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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 藤花の名残 藤は散りにて何をかも 〜


「春日野の 藤は散りにて 何をかも み狩の人の 折りてかざさむ」

「万葉集 第十巻 一九七四番」より

作者:詠み人知らず



ここは、京の町。



藤花が散り始めた。



沖田総司達が京の町に着て初めて迎える藤花の散る季節になる。

沖田総司と少女と出逢って初めて迎える藤花の散る季節にもなる。



ここは、藤花が咲く場所。



藤花の見頃は過ぎているため、藤花はほとんど散っている。



沖田総司と少女は、藤花を見に来た。



沖田総司は少女に残念そうに話し出す。

「鈴ちゃん。この場所の藤の花もほとんど散っているね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「藤の花は終わりの季節です。この場所では藤の花が見られました。嬉しいです。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。他に藤の花が咲いている場所を知っているかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「咲いていそうな場所なら知っています。お仕事でお出掛けする予定があるのですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんと一緒に見に行きたいと思って質問したんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「これから鈴ちゃん知っている場所の藤の花を一緒に見に行こうか。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。



沖田総司と少女は、微笑んで歩き出した。



それから少し後の事。



ここは、少女が話していた藤花が咲く場所。



沖田総司と少女が先程の居た場所より藤花は咲いている。



沖田総司と少女は、到着した。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「先程の場所より藤の花が咲いているね。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「藤の花を見ながら楽しく話しが出来るね。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



それから少し後の事。



ここは、少女が話していた藤花が咲く場所。



沖田総司と少女は、藤花を見ながら話をしている。



沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。そろそろ帰ろう。」

少女は沖田総司を少し寂しそうに見た。

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「良く考えたら、藤の花を見るために場所を変えたんだよね。短い時間で帰ると言ってしまった。気が利かなくてごめんね。」

少女は沖田総司に微笑んで首を横に振った。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。明日も藤の花を見に来よう。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「お仕事は大丈夫なのですか?」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「大丈夫だよ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出する。

「明日も沖田さんと一緒に藤の花が見られて嬉しいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今日の約束と同じ時間に、鈴ちゃんの家に迎えに行くね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「沖田さんはお忙しい方です。この場所ならば、一人で来られます。」

沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。迎えに行かなくても大丈夫なの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「分かった。明日は藤棚の傍で待ち合わせをしよう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



沖田総司と少女は、藤花を背にしながら去っていった。



その翌日の事。



ここは、京の町。



僅かだが灰色の空が広がっている。



ここは、一軒の家。



一室。



芹沢鴨と綺麗な女性が居る。



綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「芹沢先生。藤の花を見に出掛けたいです。」

芹沢鴨は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「まだ藤の花が咲いている場所があるのか?」

綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「遅咲きの藤の花が咲く場所があります。その場所ならば、藤の花が見られると思います。」

芹沢鴨は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「分かった。直ぐに出掛けよう。」

綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「芹沢先生。ありがとうございます。」

芹沢鴨は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「好きな人の頼みは誰でも叶えたいと思うんだ。礼は要らないよ。」

綺麗な女性は芹沢鴨に抱きつくと、微笑んで話し出す。

「先生。嬉しい。」

芹沢鴨は綺麗な女性を嬉しそうに抱いた。

綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで抱きついている。

芹沢鴨は綺麗な女性を抱きながら、微笑んで話し出す。

「ずっと抱いていたい気持ちになってしまった。」

綺麗な女性は芹沢鴨に抱きつきながら、微笑んで話し出す。

「私も先生と同じ気持ちになりました。」

芹沢鴨は綺麗な女性を抱きながら、微笑んで話し出す。

「抱きあったままだと出掛けられないぞ。」

女性は微笑みながら、芹沢鴨からゆっくりと放れた。

芹沢鴨は微笑みながら、女性をゆっくり放した。

女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「先生。よろしくお願いします。」

芹沢鴨は女性に微笑んで頷いた。



芹沢鴨は障子を開けると、微笑んで部屋を出た。

綺麗な女性は芹沢鴨の後に続いて微笑んで部屋を出た。



それから僅かに後の事。



ここは、部屋の前に在る縁。



芹沢鴨と綺麗な女性が居る。



綺麗な女性は微笑んで空を見た。

芹沢鴨は普通の表情で空を見た。



先程より僅かに濃くなった灰色の空が広がっている。



綺麗な女性は芹沢鴨を見ると、心配そうに話し出す。

「芹沢先生。念のために傘を持っていきませんか?」

芹沢鴨は綺麗な女性を見ると、微笑んで話し出す。

「大切なものが濡れたら困る。傘を持っていこう。」

綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「先生の大切な刀が濡れると困りますよね。」

芹沢鴨は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「確かに刀が濡れるのは困るが、俺には刀と同じ程に濡れたら困るものがあるんだ。」

綺麗な女性は芹沢鴨を不思議そうに見た。

芹沢鴨は綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「お前だよ。」

綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「芹沢先生。とても嬉しいです。」

芹沢鴨は綺麗な女性を微笑んで見た。

綺麗な女性も芹沢鴨を微笑んで見た。



それから少し後の事。



ここは、昨日に沖田総司と少女が約束した藤花が咲く場所。



藤花は見頃が過ぎているが咲いている。



ここは、藤棚。



少女は微笑みながら到着した。



沖田総司が来ている様子はない。



少女は心配そうに空を見た。



重い灰色をした空が広がっている。



少女は心配そうに辺りを見回した。



少女の顔に冷たい物が当たった。



少女は不安そうに空を見た。



雨が静かに降り始めた。



少女は不安そうに辺りを見回した。



沖田総司の姿は見えない。



藤棚の近くに雨宿りが出来る場所は近くにない。



少女は不安そうに藤棚へと歩き出した。



ちょうど同じ頃。



ここは、少女が居る藤棚から少しだけ離れた場所。



芹沢鴨は傘を差しながら普通に来た。

綺麗な女性は傘を差しながら微笑んで来た。



芹沢鴨は傘を差しながら、少女の居る藤棚に視線を止めた。

綺麗な女性は傘を差しながら、芹沢鴨の視線の先を不思議そうに見た。



少女が傘を差さずに藤棚の下で困っている様子が見える。



女性は傘を差しながら、芹沢鴨を見ると、微笑んで話し出す。

「先生のお気に入りの沖田さんと待ち合わせ中のようですね。」

芹沢鴨は傘を差しながら、綺麗な女性を不思議そうに見た。

綺麗な女性は傘を差しながら、芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「あの子は傘を持っていないのに、雨宿りをしていません。約束の場所の様子が確認できる範囲に雨宿りの出来る場所がありません。あの子が約束の場所を動いたら、沖田さんが来てもあの子の所在が分かりません。沖田さんはあの子を心配して探すと思います。あの子は考えた結果として、雨が降っているけれど、約束の場所に居ると決めたと思います。」

芹沢鴨は傘を差しながら、綺麗な女性に不思議そうに話し出す。

「物凄く大切な人との約束だとしても、雨の降る中で待っていたら濡れるだろ。傘を持っていない時に雨が降ったとしても、約束の場所で待ち続けられるのか?」

綺麗な女性は傘を差しながら、芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「濡れないために約束の場所を離れて愛しい人に逢えないのと、濡れると分かっていても約束の場所に居て愛しい人に逢えるのと、どちらかを選ぶとしたら、私は後者を選びます。」

芹沢鴨は傘を差しながら、綺麗な女性に微笑んで話し出す。

「藤の花を見るのは明日にしよう。今日の帰りは一本の傘になっても良いか?」

綺麗な女性は傘を差しながら、芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「先生にお任せします。」

芹沢鴨は傘を差しながら、綺麗な女性を微笑んで見た。

綺麗な女性も傘を差しながら、芹沢鴨を微笑んで見た。



芹沢鴨は傘を差しながら、微笑んで歩き出した。

綺麗な女性も傘を差しながら、微笑んで歩き出した。



ちょうど同じ頃。



ここは、少女が居る藤棚。



少女は困惑した様子で居る。



雨は静かに降り続いているため、少女は僅かに濡れている。



芹沢鴨は傘を差しながら、少女の前に普通に来た。

綺麗な女性は傘を差しながら、少女の前に微笑んで来た。



少女は芹沢鴨と綺麗な女性を不安そうに見た。

芹沢鴨は少女が濡れないように傘を差し掛けた。

少女は芹沢鴨を不思議そうに見た。

芹沢鴨は少女に傘を差し掛けながら、ぶっきら棒に話し出す。

「雨の降る中で何をしているんだ?」

少女は芹沢鴨を不安そうに見た。

芹沢鴨は少女に傘を差し掛けながら、ぶっきら棒に話し出す。

「総司を待っているんだろ。」

少女は芹沢鴨を不安そうに見ている。

芹沢鴨は少女に傘を差し掛けながら、少女に微笑んで話し出す。

「傘が欲しいだろ。」

少女は芹沢鴨に小さく首を横に振った。

芹沢鴨は少女に傘を差し掛けながら、微笑んで話し出す。

「遠慮しなくて良いぞ。」

少女は芹沢鴨に小さく首を横に振った。

芹沢鴨は少女に傘を押し付けると、ぶっきら棒に話し出す。

「あんたに傘を差し掛けるのは面倒なんだ。早く自分で傘を差せ。」

少女は芹沢鴨から傘を受け取るような形で持った。

芹沢鴨は少女にぶっきら棒に話し出す。

「勘違いされると困るから、念のために言っておく。あんたに傘を渡したのは、あんたが濡れて着物や体調に影響がでると、総司が騒ぐか落ち込むかして面倒だからだ。」

少女は傘を差しながら、芹沢鴨に小さい声で話し出す。

「お気遣いありがとうございます。傘は帰る時に沖田さんに預けます。」

芹沢鴨は少女にぶっきら棒に話し出す。

「総司が事情を知ると騒ぐから、傘を返すのは別な機会にしてくれ。」

少女は傘を差しながら、芹沢鴨に小さく礼をした。

綺麗な女性は芹沢鴨に傘を差し出すと、微笑んで話し出す。

「私やこの子の心配ばかりしているから、芹沢先生が濡れ始めていますよ。」

芹沢鴨は綺麗な女性から傘を受け取ると、微笑んで話し出す。

「女性や子供が雨で濡れているのに、男の俺が平気な顔で傘を差してはいなれないだろ。」

綺麗な女性は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「芹沢先生。お優しいですね。」

芹沢鴨は自分と綺麗な女性に傘を差すと、綺麗な女性を微笑んで見た。

綺麗な女性は芹沢鴨を微笑んで見た。

芹沢鴨は自分と綺麗な女性に傘を差しながら、少女にぶっきら棒に話し出す。

「またな。」

綺麗な女性は少女を微笑んで見た。

少女は傘を差しながら、芹沢鴨と綺麗な女性に小さく礼をした。



芹沢鴨と綺麗な女性は、一つの傘を差しながら去って行った。



それから僅かに後の事。



ここは、少女が居る藤棚。



少女は傘を差しながら、芹沢鴨と綺麗な女性の去っていく方向を心配そうに見た。



沖田総司が少女の傍に走りながら来た。



少女は沖田総司に傘を差し出すと、心配そうに話し出す。

「沖田さん。少し濡れています。大丈夫ですか?」

沖田総司は少女から傘を受け取ると、安心した様子で話し出す。

「私は大丈夫だよ。鈴ちゃんが雨に濡れていないか心配だったけれど、鈴ちゃんは傘を持ってきていたんだね。」

少女は沖田総司を僅かに困惑した様子で見た。

沖田総司は自分と少女に傘を差すと、心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。少し濡れているよ。何か遭ったの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「何もありません。大丈夫です。」

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、心配そう話し出す。

「傘を差していたのに濡れたの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「傘は途中から差しました。」

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。雨が降ったら直ぐに傘を差さないと駄目だよ。」

少女は沖田総司に小さく頷いた。

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、微笑んで話し出す。

「傘が一本だから、雨宿りの出来る場所で、話をしながら過ごそう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。



沖田総司と少女は、一つの傘を差しながら歩き出した。



沖田総司は自分と少女に傘を差しながらも、少女が濡れないように気遣って歩いている。

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「沖田さん。濡れてしまいます。」

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、微笑んで話し出す。

「私も濡れないように差しているから大丈夫だよ。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「沖田さん。無理をしないでくださいね。」

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、微笑んで頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。寒くなったら遠慮しないで直ぐに言ってね。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は自分と少女に傘を差しながら、少女を微笑んで見た。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



空の色は灰色をしているが、雨は止んでいる。



ここは、落ち着いた雰囲気の寺。



境内には藤の花が僅かだが咲いている。



ここは、寺の中。



縁の傍。



障子は半分ほど開いている。



沖田総司と少女が居る。



沖田総司は境内を見ながら、少女に微笑んで話し出す

「鈴ちゃん。雨が止んだよ。」

少女は外の様子を一瞥すると、沖田総司を見て、微笑んで頷いた。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「雨は止んだけれど、空の様子は良くないね。今日は境内に咲いている藤の花を見ながら話しをして過ごそう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



それから少し後の事。



ここは、沖田総司と少女が居る落ち着いた雰囲気の寺。



境内。



木の傍。



沖田総司は傘を持ちながら、微笑んで歩いている。

少女は微笑んで歩いている。



少女の顔や体に滴が当たった。



少女は滴が当たると同時に目を閉じた。

沖田総司は傘を持ちながら、少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。大丈夫?」

少女は直ぐに目を開けると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「少し驚いただけです。大丈夫です。」

沖田総司は傘を持ちながら、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。かんざしが少し濡れている。拭いてあげる。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「大丈夫です。」

沖田総司は傘を持ちながら、少女に微笑んで話し出す。

「かんざしが濡れたままだと、髪が濡れてしまうよ。拭いてあげるから遠慮せずに貸して。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は、傘を木に立て掛けると、手拭を取った。

少女はかんざしを取ると、沖田総司に微笑んで差し出した。

沖田総司は手拭を持ちながら、少女からかんざしを微笑んで受け取った。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は手拭を使って、かんざしを微笑んで拭き始めた。

少女は沖田総司を微笑んで見ている。



沖田総司はかんざしを微笑んで拭き終わった。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女にかんざしを微笑んで差し出した。

少女は沖田総司からかんざしを微笑んで受け取ろうとした。

沖田総司は少女がかんざしを受け取るより前に、僅かに早く手を離してしまった。



かんざしは少女の手に納まらずに地面へと落ちていく。



少女は落ちていくかんざしを驚いた表情で見た。

沖田総司は驚いた表情になりながらも、落ちていくかんざしを取ろうとした。



かんざしは水溜りの中に落ちた。



沖田総司はかんざしを水溜りから直ぐに拾うと、手拭で丁寧に拭き始めた。

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「沖田さん。手拭が汚れてしまいます。」

沖田総司はかんざしを手拭で丁寧に拭きながら、少女に話し出す。

「手拭は汚れたら洗えば良いのだから気にしなくて良いよ。私の注意が足りないために、かんざしを落としてしまった。鈴ちゃん。ごめんね。」

少女は沖田総司に心配そうに話し出す。

「沖田さん。かんざしを落としたのは気にしないでください。」

沖田総司はかんざしを手拭で丁寧に拭いている。

少女は沖田総司を心配そうに見た。



沖田総司はかんざしを拭き終わった。

少女は沖田総司を心配そうに見た。

沖田総司は少女にかんざしを差し出すと、心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。かんざしが綺麗に拭けたか確認してくれるかな。」

少女はかんざしを受け取ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「かんざしは綺麗に拭けています。大丈夫です。」

沖田総司は少女を安心した様子で見た。

少女はかんざしを微笑んで髪に挿した。

沖田総司は木に立て掛けてあった傘を手に取ると、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。帰ろう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。



沖田総司は傘を持ちながら、微笑んで寺を後にした。

少女は微笑んで寺を後にした。



それから暫く後の事。



ここは、京の町。



屯所。



縁。



沖田総司は考え込みながら歩いている。



芹沢鴨と斉藤一が居る姿が見えた。



沖田総司は立ち止まると、斉藤一を寂しそうに見た。



芹沢鴨は沖田総司の前に普通に来た。

斉藤一も沖田総司の前に普通に来た。



沖田総司は芹沢鴨と斉藤一を不思議そうに見た。

芹沢鴨は沖田総司にぶっきらぼうに話し出す。

「総司。雨に濡れただろ。」

沖田総司は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「逢う約束をしていた子が傘を持っていたので、余り濡れずに済みました。」

芹沢鴨は沖田総司に微笑んで話し出す。

「今日の出来事だが、総司といつも一緒に居る女の子が、雨の降る中の藤棚の下に傘を差さずに立っている姿を見たぞ。」

沖田総司は芹沢鴨を驚いた表情で見た。

芹沢鴨は沖田総司に普通に話し出す。

「親切な人が通り掛かってあの子に傘を貸すか、相手に逢えなくなるのを覚悟した上で雨宿りをしない限り、濡れるよな。」

沖田総司は芹沢鴨を不安そうに見た。

芹沢鴨は沖田総司に普通に話し出す。

「女性や子供を雨の降る中に待たせる人物は、どのような姿をしているのかな?」

沖田総司は芹沢鴨を不安そうに見ている。

芹沢鴨は沖田総司に僅かに不機嫌そうに話し出す。

「総司。大切な人を待たせる時は、雨宿りの出来る場所か、雨宿りの出来る場所の近くで、待ち合わせをしろよ。あの子の身に何か起きたら、総司の責任になるだけでなく、俺や近藤の責任にもなるんだ。俺や近藤が謝る事態になる可能性があるんだ。とても面倒なんだ。総司。しっかりしろよ。」

沖田総司は芹沢鴨に軽く礼をした。

斉藤一は芹沢鴨と沖田総司を普通の表情で見た。



芹沢鴨は僅かに不機嫌そうに去って行った。



沖田総司は斉藤一に不安そうに話し出す。

「芹沢さんの言う通りですよね。これからは気を付けないといけませんね。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に考え込みながら話し出す。

「鈴ちゃんに傘を貸した人は誰なのでしょうか? 礼が言いたいです。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「本人に聞けば良いだろ。」

沖田総司は斉藤一に考え込みながら話し出す。

「鈴ちゃんは私に傘を貸してくれた人がいるとは言いませんでした。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し掛ける。

「見知らぬ人物が傘を貸したか、総司の知る人物が傘を貸した。どちらの事情でも総司が心配すると思ったから、何も言わなかったのかも知れないな。」

沖田総司は斉藤一を考え込みながら見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に考え込みながら話し出す。

「今回の件は鈴ちゃんに確認するのは止めます。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「話しは変わりますが、鈴ちゃんのかんざしが濡れてしまったので拭いてあげました。かんざしを渡す時に早く手を離してしまったので、かんざしが水溜りの中に落ちてしまいました。かんざしは直ぐに拾って拭きました。かんざしの様子を確認しましたが、汚れはありませんでした。かんざしは水溜りに落ちても使えるのでしょうか?」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「かんざしの種類によると思う。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃんへの詫びとして、かんざしを買いたいと思いました。鈴ちゃんの身に付けているかんざしや着物は、着物やかんざしに疎い私が見ても、可愛いや綺麗や雅を感じます。私には雅なかんざしは選べません。私の用意できるお金では、値段の高いかんざしは買えません。詫びの品物なのに、値段の安いかんざしは渡せません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が詫びたい子は、花が好きだったな。しっかりとした内容の歌と綺麗な花を詫びとして贈れば、家の人が事情を知ったとしても、総司の評価は落ちずに更に高くなる可能性があるぞ。」

沖田総司は斉藤一に心配そうに話し出す。

「私が一人だけでは、風流な歌や綺麗な花を選ぶ自信がありません。斉藤さん。歌と花を一緒に選んでくれせんか?」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。ありがとうございます。」

斉藤一は沖田総司に普通に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。



それから数日後の事。



ここは、京の町。



芍薬の咲く場所。



芍薬の季節には僅かに早いが、早咲きの芍薬が咲き始めている。



沖田総司と少女が居る。



沖田総司は少女に心配そうに話し出す。

「鈴ちゃん。数日前の雨が降った日に、かんざしを水溜りに落としてしまってごめんね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「沖田さんが直ぐにかんざしを拭いてくださいました。かんざしは無事に使えます。気にしないでください。」

沖田総司は少女を安心した様子で見た。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。芍薬を少しだけど分けてもらえるんだ。鈴ちゃんの気に入った芍薬があったら分けてもらおう。」

少女は沖田総司に微笑んで頷いた。

沖田総司は少女を微笑んで見た。



それから少し後の事。



ここは、芍薬の咲く場所。



少女は芍薬の花束を微笑んで抱いている。

沖田総司は少女を微笑んで見ている。

沖田総司と少女の傍には、白いつつじが咲いている。



少女は芍薬を抱きながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「沖田さん。ありがとうございます。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。

少女は芍薬を嬉しそうに見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「藤の花の見頃は終わったね。つつじの花の見頃はもう少しだけ続きそうだね。次は、芍薬が見頃になる季節だね。」

少女は芍薬を抱きながら、沖田総司を見ると、微笑んで頷いた。

沖田総司は懐から折った紙を取り出すと、芍薬に微笑みながら軽く巻きつけた。

少女は芍薬を抱きながら、沖田総司を不思議そうに見た。

沖田総司は傍に咲く白いつつじを微笑みながら手折った。

少女は芍薬を抱きながら、沖田総司を不思議そうに見ている。

沖田総司は少女に髪に白いつつじを挿すと、恥ずかしそうに話し出す。

「“春日野の 藤は散りにて 何をかも み狩の人の 折りてかざさむ”。鈴ちゃんは、白いつつじの花を飾りました。」

少女は芍薬を抱きながら、沖田総司を恥ずかしそうに見た。

沖田総司は少女に恥ずかしそうに話し出す。

「芍薬に巻きつけた紙には、“春日野の 藤は散りにて 何をかも み狩の人の 折りてかざさむ”の歌が書いてあるんだ。」

少女は芍薬を抱きながら、沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。

「ありがとうございます。」

沖田総司は少女に恥ずかしそうに話し出す。

「鈴ちゃん。送っていくよ。」

少女は芍薬を抱きながら、沖田総司に恥ずかしそうに頷いた。



沖田総司と少女は、芍薬の咲く中をゆっくりと去っていった。



「春日野の 藤は散りにて 何をかも み狩の人の 折りてかざさむ」

藤花の見頃が過ぎた日に、沖田総司が少女の髪に挿したのは、白いつつじの花。

沖田総司の傍には、少女の笑顔と白いつつじの花と芍薬の花が咲いている。




〜 完 〜





はじめに           本編           後書き

目次


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