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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜


〜 文紡ぎ 初夏 卯の花 含みたりとも 〜


登場人物

松姫[武田信玄の五女]、奇妙丸[織田信長の嫡男](文だけの登場)、

菊姫[武田信玄の四女]、油川夫人[武田信玄の側室、菊姫と松姫の母]、



「卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも」

「万葉集 第十八巻 四〇六六番」より

作者:大伴家持(おおとものやかもち)



松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、四十二の月を数える。

暦は四月。



季節は初夏。



ここは、甲斐の国。



過ごしやすい日が続いている。



ここは、油川夫人、菊姫、松姫、の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は文を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。

菊姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。



菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。奇妙丸様からの文を早く読みたいわよね。」

松姫は文を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は文を広げると、文を微笑んで読み始めた。

菊姫は文を微笑んで読み始めた。



お松へ

初夏になったね。

甲斐の国は過ごしやすい日が続いているのだろうか。

岐阜は過ごしやすい日が続いている。

過ごしやすい日が続くので、稽古を更に励んで、歌の勉強を更に励んでいる。

今の時季は、様々な内容を更に励んで学べる。

初夏は良い季節だと思う。

卯の花が咲く姿を見付けた。

お松に卯の花にちなんだ歌を贈り物にしたくて調べた。

気になる歌を見付けた。

卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも

卯の花を見た後に知った歌だから、私の想いと歌が重なったのか。

晩春から初夏に掛けての穏やかな日々と私の想いと歌が重なったのか。

今回の文の主な内容が、お松への贈り物の卯の歌を選ぶ経過の報告になってしまった。

お松。

様々な出来事が起きているが、私とお松は互いを信じて過ごそう。

お松。

私とお松の逢う日が一日も早く訪れるように、私とお松が傍で共に過ごす日が一日も早く訪れるように、岐阜から祈っている。

奇妙丸より



松姫は文を持ち、菊姫を見ると、菊姫に考え込んで話し出す。

「奇妙丸様から頂く文は嬉しいですが、今回の奇妙丸様から頂いた文の感想の表現が難しいです。」

菊姫は松姫を見ると、松姫に考え込んで話し出す。

「感想を表現するのが難しい内容の文ね。」

松姫は文を持ち、菊姫を考え込んで見た。

菊姫は松姫に考え込んで話し出す。

「母上に相談しましょう。」

松姫は文を持ち、菊姫に考え込んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を考え込んで見た。



松姫は文を持ち、部屋の外に考え込んで出て行った。

菊姫は部屋の外に考え込んで出て行った。



少し後の事。



ここは、油川夫人、菊姫、松姫、の住む屋敷。



油川夫人の部屋の前にある縁。



松姫は文を持ち、考え込んで来た。

菊姫は考え込んできた。



菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。母上の前で考え込んで長く話すと、母上が心配するわ。笑顔で話しましょう。」

松姫は文を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫に微笑んで頷いた。



僅かに後の事。



ここは、油川夫人、菊姫、松姫、の住む屋敷。



油川夫人の部屋。



油川夫人は床の中で静かに横になっている。



松姫は文を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。

菊姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。



油川夫人は床の上に体を起こすと、菊姫と松姫を微笑んで見た。

松姫は文を持ち、油川夫人に微笑んで話し出す。

「奇妙丸様から頂いた文の内容の感想を表現するのが難いです。母上に相談するために来ました。」

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫に微笑んで話し出す。

「お松。奇妙丸様の文の内容を教えて。」

松姫は文を持ち、油川夫人に微笑んで話し出す。

「母上。文を読んでください。」

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫に微笑んで話し出す。

「奇妙丸様がお松に宛てた文を読んでも良いの?」

松姫は文を持ち、油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫を微笑んで見た。

松姫は油川夫人に文に微笑んで渡した。

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫から文を微笑んで受け取った。

松姫は油川夫人を微笑んで見た。

菊姫も油川夫人を微笑んで見た。

油川夫人は床の上に体を起こし、文を微笑んで読んだ。

松姫は油川夫人を微笑んで見ている。

菊姫も油川夫人を微笑んで見ている。

油川夫人は床の上に体を起こし、文を微笑んで読み終わった。

松姫は油川夫人を心配な様子で見た。

菊姫も油川夫人を心配な様子で見た。

油川夫人は床の上に体を起こし、文を持ち、菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「お菊。お松。武田側と徳川側は、何度も戦っているわ。織田家と徳川家は、奇妙丸様とお松の婚約で繋がっているわ。徳川家と織田家も繋がっているわ。今の世の中は複雑で難しいわ。奇妙丸様は、お松と永久に繋がっていたいと願っていると思うの。お松は奇妙丸様を信じて過ごしなさい。お松は武田家と織田家を強く繋げるために、奇妙丸様を想い、立派に成長しなさい。」

松姫は油川夫人に真剣な表情で話し出す。

「はい。」

菊姫は油川夫人に真剣な表情で話し出す。

「私は、婚約をいつでも交わせるように、いつでも嫁げるように、母上の言葉を忘れずに過ごします。」

油川夫人は床の上に体を起こし、文を持ち、菊姫と松姫を微笑んで見た。

松姫は油川夫人を真剣な表情で見た。

菊姫も油川夫人を真剣な表情で見た。

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫と菊姫に微笑んで話し出す。

「お菊。お松。立派に成長するのは大切だけど、気負っていたら倒れてしまうわ。笑顔でたくさんの人達を安心させるのも大切なの。早く笑顔に戻りなさい。」

松姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫に文を微笑んで渡した。

松姫は油川夫人から文を微笑んで受け取った。

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「“卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも”。奇妙丸様の想いが伝わる歌をお松への贈り物の歌の候補にしたのね。奇妙丸様は文の内容どおり、元気に過ごしていると思うわ。奇妙丸様は複雑な状況が続くから、お松と早く過ごしたいと思っているのね。お松。難しいと思うけれど、気負わず焦らず過ごしなさい。お菊。お松が悩んでいたら相談にのってあげてね。」

松姫は文を持ち、油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫を微笑んで見た。

松姫は文を持ち、油川夫人に微笑んで話し出す。

「部屋に戻って、奇妙丸様の文の返事を書きます。」

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「お松の部屋に行きます。お松の文を書く相談にのります。」

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫に微笑んで頷いた。



松姫は文を持ち、部屋を微笑んで出て行った。

菊姫は部屋を微笑んで出て行った。



奇妙丸様へ

初夏になりました。

岐阜は過ごしやすい日が続いているのですね。

奇妙丸様は元気に過ごされているのですね。

安心しました。

甲斐も過ごしやすい日が続いています。

私も元気に過ごしています。

安心してお過ごしください。

卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも

私は奇妙丸様の傍で一日も早く過ごせるように努力しています。

私の努力が足りないために、奇妙丸様の傍で過ごせません。

奇妙丸様からの文を読んで、奇妙様に申し訳なく思いました。

奇妙丸様の傍で過ごせるように、更なる努力します。

奇妙丸様の傍で卯の花を幾度も見る日を楽しみに、たくさんの出来事を学びます。

奇妙丸様が安心して過ごせるように、織田家と武田家の繋がりを更に強めるために、元気に過ごします。

松より



「卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも」

松姫と奇妙丸は、卯の花がつぼみのままでも、逢いたい気持ちが募っていく。

奇妙丸と松姫は、織田家と武田家のために、奇妙丸とお松のために、一日も早く過ごせるようにたくさんの出来事を学んでいる。

松姫と奇妙丸は、卯の花が綺麗に咲く姿を見る時のように、素敵な姿で逢いたいと、たくさんの出来事を学んでいる。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十八巻 四〇六六番」

「卯の花の 咲く月立ちぬ 霍公鳥 来鳴き響めよ 含みたりとも」

ひらがなの読み方は「うのはなの さくつきたちぬ ほととぎす きなきとよめよ ふふみたりとも」

作者は「大伴家持(おおとものやかもち)」

歌の意味は「卯の花が咲く月がやってきました。霍公鳥よ、こちらに来て鳴いておくれ。まだ卯の花がつぼみのままでも」となるそうです。

原文は「宇能花能 佐久都奇多知奴 保等登藝須 伎奈吉等与米余 敷布美多里登母」

天平二十年(748年)四月一日、久米広縄(くめひろなわ)の邸宅で宴会をしたときに、大伴家持が詠んだ歌だそうです。

「卯の花(うのはな)」についてです。

ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木です。

「空木(うつぎ)」の白い花の別名です。

「空木」の別名でもあります。

空木の別名には、「雪見草(ゆきみぐさ)」、「垣見草(かきみぐさ)」、があります。

夏の季語です。

日本原産です。

幹の部分が空洞になっているところから空木と呼ぶようになったといわれています。

「霍公鳥(ほととぎす)」についてです。

カッコウ科の鳥です。

全長は27〜28cmほどです。

冬は東南アジアに渡り、初夏に日本に来ます。

夏の季語です。

「霍公鳥」、「時鳥」、「不如帰」、「杜鵑」、「子規」、「郭公」、などのたくさんの書き方があります。

別名は、「文目鳥(あやめどり)」、「妹背鳥(いもせどり)」、「黄昏鳥(たそがれどり)」、「卯月鳥(うづきどり)」、「魂迎鳥(たまむかえどり)」など、他にもたくさんあります。

冥土に往来する鳥ともいわれるそうです。

万葉集では、卯の花や橘などの花と一緒に詠まれる事が多いです。

武田家についての補足です。

油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。

武田軍の関連についてです。

元亀二年(1571年)四月に起きた出来事を簡単に説明します。

三河へ進攻します。

足助城を攻略します。

ちなみに、足助城は、天正元年(1573年)まで、武田側の城代が在番します。

野田城を攻撃します。

当時の野田城の城主は、吉田城に退却します。

徳川家康が吉田城に入城します。

ちなみに、野田城を攻略するのは、元亀四年(1573年)二月になるそうです。

元亀四年七月二十八日に天正元年に改元するため、1573年は「元亀四年」と「天正元年」の二つの年号があります。

詳細な月が分からない場合は、「元亀四年」と「天正元年」が混在する可能性があります。

ご了承ください。

織田家関連について簡単に説明します。

奇妙丸(後の“織田信忠”)の母と伝わる生駒(いこま)家の吉乃(きつの)が亡くなったのは、永禄九年五月十三日(1566年5月31日)と伝わっています。

奇妙丸(後の“織田信忠”)が元服するのは、元亀三年(1572年)と伝わっています。

「初夏」は「しょか」と読むと「夏の初め(←夏の季語)。陰暦四月の異称。」です。

「初夏」は「はつなつ」と読むと「夏の初め」(夏の季語)です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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