このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜


〜 文紡ぎ 月不見月 おほほしく相見し子 〜


登場人物

松姫[武田信玄の五女]、織田信忠(幼名:奇妙丸)[織田信長の嫡男](文だけの登場)、

菊姫[武田信玄の四女]、



「雲間より さ渡る月の おほほしく 相見し子らを 見むよしもがも」

「万葉集 第十一巻 二四五十番」より

作者:詠み人知らず



松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、五十五の月になっている。

暦は五月になっている。



季節は仲夏になっている。



ここは、甲斐の国。



蒸し暑さを感じる時が少しずつ増えている。

雨の降る日が続いている。



菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は文を持ち、部屋の中に微笑んで入った。

菊姫は部屋の中に微笑んで入った。



松姫は文を持ち、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。信忠様の文を直ぐに読みたい様子が伝わるわ。」

松姫は文を持ち、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「私の話す時間が長くなると、お松が信忠様の文を読む時間が遅くなるわね。直ぐに気付かなかったわ。ご免なさい。」

松姫は文を持ち、菊姫に慌てて話し出す。

「信忠様は大切です! 姉上も大切です! 姉上は、信忠様の文の相談以外にも、たくさんの相談に乗ってくれます! 私に遠慮しないで話してください!」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。気を遣ってくれてありがとう。」

松姫は文を持ち、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「話の続きは、信忠様の文を読んだ後にしましょう。」

松姫は文を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は文を持ち、文を広げると、文を微笑んで読み始めた。

菊姫は松姫を見ながら、文を微笑んで読み始めた。



お松へ

梅雨が始まっているね。

雨の降る日が続いているね。

季節は夏だが、涼しさ感じる時があり、蒸し暑さを感じる時がある。

お松が体調を崩していないか気になる。

お松は、私がお松を心配する時があると知れば、お松が私を心配して、体調を崩す可能性があると考えた。

お松が他の人物から話を聞く前に、お松に先に伝えたいと思った。

お松。

体調が悪い時は、隠さずに伝えよう。

共に元気になる方法を考えよう。

悩みがある時は、隠さずに伝えよう。

共に悩みの解決の方法を考えよう。

悲しい時は、隠さずに伝えよう。

共に悲しみを分け合おう。

私とお松。

共に支え合って過ごそう。

昨日、夢を見た。

夢の中で月を見た。

夢の中で見た月は、“雲の間から渡ってゆく月”だった。

夢の中で、素敵な女性の後ろ姿を見た。

夢の中の素敵な女性の後ろ姿は、“雲の間から渡ってゆく月のように、おぼろげに見えただけ”だった。

“雲の間から渡ってゆく月のように、おぼろげに見えただけ”だったが、素敵な女性は、お松だと直ぐに分かった。

お松の姿を見た時は無いが、お松だと分かった。

お松には不思議に感じるかも知れないが、私は不思議に感じなかった。

お松の姿を永く見たいと思ったのに、お松の姿はおぼろげなまま、直ぐに見えなくなった。

お松の姿を早く見たい。

お松の姿を永く見たい。

私の見た夢の中に似た内容の歌を見付けた。

お松への歌の贈り物に決めた。

お松。

歌を受け取ってくれると嬉しい。

雲間より さ渡る月の おほほしく 相見し子らを 見むよしもがも

お松。

寄り添いながら、様々な姿の月を見たい。

寄り添いながら、様々な姿の月を見る日を楽しみに、更に精進を重ねる。

体調に気を付けて過ごしてくれ。

信忠より



松姫は文を持ち、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫を見ると、松姫に微笑んで話し出す。

「梅雨の時季は、月が綺麗に見えない日が多くて、月が見られない日も多いわ。今月の異称の一つに、“月不見月”、があるわ。お松への想いと月を見たい想いを重ねて、夢の中にお松と月が現れたと表現したのね。実際に、信忠様の夢の中にお松と月が現れているかも知れないわ。信忠様は、お松の姿を知らないから、素敵な後ろ姿の女性の姿は直ぐに見えなくなったのね。信忠様がお松に早く逢いたい気持ちが伝わるわ。」

松姫は文を持ち、菊姫に恥ずかしく話し出す。

「素敵な女性と表現されるのは照れます。」

菊姫は松姫を見ると、松姫に微笑んで話し出す。

「素敵な容姿を目指して努力する気持ちは大切だけど、素敵と表現する内容は、容姿の他にもあるわ。」

松姫は文を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「信忠様は嫡男よ。嫡男の正室の立場は責任重大よ。お松は信忠様の正室になるわ。嫡男の正室が素敵なのは容姿のみ、と表現されたら、信忠様の評価が下がってしまうわ。お松は武田家と織田家を繋ぐ役目があるの。しっかりと過ごす必要があるわ。」

松姫は文を持ち、菊姫に緊張して話し出す。

「緊張してきました。」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。織田家で緊張して過ごさないために、今はたくさんの内容を勉強しているのよ。気持ちを楽にしなさい。」

松姫は文を持ち、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「“雲間より さ渡る月の おほほしく 相見し子らを 見むよしもがも”。今は、様々な思惑が入り乱れて時が動いているわ。信忠様は様々な思惑が入り乱れて時が動いているけれど、お松に逢えると信じて過ごしているわ。お松も信忠様に逢えると信じて過ごしなさい。」

松姫は文を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は文を持ち、菊姫に微笑んで話し出す。

「姉上。今回も信忠様の文の返事の相談に乗ってください。」

菊姫は松姫に微笑んで頷いた。

松姫は文を持ち、菊姫を微笑んで見た。



信忠様へ

素敵な文をありがとうございます。

梅雨の季節の頃は、雨の降る日が多いですね。

信忠様が元気に過ごされていると分かり安心しました。

私は元気に過ごしています。

安心して過ごしてください。

文と共に、素敵な歌の贈り物が届きました。

ありがとうございます。

信忠様の夢の中に私が現れたと知って嬉しくなりました。

今の私は到らないところが多いので、素敵な女性には遠い場所にいると思います。

信忠様が私を見た時に、夢の中に現れたとおりの素敵な女性だと思うように、様々な内容をしっかりと学びます。

私も信忠様に逢いたいです。

私も信忠様に逢える日が楽しみです。

梅雨が明ければ、暑さが続く夏が始まります。

体調に気を付けてお過ごしください。

松より



「雲間より さ渡る月の おほほしく 相見し子らを 見むよしもがも」

「雲の間から渡ってゆく月のように、おぼろげに見えただけのあの娘を見る方法があればいいのになぁ。」と思う気持ち。

松姫の元に届いた文から、織田信忠の歌に重ねる想いが伝わる。

松姫の元に届いた文から、織田信忠の優しさ伝わる。

今は様々な思惑が入り乱れて時が動いている。

松姫と織田信忠は、お互いの姿を見た時は無いが、文を通じて想いを確かめ合っている。

松姫と織田信忠は、逢う日を待ちながら過ごしている。

松姫と織田信忠は、お互いを信じて過ごしている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十一巻 二四五〇番」

「雲間より さ渡る月の おほほしく 相見し子らを 見むよしもがも」

ひらがなの読み方は「くもまより さわたるつきの おほほしく あいみしこらを みむよしもがも」となるうです。

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「雲(くも)の間から渡ってゆく月(つき)のように、おぼろげに見えただけのあの娘を(また)見る方法があればいいのになぁ。」となるそうです。

原文は「雲間従 狭■月乃 於保々思久 相見子等乎 見因鴨」

「■」は文字変換が出来ない可能性があるため、「■」にしました。

「おほほしく」は「ぼんやりと。おぼろげに。」の意味です。

武田家についての補足です。

油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。

武田軍の関連についてです。

元亀三年(1572年)五月には、大きな動きはありません。

織田家関連について簡単に説明します。

織田信忠(幼名“奇妙丸”)の母と伝わる生駒(いこま)家の吉乃(きつの)が亡くなったのは、永禄九年五月十三日(1566年5月31日)と伝わっています。

織田信忠(幼名“奇妙丸”)が元服するのは、元亀三年(1572年)と伝わっています。

織田信忠は、実弟の「茶筅丸(ちゃせんまる)(織田信雄[おだのぶかつ])」、実弟の「三七丸(神戸三七郎信孝[かんべさんしちろうのぶたか]、織田信孝[おだのぶたか])」、と共に元服したと伝わっています。

元亀三年(1572年)一月に元服した説があります。

織田信忠の初陣は、元亀三年(1572年)七月と伝わっています。

織田信忠が元服時に改名した名前は「織田勘九郎信重(おだかんくろうのぶしげ)」です。

「織田信忠」と改名するのは後の出来事になりますが、名前が幾度も変わると分かり難くなるため、元服後の名前は「織田信忠」で統一します。

ご了承ください。

「仲夏(ちゅうか)」は「夏の半ば。陰暦五月の異称。中夏。」です。

夏の季語です。

「月不見月(つきみずづき)」は「(五月雨[さみだれ]のために月がめったに見られないところから)陰暦五月の異称」です。

夏の季語です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





←前            目次            次→


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください