このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

鎌倉夢語り 〜 大姫と源義高 編 〜


〜 木枯らしの吹く頃 大銀杏を巡る想い 〜


今は冬の初め。


ここは、鎌倉。


冬の気配に包まれ始めた。


ここは、小御所。


源義高の部屋。


源義高は普通に居る。

海野小太郎幸氏も普通に居る。


大姫が部屋の中に笑顔で入ってきた。


源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様! 小太郎殿! 大銀杏を見に行きましょう!」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫はくしゃみをした。

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。風邪をひいたのか?」

大姫は源義高に笑顔で話し出す。

「風邪はひいていません!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大銀杏の見頃は過ぎた。今日は昨日より寒さを感じる。大銀杏は僅かでも寒さが和らいだ日に見に行こう。」

大姫は源義高を寂しく見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで話し出す。

「大姫様。寒さを感じる中を出掛けると、風邪が悪化する可能性があります。義高様が大姫様の心配をします。義高様が責任を感じて悩みます。」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

大姫は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「分かりました。大銀杏は別な日に見に行きます。」

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「義高様。小太郎殿。大銀杏の葉はたくさん落ちました。大銀杏の葉は枝に僅かに残るだけになりました。大銀杏の下を覆う黄金色の葉は、風が飛ばして少なくなりました。姫は義高様と小太郎殿と、たくさんの姿の大銀杏を見たいです。明日以降に見に行きましょう。」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、小御所。


源義高の部屋。


源義高は普通に居る。

海野小太郎幸氏は普通に居る。


源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「小太郎。大姫を説得する理由を聞く間に、恥ずかしい気持ちになった。大姫を別な理由で説得して欲しかった。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「私は義高様の想いを代弁しました。義高様は恥ずかしい気持ちになったのですね。不思議ですね。」

源義高は海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「小太郎に幾度も助けてもらっている。小太郎への礼を兼ねて、同意していないが、同意する振りをする。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

源義高は海野小太郎幸氏を微笑んで見た。

海野小太郎幸氏も源義高を微笑んで見た。


翌日の事。


ここは、鎌倉。


木枯らしが吹いている。


ここは、小御所。


源義高の部屋。


源義高は普通に居る。


海野小太郎幸氏が部屋の中に普通に入ってきた。


源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高に普通に話し出す。

「大姫様付きの侍女が、大姫様が風邪のために床に着いていると教えてくれました。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫を見舞う。大姫が小太郎に逢いたいと話した時に、小太郎が傍に居ないと困る。小太郎も一緒に来てくれ。」

海野小太郎幸氏は源義高に普通の表情で軽く礼をした。


源義高は部屋を普通に出ていった。

海野小太郎幸氏も部屋を普通に出ていった。


少し後の事。


ここは、小御所。


大姫の部屋。


大姫は床の中で寂しく横になっている。


源義高は部屋の中に普通に入ってきた。

海野小太郎幸氏も部屋の中に普通に入ってきた。


大姫は床の上に体を起こすと、源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫を微笑んで見た。

大姫は床の上に体を起こして、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様と小太郎殿に、逢えました! 嬉しいです!」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「俺の想像より、大姫の体調が落ち着いている。安心した。」

大姫は床の上に体を起こして、源義高に微笑んで話し出す。

「姫が数回ほどくしゃみをしました。侍女達が姫を心配して床の用意をしました。姫は元気です。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。くしゃみをするのは、風邪をひいた証拠だ。」

大姫は床の上に体を起こして、源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「義高様。小太郎殿。姫は元気です。大銀杏を見に行きたいです。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「木枯らしが吹いている。大姫は風邪をひいている。今日は大銀杏を見に行くのは止めよう。」

大姫は床の上に体を起こして、源義高に寂しく話し出す。

「姫は義高様と小太郎殿と大銀杏がたくさん見たいです。義高様と小太郎殿と大銀杏を見る日が減ります。寂しいです。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。木枯らしの吹いた翌日か翌々日は、天候の落ち着く日が多い。大姫の風邪の症状が軽く、大姫がしっかりと療養すれば、翌日か翌々日には体調が落ち着く可能性がある。好き嫌いを言わずに、食事を摂るように。薬が苦いと言わずに、薬を飲むように。」

大姫は床の上に体を起こして、源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は床の上に体を起こして、源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「義高様。小太郎殿。今日もたくさん話したいです。」

源義高は大姫に僅かに呆れて話し出す。

「大姫。俺の話す意味が本当に分かったのか?」

大姫は床の上に体を起こして、源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「仕方が無いな。」

大姫は床の上に体を起こして、源義高を不思議な様子で見た。

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫。体を休めるために、床に横になって話せ。」

大姫は床の上に体を起こして、源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は大姫に普通の表情で頷いた。

大姫は床に微笑んで横になった。

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫と源義高を微笑んで見た。

大姫は床の中で、源義高と海野小太郎幸氏を微笑んで見た。


暫く後の事。


ここは、小御所。


源義高の部屋。


源義高は部屋の中に普通に入ってきた。

海野小太郎幸氏も部屋の中に普通に入ってきた。


源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「大姫の満面の笑顔を見て、気が抜けてしまった。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様は源氏の嫡流の姫様です。僅かな体調の変化にも心配をする方が多くなります。」

源義高は海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「頼朝様と政子様は、大姫の見舞いに来ていない。頼朝様も政子様も、共に忙しく過ごしている。頼朝様も政子様も、大姫の風邪の症状が軽いから、見舞いに来ないのかも知れない。理解はするが、療養中の大姫の笑顔を見る間に、複雑な思いになった。」

海野小太郎幸氏は源義高に微笑んで話し出す。

「大姫様と大姫様付きの侍女達は、義高様がお見舞いに訪れて喜んでいました。政子様も、義高様が大姫様のお見舞いに訪れたと知れば喜びます。政子様は、義高様が大姫様のお見舞いに訪れると判断して、遠慮した可能性があります。」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は源義高を微笑んで見た。


翌々日の事。


ここは、鎌倉。


小春日和になっている。


ここは、鶴岡八幡宮。


境内。


大銀杏の傍。


黄金色の葉は、枝からほとんど離れている。

地面に落ちた黄金色の葉は、風が吹き飛ばしたために少なくなっている。


大姫は大銀杏を笑顔で見ている。

源義高は大銀杏を普通の表情で見ている。

海野小太郎幸氏は大銀杏を微笑んで見ている。


源義高は大銀杏を見ながら、海野小太郎幸氏に普通に話し出す。

「冬だな。」

海野小太郎幸氏は源義高を見ると、源義高に微笑んで話し出す。

「はい。」

源義高は海野小太郎幸氏を普通の表情で見た。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を見ると、源義高と海野小太郎幸氏に笑顔で話し出す。

「義高様と小太郎殿と、大銀杏を見ました! 嬉しいです!」

源義高は大姫を普通の表情で見た。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

大姫は源義高と海野小太郎幸氏を笑顔で見た。

源義高は大姫を見ると、大姫に普通に話し出す。

「大姫。帰るぞ。」

大姫は源義高に寂しく話し出す。

「今日は暖かいです。姫は元気です。大銀杏を見たいです。来て間もないです。寂しいです。」

源義高は大姫に普通に話し出す。

「大姫は風邪の症状が軽い間にしっかりと療養したから、早く治った。今日の天気は穏やかだから、政子様は大姫が出掛ける行為を許した。大姫が無理をして再び風邪をひくと、政子様や大姫付きの侍女が困るぞ。」

大姫は源義高を寂しく見た。


黄金色の大銀杏の葉が、ゆっくりと舞い落ちてきた。


源義高は黄金色の大銀杏の葉を普通に取った。


大姫は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様。凄いです。」

源義高は黄金色の大銀杏の葉を持ち、大姫に普通に話し出す。

「凄くない。普通だ。」

大姫は源義高に微笑んで話し出す。

「義高様は凄いです。」

源義高は黄金色の大銀杏の葉を持ち、大姫を普通の表情で見た。

大姫は源義高を微笑んで見た。

源義高は黄金色の大銀杏の葉を持ち、大姫に普通に話し出す。

「大姫。大銀杏の葉を小御所に持ち帰って、大銀杏の葉を見ながら話そう。」

大姫は源義高と海野小太郎幸氏に微笑んで話し出す。

「今日は帰ります。明日も大銀杏を見に来ます。明日のために大銀杏の葉は置いて帰ります。明日のために早く休みます。義高様。小太郎殿。今日も姫の部屋でたくさん話してください。」

源義高は黄金色の大銀杏の葉を持ち、大姫に普通の表情で頷いた。

海野小太郎幸氏は大姫に微笑んで軽く礼をした。

源義高は黄金色の大銀杏の葉を大銀杏の近くに静かに置いた。

大姫は源義高を微笑んで見た。


大姫は微笑んで歩き出した。

源義高は普通に歩き出した。

海野小太郎幸氏は微笑んで歩き出した。


すると、切ない声が聞こえてきた。

「ねぇ、義高様・・・」

「木枯らしが吹く頃になっています・・・」

「大銀杏の葉が、枝にも地面にも見られなくなりました・・・」

「大銀杏は今も様々な姿を見せてくれます・・・」

「ねぇ、義高様・・・」

「今の時季に体調が悪くなると、あの日の出来事を思い出します・・・」

「私が早く元気になれば、義高様とたくさん話しが出来るのでしょうか・・・?」

「私が早く元気になっても、義高様とたくさん話しが出来ないのでしょうか・・・?」

「ねぇ、義高様・・・」




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

「木枯らし(こがらし)」についてです。

「秋の終わりから冬の始めに、木の葉を払い落としながら吹く冷たい強い風」です。

木を枯れ木のように見せてしまう風で、気圧配置が西高東低型になった時に吹く北風です。

真冬の季節風のように何日も吹き続ける事は滅多になく、木枯しの翌日か翌々日は、小春日和のようになる事が多いです。

初冬の季語です。

気象庁では、10月中旬頃〜11月末に掛けて、西高東低の冬型の気圧配置になった時、北よりの風速8m以上の風が吹くと、その風を「木枯らし」と認定します。

「小春日和(こはるびより)」についてです。

「小春(こはる)」は、「陰暦十月の異称」です。

現在の暦で、11月〜12月中旬に相当する期間です。

日向(ひなた)は暖かいですが、日陰はひんやりとして、夜は冷え込みます。

冬の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください