このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜


〜 盛夏の頃 七年後の蝉時雨 〜


〜 改訂版 〜


今は夏。


ここは、鎌倉の町。


暑い日が続いている。


辺りには蝉時雨が響いている。


ここは、小御所。


小御所にも蝉時雨は響いている。


ここは、小御所の庭。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏は、一緒に居る。


大姫が源義高に微笑んで話し出す。

「蝉の鳴き声がはっきりと響いていますね。」

源義高が大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は源義高を微笑んで見た。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「蝉は土の中に長く居るんだ。」

大姫は源義高を不思議そうに見た。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「蝉の幼虫は、七年ほど後に土から出て蝉の姿になるんだ。」

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「今年までの鳴いている蝉は、姫より年上になるのですね。」

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は源義高に微笑んで話し出す。

「来年は、姫と蝉は同じ歳になりますね。再来年になると、姫は蝉より年上になりますね。」

源義高は大姫を微笑んで見ている。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様。一緒にお出掛けしたいです。」

源義高は大姫に心配そうに話し出す。

「今日は少し暑いぞ。大丈夫か?」

大姫は源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は考え込み始めた。

大姫は源義高を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様には、少しでも辛くなったら、義高様か私に直ぐに言うようにお話しをして、場所も近場で短い時間だけにするというのはどうでしょうか?」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「三人で近場に短い時間だけ出掛けよう。ただし、少しでも辛くなったら、俺か小太郎に直ぐに言えよ。」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「はい!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏の三人は、青空の下を出掛けて行った。


ここは、鶴岡八幡宮。


蝉時雨の声が強く響いている。


ここは、境内に在るたくさんの木々が植わっている場所。


蝉時雨の声が更に強く響いている。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏は、たくさんの木々の中に居る。


大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「蝉の声がたくさん聞こえますね!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は木を上の方を笑顔で見た。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は木の上の方向を指しながら、源義高に笑顔で話し出す。

「義高様! 見てください! 蝉が脱皮をしています!」

源義高は大姫の指している方向を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫の指いている方向を微笑んで見た。


一匹の蝉が、木の幹の木陰になっている場所で、脱皮をしている様子が見える。


海野小太郎幸氏は大姫を見ると、微笑んで話し出す。

「陽のある時間に蝉が脱皮をするというのは珍しいですね。」

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、普通の表情で頷いた。

大姫は源義高を見ると、不思議そうに話し出す。

「蝉の色が白いです。」

源義高は大姫に不思議そうに話し出す。

「大姫は蝉の脱皮を見た事がないのか?」

大姫は源義高に考え込みながら話し出す。

「姫は蝉をたくさん見ました。でも、白い蝉を見た覚えはありません。」

源義高は大姫を不思議そうに見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑みながら小さい声で話し出す。

「大姫様は姫君様です。私達と違って、外で遊ぶ内容も場所も違います。お歳の事も考えると、知らない事が多いかと思います。仮に蝉の脱皮を見ていたとしても、ご記憶に残っていない事も考えられます。」

大姫は源義高に不思議そうに話し出す。

「姫は伊豆に居ました。伊豆にも蝉は居ました。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「姫が伊豆に居た事と蝉の脱皮を見た事がないのは、別な話だろ。」

大姫は考え込み始めた。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

大姫は源義高を見ると、笑顔で話し出す。

「七年後に土から出てくる蝉は、義高様と小太郎殿と逢った年の蝉になりますね!」

源義高は蝉が脱皮する様子を寂しそうに見た。

大姫は源義高を不思議そうに見た。


蝉時雨は辺りに強く響いている。


大姫は蝉が脱皮する様子をじっと見た。


源義高と海野小太郎幸氏は、大姫から僅かに離れた。


源義高は海野小太郎幸氏に寂しそうに話し出す。

「小太郎。近い内に俺にもしもの事が遭った時には、成長をした大姫は俺の事を忘れているかも知れないな。何だか寂しい気持ちになるな。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様。その様な事を言ってはいけません。大姫様と義高様は、これからもずっと一緒に過ごす事になります。忘れたくても忘れる事は出来ません。仮に戦などで離れたとしても、たくさんの時間を一緒に過ごしています。忘れる事はありえません。」

源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様。七年後に土から出てくる蝉を、三人で一緒に見ましょう。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「七年後になると、大姫様は十三歳で、義高様が十八歳になりますね。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで頷いた。

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「その頃には、もしかしたらお二人の間にお子様がいらっしゃるかも知れませんね。」

源義高は大姫を見ると、海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。

「想像が出来ないな。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「私は、父上と母上と呼ばれているお二人の姿を、ぜひ見たいです。」

源義高は海野小太郎幸氏を見ると、微笑んで話し出す。

「小太郎もその頃には父親になっているかも知れないな。俺も小太郎が父親になった姿を見たいな。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「七年後に子供と一緒に蝉時雨を聞きたいですね。」

源義高は大姫を見ると、海野小太郎幸氏に苦笑しながら話し出す。

「まずは、大姫の成長を待つ必要があるな。次に、小太郎は良い相手を見付ける必要があるな。」

海野小太郎幸氏は源義高に苦笑しながら話し出す。

「確かに相手を見つけないといけませんね。そう考えると、七年というのは長くも短くも感じます。」

源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


大姫は源義高と海野小太郎幸氏の傍に来ると、不思議そうに話し出す。

「お二人で何をお話しされているのですか?」

源義高は大姫に素っ気無く話し出す。

「ひ、み、つ。」

大姫は海野小太郎を不思議そうに見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「秘密です。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を不思議そうに見た。

源義高は大姫に微笑んで話し出す。

「やっぱり外は暑いな。無理をして倒れたら困るから、小御所に戻ろう。」

大姫は源義高に不思議そうに頷いた。

源義高は大姫を微笑んで見た。

大姫は源義高に笑顔で手を差し出した。

源義高は大姫の手を普通の表情で握った。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで手を差し出した。

海野小太郎幸氏は大姫の手を微笑みながら握った。


大姫、源義高、海野小太郎幸氏は、手を繋ぎながら、蝉時雨の響く中を小御所へと帰って行った。


すると切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「夏になると蝉時雨が聞こえてきます・・・」

「七年後の蝉時雨を一緒に聞きたいです・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「どこにいるのですか・・・?」

「寂しいです・・・」

「もっとたくさんお話しがしたいです・・・」

「七年後でなくても構わないから、一緒に蝉時雨を聞きたいです・・・」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

物語の展開や雰囲気を出来るだけ残しながら改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上の点、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正しながら書いていきます。

「盛夏(せいか)」は、文字通り「夏の暑い盛りの時期。真夏。」という意味です。


「蝉時雨(せみしぐれ)」は、「多くの蝉が一斉に鳴きたてる声を時雨の降る音に見立てた言葉」です。

大姫は蝉についての話しを源義高と海野小太郎幸氏から不思議そうに聞いています。

大姫が鎌倉に来る前は、源頼朝と北条政子の行動から考えると、伊豆に居たと思われます。

大姫は女の子という事や年齢などから考えると、蝉の事を詳しく知らない可能性があると考えました。

そのため、蝉の話しを不思議そうに聞いたり、幼虫をじっと見ていたりしています。

大姫達の時代から、蝉が地中に長く居る事を知っていたかは不明ですが、この物語では知っているという設定にしました。

蝉は基本的には地中に居る期間が長いです。

約七年後に土から出るという話しがあります。

しかし、蝉の種類によっては、七年も土の中に居ない事があるそうです。

蝉の居る場所や気候などによって、土の中に居る期間が前後をするという話もあります。

この物語では、蝉が土の中に居る期間は、七年として物語を書いています。

蝉が脱皮をする時間は、本来だと日没から深夜に掛けてとなります。

しかし、私が見たのは、午前中でした。

まれにですが、日没や深夜以外に脱皮をする蝉もいるそうです。

陽のある時間の場合は、日陰などの暗い場所で脱皮をするそうです。

そこから考えると、私が見ていた蝉の脱皮はかなり珍しいという事になります。

私が蝉の脱皮を見たのは森の中ですが、午前中の脱皮を見たのは不思議な感じがします。

蝉の生態から考えると、大姫達が三人で一緒に居た時に見た蝉の幼虫は、約七年後に土から出てくる事になります。

七年後の源義高は既に討たれているために亡くなっています。

何事も起こらなければ、七年後の大姫と源義高には、子供が居た可能性もあります。

源義高と海野小太郎幸氏が、少しだけ七年後の話しをしています。

生きる希望をもって話しをしている源義高と海野小太郎幸氏です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください