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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 夏越しの月 風そよぐ 夕暮れは 〜


「風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける」

「小倉百人一首 第九十八番」、及び、「新勅撰集」より

作者:従二位家隆(じゅにいいえたか)




*      *      *      *      *      *




〜 近藤勇とお雪 〜



ある夏の日の事。



ここは、京の町。



夕日の見える時間が近づいてきた。



ここは、お雪の家。



近藤勇がお雪の家を突然に訪れた。



お雪は近藤勇の前に微笑んで現れた。



近藤勇とお雪は、家の中へと入っていった。



ここは、お雪の家に在る一室。



近藤勇とお雪は、一緒に居る。



近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「予定が変更になって、時間が空いたんだ。突然の訪問は迷惑が掛かるとは思ったが、お雪と話しがしたくて来てしまった。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「先生とお話しする事が出来て、とても嬉しいです。」

近藤勇はお雪を微笑んで見た。



庭に静かな風が吹いた。



風鈴が涼しげな音を鳴らした。



近藤勇は風鈴を微笑んで見た。

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪を見ると、申し訳なさそうに話し出す。

「私に長い時間の都合が付かないために、一緒に出掛ける機会が少ないな。家に居る時間が長いと詰まらないだろ。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「私は先生とお逢いする事が出来るだけで、嬉しくて楽しい気持ちになります。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「一緒に花火が見たいな。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「はい。」

近藤勇はお雪を微笑んで見た。

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「先生はお忙しい方です。無理をしないでくださいね。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「良い事を思い付いた。」

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「私が線香花火などを用意しよう。そうすれば、落ち着いて花火を見る事が出来て、二人でたくさん話をする事も出来るな。」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「私も先生と一緒に家で花火を楽しみたいです。」

近藤勇はお雪を微笑んで見た。

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「先生と一緒に花火が出来るのならば、季節に関係なく楽しいと思います。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「お雪。ありがとう。」

お雪は近藤勇を微笑んで見た。



庭に風が吹いた。



風鈴が涼しげな音を鳴らした。



近藤勇は風鈴を見ると、微笑んで呟いた。

「風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「百人一首のお歌ですね。」

近藤勇はお雪を見ると、微笑んで話し出す。

「風そよぐ 京の小川の 夕暮れは 花火ぞ夏の しるしなりける」

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「少し違うかな?」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「良いお歌だと思います。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「来て直ぐで悪いが、少し眠くなってしまった。休ませてもらっても良いかな?」

お雪は近藤勇に微笑んで話し出す。

「直ぐに床の用意をします。」

近藤勇はお雪に微笑んで話し出す。

「床の準備は要らない。畳の上で横になった方が、気持ち良さそうだ。」

お雪は近藤勇を微笑んで見た。

近藤勇は畳の上にゆっくりと横になると、直ぐに目を閉じた。

お雪は傍に有った団扇を、微笑みながら手に取った。

近藤勇は畳の上で気持ち良さそうに横になっている。

お雪は近藤勇に向かって、微笑みながら団扇を使って軽く扇ぎ始めた。



庭に風が吹いた。



風鈴が涼しげな音を鳴らした。



外は夕日の光を受けて、橙色になっている。



近藤勇にとっても、お雪にとっても、穏やかな時が流れている。




*      *      *      *      *      *




〜 原田左之助とおまさ 〜



ある夏の日の事。



ここは、京の町。



おまさが働いている甘味屋。



たくさんの客で賑わっている。



おまさは客の前に来ると、笑顔で話し出す。

「ご注文は何になさいますか?!」

客はおまさに微笑んで話し出す。

「団子を頼むよ。」

おまさは客に笑顔で話し出す。

「お団子ですね! ありがとうございます!」

客はおまさに微笑んで話し出そうとした。



店の外が僅かに賑やかな様子になった。



おまさは店の入り口を微笑んで見た。

客はおまさに微笑んで話し出す。

「気になるんだ。」

おまさは客を見ると、微笑んで話し出す。

「何の事ですか?」

客はおまさに微笑んで話し出す。

「照れない。照れない。」

おまさは客に慌てた様子で話し出す。

「変な事を言わないでください!」

客はおまさの様子を気にする事もなく、店の入り口を微笑んで見た。



原田左之助が店の入り口から元気良く入ってきた。



店の中の客達は原田左之助を微笑んで見た。

おまさは原田左之助を笑顔で見た。



原田左之助はおまさの前に来ると、笑顔で話し出す。

「おまさちゃん! こんにちは!」

おまさは原田左之助に苦笑しながら話し出す。

「左之助さん。討ち入りではないのだから、もう少し静かに店の中に入ってください。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「討ち入りの時は、勢い良く中に入ると、何が起こるか分からないし、相手に逃げられる事もあるぞ! ここぞという時に、勢い良く行動するんだ!」

おまさは原田左之助を苦笑しながら見た。

原田左之助はおまさを不思議そうに見た。

おまさは原田左之助に苦笑しながら話し出す。

「左之助さん。注文は何になさいますか?」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「汁粉!」

おまさは原田左之助に笑顔で話し出す。

「お客様。当店では、夏にお汁粉の用意をしておりません。他のお店をお探しください。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「この店の汁粉は美味いだろ! だから、夏に汁粉を作っても売れると思うぞ!」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「当店のお汁粉を褒めて頂いて、ありがとうございます。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「団子をくれよ! たくさん用意して良いぞ!」

おまさは原田左之助に呆れた様子で話し出す。

「本当にたくさん用意しても大丈夫なのですか?」

原田左之助は、何かを思い出した様子で財布を取り出すと、直ぐに中身の確認を始めた。

おまさは原田左之助を不思議そうに見た。

原田左之助は財布を仕舞うと、おまさを見て、恥ずかしそうに話し出す。

「おまさちゃん。団子をたくさん頼むだけの持ち合わせがない。一皿だけに変更をさせてくれ。」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「分かりました。お団子を一皿だけ用意します。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「おまさちゃん! 頼むな!」



おまさは店の主に注文を伝えるために、原田左之助の元から居なくなった。



原田左之助はおまさの働いている甘味屋に来る度に、おまさに笑顔で話し掛ける。

普通に考えると、おまさに話し掛けて、嬉しそうに騒けば、店や他の客の迷惑になる。

おまさは普段からしっかりと働いている。

客の評判も良い。

原田左之助は店に来ても、おまさに長々と話し掛ける事は無い。

原田左之助が店に居ると、多少は騒がしくなるが、明るい雰囲気になる。

店の主や客は、原田左之助が店に来る事を嫌がるそぶりを見せていない。

原田左之助とおまさのやりとりを、楽しそうに見ている者、微笑ましく見ている者、興味津々に見ている者など、好意的に見ている者が多い。

怪訝そうな顔で見ている者が居ると、他の客がなだめている。

原田左之助とおまさの人柄の良さが、好意的に見てもらえる理由かもしれない。



原田左之助とおまさのやりとりは、店の名物になり始めている。



そんなある夏の日の事。



ここは、京の町。



おまさが働いている甘味屋。



たくさんの客で賑わっている。



おまさは原田左之助の前にお団子が載った皿を、微笑みながら置いた。

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「ありがとう!」

おまさは原田左之助を微笑んで見た。

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「おまさちゃん! 今日の暇な時間はいつになるんだ?!」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「休憩を取るのは、もう少し先よ。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「団子を食べたら直ぐに帰るけれど、休憩の時間にまた来るよ!」

おまさは原田左之助に不思議そうに話し出す。

「暇なの?」

原田左之助はおまさに苦笑しながら話し出す。

「暇ではないよ。おまさちゃんに逢いたいから、時間を作って来るんだよ。」

おまさは原田左之助に呆れた様子で話し出す。

「たくさんの人が居る所で何を言っているの?」

原田左之助はおまさを不思議そうに見た。



客達は、原田左之助とおまさを微笑んで見ている。



おまさは原田左之助の前から、呆れた様子で去っていった。



原田左之助はおまさと客の様子を不思議そうに見た。



おまさは他の客の注文を笑顔で取り始めた。



原田左之助は団子を美味しそうに食べ始めた。



おまさは原田左之助を笑顔で見た。



原田左之助はお団子を既に食べ終わっている。



おまさは原田左之助を苦笑しながら見た。



原田左之助はおまさ向かって笑顔で声を掛ける。

「おまさちゃん! 今日の団子も美味しかったぞ! また後で来るよ! 帰りは家まで送ってあげるよ!」



おまさは原田左之助を苦笑しながら見ている。



原田左之助は笑顔で店を出て行った。



それから暫く後の事。



ここは、おまさの働いている甘味屋。



客の数が減り、店の中は落ち着き始めた。



店の主がおまさに微笑んで話し出す。

「原田さんが店に着たら、一緒に帰って良いよ。」

おまさは店の主に不思議そうに話し出す。

「まだお客さんが居ます。話をすれば、左之助さんは待っていると思います。」

店の主はおまさに微笑んで話し出す。

「大切な人を待たては駄目だよ。」

おまさは店の主を不思議そうに見た。

店の主はおまさに微笑んで話し出す。

「原田さんは毎日店に来ている訳ではないだろ。おまさちゃんを送りたいと言っていただろ。お客さんの中には、二人の事を気に掛けている方や、たまにはおまさちゃんを早く帰らせてあげるように言う方もいるんだ。だから、今日は早く帰って構わないから、別な日にしっかりと働いてくれよ。」

おまさは店の主に微笑んで話し出す。

「分かりました。今日は左之助さんが来たら帰ります。」

店の主はおまさに微笑んで頷いた。



それから少し後の事。



ここは、おまさが働いている店。



原田左之助が店の中に笑顔で入ってきた。



おまさは原田左之助の前に来ると、微笑んで話し出す。

「家まで送ってくれるのよね。お願いします。」

原田左之助はおまさに笑顔で頷いた。



原田左之助とおまさは、店を出て行った。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



空の色が橙色に染まり始めている。



ここは、京の町に在る川原。



川は穏やかに流れている。



原田左之助はおまさは、川原に一緒に居る。



陽のある時間に比べると、僅かだが涼しげな風が吹いた。



原田左之助はおまさに微笑んで話し出す。

「風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「百人一首の歌ね。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「今の時期に近い夏の歌を考えていたら、この歌を思い出したんだ!」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「今の情景に合うように、歌を変えて詠んでみて。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「少し待っていてくれよ!」

おまさは原田左之助に微笑んで頷いた。

原田左之助は真剣な表情で考え込み始めた。



原田左之助は良い内容が思い付かないのか、考え込み続けている。



おまさは原田左之助を苦笑しながら見た。



微かに風が吹いた。



原田左之助はおまさを見ると、笑顔で話し出す。

「風そよぐ 京の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける!」

おまさは原田左之助を不思議そうに見た。

原田左之助はおまさに心配そうに話し出す。

「駄目かな?」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「これからは、直ぐに歌を詠めるように、今以上に勉強してね。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「分かった! もっと歌の勉強をするよ! いつか、おまさちゃんに褒めてもらえる歌を詠むからな!」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「楽しみに待っているわね。」

原田左之助はおまさに笑顔で話し出す。

「長く引き止めて悪かったな! 送っていくよ!」

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「歌に関する知識は別にして、剣などの強さは信頼しているから。しっかりと守ってね。」

原田左之助はおまさを苦笑して見た。

おまさは原田左之助に微笑んで話し出す。

「左之助さん。行こう。」

原田左之助はおまさに微笑んで頷いた。



原田左之助とおまさは、夕日が照らす中を、おまさの家へと向かって歩き始めた。




*      *      *      *      *      *




〜 土方歳三とお雪とお孝 〜



暦が夏になり、少し経った頃の事。



ここは、京の町。



屯所。



土方歳三の部屋。



大坂の町に居るお雪の妹のお孝から、土方歳三に宛てた文が届いた。



土方歳三は文を見ながら、微笑んで呟いた。

「今回はどのような歌が書いてあるのかな?」

微笑んで文を読み始めた。



それから何日か後の事。



ここは大坂の町。



お孝の住む家。



お孝の部屋。



京の町に居る土方歳三から、お孝に宛てた文が届いた。



お孝は文を見ながら、微笑んで呟いた。

「今回の歌は気に入ってもらえたかな?」

微笑んで文を読み始めたが、不思議そうな表情に変わった。



土方歳三がお孝に宛てた文には短い文章が書いてあるだけだった。



お孝さんへ

風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける

百人一首の歌だな。

百人一首にも選ばれた良い歌だ。

だが、この歌を受け取るには、時期が少しだけ早いな。

歌の勉強を更に続けるように。



お孝は念のために文の裏を見たが、文の続きは書かれていない。

文に書いてある文章を読みながら、残念そうに呟いた。

「これだけ?」

文を机に置くと、部屋の外へと出ていった。



それから僅かに後の事。



ここは、お孝の澄む家の庭。



お孝は庭に居る。



お孝はため息を付きながら、空を見上げた。



夕日を見る事の出来る時間が近づいてきているので、空の色は僅かに橙色に染まり始めている。



お孝は空を見上げながら、残念そうに呟いた。

「私は負けないから。いつか、土方さんが感動するような歌を詠むからね。」



辺りに微かに風が吹いた。



お孝は視線を戻すと、自分の部屋へと戻っていった。



それから日々が過ぎて、夏の終わりが近づいてきた。



ここは、京の町。



お雪の家。



土方歳三はお雪の家を微笑みながら訪ねてきた。



お雪は土方歳三の前に微笑んで現れた。



土方歳三とお雪は、家の中へと入っていった。



ここは、お雪の家に在る一室。



土方歳三とお雪は、部屋の中に居る。



お雪は土方歳三に微笑んで話し出す。

「お孝が土方先生に何度も文を書いているそうですね。」

土方歳三はお雪に微笑んで話し出す。

「歌を書いた文を何度も送ってくれる。」

お雪は土方歳三に微笑んで話し出す。

「土方先生は素敵な歌をたくさん詠まれる方なので、お孝も土方先生に喜んで欲しくて、たくさん勉強していると思います。」

土方歳三はお雪に微笑んで話し出す。

「暦が夏になって少し経った頃に、お孝さんから歌を書いた文が届いた。」

お雪は土方歳三に微笑んで話し出す。

「差し支えなければ教えてください。」

土方歳三はお雪の耳元に顔を近づけると、微笑んで囁いた。

「風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける」

お雪は土方歳三に微笑んで話し出す。

「少しだけ時期が早い歌ですね。」

土方歳三はお雪の耳元から顔を離すと、微笑んで頷いた。



庭に微かな風が吹いた。



風鈴が涼しげな音を鳴らした。



土方歳三は風鈴を一瞥すると、お雪を寂しそうに見た。

お雪は土方歳三を不思議そうに見た。

土方歳三はお雪の耳元に顔を近づけると、寂しそうに囁いた。

「お孝さんが見ている男性は、別な女性を見ている。その女性は、別な男性を見ている。思い通りにはいきませんね。」

お雪は土方歳三の耳元に顔を近づけると、微笑んで囁いた。

「土方先生の口説く姿を見て、心を奪われない女性がいるのですね。」

土方歳三はお雪の耳元に寂しそうに囁いた。

「俺は普通の男性です。」

お雪は土方歳三の耳元に微笑んで囁いた。

「その女性はどのような方ですか?」

土方歳三はお雪の耳元に微笑んで囁いた。

「俺の分かる範囲では、二人居る。お雪さんが知っている方で、二人共に素敵な女性だ。」

お雪は土方歳三を微笑んで見た。

土方歳三はお雪を微笑んで見た。



庭に風が吹いた。



風鈴が涼しげな音を鳴らした。




*      *      *      *      *      *




〜 沖田総司と斉藤一と少女 〜



夏の終わりの頃の事。



ここは、京の町。



沖田総司、斉藤一、少女が良く訪れている寺。



寺の中。



沖田総司、斉藤一、少女の三人は、一緒に居る。



沖田総司は少女に苦笑しながら話し出す。

「鈴ちゃん。少し暑いかな?」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「少し涼しくなるかも知れないから、川に行こうよ。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「寺の中に居た方が、川に出掛けるより涼しいと思う。」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「今より涼しくならないと思う。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。川に出掛けて涼しくなったら、私の願いを叶えてくださいね。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「日差しの強い時間なら、斉藤さんの言う通り、場所によっては暑さが増します。でも、今は日差しも少しずつ落ち着き始めています。それに、川の近くには涼しい所があります。そうすると、私の言う事が正しくなりますよね。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今の話から判断すると、涼しくならない場合は、俺の願いを総司が叶えてくれるんだ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。でも、斉藤さんの願いは叶わないと思います。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。私と斉藤さんの約束の証人になってね。」

少女は沖田総司と斉藤一を心配そうに見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「俺と総司は喧嘩をしている訳ではない。心配するな。」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの言う通りだよ。鈴ちゃん。安心して良いよ。」

少女は沖田総司を安心した表情で見た。

沖田総司は斉藤一と少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃん。川に出掛けよう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司、斉藤一、少女は、川へ出掛けるために寺を後にした。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



川原。



沖田総司、斉藤一、少女は、一緒に居る。



少し離れた場所では、子供達が楽しそうに遊んでいる。



沖田総司は子供達を微笑んで見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。子供達と少しだけ話しをしても良いかな?」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんの事を頼みます。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は子供達の元へと微笑みながら歩いていった。



ここは、子供達が遊んでいる場所。



子供達は川の傍で楽しそうに遊んでいる。



沖田総司は子供達の傍に来ると、微笑んで話し出す。

「みんな。川の傍は危ないよ。」

何人かの子供達が沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司は子供達を微笑んで見た。

残りの子供達も沖田総司を不思議そうに見た。



沖田総司の見知った子供が居た。



沖田総司の見知った子供は、沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司お兄ちゃん。こんにちは。暑いから川の傍で遊んでいたんだ。」

沖田総司は子供達に微笑んで話し出す。

「川の傍は危ないから、気を付けないと駄目だよ。」

子供達は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は子供達の様子を確認すると、斉藤一と少女の元へと戻っていった。



ここは、斉藤一と少女が居る場所。



少女は沖田総司と子供達を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司と子供達を普通の表情で見た。



沖田総司は斉藤一と少女の元に微笑みながら戻ってきた。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。お帰りなさい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「子供達を見ていると、楽しそうだし、涼しそうだし、羨ましくなりました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は子供達を見ると、微笑んで呟いた。

「風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「百人一首のお歌ですね。」

沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「子供達はみそぎをしていないし、夕暮れにも早いけれど、なぜかこの歌を思い出したんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「夏の終わりの行事が詠み込んであるお歌ですよね。今の時期に良いお歌だと思います。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに褒めてもらえて、とても嬉しいよ。」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。



子供達の明るい声が、沖田総司と少女の傍から聞こえてきた。

「違うの?」

「総司お兄ちゃんは、違うと言っているんだ。」

「どう見ても違うようには見ないよ。」

「不思議に思う事がたくさんあるけれど、総司お兄ちゃんの言葉を信じてあげようよ。」

「大人は難しい事がたくさんあるんだね。」

「この場合は、大人か子供かは関係ないと思うよ。」

「はじめお兄ちゃん。いつも思うけど、大変だね。」

「お姉ちゃんの方がもっと大変だと思うよ。」

「確かに。」



沖田総司と少女は、子供達の話し声の聞こえる方向を不思議そうに見た。



斉藤一と子供達が、話しをしている。

斉藤一は子供達の話しに頷くだけなので、子供達の話し声だけが聞こえていたらしい。



一人の子供が斉藤一に笑顔で話し出す。

「僕たちが川の傍で遊んでいて、総司お兄ちゃんがずっと心配していたら、お姉ちゃんに悪いよね! それに、僕達が危ない目に遭ったら、総司お兄ちゃんとはじめお兄ちゃんとお姉ちゃんの迷惑になるから、僕達は帰る事にするね!」

斉藤一は子供達に普通の表情で頷いた。



子供達は元気良く走りながら去っていった。



斉藤一は沖田総司と少女を見た。

沖田総司は顔を赤くしながら斉藤一を見た。

少女は沖田総司を見ると、心配そうに話し出す。

「総司さん。お顔が赤いです。大丈夫ですか?」

沖田総司は少女を見ると、顔を赤くしながら話し出す。

「大丈夫だよ。」

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。

「少し暑くなったみたいなんだ。」

少女は沖田総司を僅かに安心した表情で見た。

沖田総司は顔を赤くしながら斉藤一を見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は顔を赤くしながら、斉藤一と少女を交互に見た。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



夕日が僅かに空の色を橙色に染め始めた。



ここは、沖田総司、斉藤一、少女が居る川原。



少女は沖田総司に安心した表情で話し出す。

「総司さんのお顔が赤くないです。安心しました。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「少し暑かったから、顔が赤くなったと思うんだ。心配を掛けてごめんね。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は川を微笑んで見た。



川の水面が夕日を受けて橙色に染まり始めている。



沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。川が綺麗だよ。」

少女は川を微笑んで見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



辺りに涼しげな風が吹いた。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「風そよぐ 京の小川の 夕暮れは 鈴との夏の しるしなりける」

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。陽が沈む前に帰ろう。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに頷いた。

沖田総司は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「斉藤さん。私は鈴ちゃんを送ってから、屯所に戻ります。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。



沖田総司、斉藤一、少女は、夕日の中を歩きながら、川原を後にした。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



夕日は綺麗な色で京の町を染め続けている。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



沖田総司は屯所に戻ると、斉藤一の部屋を直ぐに訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「斉藤さん。川原に居る時に、子供達と何を話していたのですか?」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「子供達に変な事を言っては駄目ですよ。涼みに出掛けたのに、焦ってしまって、逆に暑さが増してしまいました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、川に行ったら、涼しくならずに、逆に暑さが増したのか。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。川に出掛けて涼しくならない時は、俺の願い事を叶えてくれると約束をしたよな。」

沖田総司は斉藤一を恐る恐る見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。とても楽しみだよ。」

沖田総司は斉藤一を恐る恐る見ている。



沖田総司と斉藤一の周りに涼しい風が吹いた。



沖田総司と斉藤一の間に、これから何が起こるのでしょうか?




*      *      *      *      *      *




〜 完 〜





はじめに        後書き

目次


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