このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
~ 雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編 ~
~ 文紡ぎ 夷則 相見るものを月をし待たむ ~
登場人物
松姫[武田信玄の五女]、織田信忠(幼名:奇妙丸)[織田信長の嫡男](文だけの登場)、
菊姫[武田信玄の四女]
「秋草に 置く白露の 飽かずのみ 相見るものを 月をし待たむ」
「万葉集 第二十巻 四三一二番」より
作者:大伴家持(おおとものやかもち)
松姫と奇妙丸の縁談が調ってから、八十一の月になっている。
暦は七月になっている。
季節は初秋になっている。
今は七夕の前になる。
昨年の四月、菊姫と松姫の父の武田信玄が亡くなった。
武田信玄の遺言により、武田信玄の死は三年隠すと決まった。
様々な思惑が複雑に絡まる中の初秋になる。
ここは、甲斐の国。
一日を通して暑さを感じる日が続く。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
松姫の部屋。
松姫は普通に居る。
菊姫が部屋を微笑んで訪ねた。
松姫は菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に微笑んで囁いた。
「お松。話を外出する展開にしたいの。歌の質問をした時に、考え中と返事をしてね。」
松姫は菊姫に微笑んで囁いた。
「はい。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。七夕が近付いているわね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「七夕に詠む歌は決まった?」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「考え中です。」
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「外出して、様々な物を見ると、歌が決まると思うの。少し経ったら、外出して、七夕に詠む歌を決めましょう。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫に微笑んで頷いた。
松姫は菊姫を微笑んで見た。
暫く後の事。
ここは、松姫の乳母の家。
一室。
商品が広げてある。
菊姫は微笑んで居る。
松姫も微笑んで居る。
商人は普通に居る。
菊姫は松姫に微笑んで話し出す。
「お松。素敵な商品がたくさんあるわね。」
松姫は菊姫に微笑んで話し出す。
「はい。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は商人に微笑んで頷いた。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は商人を微笑んで見た。
菊姫は松姫と商人を微笑んで見た。
商人は懐から小さい紙を取り出すと、松姫に小さい紙を普通に渡した。
松姫は商人から小さい紙を微笑んで受け取った。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を持ち、小さい紙を丁寧に広げた。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
小さい紙には、織田信忠の筆跡で歌が書いてある。
秋草に 置く白露の 飽かずのみ 相見るものを 月をし待たむ
松姫は小さい紙を持ち、商人を微笑んで見た。
菊姫は商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「警戒は今も強いです。奇妙殿が頼んだ状況を信じて頂くために、奇妙殿が自筆で歌を書きました。奇妙殿から伝言を預かっています。」
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「伝言を教えてください。お願いします。」
商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「お松。様々な出来事が起きている。お松にとって穏やかな初秋を願う日が続く。私は元気に過ごしている。安心してくれ。今は暑さを感じる時間が続いていると思う。お松が私の言葉を聞く時は、七夕の近付く頃だと思う。お松に七夕の歌を贈りたいと思った。今回の贈り物の歌は、“大伴家持が独り天の川を仰ぎ見て詠んだ歌”、になるそうだ。織姫と彦星は、一年に一度も逢える。織姫と彦星が、羨ましい。私も、七夕の夜に、独りで天の川を仰ぎ見て歌を詠む。お松に来年の七夕には逢えると希望を持って過ごす。季節は秋になったが、少しの間は、暑さを感じる時間が続く。無理をせずに過ごしてくれ。命を大切に過ごしてくれ。」
菊姫は松姫と商人に微笑んで話し出す。
「長い伝言が続くわね。お松を想う気持ちが伝わるわ。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、菊姫を微笑んで見た。
菊姫は商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「気遣い感謝しています。」
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「今回の伝言も長いです。覚える行為が、更に大変だと思います。私への気遣いも含めて、何時も感謝しています。ありがとうございます。」
商人は菊姫と松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「奇妙様からはたくさんの恩を受けています。姫様は奇妙様の想い人です。私に出来る内容で感謝の気持ちを伝えています。」
菊姫は商人を微笑んで見た。
松姫も商人を微笑んで見た。
商人は松姫と菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「奇妙様の気持ちの伝わる歌です。さすがです。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は松姫と商人を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「私からの返事を奇妙様に伝えてください。願いします。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、商人に微笑んで小さい声で話し出す。
「元気に過ごされているのですね。安心しました。私も元気に過ごしています。安心してお過ごしください。七夕を詠んだ歌の贈り物。ありがとうございます。私も、織姫と彦星が、一年に一度も逢えるので、羨ましいです。私は、姉上と共に、七夕の夜空を仰ぎ見ながら、奇妙様から頂いた贈り物の歌を詠みます。奇妙様に来年の七夕には逢えると信じて過ごします。奇妙様も無理をせずに気を付けてお過ごしください。奇妙様も命を大切にお過ごしください。松より。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人に恥ずかしく小さい声で話し出す。
「今回も長い返事になりました。」
商人は松姫に普通の表情で小さい声で話し出す。
「想いの伝わるお返事です。長いお返事に感じません。奇妙様に一言も間違えずにお伝えします。ご安心ください。」
菊姫は松姫に微笑んで小さい声で話し出す。
「お松。良かったわね。」
松姫は小さい紙を持ち、菊姫に微笑んで小さい声で話し出す。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は小さい紙を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫を普通の表情で見た。
菊姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。
「素敵な商品ね。購入するわ。」
商人は菊姫に普通の表情で軽く礼をした。
松姫は小さい紙を懐に微笑んで仕舞った。
菊姫は商品を持ち、松姫を微笑んで見た。
松姫は商品を持つと、商人に微笑んで話し出す。
「素敵な商品です。購入します。お願いします。」
商人は松姫に普通の表情で軽く礼をした。
菊姫は商品を持ち、松姫と商人を微笑んで見た。
松姫も商品を持ち、菊姫と商人を微笑んで見た。
商人は菊姫と松姫に普通の表情で軽く礼をした。
数日後の事。
ここは、躑躅ヶ崎館。
一室。
一室の中から、一人の男性の声と菊姫の声が聞こえる。
「報告は終わりか?」
「はい。」
「今後も報告を頼む。」
「はい。」
「お菊。お松が縁談の話を受ける気持ちにならないのか? お松の心変わりを早める方法は無いのか?」
「お松は、父上も母上も、慕い尊敬しています。父上が縁談を決めて、父上からお松に伝えた縁談です。父上も母上も、想い続ける気持ちが、武田家のためになると話しました。父上はお松に縁談の破棄を話していません。お松にとって、新たな縁談の話を受けられない気持ちが続いています。無理矢理に心変わりを起こす方法は、お松が落ち込むか、お松が頑なになります。」
「織田家が、伊勢長島一向一揆の討伐を行う可能性が高まっている。お松の言動に気を付けて欲しい。」
「お松が、武田家を束ねる人物から強い疑いを向けられると、別な意味で心変わりを起こして、織田家に味方する可能性が有ります。お松の言動に引き続け気を付けますが、お松に明らかに分かる言動は避けて良いでしょうか?」
「分かった。お松が疑わない程度に、お松の言動への注意を少し強めてくれ。」
「分かりました。」
暫く後の事。
ここは、甲斐の国。
夜空には、たくさんの星が輝いている。
ここは、菊姫と松姫の住む屋敷。
菊姫の部屋の前に在る縁。
菊姫は夜空を微笑んで見ている。
松姫も夜空を微笑んで見ている。
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫も菊姫を微笑んで見た。
菊姫は松姫に微笑んで囁いた。
「お松。星を見ながら、心の中で歌を詠みましょう。」
松姫は菊姫に微笑んで囁いた。
「はい。」
菊姫は松姫を微笑んで見た。
松姫は夜空を微笑んで見た。
菊姫は松姫と夜空を微笑んで見た。
「秋草に 置く白露の 飽かずのみ 相見るものを 月をし待たむ」
七夕を行う月になっている。
初秋になったが、暑さを感じる日が続く。
松姫と織田信忠は、七夕の夜空を見ながら、想いを紡いでいる。
初秋は、強い想いの中で、様々な思惑の中で、ゆっくりと過ぎていく。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
この物語に登場する歌は「万葉集 第二十巻 四三一二番」
「秋草に 置く白露の 飽かずのみ 相見るものを 月をし待たむ」
作者は「大伴家持(おおとものやかもち)」
ひらがなの読み方は「あきくさに おくしらつゆの あかずのみ あいみるものを つきをしまたむ」
歌の意味は「秋草(あきくさ)につく白露(しらつゆ)のようにはかなく、飽き足らない思いで逢うものなのです。(また来年の)月(つき)を待つことにしましょう。」となるそうです。
原文は「秋草尓 於久之良都由能 安可受能未 安比見流毛乃乎 月乎之麻多牟」
天平勝宝六年(754年)に詠まれた「七夕の歌八首」のひとつです。
注には、「大伴家持(おおとものやかもち)」が独り天の川を仰ぎ見て詠んだ歌」とあります。
「白露(しらつゆ)」は、「露が玉のように白く輝いている様子」をいいます。
季語は、秋です。
「白露の(しらつゆの)」は、枕詞です。
「露が置く意味から、また、露が玉をなす意味から、“おく”、“たま”」にかかります。
武田家についての補足です。
油川夫人は、元亀二年(1571年)(※月日は不明)に亡くなったそうです。
武田信玄は、元亀四年四月十二日(1573年5月13日)に信濃の駒場で亡くなります。
享年は、五十三歳と伝わっています。
武田信玄の死因は、肺結核、胃癌、食道癌、などの説が有力です。
武田信玄の他の死因には、武田信玄は敵が籠城中の野田城から聞こえる笛の音に惹かれて本陣から出て行き、本陣の外に居る時に鉄砲で撃たれて、その傷がもとで亡くなる、があります。(掲載日現在は、この説は俗説として考えられています。)
更に武田信玄の他の死因には、織田家の毒殺、もあります。(掲載日現在は、この説も俗説として考えられています。)
武田信玄は、武田勝頼と重臣に遺言を残したと伝わっています。
三つの遺言の内容が広く知られています。
800枚の白紙に武田信玄の花押を書いたから返礼などの時に使うように。
武田信玄の死を三年隠すように。
三年後に、武田信玄の死体に甲冑を着せて諏訪湖に沈めるように。
遺言の内容が事実だとすると、武田信玄は以前から亡くなる事を分かっていて、甲斐の国を守るために前から考えていた事が分かります。
武田信玄の葬儀は、天正四年(1576年)四月に行われたそうです。
武田信玄の死が三年隠せたかについてですが、三年より前に人数等は不明ですが、気付かれた形跡があるようです。
当時は忍者などを使った情報戦が激しかった事があり、武田信玄の死が知られてしまった可能性はあります。
後の出来事になりますが、松姫は織田信忠と婚約している経過などから、辛い立場になっていったようです。
天正元年(1573年)の秋に、武田盛信が松姫を引き取って暮らすようになります。
「雪月花 戦国恋語り 信玄の娘 松姫 編」では、物語の展開から、秋より後の季節では、武田盛信が松姫を引き取って暮らす設定にします。
ご了承ください。
松姫と織田信忠の縁談が、破談なのか、続いているのか、分からなくなってしまった理由の一つに、「西上作戦(さいじょうさくせん)」があります。
西上作戦は、甲斐武田家が、元亀三年(1572年)九月から元亀四年(1573年)四月に掛けて行った遠征をいいます。
西上作戦は、武田信玄の体調と武田信玄の死によって終わった状況になります。
武田勝頼について、天正二年(1574年)六月の高天神城の攻略に関する話があります。
高天神城は、武田信玄が大軍を率いても落城できませんでした。
武田勝頼は高天神城を攻略した頃から、過信などの意見を聞かないようになったそうです。
理由は二つの説が考えられています。
一つの説、自信過剰になった。
一つの説、父親の武田信玄に勝る武略を持っている実績を示せた事から、家臣の統制を強めた。
以上の二つの説が有ります。
武田軍の関連についてです。
天正二年(1574年)七月についてです。
大きな動きはありません。
織田家関連について簡単に説明します。
織田信忠(幼名“奇妙丸”)の元服は、元亀三年(1572年)と伝わっています。
織田信忠は、実弟の「茶筅丸(ちゃせんまる)(織田信雄[おだのぶかつ])」、実弟の「三七丸(神戸三七郎信孝[かんべさんしちろうのぶたか]、織田信孝[おだのぶたか])」、と共に元服したと伝わっています。
元亀三年(1572年)一月に元服した説があります。
織田信忠が元服時に改名した名前は「織田勘九郎信重(おだかんくろうのぶしげ)」です。
「織田信忠」と改名するのは後の出来事になりますが、名前が幾度も変わると分かり難くなるため、元服後の名前は「織田信忠」で統一します。
ご了承ください。
織田信忠の初陣は、元亀三年(1572年)と伝わっています。
織田信忠の「具足初め(ぐそくはじめ)の儀」が、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)に執り行われたと伝わっています。
織田信忠の初陣は、元亀三年七月十九日(1572年8月27日)、または、直ぐ後の日付になるようです。
織田信忠の初陣の相手は「北近江」の「浅井家」の「浅井長政」です。
浅井長政の継室は、織田信長の妹の「お市の方」です。
織田信忠の初陣の相手は、父親(織田信長)の妹(お市の方)の嫁ぎ先になります。
織田信忠にとって、初陣の次の大きな戦は、元亀三年(1572年)十二月頃の遠江の二俣城の戦いや三方ヶ原の戦いになります。
天正二年(1574年)七月の織田家の動きを簡単に説明します。
天正二年七月十九日(1574年8月5日)、伊勢長島一向一揆の討伐のために、岐阜城を出陣します。
「夷則(いそく)」についてです。
主に二つの意味があります。
「中国音楽の十二律の一。基音の“黄鐘”(こうしょう)より八律高い音。日本の十二律の“鸞鏡”(らんけい)にあたる。」
「陰暦七月の異称」
以上です。
楽しんで頂けると嬉しいです。
←前
目次
次→
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |