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鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜
〜 桜の記憶 もう一つの出逢い 〜
源義高と海野小太郎幸氏が鎌倉に来る前の事。
今は春。
木曾にも春の気配がたくさん訪れている。
春の花といえば桜。
綺麗な桜が辺り一面に咲いている。
源義高と父である源義仲が居る館の庭にも、綺麗な桜の姿が見られるようになった。
まだ幼さの残っている源義高が、真剣な表情で桜の木を見上げている。
桜の花びらが源義高の目の前に舞い落ちてきた。
源義高は桜の花びらを目で追いながら、掌を上に向けて桜の花びらを受け止めた。
桜の花びらは掌にゆっくりと舞い落ちてくる。
源義高はいつもと違う気配を感じて、不思議そうに辺りを見回した。
源義高と似た年齢の男の子が、同じ様に掌で桜の花びらを受け止めている。
男の子の格好を見ると、源義高と同じく武士の子供の姿をしている。
源義高は不思議そうに男の子を見ている。
男の子は源義高をゆっくりと見た。
源義高は男の子を黙って見ている。
男の子は源義高に軽く礼をすると、黙って居なくなった。
源義高は男の子の去っていく後姿を、不思議そうに見ている。
桜の木は辺り一面に花びらを舞い散らせている。
男の子の居た跡は桜の花びらで覆われてしまった。
それから少し後の事。
源義高は源義仲の部屋に呼ばれた。
源義仲は源義高に真剣な表情で話し掛ける。
「義高。お前は俺の嫡男だ。早く一人前の木曾の武士になって欲しい。」
源義高は真剣な表情で源義仲に返事をする。
「はい。早く一人前の武士になれるように、日々精進をしていきたいと思います。」
源義仲は源義高に真剣な表情で話し掛ける。
「今日からお前に供を付ける事にする。」
源義高は真剣な表情で源義仲を見ると頷いた。
源義仲は部屋の外に真剣な表情で声を掛ける。
「入って来ていいぞ。」
部屋の外からは、幼さは残っているがはっきりとした声が聞こえてきた。
「はい。失礼いたします。」
源義高は部屋の外の様子を真剣な表情で見た。
源義高とほとんど同じ歳に見える男の子が、父親と思われる武士と一緒に、部屋の中に入ってきた。
源義仲は笑顔で源義高に話し掛ける。
「義高。この子は海野の一族の小太郎と言う。今日からお前の供になる。主人としてしっかりと小太郎の面倒を見てやれよ。」
源義高は真剣な表情で小太郎と呼ばれた男の子を見た。
海野小太郎は源義高に真剣な表情で話し出す。
「海野の小太郎と申します。これから義高様のお傍に居る事が多くなります。至らぬところがたくさんあると思います。その時はご指南をして頂けると嬉しく思います。よろしくお願いいたします。」
源義高は真剣な表情で海野小太郎を見ながら頷いた。
海野小太郎は真剣な表情で源義高に礼をした。
源義高は真剣な表情で海野小太郎に話し掛ける。
「義高です。これからよろしく頼みます。」
海野小太郎は真剣な表情で源義高に礼をした。
源義高は真剣な表情で海野小太郎に話し掛ける。
「外に出ないか?」
海野小太郎は真剣な表情で源義高に返事をする。
「はい。」
源義高と海野小太郎は、部屋から出て行った。
源義高と海野小太郎は、桜の木の下にやってきた。
源義高は海野小太郎に普通に話し出す。
「小太郎と呼んでいいのかな?」
海野小太郎は真剣な表情で源義高に話し出す。
「はい。」
源義高は海野小太郎に普通に話し掛ける。
「主人と言っても、私も一人前には程遠い。至らない事もたくさんあると思う。形は主人という事になるけれど、いろいろと教えて欲しい。」
海野小太郎は源義高に軽く礼をした。
源義高は微笑んで海野小太郎に話し掛ける。
「よろしく。小太郎。」
海野小太郎は微笑んで源義高を見ると、軽く礼をした。
源義高と海野小太郎の間に、桜の花びらが舞い落ちてきた。
源義高と海野小太郎は、桜の花びらの舞い落ちてくる姿を黙って見ている。
源義高は桜の花びらを取ろうとして手を出した。
海野小太郎も桜の花びらを取ろうと手を出した。
源義高と海野小太郎の目があった。
源義高と海野小太郎は、お互いに微笑んだ。
この出来事は、源義高と海野小太郎幸氏の二人が、初めて出逢った桜の咲く頃の物語。
それから数年の年月が経った。
源義高と海野小太郎が居る木曾も春を迎えた。
桜が綺麗な姿で咲いている。
源義高は辺りを不思議そうに見回している。
海野小太郎が源義高の姿を見つけると、不思議そうに声を掛ける。
「義高様? どうかされましたか?」
源義高は海野小太郎を見ると、少しだけふてくされた様子で話し掛ける。
「小太郎。なぜ黙って居なくなったんだ? 一緒に弓の稽古をしようと話しをしたじゃないか。」
海野小太郎は申し訳なさそうに源義高に話し掛ける。
「父に呼ばれたので、義高様のお傍から少し離れました。義高様に声を掛けようとしたのですが、近くにお姿が見当たらなかったので、そのまま父のもとに向かいました。」
源義高は少しだけ不機嫌そうに、海野小太郎に話し掛ける。
「でも、黙って居なくならなくてもいいだろ。誰かに言付けをしていくという方法もあっただろ。」
海野小太郎は申し訳なさそうに源義高に話し掛ける。
「近くに誰も居なかったので言付けが出来ませんでした。申し訳ありませんでした。」
源義高は少し不機嫌そうに海野小太郎に話し掛ける。
「だったら、僕と稽古の予定があると、父親に話しをすれば良かっただろ。」
海野小太郎は源義高に申し訳なさそうに話し掛ける。
「申し訳ありませんでした。次から気を付けます。」
源義高が少しだけ不機嫌そうに海野小太郎に何かを話し掛けようとした。
源義仲が源義高と海野小太郎のもとに現れた。
源義高と海野小太郎は、源義仲を見た。
源義仲は源義高に普通に話し掛ける。
「義高。一緒に来い。」
源義高は真剣な表情で源義仲に返事をした。
「はい。」
源義仲と源義高は、一緒に居なくなった。
海野小太郎は心配そうに、源義仲と源義高の居なくなる姿を見ている。
風に乗って桜の花びらが海野小太郎のもとに舞い落ちてきた。
海野小太郎は自分の着物に付いた桜の花びらを手に取った。
辺りには海野小太郎と桜だけの姿しかない。
静かな世界になっている。
海野小太郎は手に取った桜の花びらを、心配そうな表情で見た。
ここは、源義仲の部屋。
源義仲は源義高に普通に話し掛ける。
「義高。さっきの態度は何だ。」
源義高は源義仲に申し訳なさそうに話し掛ける。
「小太郎が黙って居なくなったので、その話しをしていました。声を荒げてしまい、申し訳ありませんでした。」
源義仲は源義高に普通に話し掛ける。
「自分が何をしたのか、だいたいの事はわかっている様子だな。」
源義高は源義仲を真剣な表情で見ている。
源義仲は源義高に普通に話し掛ける。
「いいか、義高。お前は俺の嫡男だ。幼くても木曾の武士だ。黙って居なくなった海野小太郎を諭すのは良い。だが、今の話しは周りに見える場所で長々と諭す程の事なのか?」
源義高は源義仲に申し訳なさそうに話し出す。
「私も小太郎に言い過ぎました。父上の言うとおり、今は長々と諭す事ではないと思います。ただ、弓の稽古が出来なかったので、機嫌が悪くなってしまって、長々と話しをしてしまいました。配慮が足りませんでした。申し訳ありませんでした。」
源義仲は源義高に少しだけ嬉しそうな表情で話し出す。
「稽古に真剣になる事は良い事だ。義高。これからもしっかりと精進しろよ。」
源義高は源義仲に真剣な表情で話し出す。
「はい。」
源義仲は源義高に嬉しそうに話し出す。
「お前は俺の嫡男だ。木曾の武士だ。この事は何があっても忘れるな。」
源義高は源義仲に真剣な表情で話し掛ける。
「はい。」
源義仲は源義高に普通に話し掛ける。
「小太郎の事はお前に任せる。後でしっかりと話しをしておけ。」
源義高は源義仲に真剣な表情で話し出す。
「はい。」
源義仲は源義高を少しだけ嬉しそうな表情で見ている。
源義高は源義仲に真剣な表情で話し掛ける。
「失礼いたします。」
源義仲は源義高を黙って見ながら頷いた。
源義高は軽く礼をすると、部屋から出て行った。
源義高は辺りを見回したが、海野小太郎の姿はない。
地面は桜の花びらに覆われ始めている。
源義高は寂しそうに、一人で館の外へ出ていった。
源義高は館から少し離れた場所にある桜の木の下にやってきた。
地面は辺り一面桜色になっている。
源義高は桜の木の下に座った。
海野小太郎が源義高の後ろから声を掛けた。
「義高様。供も連れずにお一人で出掛けられては危険です。義仲様に叱られてしまいます。」
源義高は座ったまま、海野小太郎を見ないで話し掛ける。
「小太郎が居なかったから一人で出掛けた。それに、小太郎だったら直ぐに来るから、一人で出掛けた。」
海野小太郎は源義高の横に座ると、微笑んで話し掛ける。
「義高様は木曾様のご嫡男です。お一人で気軽に出掛けられては、危険な事も多いです。もう少し気を付けられた方が良いと思います。」
源義高は海野小太郎を見ると、普通に話し掛ける。
「そうだよね。気を付けるよ。」
海野小太郎は源義高に申し訳なさそうに話し掛ける。
「先程、義仲様とお話しをされていましたよね。私の事で何かを言われたのではないですか?」
源義高は海野小太郎に微笑んで話し掛ける。
「父さんの話しは、僕と小太郎の事ではなかったよ。安心して良いよ。」
海野小太郎は源義高に申し訳なさそうに話し掛ける。
「義高様。先程はご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした。次からは気を付けます。これからも更なるご指南をお願いいたします。」
源義高は海野小太郎に微笑んで話し掛ける。
「僕から小太郎に教える事は何も無いよ。逆にいろいろと教えてもらっているじゃないか。これからもいろいろと教えて欲しいと思っているんだ。」
海野小太郎は源義高に微笑んで話し掛ける。
「義高様は立派な方です。私が教える事は何もありません。」
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。
「少なくても一つは有るよ。」
海野小太郎は源義高を不思議そうに見た。
源義高は海野小太郎に微笑んで話し掛ける。
「弓の稽古だよ。」
海野小太郎は源義高を微笑んで見た。
源義高は海野小太郎を微笑んで見た。
海野小太郎は源義高に微笑んで話し掛ける。
「義高様。これからは、黙って居なくなる事はしません。誰かに用件を伝えてから居なくなります。義高様を一番に考えます。」
源義高は海野小太郎に微笑んで話し掛ける。
「小太郎。ありがとう。」
海野小太郎は源義高に微笑んで話し掛ける。
「私はずっと義高様のお傍に居たいと思います。これからもよろしくお願いいたします。」
源義高は海野小太郎に微笑んで話し掛ける。
「小太郎。ありがとう。」
海野小太郎は源義高を微笑んで見た。
源義高は海野小太郎に微笑んで話し掛ける。
「僕ももっとしっかりとするね。」
海野小太郎は源義高に微笑んで話し掛ける。
「私ももっとしっかりとします。」
源義高が海野小太郎に何かを話し掛けようとした。
桜の花びらが源義高と海野小太郎のもとに舞い落ちてきた。
源義高が桜の花びらを取ろうと手を出した。
海野小太郎が桜の花びらを取ろうと手を出した。
源義高と海野小太郎は、目があった。
源義高と海野小太郎は、お互いを微笑んで見た。
海野小太郎が源義高に、思い出したように慌てて話し出す。
「義高様! 弓の稽古をしていません!」
源義高は海野小太郎に慌てた様子で話し掛ける。
「そうだ! 早く戻らないと! 父上に怒られる!」
源義高と海野小太郎は、急いで立ち上がった。
桜の木からは花びらが次々に舞い落ちてきている。
源義高と海野小太郎は、桜の花びらを舞い上がらせながら、走って館へと戻って行った。
源義高と海野小太郎は、急いで館に戻ってきた。
源義仲が源義高と海野小太郎の二人を睨んで待っていた。
海野小太郎が源義仲に直ぐに深く頭を下げると、申し訳なさそうに話し出す。
「義仲様。申し訳ありませんでした。」
源義高は驚いて海野小太郎を見た。
海野小太郎は源義仲に深く頭を下げたまま、申し訳なさそうに話し出す。
「自分の不注意で義高様に迷惑を掛けてしまった事に落ち込んでしまい、館から離れてしまいました。義高様は私の事を心配して探していたそうです。」
源義仲は海野小太郎を睨んでいる。
海野小太郎は源義仲に深く頭を下げたまま、申し訳なさそうに話し掛ける。
「義高様と弓の稽古を一緒にすると、約束をしていたのに、放って居なくなりました。私に至らない事が多いために、義高様の稽古の時間が少なくなってしまいました。本当に申し訳ありませんでした。」
源義高は源義仲に申し訳なさそうに話し掛ける。
「小太郎に上手く説明が出来なくて時間が掛かってしまいました。私の責任です。父上にも迷惑を掛けました。もっとしっかりとします。本当に申し訳がありませんでした。」
源義仲は源義高と海野小太郎幸氏を睨んでいる。
源義高と海野小太郎の二人は、深く頭を下げている。
源義仲は源義高と海野小太郎に普通に話し掛ける。
「お前達の話しはわかった。次から気を付けろ。」
源義高と海野小太郎は、真剣な表情で同時に返事をする。
「はい!」
源義仲は源義高と海野小太郎に普通に話し掛ける。
「早く稽古を始めろ。」
源義高と海野小太郎は、真剣な表情で同時に返事をする。
「はい!」
源義仲は源義高と海野小太郎の様子を確認すると、黙って去っていった。
源義仲が後ろを振り向いた。
源義高と海野小太郎は、真剣な表情で弓の稽古を始めている。
源義仲は源義高と海野小太郎の姿を見ながら、一瞬だけ微笑んだ。
源義高と海野小太郎は、源義仲の様子に気が付かずに、弓の稽古を続けている。
源義仲は直ぐにいつもの表情に戻ると、黙って去っていった。
「・・・義高様。大丈夫ですか?」
源義高は、急に海野小太郎幸氏に話し掛けられたために、ゆっくりと目を開けた。
海野小太郎幸氏が源義高を心配そうに見ている。
源義高は机に向かったまま寝てしまったらしい。
海野小太郎幸氏が源義高に心配そうに話し掛ける。
「義高様。お体の調子が良くないのではないですか?」
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。
「大丈夫だよ。」
海野小太郎幸氏は源義高を心配そうに見ている。
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。
「夢を見ていたんだ。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し掛ける。
「どのような夢を見ていらしたのですか?」
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。
「小太郎と初めて逢った時の夢。」
海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。
「後は、弓の稽古の約束をしたのに、小太郎が居なかった時の夢。」
海野小太郎幸氏は源義高に申し訳なさそうに話し掛ける。
「あの時は申し訳ありませんでした。」
源義高は海野小太郎幸氏に少し驚いた表情で話し掛ける。
「小太郎も覚えていたんだ。」
海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見ながら頷いた。
源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し掛ける。
「小太郎。これからもよろしく頼むな。」
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで返事をする。
「これからもご指南をお願いいたします。」
源義高と海野小太郎幸氏は、お互いの顔を見ると微笑んだ。
部屋の外からいつもの騒がしい足音が聞こえてきた。
源義高と海野小太郎幸氏は、部屋の外を一瞥してから、再び顔を見合わせて微笑んだ。
大姫が源義高の部屋の中に元気良く入ってきた。
源義高は素っ気無く大姫に話し掛ける。
「何か用か?」
大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。
「はい! 義高様と小太郎殿とお話しをしにきました!」
海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し掛ける。
「大姫様。お元気そうで安心しました。」
大姫は海野小太郎幸氏に笑顔で話し掛ける。
「はい! 姫は元気です! 義高様も小太郎殿もお元気そうですね! 姫は嬉しいです!」
源義高は大姫に素っ気無く話し掛ける。
「それで、大姫の話しって何だ?」
大姫は源義高を見ると考え込んでしまった。
源義高は大姫に呆れた様子で話し出す。
「話す事を決めていないのに、話しをしにきたのか?」
大姫は源義高を見ると笑顔で話し掛ける。
「桜を見ながらお話しをしたくて来ました!」
源義高は大姫に微笑んで話し掛ける。
「小太郎と三人で出掛けようか。」
大姫は源義高を見ながら笑顔で頷いた。
源義高、大姫、海野小太郎幸氏の三人は、小御所から出掛けて行った。
源義高と大姫と海野小太郎幸氏の三人は、桜の咲いている場所にやってきた。
大姫は楽しそうに辺りを見ている。
海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し掛ける。
「義高様。せっかくですから、私達が初めて逢った時の話しなどを、大姫様にされてみたらいかがですか?」
源義高は海野小太郎幸氏を不思議そうに見た。
大姫は源義高に笑顔で話し掛ける。
「義高様! お話ししてください! 楽しみです!」
源義高は大姫に微笑んで話し掛ける。
「俺と小太郎が初めて逢ったのは、こんなふうに桜が綺麗に咲いている時だったんだ。桜の花びらが風に舞って綺麗だったんだ。」
大姫は源義高の話を嬉しそうに聞いている。
源義高は大姫に微笑んで話し掛ける。
「それで、その時に・・・」
優しい風が吹いてきた。
風に乗って桜の花びらが舞い上がった。
源義高、大姫、海野小太郎幸氏の三人は、桜の花びらの舞い上がる様子を見た。
桜の花びらは青空の下で綺麗な姿で舞っている。
源義高と大姫と海野小太郎幸氏の三人は、微笑んで桜の舞っている様子を見続けた。
すると、切ない声が聞こえてきた。
「ねぇ、義高様・・・」
「あの時の義高様のお話しはとても楽しかったです・・・」
「義高様はとても楽しそうにお話しをしていましたね・・・」
「義高様の笑顔も見る事が出来て、とても嬉しかったです・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
「もっとたくさんお話しがしたいです・・・」
「もっとたくさんのお話しが聞きたいです・・・」
「義高様に逢いたいです・・・」
「物凄く逢いたいです・・・」
「ねぇ、義高様・・・」
* * * * * *
ここからは後書きになります。
源義高と海野小太郎幸氏が、初めて出逢った時とそれから数年後の物語です。
源義高と海野小太郎幸氏の二人の最初の出逢いの時期は、よくわかりませんでした。
それならば、桜の季節に逢ったことにしようと思って、この物語を考えました。
源義高の名前のですが、幼い頃の呼び名はわかりませんでした。
海野小太郎幸氏ですが、時期的に推測すると「小太郎」と呼ばれていた可能性は高いと思います。
ちなみに、「小太郎」という名前には、「太郎の息子」という意味があるそうです。
源義高に幼い頃の呼び名を考えようと思ったのですが、しっくりとくる名前が思いつきませんでした。
そのため、源義高と海野小太郎幸氏の幼い頃の呼び方は、「小太郎」と「義高」となっています。
今回の物語の最後の方の時間設定は、鎌倉に着てから一年後の春になります。
数ヶ月の後には、源義高が鎌倉を脱出したり、討たれてしまったりなどという出来事が起こります。
大姫、源義高、海野小太郎幸氏の三人での鎌倉の生活に、大きな変化が現れる頃になります。
ただし、あまり物悲しい感じにしないようにして物語を考えました。
実は、海野小太郎幸氏ですが、鎌倉での記録上では、源義高が鎌倉脱出の時に小御所で源義高の身代わりになっていたという出来事が、海野小太郎幸氏という名前の出てくる初めての記録だそうです。
源義高と一緒に居た時の海野小太郎幸氏は、どんな様子だったのかは記録上確認がとれていないようです。
海野小太郎幸氏の身分や立場からすると、余程の事がない限り、わからないままなのではないか
と思います。
私は、実際の海野小太郎幸氏が、この「鎌倉夢語り」の海野小太郎幸氏のようだったらいいなと思っています。
そうすれば、源義高も鎌倉に居る時に、辛くて寂しい思いをしていなかったと思います。
大姫もそんな源義高と海野小太郎幸氏との生活を、楽しんでいたらいいなと思いました。
この物語は鎌倉が舞台ではなくて木曾が中心になっていますが、大姫、源義高、海野小太郎幸氏の鎌倉での桜を巡る物語となっています。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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