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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 天飛ぶ雲 朝顔 桔梗と石畳 咲いて 〜


「ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか 君をば相見む おつる日なしに」

「万葉集 第十一巻 二六七六番」より

作者:詠み人知らず



暦は夏から秋に変わった。



ここは、京の町。



暦からすると残暑という事になるが、一年の中で一番暑い頃に感じる。



残暑という言葉が似合うのは、もう少し先の気がする。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋。



沖田総司は斉藤一の部屋を微笑んで訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。鈴ちゃんに花を贈りたいと考えています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんを困らせるか泣かせたのか?」

沖田総司は斉藤一に考え込みながら話し出す。

「私の気が付く限りでは、鈴ちゃんの様子は普段と変わらないように感じます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「取りあえずは問題ないな。早く話しを続けろ。」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「暑い日が続きます。鈴ちゃんも出掛け難い日があると思います。鈴ちゃんが喜ぶ花がないかと思って相談に来ました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「この時期に綺麗に咲く花といえば、朝顔があるな。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「朝顔は朝に咲く花ですよね。鈴ちゃんが朝顔の世話や見るために早起きをして、疲れて体調を悪くする事はないのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が美鈴さんに贈った植物や既に家に有る植物の世話のために、早起きする事があるかも知れない。早起きをしていない場合でも、朝顔は早朝から暑さが落ち着いている時間に咲く。美鈴さんには良い贈り物になるかも知れない。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「分かりました。鈴ちゃんに気が付かれないように、贈り物にする花の確認をしてみます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。朝顔を贈るのなら、変化咲き朝顔を贈ったらどうだ?」

沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「もしかして、総司は変化咲き朝顔の事を知らないのか?」

沖田総司は斉藤一に苦笑しながら話し出す。

「変化咲き朝顔は、少しだけ知っている程度です。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「土方さんに、変化咲き朝顔を手に入れやすい方法を、さりげなく聞いてみる。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「ありがとうございます!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は嬉しそうに部屋から出て行った。



それから数日後の事。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



沖田総司は土方歳三に呼ばれたため、普通に部屋を訪れた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は斉藤一に不思議そうに話し出す。

「斉藤さんも来ていたのですね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司と斉藤の二人を呼んだんだ。」

沖田総司は土方歳三を不思議そうに見た。

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司と斉藤へ話したい内容を簡単に言うな。実は、変化咲き朝顔を手に入れたくて、種類や日程を調整している最中なんだ。」

沖田総司は斉藤一を怪訝そうに見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

土方歳三は沖田総司に不思議そうに話し出す。

「総司。何か遭ったのか?」

沖田総司は土方歳三を見ると、慌てた様子で話し出す。

「何もありません!」

土方歳三は沖田総司に不思議そうに話し出す。

「総司の様子を見ると、何か遭ったようにしか見えないぞ。」

沖田総司は土方歳三に慌てた様子で話し出す。

「本当に何もありません!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司が歌や花について調べている姿を何度か見掛けた。歌や花などの風流な心について興味を持ったと思って、俺は安心していたんだ。だから、変化咲き朝顔についても知りたいかと思って、総司を呼んだんだ。斉藤は覚えも良いし教えがいがあるから呼んだんだ。斉藤は変化咲き朝顔について知りたいと返事があった。総司が変化咲き朝顔には興味がないようだから、帰っていいぞ。」

沖田総司は土方歳三に慌てた様子で話し出す。

「私も変化咲き朝顔について、以前から知りたいと思っていました! ぜひ教えてください!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。無理をしなくていいんだぞ。」

沖田総司は土方歳三に慌てた様子で話し出す。

「私が斉藤さんに、変化咲き朝顔について知りたいと話しをしました! 土方さんも偶然に変化咲き朝顔についての話しをました! そのために慌ててしまっただけです!」

土方歳三は沖田総司に微笑んで話し出す。

「朝顔はこの時期に咲く花だろ。朝顔に関する話しをする事は、驚く事ではないだろ。」

沖田総司は土方歳三を僅かに動揺した様子で見た。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司も変化咲き朝顔について知りたいと返事があったから、本題に入るな。」

沖田総司は土方歳三に安心した様子で話し出す。

「お願いします。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は机から数枚の紙を手に取ると、沖田総司と斉藤一の前に微笑みながら置いた。

沖田総司は不思議そうに紙を見た。

斉藤一は普通の表情で紙を見た。



数枚の紙には、見慣れない花の絵が描いてある。



土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「実物と姿や色合いが少し違う事もあるらしいが、変化咲き朝顔が描いてある。俺達が参考として見ている絵の変化咲き朝顔は、直ぐに手に入れる事が出来るそうだ。」

沖田総司は変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を見ながら、斉藤一に感心した様子で話し出す。

「どの花も朝顔には見えません。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一を見ると、不思議そうに話し出す。

「斉藤さんには珍しい朝顔に見えないのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「俺は以前に変化咲き朝顔を見た事がある。今頃になって感心をする事はない。」

沖田総司は斉藤一を恥ずかしそうに見た。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「今日の間だけ、その絵を貸してやる。変化咲き朝顔を手に入れたいのなら、今日中に俺に教えてくれ。出来るだけ早い内に用意をするつもりだ。」

沖田総司は土方歳三に嬉しそうに話し出す。

「ありがとうございます!」

土方歳三は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を手に取ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん! 一緒に出掛けましょう!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を持ちながら、土方歳三に微笑んで軽く礼をした。

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は沖田総司と斉藤一に微笑んで頷いた。



沖田総司は変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を持ちながら、微笑んで部屋を出て行った。

斉藤一は沖田総司の後に続いて、普通に部屋を出て行った。



土方歳三は微笑みながら呟いた。

「斉藤が変化咲き朝顔についての話しを始めたから、総司に関する事だと察しがついた。総司に変化咲き朝顔の話しをしたら、変化咲き朝顔を贈る相手と、これから出掛る場所が、想像通りだった。さて、次は何をしようかな?」



土方歳三は楽しそうに何かを考え始めた。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



少女の家。



少女の部屋。



沖田総司、斉藤一、少女は、一緒に居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは変化咲き朝顔を知っているかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「変化咲き朝顔と言うのは、いろいろな形のお花や葉をした朝顔の事ですよね。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「変化咲き朝顔は、何年か前に大流行をしたと聞いたんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私もそのように聞きました。」

沖田総司は、少女の前に変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を置くと、微笑んで話し出す。

「何種類かの変化咲き朝顔が描いてあるんだ。」

少女は変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を、微笑んで見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

斉藤一は少女を普通の表情で見た。

少女は沖田総司を見ると、微笑んで話し出す。

「変化咲き朝顔を描いた絵を見る事が出来て嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「実は、鈴ちゃんが見た絵の変化咲き朝顔が手に入りそうなんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「どなたかの贈り物に用意をされるのですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「土方さんが誰かへの贈り物にするために用意をしているらしいんだ。私達の分の変化咲き朝顔も一緒に頼んでくれる事になったんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。気に入った変化咲き朝顔を教えてくれるかな?」

少女は沖田総司を困惑した様子で見た。

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんは変化咲き朝顔は要らないのかな?」

少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し出す。

「私は何もしていないのに、総司さんからたくさんの贈り物を頂きました。珍しい物も頂きました。総司さんにこれ以上の迷惑を掛ける事は出来ません。」

沖田総司は少女を困惑した様子で見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「美鈴さん。総司は、食べ物にならない植物は、詳しくないし育てるのも苦手だ。総司以外の隊士で、食べ物にならない植物に詳しくてこまめに育てる事が出来る人物は、物凄く少ない。総司が変化咲き朝顔を見たくても、屯所で育てながら愛でるのは無理に等しい。美鈴さんが責任を感じて気負う必要はないが、総司のためと思って受け取ってくれ。」

沖田総司は斉藤一を複雑な様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「私は変化咲き朝顔が咲く様子を見てみたいと思っているんだ。私が見たいと思う以上に、鈴ちゃんに見て欲しいと思っているんだ。鈴ちゃんが贈り物の件を了承してくれたら、私はとても嬉しいな。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。変化咲き朝顔の贈り物にかこつけて、美鈴さんに逢う事が出来るな。」

沖田総司は顔を赤くして斉藤一を見た。

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

斉藤一は沖田総司と少女に普通に話し出す。

「言い方を間違った。総司は美鈴さんと一緒に過ごしたいと思っている。二人で一緒に過ごす事が出来れば、美鈴さんの笑顔と変化咲き朝顔を同時に見る事が出来る。どう考えても、一石二鳥だな。」

沖田総司は斉藤一に顔を赤くしながら話し出す。

「本当に言い方を間違えたのですか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見ている。

沖田総司は少女を見ると、顔を赤くしながら話し出す。

「今日中に土方さんに返事をしないといけないんだ。短い時間で申し訳ないけれど、欲しい変化咲き朝顔を決めてくれるかな。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「総司さんが見たい変化咲き朝顔はどれですか?」

沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。

「私は花の事に疎いから、鈴ちゃんが決めてくれると嬉しいな。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに頷いた。

沖田総司は顔を赤くしながら少女を見た。

少女は変化咲き朝顔が描かれた数枚の紙を、恥ずかしそうに見た。

斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見た。



少女は沖田総司に変化咲き朝顔が描かれた二枚の紙を差し出すと、恥ずかしそうに話し出す。

「桔梗咲き朝顔と石畳咲き朝顔が見たいと思いました。どちらの変化咲き朝顔にするかは、総司さんが決めてください。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「出物系統と正木系統から一種類ずつ選んだんだ。さすが美鈴さんだな。」

少女は斉藤一を見ると、恥ずかしそうに話し出す。

「褒めて頂いてありがとうございます。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

沖田総司は少女から変化咲き朝顔が描かれた二枚の紙を受け取ると、顔を赤くしながら話し出す。

「鈴ちゃんが見たい変化咲き朝顔だから、二種類共に手に入るか確認してみるね。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「無理はしないでくださいね。」

沖田総司は変化咲き朝顔が描かれた二枚の紙を自分の前に置くと、少女に顔を赤くしながら頷いた。

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見ている。

沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。

「近い内に変化咲き朝顔が手に入ると思うんだ。楽しみに待っていてね。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに頷いた。

沖田総司は顔を赤くしながらも、少女を微笑んで見た。



それから数日後の事。



ここは、京の町。



青空の中に、白い雲がゆったりと浮かんでいる。



ここは、少女の家。



少女の部屋。



沖田総司と少女は、一緒に居る。



沖田総司は少女の前には、二鉢の変化咲き朝顔が置いてある。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。



「桔梗咲き朝顔と石畳咲き朝顔が、両方共に手に入ったんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「両方の変化咲き朝顔を見る事が出来るのですね。嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は桔梗咲きと石畳咲きの変化咲き朝顔を微笑んで見た。



石畳咲きの朝顔に、紙縒りのようになっている紙が巻き付けてある。



少女は沖田総司を見ると、不思議そうに話し出す。

「総司さん。石畳咲きの朝顔に紙縒りのようなっている紙が巻き付けてあります。」

沖田総司は石畳咲きの朝顔を見ると、少女に不思議そうに話し出す。

「鈴ちゃん。朝顔から紙を取ってくれるかな?」

少女は沖田総司を見ると、微笑んで頷いた。



少女は石畳咲き朝顔に巻き付けてある紙を丁寧に取り始めた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



少女は石畳咲き朝顔に巻き付けてある紙を取り終わった。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんは器用だから、早く綺麗に取る事が出来たね。」

少女は紙を持ちながら、沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は紙を丁寧に広げた。

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

少女は紙を不思議そうに見た。

沖田総司は少女の持つ紙を、微笑んで見ようとした。



少女は紙を持ちながら、沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は少女を不思議そうに見た。

少女は沖田総司に恥ずかしそうに紙を差し出した。

沖田総司は少女から不思議そうに紙を受け取った。

少女は沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は紙を不思議そうに見た。



紙に書いてあるのは、一首の歌と二人の人物の名前だった。



沖田総司は紙を持ちながら、少女に顔を赤くして話し出す。

「鈴ちゃん。土方さんの贈り物用の変化咲き朝顔と入れ替わったかも知れない。」

少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「総司さんの筆跡ではありませんが、お歌と変化咲き朝顔の贈り主は総司さんで、贈られる相手の名前は私になっています。だから、入れ替わってはいないと思います。」

沖田総司は紙を持ちながら、少女に顔を赤くして話し出す。

「この筆跡は・・・」



ちょうど同じ頃。



ここは、屯所。



屯所の縁。



土方歳三と斉藤一は、縁に居る。



土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司とあの子は、今頃は何をしているのかな?」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「朝顔に巻き付けた紙は既に見つけたと思います。その紙に書いてある歌と名前を見て、総司が動揺している頃だと思います。」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「正木系統の石畳咲き朝顔に巻き付けるというのが、趣があって良いと思わないいか?」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で頷いた。

土方歳三は青空を微笑んで見た。

斉藤一は普通の表情で青空を見た。



青空の中に、白い雲がゆったりと浮かんでいる。



土方歳三は青空を見ながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか 君をば相見む おつる日なしに」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。

「変化咲き朝顔が咲く間は、二人の願いは叶うな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で頷いた。

土方歳三は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は普通の表情で青空を見た。

土方歳三は微笑んで青空を見た。



その翌日の事。



今は早朝。



ここは、京の町。



夜の空から朝の空へと変わる気配が見え始めている。



早起きの人達が起き始め、一日を始めようとしている。



京の町の中は、まだ静けさに包まれている。



ここは、屯所。



屯所の中も、まだ静けさに包まれている。



ここは、斉藤一の部屋。



斉藤一は床に横になっている。



沖田総司の元気の良い足音が聞こえてきた。



斉藤一は床から普通に起き上がった。



障子が勢い良く開いた。



斉藤一は障子を普通の表情で見た。



障子から姿を現した沖田総司は、既に身支度を整えている。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は元気良く部屋の中に入ってきた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃんに贈った変化咲き朝顔の様子を確認してきます!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「早い時間に出掛けて、美鈴さんに迷惑が掛からないのか? それに、今から出掛けて、朝の打ち合わせに間に合うのか?」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「鈴ちゃんと家の人には、既に話しをしてあります! 土方さんには、当面の出掛ける許しをもらっています! 今日は私の任務の関係で、朝の打ち合わせまでの戻る事の出来るように早く出掛けます! 斉藤さんも変化咲き朝顔が咲く日は、一緒に出掛けましょう!」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「約束ですよ! 絶対に忘れないでくださいね!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「行ってきます!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



沖田総司は少女の家へと元気良く出掛けて行った。



それから僅かに後の事。



ここは、屯所。



斉藤一の部屋の前に在る縁。



斉藤一は部屋から縁に出ると、普通の表情で空を見た。



朝の空の気配が少しずつ増え始めている。



斉藤一は朝の空を見ながら、普通の表情で呟いた。

「“ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか 君をば相見む おつる日なしに”。当分は朝から賑やかで面白い日が続きそうだな。」



朝の空の気配と静けさが、斉藤一を包んだように感じた。



斉藤一は視線を戻すと、部屋の中へと普通に戻って行った。



「ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか 君をば相見む おつる日なしに」

毎日のように逢いたいと想う気持ちを募らせる様子を見ていた、空に浮かぶ白い雲。

毎日のように話したくても話しをする事の出来ない切ない思いを抱える様子を見ていた、空に浮かぶ白い雲。

毎日のように逢ったり話をしたりする事が出来る人達が増えるのは、かなり後の事。

土方歳三、沖田総司、斉藤一、少女を含めた人達も、空に浮かぶ雲も、全てのものが知る事の出来ないかなり後の事。




〜 完 〜





はじめに        後書き

目次


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