をしましょう。」

侍女は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は侍女を微笑んで見た。


それから少し後の事。


ここは、大姫の部屋。


大姫と侍女は、人形で遊んでいる。


侍女は人形で遊びながら、大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。もう少し経つと雨水になります。雨水に雛人形の飾り付けをすると、良縁に恵まれる話があるそうです。」

大姫は人形で遊ぶのを止めると、侍女に笑顔で話し出す。

「本当ですか?!」

侍女は人形で遊ぶのを止めると、大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は侍女に笑顔で話し出す。

「姫も雨水に雛人形を飾ります!」

侍女は大姫に微笑んで話し出す。

「政子様に雨水に雛人形を飾り付けたいとお話しする時間を作らなければなりませんね。」

大姫は侍女に笑顔で話し出す。

「お母様に雨水に雛人形を飾りたいとお願いします! 一緒に来てください!」

侍女は大姫に微笑んで軽く礼をした。


大姫は部屋を笑顔で出て行った。

侍女は部屋を微笑んで出で行った。


それから少し後の事。


ここは、北条政子の部屋。


北条政子は忙しそうに机に向かっている。


大姫は笑顔で訪れた。

侍女も微笑んで訪れた。


北条政子は大姫を微笑んで見た。

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「お母様! 雨水に雛人形を飾りたいです!」

北条政子は大姫に微笑んで話し出す。

「雨水に雛人形を飾り付けたいの?」

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「雨水に雛人形を飾ると、良縁に恵まれるそうです! 姫は雨水に雛人形を飾りたいです!」

北条政子は大姫に微笑んで話し出す。

「分かったわ。雨水に雛人形の飾り付けをしましょう。」

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「お母様! ありがとうございます! 嬉しいです!」

北条政子は大姫を微笑んで見た。

侍女は北条政子と大姫を微笑んで見た。

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「お母様! 雨水に雛人形を一緒に飾ってください!」

北条政子は大姫に微笑んで頷いた。

大姫は北条政子を笑顔で見た。

北条政子は侍女に微笑んで話し出す。

「雨水の雛人形の飾り付けの手伝いと準備を頼むわね。」

侍女は北条政子に微笑んで軽く礼をした。

北条政子は侍女を微笑んで見た。

大姫は北条政子と侍女を笑顔で見た。


それから何日か後の事。


雨水の当日になる。


ここは、小御所。


大姫は朝から嬉しそうにしている。

北条政子はいつものように忙しくしている。

侍女は雛人形の飾り付けのための準備を微笑んで始めている。


ここは、大姫の部屋。


大姫は雛人形を笑顔で飾り付けている。

侍女も雛人形を微笑んで飾り付けている。


北条政子は微笑んで訪れた。


大姫は雛人形の飾り付けをしながら、北条政子を笑顔で見た。

侍女は雛人形の飾りつけを止めると、北条政子に微笑んで軽く礼をした。

北条政子は大姫と侍女を微笑んで見た。

大姫は女雛を笑顔で持った。

北条政子は大姫を微笑んで見た。

大姫は女雛を持ちながら、女雛に笑顔で呟いた。

「姫は誰のお嫁さんになるのでしょうか? 姫も女雛様のような素敵なお嫁さんになりたいです。」

北条政子は大姫を微笑んで見ている。

侍女は大姫を微笑んで見た。


それから少し後の事。


ここは、大姫の部屋。


雛人形の飾り付けが終わった。


北条政子、大姫、侍女が居る。


北条政子は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫。部屋に戻るわね。」

大姫は北条政子に微笑んで話し出す。

「お母様。楽しかったです。ありがとうございます。」

北条政子は大姫を微笑んで見た。

侍女は北条政子と大姫を微笑んで見た。


北条政子は部屋を微笑んで出て行った。


それから暫く後の事。


ここは、源頼朝の部屋。


源頼朝と北条政子が居る。


北条政子は源頼朝に微笑んで話し出す。

「大姫は雨水に雛人形の飾り付けをすると良縁に恵まれるという話を知って、雛人形の飾り付けを楽しそうにしていました。」

源頼朝は北条政子を見ながら、普通の表情で呟いた。

「良縁か。」

北条政子は源頼朝を怪訝そうに見た。

源頼朝は北条政子に普通に話し出す。

「政子。仮の話しだが、大姫にそのような話しがあったらどうする?」

北条政子は源頼朝に真剣な表情で話し出す。

「大姫は六歳です。最高の良縁だとしても、遠く離れた方の元に嫁がせるには幼過ぎます。反対です。」

源頼朝は北条政子を普通の表情で見た。

北条政子は源頼朝に真剣な表情で話し出す。

「もし縁談を無理矢理にでも勧めるのならば・・・」

源頼朝は北条政子の話しを遮ると、普通に話し出す。

「政子。今の話しは、仮の話だぞ。」

北条政子は話しを止めると、源頼朝を怪訝そうに見た。

源頼朝は北条政子を普通の表情で見た。


ちょうど同じ頃。


ここは、木曾。


源義仲の住む屋敷。


源義仲の嫡男の源義高の部屋。


源義高と従者の海野小太郎幸氏が居る。


海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様。今日は雨水です。」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「雨水に雛人形の飾り付けをすると、良縁に恵まれる話があるそうです。」

源義高は海野小太郎幸氏に不思議そうに話し出す。

「俺は男だぞ。なぜ突然に雛人形の飾り付けについての話になるんだ?」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「女性の方達が雛人形を楽しそうに飾り付けていました。不思議に思ったので質問をしたら、親切に教えてくれました。義高様にも伝えたくて話しました。」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高に苦笑しながら話し出す。

「義高様には直接に関係のない話を聞いても楽しくないですよね。気が利かなくて申し訳ありませんでした。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「俺は男だから雨水に雛人形を飾り付けて良縁に恵まれる話は関係ないが、後に誰かと一緒になり姫が生まれたら、関係のある話になる。小太郎。いつも気遣いありがとう。」

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「ふと思ったのだが、姫が生まれなければ、関係のないまま終わる話になるな。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様に姫様が生まれなくても、お子様に姫様が生まれるかも知れません。」

源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏も源義高を微笑んで見た。

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎。弓の稽古がしたい。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「弓の稽古の準備をしてまいります。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。


海野小太郎幸氏は部屋を微笑んで出て行った。


それから何日か後の事。


鎌倉の源頼朝と木曾の源義仲の間で話し合いが行われた。

話し合いの一つに、源義高が大姫の許婚として鎌倉へ行くという内容があった。

話し合いの流れから、源義高が鎌倉に行く時の立場は、大姫の許婚と人質の両方を含んでいるのが分かる状況となっていた。


源頼朝は源義高を大姫の許婚として迎える準備を進めている。

源義高の立場は、大姫の許婚と人質のどちらに重きが置かれているのか分からない状況になっている。


それから何日か後の事。


ここは、鎌倉。


小御所。


北条政子の部屋。


北条政子は忙しそうに机に向かっている。


大姫が元気良く訪ねてきた。


北条政子は大姫を微笑んで見た。

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「雨水の日に雛人形を飾ったから姫にお婿様が来ました!」

北条政子は大姫を微笑んで見た。

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「良縁ですね!」

北条政子は大姫を複雑な表情で見た。

大姫は北条政子に笑顔で話し出す。

「嬉しいです!」

北条政子は大姫を微笑んで見た。

大姫は北条政子を笑顔で見た。


大姫にとって聞き慣れた人物のそっけない声が聞こえてきた。

「大姫。大丈夫か?」


時は一気に進む。


今は春。


ここは、鎌倉。


小御所。


源義高の部屋。


大姫は気持ち良さそうに眠っている。

源義高は大姫を呆れた様子で見ている。

海野小太郎幸氏は源義高と大姫を微笑んで見ている。


源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。大丈夫か?」

大姫は気持ち良さそうに眠っている。

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。気軽に横になって寝る季節には少し早いぞ。気楽に寝ると風邪をひくぞ。」

大姫は横になったまま、気持ち良さそうにゆっくりと目を開けた。

源義高は大姫に呆れた様子で話し出す。

「大姫。俺は勉強中なんだ。傍で静かにしているのは構わないが、傍で横になって寝られると落ち着かない。」

大姫はゆっくりと体を起こすと、源義高に眠そうに話し出す。

「姫は眠くないです。一緒に勉強します。義高様は姫の良縁です。」

源義高は大姫を不思議そうに見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を不思議そうに見た。

大姫は源義高を眠そうに見た。

源義高は大姫に心配そうに話し出す。

「大姫。調子が悪いのか?」

大姫は源義高に眠そうに話し出す。

「姫は元気です。」

源義高は大姫の額に心配そうに手を当てた。

海野小太郎幸氏は大姫を心配そうに見た。

源義高は大姫の額から手を離すと、大姫に普通に話し出す。

「熱はないな。」

大姫は源義高に眠そうに話し出す。

「はい。」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は横になると、直ぐに目を閉じた。

源義高は大姫を苦笑しながら見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様を直ぐに起こします。大姫様が部屋に戻る供をします。義高様は安心して勉強を続けてください。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「俺が大姫を部屋に連れて行く。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「私は先に大姫様の部屋に行って、侍女の方達に話してきます。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。


海野小太郎幸氏は部屋から静かに出て行った。


大姫は気持ち良さそうに横になって眠っている。

源義高は大姫を見ながら、不思議そうに呟いた。

「大姫の言った“りょうえん”は、良縁で良いのかな? 大姫は夢でも見たのかな?」

大姫は気持ち良さそうに横になって眠っている。

源義高は大姫に苦笑しながら話し出す。

「良縁ね。大姫の望みどおり、良縁にしておくよ。」

大姫は気持ち良さそうに横になって眠っている。

源義高は大姫を微笑んで見た。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「私にとって、義高様は一番の良縁な方です・・・」

「私は義高様にとって良縁な相手だったのでしょうか・・・?」

「私が義高様だったとしたら、良縁な相手とは思えません・・・」

「義高様も同じ思いですよね・・・」

「あの年の雨水に雛人形を飾ったから、私達は出逢ったのでしょうか・・・?」

「あの年の雨水に雛人形を飾らなければ、私達は出逢わなかったのでしょうか・・・?」

「私はあの年の雨水に雛人形を飾って幸せを得ました・・・」

「義高様はあの年の雨水に雛人形を飾らなければ幸せを得られましたよね・・・」

「義高様。ごめんなさい・・・」

「義高様。逢いたいです・・・」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「雨水(うすい)」についてです。

「二十四節気」の一つです。

現在の暦で2月19日前後が雨水になります。

及び、現在の暦でこの日から3月5日頃も雨水といいます。

以下の二つは、前半の説明の現在の暦の2月19日頃が基本になっているそうです。

昔から、農耕の準備を始めるのは雨水が目安とされてきたそうです。

雨水に雛人形を飾り付けると良縁に恵まれるとされているそうです。

「雛祭り」についてです。

大姫達の時代には、「団飾りの雛人形。雛あられ」という定番の雛祭りは無かったそうですが、雛祭りは「桃の節句。上巳の節句。」の名称で、流し雛のような形で行なっていたそうです。

今回の物語の設定は鎌倉時代には無かった事になるため、番外編の物語として掲載する事にしました。

今回の物語は、大姫と源義高が出逢う前の場面が多いですが、最後の方の場面は、源義高が鎌倉に着た一年後ほどに一気に進んでいます。

大姫と源義高に「良縁」の言葉を当てはめると、大姫と源義高は本当の意味で「良縁」だったのかと考えてしまいました。

大姫は、源氏の嫡流の源頼朝と正室の北条政子の間に生まれた長女で嫡女です。

源義高は、祖父が源氏の嫡流になる源義仲の嫡男です。

大姫の気持ちや源義高の気持ちとは関係なく、様々な事が動いています。

大姫と源義高は、様々な事を受け入れなければなりません。

大姫と源義高が別な人と出逢って過ごしたとしても、結果は大きく変わらなかったかも知れません。

物語の最後の方の時間設定では、源義仲は既に討たれて亡くなっています。

源義高にとって不安定な日々が続く最中の事になります。

物悲しさではなく温かさを感じる物語になるように書きました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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