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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜
〜 文紡ぎ 梅見月 心開けて我が思へる君 〜
登場人物
松姫[武田信玄の五女]、奇妙丸[織田信長の嫡男](文だけの登場)、
武田信玄、菊姫[武田信玄の四女]、油川夫人[武田信玄の側室、菊姫と松姫の母]
「久方の 月夜を清み 梅の花 心開けて 我が思へる君」
「万葉集 第八巻 一六六一番」
作者:「紀小鹿女郎(きのをしかのいつらめ)」
松姫と奇妙丸の婚約が調ってから四つ目の月を迎えた。
年を越して二月となっている。
寒さは続いているが、陽のある時は僅かだが暖かさを感じるようになってきた。
そんなある日の事。
ここは甲斐の国。
ここは、油川夫人、松姫、菊姫の住んでいる屋敷の庭。
庭には紅梅と白梅の花が綺麗な姿で咲いている。
菊姫と松姫は、庭に咲いている紅梅と白梅を楽しそうに見ている。
松姫は菊姫を見ると、微笑んで話し出す。
「姉上。梅の花が綺麗に咲いていますね。」
菊姫は松姫を見ると、微笑んで頷いた。
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「姉上。雛人形を見に行きましょう。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「松は雛人形を見るのが急に好きになったのね。」
松姫は菊姫に笑顔で話し出す。
「お内裏様とお雛様を見ながら、奇妙丸様と松が一緒に居る姿を想像すると笑顔になります! だからお内裏様とお雛様をたくさん見たいです!」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は菊姫に笑顔で話し出す。
「先に姉上の雛人形を見ましょう!」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
菊姫と松姫は、菊姫の部屋の中へと入っていった。
その日の夜の事。
ここは、松姫の部屋。
松姫は部屋の障子を開けて縁へと出た。
松姫は縁に出た途端に更なる寒さを感じた。
寒そうな仕草を見せながら、夜空を見上げた。
たくさんの星が寒さの中で綺麗に輝いている。
松姫は夜空を見ながら、微笑んで呟いた。
「奇妙丸様。星が綺麗に輝いています。」
夜空の星の輝きが僅かに強まったように見えた。
松姫はたくさんの星の輝きを見ながら、微笑んで呟いた。
「奇妙丸様。お休みなさい。」
たくさんの星は綺麗に輝き続けている。
松姫は視線を戻すと、部屋の中へと入っていった。
その翌日の事。
ここは、油川夫人、菊姫、松姫の住んでいる屋敷。
武田信玄が、油川夫人、菊姫、松姫の住んでいる屋敷を訪れた。
菊姫と松姫は、武田信玄の前に笑顔で来た。
武田信玄は、菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「お菊もお松も元気で良かった。」
菊姫と松姫は、武田信玄に笑顔で話し出す。
「父上の元気なお姿を見る事が出来て嬉しいです!」
武田信玄は、菊姫と松姫を微笑んで見た。
油川夫人は、武田信玄と菊姫と松姫を微笑んで見ている。
武田信玄は松姫に微笑んで話し出す。
「奇妙丸殿からお松に文と贈り物が届いた。」
松姫は武田信玄を笑顔で見た。
武田信玄は松姫に文を差し出すと、微笑んで話し出す。
「先に文を渡す。」
松姫は武田信玄から笑顔で文を受け取った。
「はい!」
武田信玄は松姫を微笑んで見た。
松姫は文を大事そうに懐に仕舞った。
武田信玄は松姫に木箱を差し出すと、微笑んで話し出す。
「贈り物だ。部屋の中でゆっくりと見なさい。」
松姫は武田信玄から木箱を受け取ると、笑顔で話し出す。
「はい!」
武田信玄は松姫を微笑んで見た。
松姫は木箱を大事そうに抱えたまま、菊姫を見ると、笑顔で話し出す。
「姉上! 一緒に見ましょう!」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は木箱を大事そうに抱えながら、自分の部屋へと歩き出した。
菊姫は微笑みながら、松姫の部屋へと歩き出した。
油川夫人は武田信玄に微笑んで話し出す。
「いつもお気遣いありがとうございます。」
武田信玄は油川夫人に微笑んで頷いた。
油川夫人は武田信玄に微笑んで話し出す。
「お松が贈り物のお礼の文を書くと思います。少しだけお待ちください。」
武田信玄は油川夫人に微笑んで話し出す。
「今日は直ぐに帰るが、明日は時間があるから長めに居られる。明日の私が帰る時までに文を書上げるように、お松に伝えてくれ。」
油川夫人は武田信玄に微笑んで話し出す。
「わかりました。」
武田信玄は油川夫人に微笑んで頷くと、躑躅ヶ館へと戻っていった。
ここは松姫の部屋の中。
松姫と菊姫は、木箱を笑顔で見ている。
松姫は木箱を丁寧に開けた。
木箱の中には、小さな植木鉢に植わった白梅の木が入っていた。
松姫は木箱に入った白梅の木を見ると、笑顔で話し出す。
「綺麗な白い梅です!」
菊姫は松姫を見ると、微笑んで話し出す。
「文は何と書いてあるのかしら?」
松姫は懐から大事そうに文を取り出すと、笑顔で読み始めた。
菊姫は松姫の様子を一瞥しながら、微笑んで文を読み始めた。
松姫様へ
春の季節ではありますが、寒い日が続いています。
元気にお過ごしでしょうか。
松姫様への贈り物を何にすれば良いのかと、ずっと考えていました。
そんな時に、二月の別名が梅見月と言う事を思い出しました。
松姫様への贈り物を梅の木にしようと思いました。
紅梅と白梅のどちらにしようと悩みましたが、白梅を贈る事にしました。
紅梅はまた別な機会に贈りたいと思います。
もう少し早い時期に梅の木を贈る事が出来れば良かったのですが、気が付くのが遅くなってしまいました。
至らない点が多い事を実感しました。
これからも日々精進していきたいと思います。
白梅の木を受け取って頂けると嬉しいです。
お体に気を付けてお過ごしください。
奇妙丸より
松姫は文を大事そうに持ちながら、菊姫を笑顔で見た。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「奇妙丸様とお松の縁談が調ったのが十一月だから、時期的な事も含めて、お松へ贈る花をいろいろと悩んだのでしょうね。」
松姫は文を大事そうに持ちながら、菊姫を微笑んで見た。
奇妙丸様へ
綺麗な白梅の木が届きました。
とても嬉しいです。
ありがとうございます。
白梅の花が綺麗に咲いています。
白梅の花を見るのが楽しみになりました。
白梅の木を頂いた夜の事ですが、月と星の輝きを受けながら、白梅の花が綺麗に咲いていました。
奇妙丸様にも見て頂きたかったです。
白梅の花のお礼に、歌を贈ります。
久方の 月夜を清み 梅の花 心開けて 我が思へる君
喜んで頂けると嬉しいです。
もう直ぐ桃の節句です。
松の部屋には雛人形が飾ってあります。
お内裏様とお雛様を見ながら、毎日の様に奇妙丸様の事を考えています。
寒い日が続きます。
お体に気をつけてお過ごしください。
松より
奇妙丸が松姫に贈った白梅の木。
何色にも染まっていない奇妙丸と松姫の想い。
奇妙丸と松姫の想いは、梅の花と共にゆっくりと開き始めたようです。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
物語は二月の出来事として書いています。
桃の節句や雛祭りの話しが少しだけ登場します。
現在に近い雛祭りになったのは、庶民の間でも行うようになった江戸時代からだそうです。
そのため、物語の設定同時の桃の節句や雛祭りは、少し様子が違っていたと思います。
雛祭りは、元々は宮中や貴族の間で行う行事だったそうです。
簡単な説明ですが、このような感じになります。
この当時は武家でも桃の節句や雛祭りを行っていたと思います。
武田信玄の正室が京都の貴族の出身という事や武田信玄の力関係などを考えると、桃の節句や雛祭りを行っているのではないかと思いました。
松姫は武田信玄と側室との間の子供ですが、桃の節句や雛祭りを行っていると考えて物語の中に登場しています。
二十四節気の「雨水(うすい)(現在の暦で二月十八日〜十九日頃)」に、雛人形の飾り付けをすると、良縁に恵まれると言われています。
この物語に登場する歌は、「万葉集 第八巻 一六六一番」です。
「久方の 月夜を清み 梅の花 心開けて 我が思へる君」
ひらがなの読み方は、「ひさかたの つくよをきよみ うめのはな こころひらけて あがおもへるきみ」です。
作者は「紀小鹿女郎(きのをしかのいつらめ)」です。
歌の意味は、「空の月がきれいなので、梅の花が開くように、心を開いてあなた様のことをお慕いしますわ」となるそうです。
原文は「久方乃、月夜乎清美、梅花、心開而、吾念有公」です。
「梅見月(うめみづき)」は、「陰暦二月の異称」です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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