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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜
〜 文紡ぎ 玄月 月立ちて 〜
登場人物
松姫[武田信玄の五女]、織田信忠(幼名:奇妙丸)[織田信長の嫡男](文だけの登場)、
菊姫[武田信玄の四女]、
「月立ちて ただ三日月の 眉根掻き 日長く恋ひし 君に逢へるかも」
「万葉集 第六巻 九九三番」より
作者:坂上郎女(さかのうえのいつらめ)
松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、七十一の月になっている。
暦は九月になっている。
季節は晩秋になる。
今年の四月、菊姫と松姫の父の武田信玄が亡くなった。
武田信玄の遺言により、武田信玄の死は三年隠すと決まった。
様々な思惑が複雑に絡まる中の晩秋になる。
ここは、甲斐の国。
一日をとおして過ごし易い時間が増えてきた。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
菊姫の部屋。
松姫の部屋。
松姫は普通に居る。
菊姫が部屋の中に普通に入ってきた。
松姫は菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に不思議な様子で話し出す。
「私が一人のみで躑躅ヶ崎館に来るように言われたの。」
松姫は菊姫に不思議な様子で話し出す。
「姉上が一人のみで躑躅ヶ崎館に行く時は幾度もあります。気になる出来事があるのですか?」
菊姫は松姫に不思議な様子で話し出す。
「特定できる内容は無いけれど、不思議に感じるの。」
松姫は菊姫を不思議な様子で見た。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「不思議に感じながら話していても、解決しないわね。躑躅ヶ崎館に行けば、解決する可能性があるわね。」
松姫は菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「今から躑躅ヶ崎館に行くわ。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「姉上。行ってらっしゃい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫も菊姫を微笑んで見た。
菊姫は部屋を微笑んで出て行った。
暫く後の事。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
菊姫の部屋。
菊姫は考えながら居る。
松姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。
菊姫は松姫を考えながら見た。
松姫は菊姫に不思議な様子で話し出す。
「姉上。何かありましたか?」
菊姫は松姫に困惑して小さい声で話し出す。
「お松。織田家と徳川家が繋がっている。徳川軍が長篠城を攻めた。武田側が長篠城に援軍を送った。長篠城に援軍の報告が届いていなかったらしい。長篠城が開場降伏した。以上の内容を知っているわよね」
松姫は菊姫に困惑して小さい声で話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫に困惑して小さい声で話し出す。
「お松は織田家の嫡男の信忠様と婚約しているわ。お松は武田家の縁談の申し出を信忠様以外は断り続けているわ。」
松姫は菊姫に困惑して小さい声で話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫に困惑して小さい声で話し出す。
「武田の関係者の中にお松を快く思わない人物がいるの。お松の行動を制限する必要があると考えている人物がいるらしいの。」
松姫は菊姫を困惑して見た。
菊姫は松姫に困惑して小さい声で話し出す。
「お松の行動を少しでも自由にするために、私がお松の行動を見る申し出を受けたの。」
松姫は菊姫を困惑して見ている。
菊姫は松姫を困惑して抱いた。
松姫は菊姫に心配して小さい声で話し出す。
「姉上。私は大丈夫です。」
菊姫は松姫を抱いて、菊姫を困惑して見た。
数日後の事。
ここは、松姫の乳母の家。
一室。
松姫は落ち着かない様子で居る。
菊姫は部屋の中に微笑んで入ってきた。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。何か遇ったの?」
松姫は菊姫に困惑して話し出す。
「私は出掛けて大丈夫なのか心配になります。」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は菊姫を安心して見た。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。商人を呼んだの。今回も買い物をしましょう。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
少し後の事。
ここは、松姫の乳母の家。
一室。
菊姫は微笑んで居る。
松姫も微笑んで居る。
商人は普通に居る。
商人は懐から小さい紙を取り出すと、松姫に普通に渡した。
松姫は商人から小さい紙を微笑んで受け取った。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を持ち、紙を丁寧に広げた。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
紙には、織田信忠の筆跡で歌が書いてある。
月立ちて ただ三日月の 眉根掻き 日長く恋ひし 君に逢へるかも
松姫は小さい紙を持ち、商人を微笑んで見た。
菊姫は商人に微笑んで頷いた。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「警戒は今も強いです。奇妙殿が頼んだ状況を信じて頂くために、奇妙殿が自筆で歌を書きました。奇妙殿から伝言を預かりました。」
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「伝言を教えてください。お願いします。」
商人は松姫に静かに話し出す。
「想いを繋げる状況が少しずつ悪化している。私は姫を想い続けている。姫が辛い想いをしていないか心配だ。命は大事にして過ごして欲しい。十三夜に輝く月を観ながら、姫を想い、姫の無事を願う。」
松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人を困惑して見た。
菊姫は松姫に微笑んで小さい声で話し出す。
「お松。伝えたい想いは、しっかりと伝えなさい。」
松姫は紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「今回は少し長い伝言を頼みます。大丈夫ですか?」
商人は松姫に普通の表情で小さく礼をした。
松姫は紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「大切な君が私を想い続けています。大切な君から伝言が届きます。物凄く嬉しいです。私も大切な君を想い続けています。私を取り巻く状況は変わってきています。大切な君を取り巻く状況も変わっていると思います。私の傍には、姉上が居ます。十三夜に輝く月を観ながら、大切な君から頂いた贈り物の歌を心の中で詠みます。私が心細くなる時は無いです。私も命を大切にして過ごします。大切な君も命を大切にして過ごしてください。」
商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「姫様からの伝言。しっかりと伝えます。」
松姫は紙を持ち、商人を微笑んで見た。
翌日の事。
ここは、躑躅ヶ崎館。
一室の中から、一人の男性と菊姫の声が聞こえる。
「昨日、松姫と共に外出したらしいな。」
「お松の乳母の家に出掛けて買い物をしました。」
「お菊とお松の住む屋敷に商人を呼ばないのか?」
「監視されていないか不安になる時があります。不安な気持ちが強くなれば、体調を悪くする時があります。適度に気晴らしをさせたいと思っています。」
「分かった。報告は忘れないように。」
「はい。」
数日後の事。
十三夜になる。
夜空には月が静かに輝いている。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
縁。
菊姫は微笑んで月を観ている。
松姫も微笑んで月を観ている。
菊姫は月を観ながら、松姫に微笑んで話し出す。
「お松。月が綺麗に輝いているわね。」
松姫も月を観ながら、菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は月を微笑んで観た。
松姫も月を微笑んで観た。
「月立ちて ただ三日月の 眉根掻き 日長く恋ひし 君に逢へるかも」
松姫と織田信忠は、十三夜に輝く月を観ながら想いを重ねている。
松姫の想いと織田信忠の想いを繋ぐ状況は、少しずつ悪化している。
松姫の想いと織田信忠の想いは、複雑に絡まる思惑の中でも途切れないように紡ぎ続けている。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第六巻 九九三番」
「月立ちて ただ三日月の 眉根掻き 日長く恋ひし 君に逢へるかも」
作者は「坂上郎女(さかのうえのいつらめ)」
ひらがなの読み方は「つきたちて ただみかづきの まゆねかき ひながくこひし きみにあへるかも」
原文は「月立而 直三日月之 眉根掻 氣長戀之 君尓相有鴨」
歌の意味は「月がまた生まれて出てくる時の、三日月のような私の眉を掻いたからでしょうね。長くお会いできなかった恋しいあなたに会えたんですもの。」となるそうです。
眉を掻くと人に会えるという迷信があったそうです。
「十三夜(じゅうさんや)」についてです。
「十三夜(じゅうさんや)」は「陰暦十三日の夜。または、陰暦九月十三日の夜。」です。
「十五夜(じゅうごや)」は「陰暦十五日の夜。または、陰暦八月十五日の夜。」です。
「十五夜」に対しての「十三夜」の場合は、二つの意味も該当します。
この物語は「陰暦九月十三日の夜」の意味で使用しています。
陰暦八月十五日に次いで月が美しいとされています。
別名は、「後の月(のちのつき)」、「豆名月(まめめいげつ)」、「栗名月(くりめいげつ)」があります。
「十五夜」は中国から渡来した風習ですが、「十三夜」は日本独自の風習です。
十三夜の基となる風習は、戦国時代より前からありました。
江戸時代になってから、町民の間などに広まったそうです。
「十三夜」の時期に食べ頃の大豆や栗を供えるそうです。
「十五夜」だけ、「十三夜」だけ、などと片方しか行なわないのは、「片見月(かたみづき)」といって嫌われたそうです。
「十三夜」は、現在の暦にすると毎年十月頃になります。
毎年のように日付が違います。
2012年の十三夜は、2012年10月27日です。
ご確認ください。
武田家についての補足です。
油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。
武田信玄は、元亀四年四月十二日(1573年5月13日)に信濃の駒場で亡くなります。
享年は、五十三歳と伝わっています。
武田信玄の死因は、肺結核、胃癌、食道癌、などの説が有力です。
武田信玄の他の死因には、武田信玄は敵が籠城中の野田城から聞こえる笛の音に惹かれて本陣から出て行き、本陣の外に居る時に鉄砲で撃たれて、その傷がもとで亡くなる、があります。(掲載日現在は、この説は俗説として考えられています。)
更に武田信玄の他の死因には、織田家の毒殺、もあります。(掲載日現在は、この説も俗説と考えられています。)
武田信玄は、武田勝頼と重臣に遺言を残したと伝わっています。
三つの遺言の内容が広く知られています。
800枚の白紙に武田信玄の花押を書いたから返礼などの時に使うように。
武田信玄の死を三年隠すように。
三年後に、武田信玄の死体に甲冑を着せて諏訪湖に沈めるように。
遺言の内容が事実だとすると、武田信玄は以前から亡くなる事を分かっていて、甲斐の国を守るために前から考えていた事が分かります。
武田信玄の葬儀は、天正四年(1576年)四月に行われたそうです。
武田信玄の死が三年隠せたかについてですが、三年より前に人数等は不明ですが、気付かれた形跡があるようです。
当時は忍者などを使った情報戦が激しかった事があり、武田信玄の死が知られてしまった可能性はあります。
後の出来事になりますが、松姫は織田信忠と婚約している経過などから、辛い立場になっていったようです。
天正元年(1573年)の秋に、武田盛信が松姫を引き取って暮らすようになります。
「雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編」では、物語の展開から、秋より後の季節では、武田盛信が松姫を引き取って暮らす設定にします。
ご了承ください。
松姫と織田信忠の縁談が、破談なのか、続いているのか、分からなくなってしまった理由の一つに、「西上作戦(さいじょうさくせん)」があります。
西上作戦は、甲斐武田家が、元亀三年(1572年)九月から元亀四年(1573年)四月に掛けて行った遠征をいいます。
西上作戦は、武田信玄の体調と武田信玄の死によって終わった状況になります。
武田軍の関連についてです。
天正元年(1573年)八月から九月の動きです。
徳川家康軍が菅沼正貞の城主の長篠城を包囲しています。
武田軍は長篠城に援軍を送っていました。
長篠城には援軍の報告が届いていなかったらしく、長篠城では八月中に開場降伏を決めます。
菅沼正貞は長篠城を去り、援軍の武田軍と合流します。
織田家関連について簡単に説明します。
織田信忠(幼名“奇妙丸”)が元服するのは、元亀三年(1572年)と伝わっています。
織田信忠は、実弟の「茶筅丸(ちゃせんまる)(織田信雄[おだのぶかつ])」、実弟の「三七丸(神戸三七郎信孝[かんべさんしちろうのぶたか]、織田信孝[おだのぶたか])」、と共に元服したと伝わっています。
元亀三年(1572年)一月に元服した説があります。
織田信忠が元服時に改名した名前は「織田勘九郎信重(おだかんくろうのぶしげ)」です。
「織田信忠」と改名するのは後の出来事になりますが、名前が幾度も変わると分かり難くなるため、元服後の名前は「織田信忠」で統一します。
ご了承ください。
織田信忠の初陣は、元亀三年(1572年)と伝わっています。
織田信忠の「具足初め(ぐそくはじめ)の儀」が、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)に執り行われたと伝わっています。
織田信忠の初陣は、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)、または、直ぐ後の日付になるようです。
織田信忠の初陣の相手は「北近江」の「浅井家」の「浅井長政」です。
浅井長政の継室は、織田信長の妹の「お市の方」です。
織田信忠の初陣の相手は、父親(織田信長)の妹(お市の方)の嫁ぎ先になります。
織田信忠にとって、初陣の次の大きな戦は、元亀三年(1572年)十二月頃の遠江の二俣城の戦いや三方ヶ原の戦いになります。
天正元年(1573年)八月の途中から九月の織田家の動きを簡単に説明します。
「一乗谷の戦い(いちじょうだにのたたかい)」(別名:刀根坂の戦い[とねざかのたたかい])(福井県福井市)により、朝倉義景は自刃して亡くなります。
小谷城を攻めます。
織田軍、対、浅井久政・浅井長政、との戦いになります。
攻められた小谷城は、城が分断してしまい、浅井久政・浅井長政も分断してしまいます。
天承元年八月二十七日(1573年9月23日)、浅井久政は自害して亡くなります。
浅井久政の継室の「お市の方」は、三人の娘と共に城を出て織田信長の元に戻ります。
天正元年九月一日(1573年9月26日)、浅井長政は自刃して亡くなります。
暦についての補足です。
「元亀四年七月二十八日(1573年8月25日)」に、「天正元年(1573)」に改元しました。
この物語についての補足です。
松姫と織田信忠が逢う場面が小説などに登場します。
松姫と織田信忠が逢った可能性のある記録があるそうです。
その記録を基にして、松姫と織田信忠が逢う場面が登場していると思います。
松姫と織田信忠が、七月に逢う場面を書きたいと思ったので、七月に逢う話が登場します。
以上、ご了承ください。
「玄月(げんげつ)」についてです。
「陰暦九月の異称」です。
秋の季語です。
「晩秋(ばんしゅう)」についてです。
「秋の終わり。秋の末。」(秋の季語)、「陰暦九月の異称」、です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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