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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜
〜 文紡ぎ 松風月 まつとし聞かば 〜
登場人物
松姫[武田信玄の五女]、奇妙丸[織田信長の嫡男](文だけの登場)、
武田信玄、三条夫人[武田信玄の正室、黄梅院の母]、菊姫[武田信玄の四女]、
油川夫人[武田信玄の側室、菊姫と松姫の母]、
「立別れ 因幡の山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰りこむ」
「小倉百人一首 第十六番」、または、「古今集」
作者:中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)
松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、三十二の月を数える。
暦は六月。
季節は晩夏になる。
ここは、甲斐の国。
暑い日が続いている。
ここは、油川夫人、菊姫、松姫の住む屋敷。
油川夫人の部屋。
油川夫人と菊姫が居る。
油川夫人は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊。三条様から教えて頂く勉強は順調に進んでいるの?」
菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。
「三条様は私に順調に進んでいると何度も言ってくださいます。」
油川夫人は菊姫に微笑んで話し出す。
「三条様に迷惑を掛けないように、しっかりと勉強に励みなさい。」
菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。
「はい。」
油川夫人は菊姫を微笑んで見た。
菊姫は油川夫人に言い難そうに話し出す。
「母上。質問があります。」
油川夫人は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊。分かる範囲で答えるわ。遠慮せずに質問しなさい。」
菊姫は油川夫人に言い難そうに話し出す。
「母上。三条様から教えて頂く勉強は、特定の内容が中心になっています。三条様のご家族に裏方様を務める方がいらっしゃいます。」
油川夫人は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊の気になる気持ちは分かるわ。父上にお菊の気持ちを伝えるわ。父上の返事によっては、お菊に話が出来ないと思うの。理解してね。」
菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。
「はい。」
油川夫人は菊姫を微笑んで見た。
それから数日後の事。
ここは、油川夫人、菊姫、松姫の住む屋敷。
玄関。
武田信玄が微笑んで訪ねてきた。
油川夫人は微笑んで現れた。
松姫は笑顔で現れた。
菊姫は微笑んで現れた。
武田信玄は、油川夫人、菊姫、松姫に微笑んで話し出す。
「みんな。元気だな。」
油川夫人は武田信玄に微笑んで軽く礼をした。
松姫は武田信玄に笑顔で話し出す。
「父上のお元気な姿が見られて嬉しいです!」
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「私も父上のお元気な姿が見られて嬉しいです。」
油川夫人は武田信玄に微笑んで軽く礼をした。
武田信玄は、油川夫人、菊姫、松姫を微笑んで見た。
油川夫人は武田信玄を微笑んで見た。
武田信玄は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「お菊。お松。先に母と話しても良いかな? 母との話が終わったら、四人でゆっくりと話そう。」
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「はい。」
松姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「はい。」
武田信玄は菊姫と松姫を微笑んで見た。
油川夫人は、武田信玄、菊姫、松姫を微笑んで見た。
それから少し後の事。
ここは、油川夫人の部屋。
武田信玄と油川夫人が居る。
武田信玄は油川夫人に微笑んで話し出す。
「私に話があるのだろ。偶然だが訪ねてきて良かった。遠慮せずに話してくれ。」
油川夫人は武田信玄に微笑んで話し出す。
「お気遣いありがとうございます。」
武田信玄は油川夫人に微笑んで頷いた。
油川夫人は武田信玄に微笑んで話し出す。
「お菊は三条様に教えて頂く勉強の内容から、お菊の身に何が起きるのか気になっています。お菊は甲斐を治める最強の武家の娘として生まれ育ちました。お菊も武家の一族の中で仏門に入る方が何人もいらっしゃるのを知っています。仏門の関係の方に嫁ぐのと、仏門に入る身になるのとでは、お菊の心持が違ってきます。お菊に落ち着いた気持ちで勉強して欲しいです。お菊への説明に関するご支持が頂きたくて相談しました。」
武田信玄は油川夫人を考え込みながら見た。
油川夫人は武田信玄を心配そうに見た。
武田信玄は油川夫人に考え込みながら話し出す。
「私もお菊が不安になる気持ちは分かる。今は状況が細かく変化している。お菊に伝えるのは、ある程度の状況か調ってからにしたい。」
油川夫人は武田信玄を心配そうに見ている。
武田信玄は油川夫人に微笑んで話し出す。
「私からお菊に話す。」
油川夫人は武田信玄に微笑んで話し出す。
「お気遣いありがとうございます。」
武田信玄は油川夫人に微笑んで頷いた。
油川夫人は武田信玄を微笑んで見た。
それから少し後の事。
ここは、油川夫人の部屋。
武田信玄、油川夫人、菊姫、松姫が居る。
武田信玄は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊。三条が教える勉強は難しいか?」
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「難しい内容が多いですが、三条様は丁寧に教えてくださいます。これからも三条様に迷惑を掛けないように、覚えたいです。」
武田信玄は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊。今は状況が細かく変化している。たくさんの内容を学んでも、学び足りないと感じる。私が忙しく過ごす時間が多いために、お菊にしっかりと教えていない内容があると気付いた。私の代わりを三条に頼んだ。三条は快く了承してくれた。お菊は、武田にとって、甲斐の国にとって、大切な内容を学んでいる。更に、お菊の将来の嫁ぐ相手にとっても、大切な内容を学んでいる。」
菊姫は武田信玄を微笑んで見た。
武田信玄は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊の周りには、優れた人物がたくさん居る。一人で悩まずに、相談しなさい。」
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「はい。」
武田信玄は菊姫を微笑んで見た。
油川夫人は武田信玄と菊姫を微笑んで見た。
武田信玄は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。奇妙丸殿からお松宛の文が届いた。」
松姫は武田信玄を笑顔で見た。
武田信玄は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「お菊。いつも通り、お松が文を書く相談に乗ってあげなさい。お松。いつも通り、お菊と相談しながら、落ち着いて文の返事を書きなさい。」
菊姫は武田信玄に微笑んで話し出す。
「はい。」
松姫は武田信玄に笑顔で話し出す。
「はい!」
武田信玄は菊姫と松姫を微笑んで見た。
油川夫人は、武田信玄、菊姫、松姫を微笑んで見た。
それから少し後の事。
ここは、松姫の部屋。
松姫は文を微笑んで読んでいる。
菊姫は松姫を見ながら、文を微笑んで読んでいる。
お松へ
今は六月だね。
岐阜は暑い日が増えている。
甲斐の国は暑い日が増えているのだろうか、お松は元気に過ごしているのだろうか、様々な状況が気になってしまう。
松風月に合う歌を調べていたら、一首の歌を見付けた。
一首の歌について学ぶ内に、お松に贈りたい気持ちになった。
お松宛の今回の贈る歌に決めた。
立別れ 因幡の山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰りこむ
お松。
今回も歌を受け取ってもらえたら嬉しい。
お松は私の許婚だ。
私は、お松と共に過ごすようになったら、お松と再び離れて過ごすようになったとしても、お松の傍に必ず帰る。
お松。
私と共に過ごす日の前も後も、体調に気を付けて過ごしてくれ。
松風の中を過ごしながら、お松に逢える日を、お松と共に過ごす日を、楽しみに待っている。
奇妙丸より
松姫は文を持ちながら、菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「今回の奇妙丸様が書いた文は、“松風”、“お松”、“待つ”を掛けたみたいね。」
松姫は文を持ちながら、菊姫に微笑んで頷いた。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「父上と母上に確認を兼ねて質問しましょう。」
松姫は文を持ちながら、菊姫に微笑んで頷いた。
菊姫は部屋を微笑んで出て行った。
松姫は文を持ちながら、部屋を微笑んで出て行った。
それから数日後の事。
ここは、躑躅ヶ崎館。
三条夫人の部屋。
三条夫人、菊姫、松姫が居る。
三条夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「六月は、“松風月”。今回の歌の贈り物は、“立別れ 因幡の山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰りこむ”。作者は、“在原行平”。たくさんの内容を掛けた歌の贈り物ね。さすが奇妙丸殿ね。」
松姫は三条夫人を笑顔で見た。
菊姫は三条夫人を微笑んで見た。
三条夫人は菊姫と松姫を微笑んで見た。
松姫は三条夫人に微笑んで話し出す。
「父上と母上に、文と歌について質問したら、三条様と似た内容の答えになりました。父上と母上は、三条様が一番に詳しいので、迷惑を掛けないように気を付けて質問するように話しました。」
三条夫人は菊姫と松姫に微笑んで話し出す。
「かなり期待されているのね。歌についての勉強を更に励まないといけないわね。」
菊姫は三条夫人を微笑んで見た。
松姫も三条夫人を微笑んで見た。
三条夫人は菊姫と松姫を微笑んで見た。
松姫は三条夫人に微笑んで話し出す。
「三条様とお話しが出来て嬉しかったです。」
三条夫人は松姫に微笑んで話し出す。
「私もお松と話しが出来て嬉しかったわ。」
松姫は三条夫人を微笑んで見た。
菊姫は三条夫人と松姫を微笑んで見た。
松姫は菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に微笑みながら小さく頷いた。
松姫は三条夫人に微笑んで軽く礼をした。
三条夫人は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は部屋を微笑んで出て行った。
菊姫は三条夫人を微笑んで見た。
三条夫人は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊。私で良ければ、遠慮せずに相談してね。私に相談し難い内容ならば、父上や母上に遠慮せずに相談しなさい。一人で悩まないようにね。」
菊姫は三条夫人に微笑んで話し出す。
「お気遣いありがとうございます。」
三条夫人は菊姫に微笑んで話し出す。
「お菊。勉強を始めましょう。」
菊姫は三条夫人に微笑んで話し出す。
「よろしくお願いします。」
三条夫人は菊姫に微笑んで頷いた。
「立別れ 因幡の山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰りこむ」
作者は、在原行平。
今は、松風月。
たくさんの想いが書かれたお松宛の文。
奇妙丸の想いは、松姫に届いた。
時は、松姫と奇妙丸の想いを紡ぎながら、ゆっくりと過ぎていく。
時は、菊姫の行く末も紡ぎながら、ゆっくりと過ぎていく。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「小倉百人一首 第十六番」、または、「古今集」
「立別れ 因幡の山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰りこむ」
ひらがなの読み方は「たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかえりこむ」
作者は「中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)」
意味は「あなたと別れて私が因幡に去ったとしても、因幡山の峰に生えている松ではありませんが、あなたが私を待っていると聞いたならば、すぐにでも帰ってきましょう。」となるそうです。
「まつ」は、「松」と「待つ」を掛けているそうです。
「中納言行平(ちゅうなごんゆきひら)」は「在原行平(ありはらのゆきひら)」です。
「在原業平(ありはらのなりひら)」の兄です。
生没年は、弘仁九年(818年)〜寛平五年(893年)です。
武田軍の関連についてです。
元亀元年(1570年)六月は、大きな動きはありません。
「晩夏(ばんか)」は「夏の終わり。陰暦六月の異称。」です。
夏の季語です。
「松風月(まつかぜつき)」は「陰暦六月の異称」です。
「松風(まつかぜ)」は幾つかの物事を差します。
一つは「松に吹く風。松籟(しょうらい)(松の梢に吹く風)。茶の湯で釜の湯の煮え立つ音。」
一つは「源氏物語の五十四帖の中の第十八巻の巻名。光源氏は三十一歳、明石の上が上洛、光源氏は明石の上を訪問し、紫の上が嫉妬する状況などが登場する。」
一つは「謡曲。三番目物。作:観阿弥。改作:世阿弥。古今集などに取材。在原行平に恋をした海人の姉妹(姉:松風、妹:村雨)の霊が現れ、思い出を語って狂おしく舞う。」
「松風」関連の詳細については、各自でご確認ください。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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