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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜


〜 文紡ぎ 姑洗 桜の花のにほひはもあなに 〜


登場人物

松姫[武田信玄の五女]、織田信忠(幼名:奇妙丸)[織田信長の嫡男](文だけの登場)、

菊姫[武田信玄の四女]、



「おとめらの かざしのために 遊士をの 蘰のためと 敷きませる

国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに」

「万葉集 第八巻 一四二九番」より

作者:若宮年魚麿(わかみやのあゆまろ)



松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、七十七の月になっている。

暦は三月になっている。



季節は晩春になっている。



昨年の四月、菊姫と松姫の父の武田信玄が亡くなった。

武田信玄の遺言により、武田信玄の死は三年隠すと決まった。

様々な思惑が複雑に絡まる中の晩春になる。



ここは、甲斐の国。



天気の良い日は、寒さを感じる時間が減った。

寒さを感じる時間の少ない過ごし易い日が続いている。



桜の花が咲き始めた。



ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は普通に居る。



菊姫は部屋の中に微笑んで入った。



松姫は菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。桜の花が咲き始めたわね。部屋に桜の花の咲く小枝を飾りましょうか?」

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「桜の花は咲き始めて直ぐです。部屋に桜の花を飾るのは暫く後で良いです。」

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。近い内に、私と侍女と一緒に桜の花を見に行きましょう。」

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。



翌日の事。



ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は普通に居る。



菊姫は部屋の中に普通に入った。



松姫は菊姫を不思議な様子で見た。

菊姫は松姫に普通に話し出す。

「躑躅ヶ崎館に呼ばれたの。今から少し出掛けるわ。」

松姫は菊姫を心配な様子で見た。

菊姫は松姫に微笑んで囁いた。

「お松。普通に過ごして。」

松姫は菊姫に微笑んで囁いた。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「姉上。行ってらっしゃい。」

菊姫は松姫に微笑んで頷いた。



菊姫は部屋の外に微笑んで出て行った。



暫く後の事。



ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は普通に居る。



菊姫は部屋の中に普通に入った。



松姫は菊姫を心配な様子で見た。

菊姫は松姫に普通の表情で囁いた。

「織田信長公が、上洛したそうなの。織田信長公は、参議に叙任されたそうなの。」

松姫は菊姫を不思議な様子で見た。

菊姫は松姫に普通の表情で囁いた。

「お松。蘭麝侍。知っているわよね。」

松姫は菊姫に不思議な様子で囁いた。

「はい。」

菊姫は松姫に普通の表情で囁いた。

「朝廷は、織田信長公に、蘭麝侍を切り取る許可を出したらしいの。織田信長公から要望した結果なのかは分からないわ。」

松姫は菊姫を考えながら見た。

菊姫は松姫に考えながら囁いた。

「織田信長公が蘭麝侍を持つ。本当ならば凄いわよね。本当かしら?」

松姫は菊姫を困惑して見た。

菊姫は松姫に困惑して囁いた。

「お松の考えを知りたくて話したの。他意は無いわ。悩ませてしまったわ。ご免なさい。」

松姫は菊姫に微笑んで囁いた。

「姉上。謝らないでください。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫も菊姫を微笑んで見た。



翌日の事。



ここは、松姫の乳母の家。



一室。



部屋の中には、商品が広げてある。



菊姫は微笑んで居る。

松姫も微笑んで居る。

商人は普通に居る。



菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。素敵な商品がたくさんあるわね。」

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

菊姫は商人に微笑んで頷いた。

商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は商人を微笑んで見た。

菊姫は松姫と商人を微笑んで見た。

商人は懐から小さい紙を取り出すと、松姫に普通に渡した。

松姫は商人から小さい紙を微笑んで受け取った。

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は小さい紙を持ち、小さい紙を丁寧に広げた。

菊姫は松姫を微笑んで見た。



小さい紙には、織田信忠の筆跡で歌が書いてある。



「おとめらの かざしのために 遊士をの 蘰のためと 敷きませる

国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに」



松姫は小さい紙を持ち、商人を微笑んで見た。

菊姫は商人を微笑んで見た。

商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。

「警戒は今も強いです。奇妙殿が頼んだ状況を信じて頂くために、奇妙殿が自筆で歌を書きました。奇妙殿から伝言を預かっています。」

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「伝言を教えてください。お願いします。」

商人は松姫に普通の表情で静かに話し出す。

「お松。様々な出来事が起きていると思うが、穏やかな春になっていると思う。元気で過ごしているだろうか。私は元気に過ごしている。安心してくれ。桜の花を見る機会が増えた。桜の花を見ていると、お松と共に桜の花を見たいと思う。お松に私の見る桜の花を贈りたいと幾度も思う。お松に桜の花を贈り物に用意できない。残念な思いに包まれる。私の見る桜の花の代わりに、お松に桜の花を詠んだ歌を贈る。受け取ってくれると嬉しい。私は、お松を想いながら、桜の花を見る。私は、お松が傍に居る姿を想像しながら、桜の花を見る。暖かい時間は増えているが、肌寒さを感じる時間があると想う。体調に気を付けて過ごしてくれ。命を大切に過ごしてくれ。」

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「今回の伝言も長いです。覚える行為が、更に大変だと思います。私への気遣いも含めて、何時も感謝しています。ありがとうございます。」

菊姫は商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「気遣い感謝しています。」

商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。

「奇妙様からはたくさんの恩を受けています。私に出来る内容で感謝の気持ちを伝えています。」

菊姫は商人を微笑んで見た。

松姫は小さい紙を持ち、商人を微笑んで見た。

商人は松姫と菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「私からの返事を奇妙様に伝えてください。願いします。」

商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「元気に過ごされているのですね。安心しました。私も元気に過ごしています。安心してお過ごしください。桜の花の登場する歌の贈り物。ありがとうございます。甲斐の国は桜の花が咲き始めています。私は、姉上と一緒に、桜の花を見ました。姉上と一緒に桜の花をたくさん見る約束をしました。私も、奇妙様を想いながら、桜の花を見ます。私も、奇妙様が傍に居る様子を想像しながら、桜の花を見ます。桜の花を見ながら、奇妙様から頂いた桜の花を詠みます。私も体調に気を付けて元気に過ごします。奇妙様。体調に気を付けてお過ごしください。命を大切にお過ごしください。松より。」

商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人に恥ずかしく小さい声で話し出す。

「今回も長い返事になってしまいました。」

商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。

「想いの伝わるお返事です。長いお返事に感じません。奇妙様に一言も間違えずにお伝えします。ご安心ください。」

菊姫は松姫に微笑んで小さい声で話し出す。

「お松。良かったわね。」

松姫は小さい紙を持ち、菊姫に微笑んで小さい声で話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。

商人は菊姫と松姫を普通の表情で見た。

菊姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。

「素敵な商品ね。購入するわ。」

商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を懐に微笑んで仕舞った。

菊姫は商品を持ち、松姫を微笑んで見た。

松姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。

「素敵な商品です。購入します。お願いします。」

商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。

菊姫は商品を持ち、松姫と商人を微笑んで見た。

松姫も商品を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。

商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。



翌日の事。



ここは、躑躅ヶ崎館。



一室の中から、一人の男性の声と菊姫の声が聞こえる。

「お菊。報告は終わりか?」

「はい。」

「今後も報告を頼む。」

「はい。」

「お菊。今回も、お松が縁談の話を聞いて、即答で断りの返事をした。」

「お松は、父上も母上も、慕い尊敬しています。父上が縁談を決めて、父上からお松に話した縁談です。父上も母上も、想い続ける気持ちが、武田家のためになると話しました。父上はお松に縁談の破棄を話していません。お松にとって、新たな縁談の話を受けられない気持ちが続いています。」

「お菊。お松が早く心変わりをするように接してくれ。」

「分かりました。」



少し後の事。



ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は不安な様子で居る。



菊姫が部屋の中に微笑んで入ってきた。



松姫は菊姫を不安な様子で見た。

菊姫は松姫を抱くと、松姫に微笑んで囁いた。

「お松。無難な内容で報告したわ。大丈夫。安心して。」

松姫は菊姫に不安な様子で囁いた。

「姉上。迷惑を掛けます。申し訳ありません。」

菊姫は松姫を抱いて、松姫に微笑んで囁いた。

「私はお松の姉よ。迷惑に思わないで。安心して。」

松姫は菊姫に微笑んで囁いた。

「姉上。ありがとうございます。」

菊姫は松姫を抱いて、松姫に微笑んで頷いた。

松姫は菊姫を微笑んで見た。



「おとめらの かざしのために 遊士をの 蘰のためと 敷きませる

国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに」

桜の花が咲く季節になっている。

松姫と織田信忠は、綺麗な桜の花が咲いても傍で見られない。

松姫と織田信忠は、桜の花に想いを重ねながら、桜の花を見ている。

松姫と織田信忠は、桜の花を見ながら、想いを紡いでいく。

桜の花の咲く季節は、様々な思惑の乱れる中でも、時の早さは変わらずに過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第八巻 一四二九番」

「おとめらの かざしのために 遊士をの 蘰のためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに」

作者は「若宮年魚麿(わかみやのあゆまろ)」

ひらがなの読み方は「おとめらの かざしのために みやびをの かずらのためと しきませる くにはたてに さきにける さくらのはなの にほひはもあなに」

原文は「□(“女”編に“感”)嬬等之 頭挿乃多米尓 遊士之 蘰之多米等 敷座流 國乃波多弖尓 開尓鶏類 櫻花能 丹穂日波母安奈尓」

「□」は返還の出来ない文字でした。

歌の意味は「少女の髪かざりのためにと、風流な人の髪かざりのためにと、天皇が治めていらっしゃる国のはてに咲いている桜の花の色のなんと美しいことでしょう。」となるそうです。

「にほひ」は、「色鮮やかに映えること」です。

「あなに」は、「あぁ、ほんとうに」、とか、「あぁ、とっても」、という意味です。

武田家についての補足です。

油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。

武田信玄は、元亀四年四月十二日(1573年5月13日)に信濃の駒場で亡くなります。

享年は、五十三歳と伝わっています。

武田信玄の死因は、肺結核、胃癌、食道癌、などの説が有力です。

武田信玄の他の死因には、武田信玄は敵が籠城中の野田城から聞こえる笛の音に惹かれて本陣から出て行き、本陣の外に居る時に鉄砲で撃たれて、その傷がもとで亡くなる、があります。(掲載日現在は、この説は俗説として考えられています。)

更に武田信玄の他の死因には、織田家の毒殺、もあります。(掲載日現在は、この説も俗説として考えられています。)

武田信玄は、武田勝頼と重臣に遺言を残したと伝わっています。

三つの遺言の内容が広く知られています。

800枚の白紙に武田信玄の花押を書いたから返礼などの時に使うように。

武田信玄の死を三年隠すように。

三年後に、武田信玄の死体に甲冑を着せて諏訪湖に沈めるように。

遺言の内容が事実だとすると、武田信玄は以前から亡くなる事を分かっていて、甲斐の国を守るために前から考えていた事が分かります。

武田信玄の葬儀は、天正四年(1576年)四月に行われたそうです。

武田信玄の死が三年隠せたかについてですが、三年より前に人数等は不明ですが、気付かれた形跡があるようです。

当時は忍者などを使った情報戦が激しかった事があり、武田信玄の死が知られてしまった可能性はあります。

後の出来事になりますが、松姫は織田信忠と婚約している経過などから、辛い立場になっていったようです。

天正元年(1573年)の秋に、武田盛信が松姫を引き取って暮らすようになります。

「雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編」では、物語の展開から、秋より後の季節では、武田盛信が松姫を引き取って暮らす設定にします。

ご了承ください。

松姫と織田信忠の縁談が、破談なのか、続いているのか、分からなくなってしまった理由の一つに、「西上作戦(さいじょうさくせん)」があります。

西上作戦は、甲斐武田家が、元亀三年(1572年)九月から元亀四年(1573年)四月に掛けて行った遠征です。

西上作戦は、武田信玄の体調と武田信玄の死によって終わった状況になります。

武田軍の関連についてです。

天正二年(1574年)三月の動きです。

天正二年三月五日(1574年3月27日)、「武田信虎(たけだのぶとら)」(武田信玄の父)が「高遠城」(武田信廉[たけだのぶかど][武田信玄の弟]の居城)で亡くなりました。

武田信玄と武田信虎の関係が理由だと思いますが、武田信虎が高遠城に身を寄せたのは、武田信玄の死後になります。

織田家関連について簡単に説明します。

織田信忠(幼名“奇妙丸”)の元服は、元亀三年(1572年)と伝わっています。

織田信忠は、実弟の「茶筅丸(ちゃせんまる)(織田信雄[おだのぶかつ])」、実弟の「三七丸(神戸三七郎信孝[かんべさんしちろうのぶたか]、織田信孝[おだのぶたか])」、と共に元服したと伝わっています。

元亀三年(1572年)一月に元服した説があります。

織田信忠が元服時に改名した名前は「織田勘九郎信重(おだかんくろうのぶしげ)」です。

「織田信忠」と改名するのは後の出来事になりますが、名前が幾度も変わると分かり難くなるため、元服後の名前は「織田信忠」で統一します。

ご了承ください。

織田信忠の初陣は、元亀三年(1572年)と伝わっています。

織田信忠の「具足初め(ぐそくはじめ)の儀」が、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)に執り行われたと伝わっています。

織田信忠の初陣は、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)、または、直ぐ後の日付になるようです。

織田信忠の初陣の相手は「北近江」の「浅井家」の「浅井長政」です。

浅井長政の継室は、織田信長の妹の「お市の方」です。

織田信忠の初陣の相手は、父親(織田信長)の妹(お市の方)の嫁ぎ先になります。

織田信忠にとって、初陣の次の大きな戦は、元亀三年(1572年)十二月頃の遠江の二俣城の戦いや三方ヶ原の戦いになります。

天正二年(1574年)三月の織田家の動きを簡単に説明します。

天正二年三月十二日(1574年4月3日)、上洛のため岐阜を出立します。

天正二年三月十八日(1574年4月9日)、従三位参議に叙任されます。

天正二年三月二八日(1574年4月19日)、東大寺正倉院に収蔵されている香木の「蘭奢侍(らんじゃたい)」を切り取ります。

「姑洗(こせん)」についてです。

主に二つの意味が有ります。

「中国音楽の十二律の一。基音の黄鐘(こうしょう)より四律高い音。日本音楽の十二律の下無(しもむ)にあたる。」

「陰暦三月の異称」

以上です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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