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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 百合の滴 心しなくは今日も経めやも 〜


「さ百合花 ゆりも逢はむと 下延ふる 心しなくは 今日も経めやも」

「万葉集 第十八巻 四一一五番」より

作者:大伴家持(おおとものやかもち)



ある夏の日の事。



沖田総司が京に着てから迎える初めて夏の季節。

沖田総司と少女が出逢ってから迎える初めての夏の季節。



ここは、京の町。



青空が広がっている。



ここは、川原。



沖田総司と少女と子供達は、川原に遊びに来ている。



沖田総司と子供達は、川の近くで遊んでいる。

少女は沖田総司と子供達から少し離れた場所で、微笑んで様子を見ている。



沖田総司は子供達に笑顔で話し出す。

「みんな! 川の傍は危ないから常に注意する事!」

子供達は沖田総司に笑顔で話し出す。

「は〜い!」

沖田総司は子供達に微笑んで頷いた。



沖田総司は子供達と少女の様子を常に確認しながら、子供達と一緒に川の近くで遊んでいる。

子供達は川の中に入らずに、川の傍に集まって笑顔で水を触っている。



沖田総司は子供達に笑顔で話し出す。

「みんな! こっちを見て!」



子供達は沖田総司を笑顔で見た。



沖田総司は子供達に向かって、笑顔のまま素早い動きで水を飛ばした。



子供達は驚いた表情で動きを止めて沖田総司の行動を見た。



沖田総司は子供達に向かって、笑顔のまま素早い動きで水を飛ばし続けている。



子供達は驚いた表情で動きを止めたまま、沖田総司に次々に水を掛けられていく。



沖田総司は水を飛ばすのを止めると、子供達に笑顔で話し出す。

「みんな! 修行が足りないぞ!」

子供達の濡れた着物と沖田総司を交互に見ながら、苦笑して話し出す。

「総司お兄ちゃん。僕達は剣の稽古をしていないよ。何の修行の事を言っているの?」

沖田総司は子供達を苦笑した表情で見た。

子供達は沖田総司に苦笑しながら話し出す。

「総司お兄ちゃん。もしかして、楽しんで盛り上がってうるうちに、僕達が剣の稽古をしていると思ったんじゃないの?」

沖田総司は子供達を苦笑しながら見た。

子供達は沖田総司を呆れた様子で見た。

沖田総司は子供達に慌てた様子で話し出す。

「鈴ちゃんが一人で寂しがっているかもしれないから、話をしてくるね! みんなは絶対に川に近づいてはいけないよ!」

子供達は沖田総司を呆れた様子で見ている。

沖田総司は少女の元へと急いで向かった。



子供達は濡れた着物を見ながら、呆れた様子で話し出す。

「さすが総司お兄ちゃん。見事に水を当ててきたね。」

「本当だよね。」

「総司お兄ちゃんは水をたくさん掛けなかったから、余り濡れなくて良かったね。」

「本当だね。でも夏だし直ぐに乾くと思うんだ。」

「着物が濡れたまま帰ると、お母さんに説明するのが面倒だよね。だけど、総司お兄ちゃんとお姉ちゃんを二人きりにしたいから、早く帰りたいよね。」

「近くにお寺が在るよね。乾くまでお寺に居ようよ。」

「そうだね。住職さんは僕達に話し掛けてきても、誰かに話しをする事はないから、安心だよね。」

子供達は顔を見合わせながら、笑顔で頷いた。



ここは、川原。



少女の居る場所。



少女は沖田総司と子供達の様子を心配そうに見ている。



沖田総司は少女の前に笑顔で来た。

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「総司さん。子供達の着物が濡れているようです。大丈夫ですか?」

沖田総司は少女に恥ずかしそうに話し出す。

「少し盛り上がってしまったけれど、少しの水しか掛けていないから大丈夫だよ。」

少女は沖田総司を安心した表情で見た。

沖田総司は少女を苦笑しながら見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。



沖田総司の着物の裾などが僅かに濡れている様子が目に留まった。



少女は沖田総司を心配した様子で見た。

沖田総司は少女に慌てた様子で話し出す。

「この程度は濡れた内に入らないよ! 夏だし直ぐに乾くから大丈夫だよ!」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

子供達が沖田総司と少女の前に笑顔で来た。

沖田総司は子供達を不思議そうに見た。

少女は子供達の着物を見ると、沖田総司を心配そうに見た。

子供達は少女に笑顔で話し出す。

「川で遊んでいると、どうしても少しは濡れるよ!」

「総司お兄ちゃんは常に体を鍛えているから、少しなら濡れても大丈夫だよ!」

「総司お兄ちゃんも着物が少し濡れているけれど、僕達と同じく気にしる様子がないだろ!」

「お姉ちゃん! 夏だから着物は直ぐに乾くよ! だから心配しないで!」

少女は沖田総司と子供達を心配そうに見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「子供達の言うとおり、心配しなくても大丈夫だよ。」

少女は沖田総司と子供達を安心した表情で見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

子供達は少女を安心した表情で見た。

沖田総司は子供達に微笑んで話し出す。

「みんな何かあったのかな?」

子供達は沖田総司と少女に笑顔で話し出す。

「今日はありがとうございました!」

沖田総司は子供達に微笑んで話し出す。

「気を付けて帰ってね。」

少女は子供達に微笑んで話し出す。

「みんな。気を付けて帰ってね。」

子供達は沖田総司に笑顔で話し出す。

「はい!」

沖田総司は子供達に微笑んで頷いた。



子供達は元気良く居なくなった。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「川の傍に行こうか。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。



沖田総司と少女は、川の近くへと歩き出した。



ここは、沖田総司と少女が居た川原の場所から一番近い川の傍。



沖田総司と少女は、川の傍に来た。



少女はしゃがみ込むと、川の様子を微笑んで見た。

沖田総司は少女の横に微笑みながらしゃがみ込んだ。

少女はしゃがみ込みながら、沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司はしゃがみ込みながら、少女を微笑んで見た。



沖田総司と少女の元に、川の流れる音が聞こえてくる。



少女はしゃがみ込んだまま川の中に手を入れると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。気持ち良いです。」

沖田総司はしゃがみ込んだまま、少女に微笑んで頷いた。

少女はしゃがみ込んで川の中に手を入れながら、沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は静かに立ち上がった。

少女はしゃがみ込んで川の中に手を入れたまま、沖田総司の様子を微笑んで見た。



沖田総司は少女から少し離れた。



少女はしゃがみ込んだまま、川の中からゆっくりと手を出した。



沖田総司は少女に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃん! こっちを見て!」



少女はしゃがみ込んだまま、沖田総司を微笑んで見た。



沖田総司は少女に向かって少しだけ水を飛ばした。



少女はしゃがみ込んだまま、沖田総司を驚いた表情で見た。



少女の胸元に沖田総司の飛ばした水が当たった。



沖田総司は少女を笑顔で見た。



少女はしゃがみ込んだまま、沖田総司と着物を驚いた表情で交互に見た。



沖田総司は少女の元に慌てた様子で来た。

少女はしゃがみ込んだまま、沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司はしゃがみ込むと、少女に慌てた様子ながらも心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん! ごめんね! 辛くない?! 大丈夫! 子供達と同じつもりで水を掛けてしまった! 着物は大丈夫?!」

少女はしゃがみ込んだまま、沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は少女を支えながら、ゆっくりと一緒に立ち上がった。

少女は沖田総司と一緒にゆっくりと立ち上がった。

沖田総司は少女の着物の様子を確認すると、心配そうに話し出す。

「どうしよう。着物が濡れている。風邪をひいてしまうかもしれない。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「この程度の濡れ具合なら、たいした事はありません。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「着物が染みになったらどうしよう。鈴ちゃんが風邪をひいたらどうしよう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「川の水は綺麗です。夏なので着物も直ぐに乾くと思います。風邪はひかないと思います。心配しなくても大丈夫です。」

沖田総司は思い出した様子で手拭を手に取った。

少女は沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司は手拭で少女の着物を拭こうとしたが、困惑した様子で手を止めた。

少女は沖田総司を不思議そうに見た。



沖田総司の手拭が少し汚れていた。



沖田総司は手拭を仕舞うと、少女に申し訳なさそうに話し出す。

「手拭で鈴ちゃんの着物を拭こうと思ったんだ。だけど、さっき子供達が汚れた時に手拭を使ったから、鈴ちゃんの着物を拭く物がないんだ。鈴ちゃん。ごめんね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。心配しないでください。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「私が一人で盛り上がってしまって、鈴ちゃんに迷惑を掛けてしまった。ごめんね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。気にしないでください。」

沖田総司は少女を僅かに安心した表情で見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。ずっと日差しの中に居たから疲れたよね。どこかで少し休もう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。



沖田総司と少女は、休む事の出来る場所へと向かうために川原を後にした。



それから少し後の事。



ここは、川の近くに在る寺。



寺の中。



沖田総司と少女は、寺の中に居る。



沖田総司は少女を心配そうに見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。私は大丈夫です。着物に水はたくさん掛かっていません。川の水は綺麗です。だから、染みにならないと思います。」

沖田総司は落ち込んだ様子でため息を付いた。

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんは女の子なのに、着物も帯も綺麗で良い物なのに、何か遭ったらどうしよう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。私は大丈夫です。着物も直ぐに乾きます。」

沖田総司は落ち込んだ様子でため息を付いた。

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し出す

「総司さん。ごめんなさい。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。何か遭ったの?」

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し出す。

「私がしっかりとしていないから、総司さんに迷惑を掛けています。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんはしっかりとしているよ。迷惑は掛けていないよ。迷惑を掛けたのは、鈴ちゃんではなくて私の方だろ。」

少女は下を向くと、沖田総司に小さい声で話し出す。

「私はしっかりとしていません。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんは悪くないよ。顔を上げて。笑って。」

少女は顔を上げると、沖田総司を申し訳なさそうに見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんが顔を上げてくれて良かった。」

少女は沖田総司を申し訳なさそうに見ている。

沖田総司は困惑した様子で寺の中を素早く見回した。



少女の着物に再び目が留まった。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの着物の柄は、百合の花だよね。」

少女は沖田総司に不思議そうに頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんの傍に綺麗な百合の花が咲いているね。」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「百合の花はやっぱり綺麗だね。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに頷いた。

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「それなのに、私のせいで着物に染みが残ったらどうしよう。」

少女は沖田総司を不安そうに見た。

沖田総司は少女の様子を困惑した様子見た。



これから暫く後の事。



ここは、屯所。



沖田総司は少女を家に送ってから、屯所に戻ってきた。



沖田総司は落ち込んだ様子でため息をついた。

斉藤一が沖田総司の元に普通の表情で現れた。

沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「斉藤さん。またやってしまいました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんと子供達と川に遊びに行きました。私と子供達は川の近くで遊びました。鈴ちゃんは私と子供達の様子を、楽しそうに見ていました。子供達が帰ったから、鈴ちゃんと川の傍で話をしました。つい子供達と遊んでいる時と同じ気持ちになってしまって、川の水を掛けてしまいました。鈴ちゃんは私が水を掛けると思っていない事や女の子という事もあって、避ける事が出来なくて水が掛かってしまいました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「私は鈴ちゃんに水をたくさん掛けなかったので、ほとんど濡れませんでした。着物も直ぐに乾きました。見た目には着物に染みは有りませんでした。でも、鈴ちゃんの着物は綺麗で良い物です。何より、鈴ちゃんが風邪でもひいてしまったらと思うと、心配でなりません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「着物の染みは見ていないから分からない。今日の気候なら、美鈴さんの体調が悪くない限り、総司がたくさん水を掛けていないのなら、風邪はひかないだろ。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんは何も悪くないのに、私に何度も謝っていました。何か遭ったのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が余りに心配な顔をしているから、美鈴さんが困ってしまったんだろ。」

沖田総司は斉藤一を心配そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。明日か明後日にでも、美鈴さんの様子を見に行ったらどうだ?」

沖田総司は斉藤一に心配そうに頷いた。



土方歳三が沖田総司と斉藤一の前に、微笑んで現れた。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

沖田総司は土方歳三を困惑した様子で見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し掛ける。

「総司。何か遭ったのか?」

沖田総司は土方歳三から困惑した様子で目線を逸らした。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「怪しいな〜」

沖田総司は土方歳三から困惑した様子で視線を逸らし続けている。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「分かった! ついに・・・」

沖田総司は土方歳三の話しを遮ると、顔を真っ赤にして話し出す。

「違います!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司〜 顔が物凄く赤いぞ〜 何を想像したんだ〜」

沖田総司は土方歳三に顔を真っ赤にして話し出す。

「何も想像していません! 顔も赤くないです!」

土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は顔を真っ赤にしながら土方歳三を見た。

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「総司がいつも親しくしている子と川に出掛けたそうです。総司が余りに楽しくて盛り上がってしまったために、親しくしている子に水を掛けてしまったそうです。」

沖田総司は斉藤一を見ると、顔を真っ赤にして話し出す。

「斉藤さん! なぜ土方さんに話をするのですか?! 酷いです!」

斉藤一は沖田総司を見ると、普通に話し出す。

「総司からは秘密にして欲しいと頼まれていない。それに、もし本当に何か遭ったら、土方さんが知らないのは困るだろ。」

沖田総司は顔を真っ赤にしながら斉藤一を見た。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「今のところは何も起こっていないんだろ。だったら、俺には関係ないな。」

沖田総司は顔を真っ赤にしながら土方歳三を見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大事になっていないのならば、歌を贈るといいぞ。相手や家の人の印象が良くなるぞ。」

沖田総司は顔を真っ赤にしながら土方歳三を見ている。

土方歳三は斉藤一を見ると、普通に話し掛ける。

「斉藤。頼みがある。一緒に部屋に来てくれ。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。



土方歳三と斉藤一は、一緒に歩き出した。



沖田総司は顔を真っ赤にしながら、土方歳三と斉藤一の去っていく姿を見た。



それから少し後の事。



ここは、屯所。



土方歳三と斉藤一は、屯所内を歩いている。



斉藤一は土方歳三に小さい声で話し出す。

「総司がずっと土方さんと俺を見ています。総司からは話し難いのだと思います。声を掛けた方が良いと思います。」

土方歳三は斉藤一に小さい声で話し出す。

「ずっと見ているといっても、たいした時間ではないだろ。」

斉藤一は土方歳三に小さい声で話し出す。

「俺と土方さんが総司の前から去ってから、距離はさまざまですが、ずっと隠れながら様子を見ています。気が付かなかったのですか?」

土方歳三は斉藤一に呆れた様子で話し出す。

「仕方がない奴だな。」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に呆れた様子で話し出す。

「斉藤。もう少し付き合ってくれ。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は辺りを見回しながら、斉藤一に不思議そうに話し出す。

「総司はどこに隠れているんだ?」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「土方さんと俺の居る場所から見て、一番端に有る柱の影に隠れています。」

土方歳三は斉藤一の話をしている柱を見た。



土方歳三と斉藤一から見て一番端の柱に、沖田総司が隠れている姿が見えた。



沖田総司は土方歳三と斉藤一が自分を見た事に気が付いたのか、更に離れた柱に隠れた。



土方歳三は斉藤一を見ると、呆れた様子で話し出す。

「総司に普通に近づいたら逃げそうだな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司が話しをしたいのは、俺と斉藤の二人という事で良いのか?」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。総司と話をしよう。捕まえる事は出来るか?」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司を捕まえたら、話の内容の確認を取ってくれ。必要があれば、俺の元に連れてきてくれ。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。



斉藤一は沖田総司を背にしながら普通に歩き出した。



土方歳三は斉藤一の姿を普通の表情で確認すると、普通に歩き出した。



ここは、沖田総司が隠れている柱。



沖田総司は柱に隠れながら、土方歳三と斉藤一の様子を見ている。



斉藤一は歩きながら姿が見えなくなった。



土方歳三は歩きながら姿が見えなくなった。



沖田総司は柱に隠れながら、困惑した様子でため息をついた。



斉藤一の普通の声が、沖田総司の背後から聞こえてきた。

「総司。さっきから何をしているんだ?」



沖田総司は慌てて後ろを振り向いた。



斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「もしかして隠れているのか?」

沖田総司は斉藤一に言い難そうに話し出す。

「斉藤さんに頼んで、二人で土方さんと話しをしたいと思って、ずっと様子を見ていました。いざ話しをしようと思うと、ずっと二人は一緒だし、どのように斉藤さんに話しをしたら良いのか分からなくなりました。だから、私の姿が見付かりそうになったので、慌てて隠れ直しました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「刀を持った総司が隠れる時は、完璧なまでに気配を消す事が出来るのに、刀を持っていない総司は、完璧なまでに気配が分かる。不思議でしょうがない。」

沖田総司は斉藤一に拗ねた様子で話し出す。

「斉藤さん。酷いです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「ここで拗ねている暇があるなら、早く土方さんと話をするぞ。」

沖田総司は斉藤一を困惑した様子で見た。

斉藤一は沖田総司の腕を掴むと、普通に歩き出した。

沖田総司は斉藤一に抵抗する事なく、困惑した様子で一緒に歩き出した。



それから数日後の事。



ここは、京の町。



大きな木の下。



沖田総司と少女は、一緒に木の下に居る。



沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。風邪はひいていない?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「風邪はひいていません。元気です。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「百合の柄の着物は染みになっていない?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「染みになっていません。安心してください。」

沖田総司は少女に安心した様子で話し出す。

「良かった〜!」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。今日は迷惑を掛けた詫びとして、渡したい物があるんだ。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「総司さん。私は大丈夫です。気にしないでください。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんはとても大切な友達なんだ。これからもずっと一緒に居たいし仲良くしたいんだ。だから、受け取って欲しいんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司はしゃがみ込んで傍に置いてあった百合の花束を手に取った。

少女は沖田総司の様子を微笑んで見た。

沖田総司は立ち上がると、少女に百合の花束を微笑んで差し出した。

少女は沖田総司から百合の花束を受取ると、微笑んで話し出す。

「総司さん。綺麗な百合の花をありがとうございます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「百合の花粉で着物が汚れないように気を付けてね。」

少女は百合の花束を抱えながら、沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「この時期に贈る花には何が良いのか考えたんだ。そうしたら、斉藤さんに百合の花が綺麗に咲いている場所を教えてもらったんだ。百合の花を少し分けてもらったんだ。」

少女は百合の花束を微笑んで見た。



百合の花束の中に小さい紙が入っている。



少女は百合の花束から、小さい紙を不思議そうに取り出した。

沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。

「百合の歌を一緒に贈る事にしたんだ。どうかな?」

少女は百合の花束を抱えながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は顔を赤くしながら少女を見た。

少女は百合の花束を抱えながら、小さい紙に書いてある歌を詠み始めた。

沖田総司は顔を赤くしながら、少女の様子を見た。



少女は百合の花束を抱えながら、沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「とても素敵なお歌だと思います。ありがとうございます。」

沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。

「鈴ちゃんはとても大切な友達だから、ずっと仲良くしていたいんだ。ずっと一緒に居たいんだ。鈴ちゃんと逢う日がとても楽しみなんだ。今はお金も地位もないから、花や歌だけしか贈る事が出来ないけれど、いつか出世をして、鈴ちゃんにいろいろな物を贈りたいと思っているんだ。」

少女は百合の花束を抱えながら、沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は顔を赤くしながら少女を見た。



それから少し後の事。



ここは、屯所。



沖田総司は屯所に笑顔で戻ってきた。



沖田総司は戻ると同時に土方歳三と斉藤一の姿を笑顔で探した。



土方歳三と斉藤一が一緒に居る姿が見えた。



沖田総司は土方歳三と斉藤一の前に来ると、笑顔で話し出す。

「土方さん! 斉藤さん! ありがとうございます!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。贈り物にした歌について一つ良い事を教えてやろう。」

沖田総司は土方歳三を不思議そうに見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“さ百合花 ゆりも逢はむと 下延ふる 心しなくは 今日も経めやも”の歌の作者が逢いたいと想っていた相手は、誰だと思う?」

沖田総司は土方歳三を不思議そうに見ている。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「作者の奥さんなんだ。」

沖田総司は顔を赤くすると、土方歳三と斉藤一に大きな声で話し出す。

「土方さん! 斉藤さん! 二人で謀りましたね!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。人聞きの悪い事を言うな。俺は総司が歌を選ぶのを手伝っただけだろ。最終的には、総司は自分で歌を選んだぞ。斉藤はわざわざ百合の花の咲いている場所を探してきたんだぞ。俺と斉藤は、総司のために時間を割いたのに、謀り事をしたと思われていたなんて悲しいな。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は顔を赤くしながら、土方歳三と斉藤一を困惑した様子で見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。今回は優しくて良い子に免じて許してやる。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は顔を赤くしながらも、土方歳三と斉藤一を安心した表情で見た。



「さ百合花 ゆりも逢はむと 下延ふる 心しなくは 今日も経めやも」

作者の逢いたい人は、奥様。

沖田総司の逢いたい人は、少女。

誰が見ても似ていると思うはずですが、沖田総司は違うと思っています。

斉藤一と少女の苦労は、まだまだ続きそうです。




〜 完 〜





はじめに        後書き

目次


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