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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜


〜 文紡ぎ 初冬 はだすすき 心は知らゆ 〜


登場人物

松姫[武田信玄の五女]、奇妙丸[織田信長の嫡男](文だけの登場)、

菊姫[武田信玄の四女]、油川夫人[武田信玄の側室、菊姫と松姫の母]、



「はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ」

「万葉集 第十六巻 三八〇〇番」より

作者:詠み人知らず



松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、四十八の月になっている。

暦は十月になっている。



季節は初冬になっている。



ここは、甲斐の国。



陽のある時間は僅かに暖かさを感じるが、天気の悪い日や陽が沈むと肌寒さを感じる。



ここは、油川夫人、菊姫、松姫、の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は歌集を微笑んで読んでいる。

菊姫も歌集を微笑んで読んでいる。



松姫は菊姫を見ると、菊姫に微笑んで話し出す。

「姉上。竹取翁の物語と竹取翁の物語に登場する歌が、万葉集に載っています。竹取翁の物語と竹取翁の物語に登場する歌を詳しく調べたいです。」

菊姫は松姫を見ると、松姫に微笑んで話し出す。

「竹取翁の物語は竹取物語を連想するわね。竹取翁の物語と竹取物語は、展開などが違うわね。詳しく調べましょう。」

松姫は菊姫に考え込んで話し出す。

「母上に相談したいですが、母上が私達のために無理をして調べ物をする可能性があります。母上に相談が出来ません。」

菊姫は松姫に考え込んで話し出す。

「母上が無理をしたら困るわよね。母上に相談するのは止めましょう。」

松姫は菊姫に考え込んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫に考え込んで話し出す。

「父上は忙しい日が続くわ。父上に質問できないわ。父上に逢った時に、さり気なく相談しましょう。」

松姫は菊姫に考え込んで話し出す。

「はい。」

菊姫は歌集を考え込んで見た。

松姫も歌集を考え込んで見た。

菊姫は松姫を見ると、松姫に微笑んで話し出す。

「お松。竹取翁の物語に登場する歌の中で、奇妙丸様への歌の贈り物の候補を見付けたわ。」

松姫は菊姫を不思議な様子で見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「竹取翁の物語には、九人の少女達が詠んだ歌が有るわ。一人の少女が詠んだ歌に、“尾花”を導く枕詞の“はだすすき”が登場するわ。万葉集に登場する竹取翁の物語を知って勉強中と説明すれば、奇妙丸様への歌の贈り物に出来るわ。」

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「姉上が話す歌は、“はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ”、ですね。私も良いと思います。」

菊姫は松姫に微笑んで頷いた。

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「母上は、私が奇妙丸様に贈る文の内容と奇妙丸様に贈る歌を知ると、笑顔になります。母上に確認を兼ねて相談したいです。」

菊姫は松姫に微笑んで頷いた。

松姫は菊姫を微笑んで見た。

菊姫も松姫を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、油川夫人、菊姫、松姫、の住む屋敷。



油川夫人の部屋。



油川夫人は床の中で辛い様子で横になっている。



菊姫の足音が聞えた。

松姫の足音も聞えた。



油川夫人は床の上にゆっくりと微笑んで体を起こした。



菊姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。

松姫は歌集を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。



油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫を微笑んで見た。

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「母上。歌に関する相談に来ました。」

松姫は歌集を傍に置くと、油川夫人を微笑んで見た。

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「お菊。お松。遠慮しないで質問しなさい。」

松姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「万葉集に、竹取翁の物語と竹取翁の物語に登場する歌が載っています。少女達が詠んだ歌の中に、“はだすすき”が登場する歌があります。竹取翁の物語の季節は春ですが、“はだすすき”が登場する歌は、今の季節の贈り物に出来る歌だと思いました。奇妙丸様への歌の贈り物にしたいと思いました。」

油川夫人は床の上に体を起こし、松姫に微笑んで話し出す。

「お菊とお松が、選んだ歌を教えて。」

松姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「“はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ”、です。」

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「歌の意味は、“目立つまいと思っていた気持ちはもう知られてしまったので、私もおじいさんの言うことに賛成しましょう。”、となるそうよ。お松が奇妙丸様を想う気持ちは、しっかりと伝わるわ。“はだすすき”は、尾花を導く枕詞だわ。お菊。お松。良い歌を選んだわね。」

松姫は油川夫人を微笑んで見た。

菊姫も油川夫人を微笑んで見た。

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫に微笑んで話し出す。

「お松。奇妙丸様の歌の贈り物が決まったわね。奇妙丸様への文を早く書きなさい。お菊。今回もお松の文を書く相談にのってあげなさい。」

松姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は油川夫人に微笑んで話し出す。

「はい。」

油川夫人は床の上に体を起こし、菊姫と松姫を微笑んで見た。



奇妙丸様へ

甲斐の国は、陽のある時間は僅かに暖かさを感じますが、天気の悪い日や陽が沈むと肌寒さを感じます。

私は元気に過ごしています。

安心してお過ごしください。

姉と万葉集を読んでいました。

気になる歌を見付けました。

母上も姉も、私からの奇妙丸様への贈り物に合うと話しました。

奇妙丸様への贈り物に決めました。

受け取って頂けると嬉しいです。

はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ

甲斐の国では、尾花を見掛けます。

尾花を見た時に、今回の歌の贈り物を思い出して頂けると嬉しいです。

寒さが増していきます。

寒い日が増えていきます。

体調に気を付けてお過ごしください。

松より



お松へ

岐阜も、陽のある時間は僅かに暖かさを感じるが、天気の悪い日や陽が沈むと肌寒さを感じる。

私は元気に過ごしている。

安心して過ごしてくれ。

お松。

歌の贈り物をありがとう。

はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ

お松の書いた文を読みながら、お松が歌に重ねた想いを想像した。

私の想像が当たっていると嬉しい。

私の想像が違っていると恥ずかしい。

お松に逢った時に質問する。

私に遠慮せずに答えてくれ。

お松から受け取った歌を、お松に贈りたいと思った。

お松に逢った時に、お松と今回の歌を詠み合いたいと思った。

お松が私の傍で過ごす日を幾度も想像する。

お松が笑顔で過ごす姿を想像すると、私も笑顔になる。

私の分も、母上と姉上に笑顔で接してくれ。

寒さの強まる時間が増えていく。

体調に気を付けて過ごしてくれ。

奇妙丸より



「はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ」

松姫の想いは奇妙丸に知られているのか。

奇妙丸の想いは松姫に知られているのか。

松姫と奇妙丸が交わす文の中では、尾花のように想いが現れていない。

尾花のように想いが現れる時は、松姫と奇妙丸が逢う時まで待つ必要があるかも知れない。

松姫と奇妙丸は、傍で過ごす日を楽しみに過ごしている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十六巻 三八〇〇番」

「はだすすき 穂にはな出でそ 思ひたる 心は知らゆ 我れも寄りなむ」

ひらがなの読み方は「はだすすき ほにはないでそ おもひたる こころはしらゆ われもよりなむ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「目立つまいと思っていた気持ちはもう知られてしまったので、私もおじいさん(竹取翁[たけとりのおきな]のこと)の言うことに賛成しましょう。」となるそうです。

原文は「者田為々寸 穂庭莫出 思而有 情者所知 我藻将依」

「はだすすき」は、「穂に出ず」や「尾花」を導く枕詞です。

「穂に出ず」は、穂が出た薄(尾花)の意味と考えられていて、人目につくことを言います。

「竹取翁」が詠んだ歌の一首です。

私達が知る「竹取物語」は、平安時代のものです。

万葉集には「竹取翁(たけとりのおきな)」の話が載っています。

この話は、「竹取物語」の元になった話の一つかも知れませんが、内容は大きく違っていますし、はっきりとはしていません。

「竹取翁」の話のあらすじです。

竹取翁が春、丘に登ったときに、吸い物を作っている9人の美しい少女たちにあう。

少女たちが、翁に「(吸い物を煮ている)火を吹いて。」と言うので、翁が仲間に入る。

ところが、しばらくして、少女たちは一体誰がこの翁を呼んだのかと言い合う。

そのため、翁はなれなれしくした詫びに、歌を詠んで聞かせる。(翁が詠んだ歌は、三首)

翁が詠んだ歌は次のようなこと。

私(翁のこと)が若い頃には皆に大切にされ、華やかだったが、今は年をとってあなたたちにも嫌がられるようになってしまった。

あなたたちも年を取って白髪が生えるようになると、今の私のように人に疎まれるようになるよ。

翁の歌を聞いて感心した少女たちは、それぞれが翁への気持ちを歌に詠む。(9人の少女たちが詠んだ歌は、九首)

以上です。

武田家についての補足です。

油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。

武田軍の関連についてです。

元亀二年(1571年)十月は、大きな動きはありません。

元亀二年十月三日(1571年10月21日)に、戦国武将の北条氏康が亡くなります。

物語の設定時より前の出来事ですが、武田家・北条家・今川家は、三国同盟を結びます。

北条氏康の嫡男の北条氏政には、武田信玄の長女(“黄梅院”。※名前不明。戦国恋語り 信玄の娘 編では、“初瑠”)が正室として嫁ぎます。

武田信玄の嫡男の武田義信には、今川義元の娘(“嶺松院”。※名前不明。)が正室として嫁ぎます。

今川義元の嫡男の今川氏真には、北条氏康の娘(早川殿、または、早河殿。蔵春院。※名前不明。)が正室として嫁ぎます。

武田信玄が駿河侵攻を始めた事により、三国同盟は破綻してしまいます。

三国同盟の破綻後で、この物語の設定時より後の出来事になる、天正五年一月二十二日(1577年2月9日)に、北条氏康の娘(“北条夫人”。“桂林院”。※名前不明。)が武田勝頼に継室として嫁ぎます。

織田家関連について簡単に説明します。

奇妙丸(後の“織田信忠”)の母と伝わる生駒(いこま)家の吉乃(きつの)が亡くなったのは、永禄九年五月十三日(1566年5月31日)と伝わっています。

奇妙丸(後の“織田信忠”)が元服するのは、元亀三年(1572年)と伝わっています。

元亀四年七月二十八日に天正元年に改元するため、1573年は「元亀四年」と「天正元年」の二つの年号があります。

詳細な月が分からない場合は、「元亀四年」と「天正元年」が混在する可能性があります。

ご了承ください。

「初冬(しょとう)」は「冬の初め(←冬の季語)。陰暦十月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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