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〜 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 〜


〜 文紡ぎ 仲呂 我が心からなつかしみ思ふ 〜


登場人物

松姫[武田信玄の五女]、織田信忠(幼名:奇妙丸)[織田信長の嫡男](文だけの登場)、

菊姫[武田信玄の四女]、




「見れど飽かぬ 人国山の 木の葉をし 我が心から なつかしみ思ふ」

「万葉集 第七巻 一三〇五番」より

作者:柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)歌集より




松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、七十八の月になっている。

暦は四月になっている。



季節は初夏になる。



昨年の四月、菊姫と松姫の父の武田信玄が亡くなった。

武田信玄の遺言により、武田信玄の死は三年隠すと決まった。

様々な思惑が複雑に絡まる中の初夏になる。



ここは、甲斐の国。



一日をとおして過ごし易い日が続いている。



初夏の花がたくさん咲いている。

澄んだ緑色の木々の葉が辺りを綺麗に彩っている。

澄んだ緑色の植物の葉も辺りを綺麗に彩っている。



ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は普通に居る。



菊姫が部屋を微笑んで訪ねた。



松姫は菊姫を微笑んで見た。

菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。過ごし易い日が続くわ。初夏の澄んだ緑色の木々の葉を見ながら、初夏に咲く花を見ながら、話したいわ。明日、馬に乗って出掛けましょう。」

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫も菊姫を微笑んで見た。



翌日の事。



ここは、甲斐の国。



今日も一日をとおして過ごし易い日が続いている。



初夏の花がたくさん咲いている。

澄んだ緑色の木々の葉が辺りを綺麗に彩っている。

澄んだ緑色の植物の葉も辺りを綺麗に彩っている。



草原。



時折、心地好く感じる風が吹く。



菊姫は真剣な表情で馬を駆けている。

松姫も真剣な表情で馬を駆けている。



菊姫は馬を真剣な表情で止めた。

松姫も馬を真剣な表情で止めた。



菊姫は馬に乗り、松姫を微笑んで見た。

松姫も馬に乗り、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は馬に乗り、松姫に微笑んで話し出す。

「お松。到着したわ。」

松姫は馬に乗り、辺りを微笑んで見た。

菊姫は馬に乗り、松姫を微笑んで見た。

松姫は馬に乗り、菊姫を見ると、菊姫に微笑んで話し出す。

「木々の澄んだ緑色の葉が綺麗です。姉上。ありがとうございます。」

菊姫は馬に乗り、松姫に微笑んで頷いた。

松姫は馬に乗り、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は馬に乗り、松姫に微笑んで話し出す。

「お松の乳母の家に商人が来る日なの。お松の乳母の家で買い物が出来るわ。景色を見ながらたくさん話した後は、お松の乳母の家で休憩と買い物をしましょう。」

松姫は馬に乗り、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は馬に乗り、松姫に微笑んで話し出す。

「馬から下りた景色も楽しみましょう。」

松姫は馬に乗り、菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

菊姫は馬から微笑んで降りた。

松姫も馬から微笑んで降りた。

菊姫は手綱を持ち、景色を微笑んで見た。

松姫も手綱を持ち、景色を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、松姫の乳母の家。



一室。



部屋の中には、商品が広げてある。



菊姫は微笑んで居る。

松姫も微笑んで居る。

商人は普通に居る。



菊姫は松姫に微笑んで話し出す。

「お松。素敵な商品がたくさんあるわね。」

松姫は菊姫に微笑んで話し出す。

「はい。」

商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

菊姫は商人に微笑んで頷いた。

商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は商人を微笑んで見た。

菊姫は松姫と商人を微笑んで見た。

商人は懐から小さい紙を取り出すと、松姫に普通に渡した。

松姫は商人から小さい紙を微笑んで受け取った。

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は小さい紙を持ち、小さい紙を丁寧に広げた。

菊姫は松姫を微笑んで見た。



小さい紙には、織田信忠の筆跡で歌が書いてある。



見れど飽かぬ 人国山の 木の葉をし 我が心から なつかしみ思ふ



松姫は小さい紙を持ち、商人を微笑んで見た。

菊姫は商人を微笑んで見た。

商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。

「警戒は今も強いです。奇妙殿が頼んだ状況を信じて頂くために、奇妙殿が自筆で歌を書きました。奇妙殿から伝言を預かりました。」

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「伝言を教えてください。お願いします。」

商人は松姫に普通の表情で静かに話し出す。

「お松。様々な出来事が起きているが、穏やかな初夏になっていると思う。お松は、甲斐の初夏の景色を見ながら、元気に過ごしているのだろうか。私は、初夏の景色を見ながら、お松を想う日々が続いている。私は元気に過ごしている。安心してくれ。初夏になり、木々の葉も、植物の葉も、辺りを初夏の澄んだ緑色で彩っている。お松と共に、初夏の景色を見ながら過ごしたいと思う。お松に葉を詠んだ歌を贈りたいと思った。受け取ってくれると嬉しい。私は、お松を想いながら、お松が傍に居る姿を想像しながら、初夏の木々の葉を見る。過ごし易い日が続くと、気付かずに無理をする時があると思う。無理をしないように、過ごしてくれ。命を大切に過ごしてくれ。」

菊姫は松姫と商人に微笑んで話し出す。

「長い伝言が続くわね。お松を想う気持ちが伝わるわ。」

商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、菊姫を微笑んで見た。

菊姫は商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「気遣い感謝しています。」

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「今回の伝言も長いです。覚える行為が、更に大変ですよね。私への気遣いも含めて、何時も感謝しています。ありがとうございます。」

商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。

「奇妙様からはたくさんの恩を受けています。姫様は奇妙様の想い人です。私に出来る内容で感謝の気持ちを伝えています。」

菊姫は商人を微笑んで見た。

松姫も商人を微笑んで見た。

商人は松姫と菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「私からの返事を奇妙様に伝えてください。願いします。」

商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。

「元気に過ごされているのですね。安心しました。私も元気に過ごしています。安心してお過ごしください。奇妙様から頂いた歌の贈り物は、木の葉を想い人に喩えて詠んだ歌のように思いました。奇妙様の想いの伝わる歌の贈り物。嬉しいです。ありがとうございます。甲斐の国も初夏の澄んだ葉が見られます。私は、姉上と一緒に、初夏の澄んだ緑色の葉を見ながら過ごしています。私も、奇妙様を想いながら、初夏の綺麗な緑色の葉を見ます。私も、奇妙様が傍に居る様子を想像しながら、初夏の綺麗な緑色の葉を見ます。私も無理をせずに気を付けて過ごします。奇妙様も無理をせずに気を付けてお過ごしください。命を大切にお過ごしください。松より。」

商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人に恥ずかしく小さい声で話し出す。

「今回も長い返事になってしまいました。」

商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。

「想いの伝わるお返事です。長いお返事に感じません。奇妙様に一言も間違えずにお伝えします。ご安心ください。」

菊姫は松姫に微笑んで小さい声で話し出す。

「お松。良かったわね。」

松姫は小さい紙を持ち、菊姫に微笑んで小さい声で話し出す。

「はい。」

菊姫は松姫を微笑んで見た。

松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。

商人は菊姫と松姫を普通の表情で見た。

菊姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。

「素敵な商品ね。購入するわ。」

商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。

松姫は小さい紙を懐に微笑んで仕舞った。

菊姫は商品を持ち、松姫を微笑んで見た。

松姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。

「素敵な商品です。購入します。お願いします。」

商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。

菊姫は商品を持ち、松姫と商人を微笑んで見た。

松姫も商品を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。

商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。



翌日の事。



ここは、躑躅ヶ崎館。



一室。



一室の中から、一人の男性の声と菊姫の声が聞こえる。

「お菊。報告は終わりか?」

「はい。」

「今後も報告を頼む。」

「はい。」

「お菊。お松が縁談の話を受ける気持ちになったのか?」

「お松は、父上も母上も、慕い尊敬しています。父上が縁談を決めて、父上からお松に伝えた縁談です。父上も母上も、想い続ける気持ちが、武田家のためになると話しました。父上はお松に縁談の破棄を話していません。お松にとって、新たな縁談の話を受けられない気持ちが続いています。」

「お菊。お松が早く心変わりをするように接してくれ。」

「分かりました。」



少し後の事。



ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。



松姫の部屋。



松姫は不安な様子で居る。



菊姫が部屋の中に微笑んで入ってきた。



松姫は菊姫を不安な様子で見た。

菊姫は松姫を抱くと、松姫に微笑んで囁いた。

「お松。無難な内容で報告したわ。大丈夫。安心して。」

松姫は菊姫に不安な様子で囁いた。

「姉上。迷惑を掛けます。申し訳ありません。」

菊姫は松姫を抱いて、松姫に微笑んで囁いた。

「私はお松の姉よ。迷惑に思わないで。安心して。」

松姫は菊姫に微笑んで囁いた。

「姉上。ありがとうございます。」

菊姫は松姫を抱いて、松姫に微笑んで頷いた。

松姫は菊姫を微笑んで見た。



「見れど飽かぬ 人国山の 木の葉をし 我が心から なつかしみ思ふ」

初夏の澄んだ緑色の木々の葉が、たくさんの場所で見られるようになっている。

松姫と織田信忠は、初夏の澄んだ緑色の木々の葉に想いを重ねて紡いでいる。

初夏の時は、強い想いの中で、優しい想いの中で、様々な思惑の中で、ゆっくりと過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第七巻 一三〇五番」

「見れど飽かぬ 人国山の 木の葉をし 我が心から なつかしみ思ふ」

ひらがなの読み方は「みれどあかぬ ひとくにやまの このはをし わがこころから なつかしみおもふ」

作者は「柿本人麻呂(かきのもとひとまろ)歌集より」

歌の意味は「見飽きることの無い、人国山(ひとくにやま)の木の葉のことを、心から慕わしく思っています。」となるそうです。

原文は「雖見不飽 人國山 木葉 己心 名著念」

「人国山(ひとくにやま)」がどこかは、はっきりとしていないそうです。

「木の葉」は思いを寄せる人のことで、「人国山」は具体的な山の事を言っていないのではないか、とも言われているそうです。

武田家についての補足です。

油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。

武田信玄は、元亀四年四月十二日(1573年5月13日)に信濃の駒場で亡くなります。

享年は、五十三歳と伝わっています。

武田信玄の死因は、肺結核、胃癌、食道癌、などの説が有力です。

武田信玄の他の死因には、武田信玄は敵が籠城中の野田城から聞こえる笛の音に惹かれて本陣から出て行き、本陣の外に居る時に鉄砲で撃たれて、その傷がもとで亡くなる、があります。(掲載日現在は、この説は俗説として考えられています。)

更に武田信玄の他の死因には、織田家の毒殺、もあります。(掲載日現在は、この説も俗説として考えられています。)

武田信玄は、武田勝頼と重臣に遺言を残したと伝わっています。

三つの遺言の内容が広く知られています。

800枚の白紙に武田信玄の花押を書いたから返礼などの時に使うように。

武田信玄の死を三年隠すように。

三年後に、武田信玄の死体に甲冑を着せて諏訪湖に沈めるように。

遺言の内容が事実だとすると、武田信玄は以前から亡くなる事を分かっていて、甲斐の国を守るために前から考えていた事が分かります。

武田信玄の葬儀は、天正四年(1576年)四月に行われたそうです。

武田信玄の死が三年隠せたかについてですが、三年より前に人数等は不明ですが、気付かれた形跡があるようです。

当時は忍者などを使った情報戦が激しかった事があり、武田信玄の死が知られてしまった可能性はあります。

後の出来事になりますが、松姫は織田信忠と婚約している経過などから、辛い立場になっていったようです。

天正元年(1573年)の秋に、武田盛信が松姫を引き取って暮らすようになります。

「雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編」では、物語の展開から、秋より後の季節で、武田盛信が松姫を引き取って暮らす設定にします。

ご了承ください。

松姫と織田信忠の縁談が、破談なのか、続いているのか、分からなくなってしまった理由の一つに、「西上作戦(さいじょうさくせん)」があります。

西上作戦は、甲斐武田家が、元亀三年(1572年)九月から元亀四年(1573年)四月に掛けて行った遠征をいいます。

西上作戦は、武田信玄の体調と武田信玄の死によって終わった状況になります。

武田軍の関連についてです。

天正二年(1574年)四月の動きです。

大きな動きはありません。

織田家関連について簡単に説明します。

織田信忠(幼名“奇妙丸”)の元服は、元亀三年(1572年)と伝わっています。

織田信忠は、実弟の「茶筅丸(ちゃせんまる)(織田信雄[おだのぶかつ])」、実弟の「三七丸(神戸三七郎信孝[かんべさんしちろうのぶたか]、織田信孝[おだのぶたか])」、と共に元服したと伝わっています。

元亀三年(1572年)一月に元服した説があります。

織田信忠が元服時に改名した名前は「織田勘九郎信重(おだかんくろうのぶしげ)」です。

「織田信忠」と改名するのは後の出来事になりますが、名前が幾度も変わると分かり難くなるため、元服後の名前は「織田信忠」で統一します。

ご了承ください。

織田信忠の初陣は、元亀三年(1572年)と伝わっています。

織田信忠の「具足初め(ぐそくはじめ)の儀」が、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)に執り行われたと伝わっています。

織田信忠の初陣は、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)、または、直ぐ後の日付になるようです。

織田信忠の初陣の相手は「北近江」の「浅井家」の「浅井長政」です。

浅井長政の継室は、織田信長の妹の「お市の方」です。

織田信忠の初陣の相手は、父親(織田信長)の妹(お市の方)の嫁ぎ先になります。

織田信忠にとって、初陣の次の大きな戦は、元亀三年(1572年)十二月頃の遠江の二俣城の戦いや三方ヶ原の戦いになります。

天正二年(1574年)三月末から四月の織田家の動きを簡単に説明します。

天正二年三月二八日(1574年4月19日)、東大寺正倉院に収蔵されている香木の「蘭奢侍(らんじゃたい)」を切り取ります。

天正二年四月一日(1574年4月21日)、京に戻ります。

天正二年四、六角義賢(六角承偵)が、織田信長軍と戦っていたが、石部城を攻め落とされます。

六角義賢(六角承偵)は、落城前に信楽へ逃れます。

織田信長は、佐久間信盛に石部城を管理させます。

「仲呂(ちゅうりょ)」についてです。

「中呂」とも書きます。

二つ意味が有ります。

「中国音楽の十二律の一。基音の黄鐘(こうしょう)より五律高い音。日本音楽の双調(そうじょう)にあたる。」です。

「陰暦四月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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