このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 番外編 〜


〜 夢現 催花雨 桜を待ち侘びて 〜


物語を始める前に。

簡単になりますが、今回の物語に登場する神社やお店などの説明をします。

「岩船地蔵堂」

この地蔵堂には30cm前後のお地蔵様が祀られているそうです。

大姫の守り本尊として知られています。

一説には、大姫の妹の三幡姫の守り本尊ともいわれているそうです。

いつから在るのか確認は取れませんでしたが、源義高の死後に造られたと考えた方が良いと思います。

2005年頃から数年ほど前に、新しい外装に建て替えられました。

「鶴岡八幡宮」

鎌倉に在ります。

「若宮大路」・「段葛」を歩くと鶴岡八幡宮の鳥居の前に来ます。

大姫や源義高や海野小太郎幸氏の時代には在った八幡様です。

「大銀杏」、「源氏池」、「平家池」などの一部は、大姫達の時代には在りました。

現在の境内には、美術館なども在ります。

「段葛」

鎌倉の若宮大路の中央に在る一段高い参道です。

「段葛」を歩くと鶴岡八幡宮にたどり着きます。

大姫の弟の万寿(後の源頼家)の安産祈願のために造られたそうです。

大姫が鎌倉に居る時代に出来た参道です。

「一ノ鳥居」は、由比ガ浜の傍に在ります。

「二ノ鳥居」は、鎌倉駅の近くに在ります。

「三ノ鳥居」は、鶴岡八幡宮の前に在ります。

現在は「二ノ鳥居」から「三ノ鳥居」までの一部が残されています。

「会話のみ、または、舞台で登場する、物語の中のお店や施設」

2009年3月下旬の時点で書きました。

「補足」

2009年3月下旬の時点で物語を書きました。

掲載時、または、皆様がこの物語を読まれている時には、状況が変わっている可能性があります。


では、本文へどうぞ。




*      *      *      *      *      *




時は平成。


今は春。


ここは、鎌倉。


暖かい日が続いていた関係で、染井吉野が例年より早く開花した。


染井吉野が開花したので、更にたくさんの観光客で賑わっている。


ここは、岩船地蔵堂。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏が居る。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「染井吉野が見頃になったら、三人で鶴岡八幡宮と段葛に出掛けたいです。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「たくさんの人達が訪れる日を除けば、染井吉野を見に行っても良いぞ。」

海野小太郎幸氏は大姫と源義高に微笑んで話し出す。

「私も染井吉野を落ち着いて見たいです。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「たくさんの人達の訪れない日に染井吉野を見に行きましょう。」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


それから数日後の事。


ここは、鎌倉。


染井吉野が開花した途端に、寒さを感じる日が続いている。


染井吉野のつぼみはたくさんあるが、染井吉野の花は僅かしか咲いていない。


今日は途中から雨が降り始めた。


ここは、岩船地蔵堂。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏が居る。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏に僅かに寂しそうに話し出す。

「雨が降り始めました。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「催花雨という言葉がある。染井吉野の見頃を想像したら、雨の降る日も楽しい気持ちで過ごせるだろ。」

大姫は源義高に僅かに寂しそうに話し出す。

「染井吉野が開花した途端に寒さを感じる日が続いています。今日も寒さを感じます。今日の雨は、催花雨になるのですか?」

源義高は大姫に考え込みながら話し出す。

「今日の雨は催花雨に該当しないも知れないな。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に僅かに寂しそうに話し出す。

「染井吉野の花がゆっくりと咲いているので、義高様と小太郎殿と染井吉野を見に行く日が訪れません。姫は義高様と小太郎殿と染井吉野を早く見に行きたいです。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「染井吉野の花がゆっくりと咲くのは、染井吉野を長く楽しめるのと同じだろ。」

大姫は源義高を僅かに寂しそうに見た。

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高と大姫に微笑んで話し出す。

「僅かに咲いた染井吉野も風情があって良いと思います。今日の雨は止む時間があると思います。雨が止んだら、三人で染井吉野を見に行きませんか?」

源義高は海野小太郎や幸氏に普通の表情で頷いた。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「はい。」

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。


それから暫く後の事。


ここは、鎌倉。


雨が止んだ。


空がゆっくりと明るさを見せていく。


ここは、段葛。


染井吉野のつぼみはたくさんあるが、染井吉野の花は僅かしか咲いていない。


二人の少年と一人の少女が、歩いている。


二人の少年は、義孝と幸氏。

少女の名前は分からないが、義孝と幸氏と良く一緒に居る。


少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「雨が止んで良かったわね。」

義孝は少女に普通に話し出す。

「夜になると再び雨が降るらしいぞ。」

少女は義孝を残念そうに見た。

幸氏は少女に微笑んで話し出す。

「催花雨という言葉があるんだ。桜の花の咲き始めの雨の日も明るい気持ちで過ごそう。」

義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。

「催花雨は、“春、花の咲くのを促すように降る雨”を言うよな。」

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「義孝さんも幸氏さんも催花雨という言葉を知っているのね。凄いわね。」

義孝は少女を微笑んで見た。

幸氏も少女を微笑んで見た。

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「義孝さん。幸氏さん。催花雨という言葉をいつ知ったの?」

幸氏は少女に考え込みながら話し出す。

「いつ知ったのかな?」

義孝も少女に考え込みながら話し出す。

「いつ知ったのかな?」

少女は義孝と幸氏に微笑んで話し出す。

「天気予報関連の情報で知った可能性が高くない?」

義孝は少女を微笑んで見た。

幸氏も少女を微笑んで見た。

義孝は幸氏と少女に普通に話し出す。

「桜の開花が発表された途端に寒さを感じる日が続くな。今日の雨は催花雨に該当しないかも知れないな。」

少女は義孝に微笑んで頷いた。

幸氏も義孝に微笑んで頷いた。

義孝は幸氏と少女を微笑んで見た。

幸氏は段葛の桜を微笑んで見た。

少女も段葛の桜を微笑んで見た。

義孝も段葛の桜を微笑んで見た。


染井吉野のつぼみはたくさんあるが、染井吉野の花は僅かしか咲いていない。


義孝は幸氏と少女を普通の表情で見た。


幸氏と少女の姿が見えない。


義孝は辺りを不思議そうに見た。


段葛を歩く人や道路を走る車も見えない。


大姫の元気な声が、義孝の横から聞こえてきた。

「義孝お兄ちゃん! こんにちは!」


義孝は横を微笑んで見た。


大姫が義孝を笑顔で見ている。


義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「姫ちゃん。こんにちは。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「段葛の染井吉野を見に来たのですか?」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「段葛に咲く桜を見に来たのに、僅かしか咲いていないね。残念だよね。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「姫も義孝お兄ちゃんと同じ内容の話をしました。義高お兄ちゃんと小太郎お兄ちゃんは、染井吉野が長く楽しめるのと同じだから、明るい気持ちで過ごすように言いました。」

義孝は大姫に微笑んで話し出す。

「義高君と小太郎君の言う通りだよね。」

大姫は義孝を微笑んで見た。

義孝は大姫に苦笑しながら話し出す。

「三人で桜を見に来たのに、気が付いたら一人になっていたんだ。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「幸氏お兄ちゃんもお姉ちゃんも近くに居ます。」

義孝は辺りを不思議そうに見た。

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「姫も義高お兄ちゃんと小太郎お兄ちゃんと来ました。姫は義高お兄ちゃんと小太郎お兄ちゃんの元に戻ります。」

義孝は大姫を見ると、微笑んで話し出す。

「またね。」

大姫は義孝に微笑んで話し出す。

「はい。」

義孝は大姫を微笑んで見た。


大姫は元気良く走り出した。


義孝は大姫を微笑んで見ている。


大姫の姿は静かに見えなくなった。


義孝は辺りを不思議そうに見た。


少女は辺りを微笑んで見ている。

幸氏も辺りを微笑んで見ている。


段葛を歩く人も道路を走る車も元通りになっている。


義孝は幸氏と少女を不思議そうに見た。

少女は義孝を見ると、不思議そうに話し出す。

「義孝さん。何か遭ったの?」

幸氏は義孝と少女を不思議そうに見た。

義孝は幸氏と少女に微笑んで話し出す。

「姫ちゃんと少しだけ話したんだ。姫ちゃんは義高君と小太郎君の元に直ぐに戻ったんだ。」

少女は義孝に微笑んで話し出す。

「姫ちゃんも義高君も小太郎君も段葛に咲く桜を楽しみにしているのね。」

義孝は少女に微笑んで頷いた。

少女は義孝を微笑んで見た。

幸氏は義孝と少女を微笑んで見た。


それから暫く後の事。


今は夜。


ここは、鎌倉。


雨が静かに降っている。


ここは、岩船地蔵堂。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏が居る。


大姫は雨の降る様子を見ながら、源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「染井吉野の花がたくさん咲く日が楽しみですね。」

源義高は大姫に微笑んで頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「鎌倉で桜の花がゆっくりと咲き始めました・・・」

「今の鎌倉は雨が降っています・・・」

「今日の鎌倉に降る雨は、催花雨になると思います・・・」

「鎌倉で桜が見頃になる日が待ち遠しいです・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「桜の咲き始めた頃に、不思議な時に包まれたように感じます・・・」

「夢のような、現のような、不思議な時のように感じます・・・」

「義高様は夢と現のどちらだと思いますか・・・?」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「催花雨(さいかう)」は「春、花の咲くのを促すように降る雨」をいいます。

「夢現(ゆめうつつ)」は「夢と現実。夢とも現ともつかない状態。」をいいます。

「夢現」を分けると「夢(ゆめ)」と「現(うつつ)」になります。

「現」は「現実」という意味があります。

「現」は「夢」に対して良く使われる言葉です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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