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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜


〜 文紡ぎ 夢見月 松海色 花よりほかに 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

松姫[武田信玄の五女]、奇妙丸[織田信長の嫡男](文だけの登場)、

三条夫人[武田信玄の正室、黄梅院の母]、菊姫[武田信玄の四女]、

油川夫人[武田信玄の側室、菊姫と松姫の母]、



「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」

小倉百人一首 六十六番」、及び、「金葉集」より

作者:前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)



松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、二十九の月を数える。

暦は三月。



季節は春になる。



ここは、甲斐の国。



油川夫人、菊姫、松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



菊姫は微笑んで居る。

松姫は組紐を微笑んで見ている。



菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。時間に余裕が出来ると組紐を見ているわね。」

松姫は菊姫を見ると、菊姫に微笑んで話し出す。

「奇妙丸様から頂いた綺麗な組紐を見ていると、嬉しくて楽しい気持ちになります。」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「私が居ない方が落ち着いて見られるかしら?」

松姫は菊姫に慌てて話し出す。

「姉上と一緒に居ると楽しいです!」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松の気持ちは分かっているわ。慌てて話さなくても大丈夫よ。」

松姫は菊姫を安心して見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。私に遠慮せずにゆっくりと組紐を見て良いわよ。」

松姫は菊姫を微笑んで見た。

菊姫も松姫を微笑んで見た。

松姫は組紐を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、油川夫人、菊姫、松姫の住む屋敷。



油川夫人の部屋。



油川夫人は微笑んで居る。

油川夫人の脇には、小箱と文が置いてある。

菊姫も微笑んで居る。

松姫も微笑んで居る。



油川夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「奇妙丸様からお松宛に文と贈り物が届いたの。」

松姫は油川夫人を笑顔で見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。文だけでなく、贈り物も届いて良かったわね。」

松姫は菊姫に笑顔で話し出す。

「はい!」

油川夫人は小箱と文を微笑んで取った。

松姫は油川夫人を笑顔で見た。

油川夫人は小箱と文を松姫の前に微笑んで置いた。

松姫は小箱と文を笑顔で見た。

菊姫は松姫を微笑んで見た。

油川夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「今回もお菊と相談して文の返事を書きなさい。」

松姫は油川夫人に笑顔で話し出す。

「母上は奇妙丸様からの贈り物の中身を知っていますか?!」

油川夫人は松姫に微笑んで話し出す。

「文の内容も贈り物の中身も知らないわ。」

松姫は油川夫人に笑顔で話し出す。

「母上にも奇妙丸様からの贈り物を早く見て頂きたいです! 直ぐに贈り物の中身を確認しても良いですか?!」

油川夫人は松姫と菊姫に微笑んで話し出す。

「贈り物と文は、同時に届いたそうよ。文には贈り物について書いてあると思うの。贈り物を見たら、直ぐに文を読みなさい。お松の部屋でお菊と相談しながら、文の返事を書きなさい。」

松姫は油川夫人に笑顔で話し出す。

「はい!」

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

油川夫人は菊姫と松姫を微笑んで見た。

松姫は小箱を笑顔で開けた。

菊姫は小箱を微笑んで見た。

油川夫人は、菊姫、松姫、小箱を微笑んで見た。



小箱の中には、松海の襲の色目を想像する組紐が入っていた。



松姫は組紐を笑顔のまま丁寧に取った。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「松海の襲を想像させる組紐ね。」

松姫は組紐を持ち、菊姫に笑顔で話し出す。

「はい!」

油川夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「松海の襲は、四季を通じて祝い事の時に利用するわね。松海にはお松の名前が入っているわね。奇妙丸様はお松を想いながら組紐の色目を考えたのね。」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「奇妙丸様は本当に凄い方ね。」

松姫は組紐を持ち、菊姫に笑顔で話し出す。

「はい!」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

油川夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「お松。お菊。奇妙丸様がお松に宛てた文を早く読みなさい。」

松姫は組紐を持ち、油川夫人に笑顔で話し出す。

「はい!」

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

松姫は組紐を小箱に丁寧に仕舞った。

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は文を笑顔のまま丁寧に広げた。

菊姫は松姫と文を微笑んで見た。

油川夫人は菊姫と松姫を微笑んで見た。



お松へ

元気に過ごしているだろうか。

私は元気に過ごしている。

安心してくれ。

岐阜では山桜の花が咲いている。

お松の住む場所でも山桜の花の咲く姿が見られるのだろうか。

山桜を見ながら、穏やかな春の日を楽しんで過ごしている。

お松の住む場所でも穏やかな春の日なのだろうか。

たくさんの出来事を想像しながら春の日を過ごしている。

突然になるが、私とお松は離れて過ごしている。

私とお松で同じ物を持ちながら過ごしたいと考えていた。

組紐ならば、私とお松が共に持ちながら過ごせると考えた。

出来上がった松海の襲の色目を基にした組紐を見た時に、お松に直ぐに贈りたいと思った。

少し前にお松に贈った組紐と共に利用してくれると嬉しい。

組紐と山桜の花を見ていたら、桜を詠んだ歌を思い出した。

もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

私には、花だけでなく知る人が居てくれる。

幸せ者なのだと改めて思った。

過ごしやすい日が続くと思うが、無理をせずに体調に気を付けて過ごしてくれ。

奇妙丸より



数日後の事。



ここは、躑躅ヶ崎館。



三条夫人の部屋。



三条夫人は微笑んで居る。

菊姫も微笑んで居る。

松姫も微笑んで居る。

松姫の脇には、布に包んだ小箱が置いてある。



三条夫人は松姫に微笑んで話し出す。

「私もお松と同じ立場ならば、お揃いの組紐の贈り物はとても嬉しいわ。松海の襲の色目を基にしたお揃いの組紐ならば、更に嬉しくなるわ。」

松姫は三条夫人を笑顔で見た。

三条夫人は松姫に微笑んで話し出す。

「奇妙丸様にお揃いの組紐を頂いたお礼も兼ねた文は書いたの?」

松姫は三条夫人に笑顔で話し出す。

「はい!」

三条夫人は松姫を微笑んで見た。

松姫は菊姫を笑顔で見た。

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は三条夫人を見ると、三条夫人に微笑んで話し出す。

「姉上の大事な勉強の前に、私と話す時間を作って頂いて嬉しかったです。」

三条夫人は松姫に微笑んで話し出す。

「お菊とお松と話す時を何時も楽しみにしているの。再び時間を作って楽しく話しましょう。」

松姫は三条夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

三条夫人は松姫と菊姫を微笑んで見た。

松姫は三条夫人に微笑んで軽く礼をした。

三条夫人は松姫に微笑んで頷いた。

松姫は小箱を丁寧に取った。

菊姫は三条夫人と松姫を微笑んで見た。



松姫は小箱を持ち、部屋を微笑んで出て行った。



奇妙丸様へ

奇妙丸様が元気に過ごしていると分かり嬉しい気持ちになりました。

私は元気に過ごしています。

安心してお過ごしください。

松海の襲の色目を想像する組紐の贈り物をありがとうございました。

綺麗な組紐なので、見た瞬間に嬉しくなりました。

奇妙丸様とお揃いの組紐だと知り、更に嬉しくなりました。

本当にありがとうございます。

甲斐の国でも山桜の花が咲く姿が見られます。

組紐と山桜の花を見ながら、楽しく過ごしています。

桜を詠んだ歌の贈り物をありがとうございます。

もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

私にも、花だけでなく知る人が居てくれます。

幸せ者なのだと改めて想いました。

体調に気を付けてお過ごしください。

松より



「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」

松姫には、花だけでなく知る人が居てくれる。

奇妙丸にも、花だけでなく知る人が居てくれる。

松海の襲を想像する組紐。

松姫と奇妙丸を繋ぐ組紐。

桜と組紐が松姫と奇妙丸を更に鮮やかに彩り始めた。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前の物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は、「小倉百人一首 六十六番」、及び、「金葉集」

「もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし」

ひらがなの読み方は「もろともに あはれとおもへ やまざくら はなよりほかに しるひともなし」

作者は「前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん)」

歌の意味は「私があなたを愛おしく思うように、あなたも私を愛しく思ってくださいね。山桜よ、花のあなた以外に、私の心を知っている人はいないのですから。」となるそうです。

「大僧正(だいそうじょう)」は、名前ではなく「僧綱(そうごう)の最高位。」を表します。

生没年は、天喜三年(1055年)〜長承四年(1135年)です。

敦明親王の孫になり、参議従二位侍従源基平の息子になります。

武田軍の関連についてです。

元亀元年(1570年)三月は、大きな動きはありません。

「組紐(くみひも)」について簡単に説明します。

組紐の歴史は古いです。

縄文式土器の紐の跡で確認できるそうです。

古墳時代の組紐に関しては、埴輪で刀剣の下緒や衣服を縛って使用するための紐として使用されていた事が分かるそうです。

飛鳥・奈良時代になると、唐や隋から組紐の技術が渡来したそうです。

飛鳥・奈良・平安時代になると、現在の組紐と変わらないような組紐や完成までに数年も掛かるような組紐が作られていたそうです。

奈良・平安時代になると、貴族の装束の束帯に用いられるようになったそうです。

平安・鎌倉時代になると、伝来の技術の他に、独自の技術も加わり、芸術性の高いものになっていったそうです。

鎌倉末期・室町時代になると、戦などのために鎧や兜などに使用するなど実用的な組紐が作られるようになっていったそうです。

安土桃山時代になると、戦などが少し落ち着いた頃と重なるので、装飾性の高い組紐や庶民のための組紐が作られるようになったそうです。

江戸時代になると、戦が落ち着いたので、武具、印籠、羽織の紐、根付など、組紐の用途が広がっていくそうです。

江戸時代には、武士も組紐の作成や組紐の修理をするのが素養の一つと考えるようになっていったそうです。

そして、江戸時代から専門職としての組紐技術者が登場するようになるそうです。

「松海(みる)」の「襲(かさね)」についてです。

着物の襲の一種類です。

四季を通じて利用する襲です。

祝賀の際に利用する襲だそうです。

表は「萌葱」色で、裏は「青」色です。

ただし、昔の「青」色は、現在の「藍」色・「青」色・「緑」色も含めて表します。

「松海」の襲の色目は、大体になりますが、表は「萌葱」色で、裏は「緑」色を想像してください。

「夢見月(ゆめみづき)」についてです。

「陰暦三月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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