このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜


〜 風花 輝く雪の中で 〜


ある寒い冬の日の事。

とても良い天気で青い空が広がっている。

源義高のもとに一通の文が届いた。


源義高と海野小太郎幸氏は、文をじっと見つめている。

源義高が海野小太郎幸氏を真剣な顔で見つめた。

海野小太郎幸氏も真剣な顔で源義高をじっと見つめた。

源義高は文を読まずに机に置くと、海野小太郎幸氏に明るく話し出す。

「後で読むことにするよ。その時は一緒に読もう。」

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見ながら、静かな声で返事をする。

「はい。」

源義高と海野小太郎幸氏が部屋で話しを続けようとした。

すると、二人のもとに元気良く走ってくる足音が聞こえてきた。


海野小太郎幸氏が源義高に微笑んで話し掛ける。

「大姫様がいらっしゃいましたね。」

源義高はため息を付いた。

海野小太郎幸氏は微笑んで源義高を見ている。

源義高は海野小太郎幸氏を見てため息をつきながら話し掛ける。

「今日はどうしよう。」

海野小太郎幸氏は源義高を見ると微笑んで話し掛ける。

「義高様。お話しの内容とは逆で、毎日楽しそうに大姫様を待っていますよ。」

源義高は不思議そうに海野小太郎幸氏に話し掛ける。

「そうかな?」

海野小太郎幸氏は微笑んで源義高に話し掛ける。

「はい。」

大姫が元気良く源義高の部屋に入ってきた。

「義高様いらっしゃいますか〜!」

源義高は大姫に素っ気無く話し出す。

「俺が居るから来たんだろ。一々言いながら入ってこなくてもいいよ。」

大姫は源義高の様子を気にする事も無く明るく話し出す。

「でも、義高様! 何も言わないでお部屋に入ると、どうして何も言わないで入ってくるのかと言いますよ!」

源義高は大姫の話しにどう返事をして良いのか困っているらしい。

大姫は源義高の前に座って笑顔で返事を待っている。

源義高は大姫を一瞥しただけで何も言わずに黙っている。

海野小太郎幸氏が源義高の方を見て微笑んで話し掛ける。

「義高様。みんなで庭に出ませんか?」

大姫が海野小太郎幸氏の言葉を聞くと源義高の手を喜んで引いた。

源義高は座ったまま普通に大姫を見ている。

大姫は源義高の手を引きながら明るい声で話し出す。

「義高様! 一緒に行きましょう!」

源義高は大姫を見ると黙って立ち上がり、手を繋いで二人で庭に出て行った。

海野小太郎幸氏は二人の様子を見ると、後に続いて庭に出て行った。


三人は庭に出た。

大姫が空を見上げながら源義高に楽しそうに話し出す。

「義高様! 見てください! 綺麗な青い空です!」

源義高は空を見上げた。

大姫は源義高を笑顔で見ている。

源義高も空を黙って見上げた後に、大姫を見ると微笑んで頷いた。

大姫は源義高の様子を見て嬉しそうに話し出す。

「義高様も同じなんですね! 嬉しいです!」

源義高は大姫を微笑んで見ている。

大姫は源義高を微笑んで見ている。

すると、二人の目の前に静かに雪が降ってきた。

大姫が驚いて空を見上げた。

空は晴れて青い色のままなのに雪が降っている。

大姫は驚いて源義高に話し掛ける。

「義高様! 空は晴れているのに雪が降っています!」

源義高は空を一瞥して大姫を見ると微笑んで話し掛ける。

「風花というんだ。」

大姫は源義高に確認するように話し掛ける。

「かざばな?」

源義高は大姫を見ると微笑んで頷いた。

大姫は晴れている空から降ってくる雪を不思議そうに見ている。

源義高は大姫を微笑んで見ながら話し掛ける。

「風花は、空が晴れているのに雪がちらちらと降ってくる雪のことだよ。」

大姫は源義高の話しを感心した様子で聞いている。

源義高は話しが終わると空を見上げて風花を見ている。

大姫は源義高を見ながら微笑んで話し掛ける。

「義高様! 凄いですね! 姫は風花を初めて見ました!」 

源義高は大姫を見ながら微笑んで話し掛ける。

「風花はたぶん長く続かないと思う。しっかりと見ておいた方がいいよ。」

大姫は源義高を見ると笑顔で頷いた。

源義高と大姫は青空から降ってくる風花を見ている。

空は晴れているのに青い空からちらちらと雪が降ってくる。

顔に雪が当たると冷たい。

風花は二人を包み込むように降ってくる。


風花は直ぐに終わってしまった。

大姫が源義高を見ると残念そうに話し掛ける。

「風花が終わってしまいました。」

源義高は大姫を微笑んで黙って見ている。

大姫は源義高を見ながら笑顔で話し掛ける。

「義高様は風花を知っていて凄いです! 物知りです!」

源義高は大姫に少し意地悪く話し掛ける。

「これくらい知っていて当然。ここではめったに見られないだけで、全く見られない訳ではないし。あっ、そうか、大姫は子供だったな。だから、子供の大姫は知らなくても仕方がないな。」

大姫はむきになって源義高に大きな声で話し出す。

「ですから、義高様! 姫は子供ではありません! 義高様の許婚です! 大人です!」

源義高は大姫の様子を見ながら楽しそうに話し出す。

「だ、か、ら、そ、う、い、う、と、こ、ろ、が、こ、ど、も、なんだよ!」

大姫は納得のいかない顔をして源義高を見ている。

海野小太郎幸氏は二人から少し離れた場所に居たが、二人のもとにやって来た。

源義高は大姫に何かを話し掛けようとした。

海野小太郎幸氏が源義高と大姫に微笑んで話し掛ける。

「義高様。大姫様。外に長い時間居て寒くないですか? 風邪をひいたら困ります。そろそろ部屋に戻りませんか?」

源義高は海野小太郎幸氏の方を向いて素っ気無く話し出す。

「小太郎は、外に出ろと言ったり、部屋に戻れと言ったり、面倒な事ばかり言うな。」

海野小太郎幸氏は微笑んで源義高に話し掛ける。

「申し訳ありません。」

源義高は大姫の方を見て微笑んで話し掛ける。

「大姫。これ以上ここに居ると、小太郎がいろいろと言うから部屋に戻ろう。」

大姫は微笑んで源義高を見ると頷いた。

三人は源義高の部屋に戻って行った。


三人が部屋に入ると同時に空が曇り、静かに雪が降り始めた。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「あの時の義高様は、風花を凄く嬉しそうに見ていましたね・・・」

「私が風花を見たのはあの時が初めてでした・・・」

「義高様はどれくらい風花を見たのですか・・・?」

「義高様と一緒に見た風花はあの時だけですね・・・」

「義高様は風花をめったに見られないと言っていましたね・・・」

「それなのに、二人で一緒に見る事ができて嬉しかった・・・」

「義高様ともっとたくさんの風花が見たかった・・・」

「ねぇ、義高様、あの時の文には何が書いてあったの・・・?」

「ねぇ、義高様、良い事なの・・・?」

「それとも、悪い事なの・・・?」

「どうして答えてくれないの・・・?」

「ねぇ、義高様、風花が見たいのに見る事ができないの・・・」

「ねぇ、義高様、どうしてなの・・・?」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

今回は風花を見る物語です。

一年ほど前の冬に書いたのですが発表できませんでした。

冬の季節なので、雪の物語が書きたいと考えて書きました。

気が付いたら冬の季節が過ぎていたので、一年待って冬の季節に発表する事にしました。

少し書き直したので、最初の物語より少しだけ長くなっています。

「“風花”は、風上の降雪地からまばらに吹き送られて降る雪。晴れているのに風かあって雪がちらちらと降ること。」を言うそうです。

この作品の中では、源義高が風花の説明を簡単ですがしています。

「新撰組異聞」でも「風花」の物語書いていますが、雰囲気はかなり違うと思います。

源義仲は京に来た最初の頃は良かったのですが、時間の経過とともにいろいろと問題を起こしていました。

源義高が鎌倉に来た翌年の一月に父親の源義仲が討たれます。

そう言う事もあり、冬の雪が降る頃の源義高の状況は、かなり不安定になっていたと思います。

この時期は、一月になる少し前の物語として考えて書きました。

時期的には今の時期くらいを想定して書きました。

源義仲が京に居ていろいろとやっていた時期に届いた一通の文です。

鎌倉は雪が頻繁に降る地域ではないですが、偶然に風花が降ったという設定で話しを書きました。

大姫が風花をもう一度だけ見たくても見られない可能性はあると思います。

これは、たった一回だけ源義高と大姫の二人で風花を見る事が出来た物語です。

たった一回だけの冬を一緒に過ごした大姫と源義高の物語です。

切ない話ですが、大姫と源義高が雪国でないのに風花を見る事が出来た物語です。

実際の二人も風花を見ていればいいのにと思いました。

この物語では、年を越していませんが、年を越すと二人の年齢は、大姫は七歳、源義高は十二歳になります。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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