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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜
〜 文紡ぎ 睦月 絶ゆることなく咲きわたるべし 〜
登場人物
松姫[武田信玄の五女]、奇妙丸[織田信長の嫡男](文だけの登場)、
武田信玄、油川夫人[武田信玄の側室、仁科五郎盛信と菊姫と松姫の母]、
仁科五郎盛信[武田信玄の五男]、菊姫[武田信玄の四女]
「万代に 年は来経とも 梅の花 絶ゆることなく 咲きわたるべし」
「万葉集 第五巻 八三〇番」より
作者:筑前介佐氏首(ちくぜんのすけさしのこびと)
松姫と奇妙丸の婚約が整ってから三つ目の月を迎えた。
新しい年の最初の月を迎えている。
松姫と奇妙丸にとっては、離れて暮らしてはいるが、二人で一緒に迎える初めての新しい年となる。
そんなある日の事。
ここは、油川夫人、菊姫、松姫の住んでいる屋敷の中。
松姫は菊姫の部屋を微笑んで訪れた。
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「姉上。こんにちは。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「こんにちは。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「五郎兄上が正月の挨拶に見えられる日ですね。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「五郎兄上は城主で忙しいから、私達と話しをする時間は、ほとんど無いと思うわ。寂しいわね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「私も姉上と同じく寂しいです。でも、五郎兄上の元気な姿を見られるだけでも嬉しいです。」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「五郎兄上から文が届きました。松にお祝いを言うのが遅れてしまって申し訳ないと書いてありました。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「五郎兄上もお松の事を気に掛けているのね。」
松姫は菊姫を不思議そうに見た。
菊姫は松姫を微笑んで話し出す。
「父上も母上も五郎兄上もお松の事を気に掛けているのよ。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「姉上。ご自分の名前を忘れています。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
菊姫の部屋の障子が開いた。
菊姫と松姫は、開いた障子の先に居る人物を微笑んで見た。
菊姫の部屋を訪れた人物は、油川夫人だった。
菊姫と松姫は、油川夫人を微笑んで見た。
油川夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「五郎がもう少し経つと到着します。お菊。お松。早く準備をしなさい。」
菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。
「はい。」
松姫は油川夫人に笑顔で話し出す。
「はい!」
油川夫人は菊姫と松姫の返事を確認すると、直ぐに居なくなった。
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「姉上。松は準備のために部屋に戻ります。」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は菊姫の部屋を出て行った。
それから少し後の事。
仁科五郎盛信が、油川夫人、菊姫、松姫の住んでいる屋敷に到着した。
松姫と菊姫は、仁科五郎盛信の前に笑顔で来た。
仁科五郎盛信は菊姫と松姫を微笑んで見た。
松姫は仁科五郎盛信に笑顔で話し出す。
「五郎兄上! こんにちは!」
菊姫は仁科五郎盛信に微笑んで話し出す。
「五郎兄上。こんにちは。」
仁科五郎盛信は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「お菊もお松も元気だね。」
松姫は仁科五郎盛信に笑顔で話し出す。
「はい!」
菊姫は仁科五郎盛信に微笑んで話し出す。
「はい。」
油川夫人は仁科五郎盛信の傍に来ると、微笑んで話し出す。
「元気な姿を見る事が出来て安心しました。」
仁科五郎盛信は油川夫人を見ると、微笑んで話し出す。
「母上のお元気な姿を見る事が出来て、私も安心しました。」
松姫は仁科五郎盛信に笑顔で話し出す。
「私も五郎兄上のお元気な姿を見る事が出来て嬉しいです!」
仁科五郎盛信は松姫を見ると、微笑んで話し出す。
「奇妙丸殿との縁談をとても喜んでいるそうだな。」
松姫は仁科五郎盛信に笑顔で話し出す。
「はい!」
仁科五郎盛信は松姫に微笑んで話し出す。
「お菊と一緒に母上から歌を教えてもらっていると聞いた。覚える事がたくさんあって大変だと思うが、さすがは甲斐の信玄公の娘と言われるようになれよ。」
松姫は仁科五郎盛信に笑顔で話し出す。
「はい!」
仁科五郎盛信は松姫を微笑んで見た。
菊姫は仁科五郎盛信を微笑んで見ている。
仁科五郎盛信は菊姫を見ると、微笑んで話し出す。
「お菊。お松も慣れない事がたくさんあると思う。相談にのってあげるように。」
菊姫は仁科五郎盛信に微笑んで話し出す。
「はい。」
仁科五郎盛信は菊姫に微笑んで頷いた。
仁科五郎盛信は城主としての政務があるため、屋敷に長く滞在する事が出来ない。
短い滞在と出逢いの後に城へと戻っていった。
油川夫人、菊姫、松姫は、直ぐに普段と同じ生活に戻ってしまった。
それから数日後の事。
ここは、油川夫人、菊姫、松姫の住んでいる屋敷。
松姫は菊姫の部屋を訪れた。
菊姫は松姫に寂しそうに話し出す。
「五郎兄上はあっという間にお城に戻られてしまったわね。」
松姫は菊姫に寂しそうに話し出す。
「政務がお忙しいのはわかりますが、やっぱり寂しいです。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「兄上には、また会う事が出来るのだから元気を出しましょう。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
松姫は菊姫を微笑んで見た。
菊姫の部屋の障子が開いた。
松姫と菊姫は、障子の先の人物を微笑んで見た。
障子の先の人物は油川夫人だった。
油川夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「お菊。お松。父上が見えられました。」
松姫は油川夫人に笑顔で話し出す。
「はい!」
菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。
「はい。」
油川夫人は菊姫と松姫を微笑んで見た。
菊姫と松姫は、嬉しそうに立ち上がった。
油川夫人、菊姫、松姫は、部屋から出ていった。
油川夫人、菊姫、松姫は、武田信玄の居る部屋に来た。
武田信玄は菊姫と松姫を微笑んで見た。
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「父上。こんにちは。」
武田信玄は菊姫に微笑んで頷いた。
松姫は武田信玄に笑顔で話し出す。
「父上! こんにちは!」
武田信玄は松姫に微笑んで話し出す。
「奇妙丸殿からお松宛ての文が届いた。」
松姫は武田信玄を笑顔で見た。
武田信玄は松姫に微笑んで文を手渡した。
松姫は武田信玄から笑顔で文を受け取った。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。良かったわね。」
松姫は文を大事そうに抱えながら、菊姫に微笑んで話し出す。
「はい!」
武田信玄は松姫を微笑んで見た。
松姫は文を大事そうに抱えながら、武田信玄に笑顔で話し出す。
「文の返事を書きます!」
武田信玄は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は文を大事そうに抱えながら、菊姫に笑顔で話し出す。
「姉上! 一緒に文を読んでください! 返事を書く手伝いをお願いします!」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は文を大事そうに抱えながら、武田信玄に笑顔で話し出す。
「失礼します!」
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「失礼します。」
武田信玄は松姫と菊姫に微笑んで頷いた。
菊姫は武田信玄と油川夫人に微笑んで礼をすると、部屋から出て行った。
松姫は文を大事そうに抱えながら、武田信玄と油川夫人に微笑んで礼をすると、部屋から出て行った。
ここは松姫の部屋の中。
松姫は文を大事そうに抱えながら、笑顔で座った。
菊姫は松姫の横に微笑んで座った。
松姫は文を大事そうに広げて読み始めた。
菊姫は松姫の様子を見ながら、微笑んで文を詠み始めた。
松姫様へ
新年明けましておめでとうございます。
ご挨拶が遅くなり申し訳ありませんでした。
松姫様との婚約が整ってからは、時がとても早く過ぎていくように感じます。
松姫様とは離れて暮らしていますが、二人で一緒に新年を迎える事が出来て、とても嬉しく思います。
先の事になるとは思いますが、二人で一緒に過ごす正月を想像してみました。
とても楽しい気持ちになりました。
何か贈り物をしようと思ったのですが、今回も良い物が思い浮かびませんでした。
今回も歌を贈り物にしたいと思います。
正月に相応しい歌を贈ろうと思い、いろいろと考えました。
万代に 年は来経とも 梅の花 絶ゆることなく 咲きわたるべし
気に入って頂けると嬉しいです。
暦は春となりましたが、寒い日が続きます。
お体に気を付けてお過ごしください。
奇妙丸より
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「万代とか、絶ゆることなくとか、咲きわたるとか、お正月に相応しい歌をお松は頂いたのね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「奇妙丸様がお松に贈った歌は、お正月のために詠んだ歌かも知れないわね。母上に確認してみるわね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「お願いします。」
菊姫は松姫に困った様子で話し出す。
「返歌を贈りたいけれど、お正月の歌を選ぶ時間が無いわね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「焦って歌を贈ったら、奇妙丸様に失礼になります。今回は歌のお礼を兼ねて文を送ります。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松の言う通りね。」
松姫は菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は机に向かうと文を書く準備を始めた。
菊姫は立ち上がると、松姫の部屋から出て行った。
奇妙丸様へ
新年明けましておめでとうございます。
新年のご挨拶の文を頂き、松はとても嬉しいです。
松は奇妙丸様に新年の挨拶をしていません。
気が付かなくて申し訳ありませんでした。
これからは細かい事にも気が付くようにしたいと思います。
お正月に相応しい歌をありがとうございます。
お正月に詠まれた歌という事で、縁起の良い言葉がたくさん詠み込んでありました。
歌を詠んでいるだけで幸せな一年が過ごせるように思いました。
松も奇妙丸様と一緒にお正月を過ごしたいです。
その日が一日も早く訪れるように、たくさん勉強したいと思います。
体調に気を付けてお過ごしください。
松より
松姫と奇妙丸。
初めて迎えた新年。
松姫は甲斐、奇妙丸は岐阜、別々に暮らしているため、離れた場所で新年を迎えています。
今は寂しさより嬉しさを感じているようです。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語は、松姫と奇妙丸の婚約が整ってから初めて迎える一月の物語です。
「戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編」では、二人が婚約をした月が十一月となっているので、初めて迎える一月ではありますが、三つの月しか経過していない頃の出来事になります。
婚約が整ってから初めて年を越したので、松姫は八歳、奇妙丸は十二歳、となりました。
実は、奇妙丸との縁談が整った事により、武田信玄が躑躅ヶ崎館の傍に松姫のための屋敷を建てます。
その事により、松姫は「新館御寮人(にいだちごりょうにん)」と呼ばれるようになっていきます。
物語の展開上、新しい屋敷を作る話しは、まだ登場していません。
松姫は母親と菊姫と一緒に同じ屋敷に住んでいるという設定になっています。
ご了承ください。
この物語に登場する歌は、「万葉集 第五巻 八三〇番」です。
「万代に 年は来経とも 梅の花 絶ゆることなく 咲きわたるべし」
ひらがなの読み方は、「よろづよに としはきふとも うめのはな たゆることなく さきわたるべし」です。
作者は「筑前介佐氏首(ちくぜんのすけさしのこびと)」です。
意味は「いつの世までも梅の花は絶えることなく咲き続けるでしょう。」となるそうです。
原文は、「萬世尓、得之波岐布得母、鳥梅能波奈、多由流己等奈久 佐吉和多留倍子」です。
この歌は、天平二年一月十三日に、大伴旅人(おおとものたびと)の邸宅で催された宴会の時に詠まれた歌の一つだそうです。
「睦月」は、「むつき」と読みます。
「陰暦正月の異称」です。
「睦」は、他の字と一緒に使われます。
意味は、「親しい」という意味です。
「睦まじい」という字もこの字を使っています。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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