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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 秋の砌 音に聞く あだ波は 〜


「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」

作者:祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんのうけのき)

「小倉百人一首 七十二番」、及び、「金葉集」



今は秋。



ここは、京の町。



同じ暑さでも夏のような暑さの日は少しずつ減ってきている。



お雪の体調が良くないため、近藤勇が気遣ってお雪の妹のお孝を大坂から呼んでいる。

お雪の妹お孝は、お雪の見舞いと看護を兼ねて京の町に来ている。



ここは、お雪の家。



お雪の部屋。



お孝は部屋の中に普通に入ってきた。



お雪はお孝を微笑んで見た。

お孝はお雪に普通に話し出す。

「少し出掛けるね。買ってきて欲しい物はある?」

お雪はお孝に微笑んで話し出す。

「今は買ってきて欲しい物はないわ。気を付けて行ってらっしゃい。」

お孝はお雪に普通に話し出す。

「行ってきます。」

お雪はお孝を微笑んで見た。



お孝は部屋を普通に出て行った。



それから暫く後の事。



ここは、屯所。



隊士達は、任務中の者、稽古中の者、非番でくつろぐ者など、様々に過ごしている。



ここは、庭。



お孝は普通に訪れた。



数人の隊士がお孝を普通の表情で見た。



お孝は数人の隊士を普通の表情で見た。



一人の隊士がお孝の前に普通に来た。



お孝は隊士に普通に話し出す。

「私は、近藤さんの世話になっているお雪の妹のお孝よ。三番組組長の斉藤さんに会いたいの。」

隊士はお孝に僅かに緊張した様子で話し出す。

「直ぐに呼んできます。」

お孝は隊士に普通の表情で頷いた。

隊士はお孝に僅かに緊張しながら軽く礼をした。



隊士は僅かに慌てた様子で居なくなった。



それから少し後の事。



ここは、屯所。



庭。



お孝は普通に居る。



斉藤一はお孝の前に普通に来た。



お孝は斉藤一に小さい声で話し出す。

「この前はごめんなさい。」

斉藤一はお孝を普通の表情で見た。

お孝は斉藤一に普通の表情で軽く礼をした。

斉藤一はお孝に普通の表情で頷いた。

お孝は顔を上げると、斉藤一に普通に話し出す。

「話しは終わりました。」

斉藤一はお孝に普通の表情で頷いた。



お孝は普通に去って行った。



斉藤一はお孝の去っていく様子を普通の表情で見た。



隊士達の囁くような話し声が、斉藤一の元に聞こえてきた。

「お雪さんの妹さんのお孝さんと初めて会った。」

「お雪さんの妹さんのお孝さんと知らずに話してしまった。」

「俺は以前にお孝さんにと偶然に会ったんだ。お孝さんは、はっきりと物を言うし、はっきりとした性格だ、と聞いていたから緊張したよ。」

「お孝さんは天真爛漫な性格だと聞いたぞ。」

「言い方を変えれば天真爛漫な性格になるだろ。」

「言い方を変えないと天真爛漫な性格にならないのか?」

「想像に任せるよ。」

「話を戻すが、お孝さんが斉藤さんに謝っていたな。」

「斉藤さんは、あのお孝さんも謝らせる人なんだ。」

「さすが斉藤さんだな。」

「俺達も斉藤さんに更に気を付けて接しないと、何が起きるか分からないぞ。」

「確かにこれからは更に気を付けて接しよう。」



斉藤一は隊士達を普通の表情で見た。



隊士達は斉藤一を緊張した様子で見た。



斉藤一は隊士達を見ながら、普通に歩き出した。



隊士達は斉藤一と距離をとりながら、緊張した様子で元の行動に戻り始めた。



それから暫く後の事。



ここは、屯所。



縁。



藤堂平助は普通に歩いている。



原田左之助が藤堂平助の傍に落ち着かない様子で来た。



藤堂平助は立ち止まると、原田左之助を不思議そうに見た。



原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助。お孝さんが斉藤に謝りに来たそうだ。何か知っているか?」

藤堂平助は原田左之助に不思議そうに話し出す。

「今日は任務だったので知りません。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「斉藤は屯所に長く居たが任務だった。今日の出来事ではなく、以前の出来事の関係で謝りに来たと思う。」

藤堂平助は原田左之助に不思議そうに話し出す。

「私はお孝さんが謝りに来た事情は知りません。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助はお孝さんの相手をするために、何度も呼ばれているだろ。何かしらの事情を知っているはずだ。」

藤堂平助は原田左之助に困惑した様子で話し出す。

「本当に何も知りません。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「俺も含めた何人もの隊士達が、今回の事情をぜひ知りたいと思っている。」

藤堂平助は原田左之助に考え込みながら話し出す。

「お雪さんに事情を聴くのはどうですか?」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「お雪さんが事情を知らない場合は、斉藤やお孝さんが怒るという最悪の事態が考えられる。」

藤堂平助は原田左之助に困惑した様子で話し出す。

「斉藤さんかお孝さんに事情を聴くのが一番確実な方法だと思います。」

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「斉藤には事情を聞けない。俺がお孝さんとまともに話したのは数える程度だし、平助のように気に入られていない。俺からお孝さんに事情を聞くのは無理だ。」

藤堂平助は原田左之助を困惑した様子で見た。

原田左之助は藤堂平助を見ながら考え込んだ。

藤堂平助は原田左之助に何かを思い出した様子で話し出す。

「沖田さんは任務から帰ってきていますよね。」

原田左之助は藤堂平助を微笑んで見た。

藤堂平助は原田左之助を安心した表情で見た。

原田左之助は藤堂平助に小さい声で話し出す。

「平助。総司の部屋に行くぞ。」

藤堂平助は原田左之助を不思議そうに見た。



原田左之助は藤堂平助の手を取ると、微笑んで歩き出した。

藤堂平助は原田左之助を苦笑した表情で見ながら歩き出した。



それから僅かに後の事。



ここは、屯所。



沖田総司の部屋。



原田左之助は微笑んで訪ねてきた。

藤堂平助は苦笑した表情で訪ねてきた。



沖田総司は藤堂平助と原田左之助を不思議そうに見た。

原田左之助は沖田総司に小さい声で話し出す。

「総司。お孝さんが斉藤に謝りに来た。隊士達の間で密かに盛り上がっているんだ。」

沖田総司は原田左之助を不思議そうに見た。

原田左之助は沖田総司に小さい声で話し出す。

「総司と斉藤は仲が良いし一緒に居る時間が長いから、密かな盛り上がりに気付かなかったと思う。」

藤堂平助は原田左之助に小さい声で話し出す。

「原田さん。今日の沖田さんと斉藤さんは、任務の関係でほとんど一緒に居ません。」

原田左之助は藤堂平助を僅かに驚いた表情で見た。

藤堂平助は原田左之助を僅かに困惑した様子で見た。

沖田総司は藤堂平助と原田左之助に寂しそうに話し出す。

「みんなで私には秘密にしている話題があるのですね。」

原田左之助は沖田総司に僅かに慌てた様子で話し出す。

「総司。みんなで秘密にしていた訳ではないぞ。お孝さんが屯所を訪ねて斉藤に謝りに来たから、多くの隊士達が気にして話題になっているんだ。総司は斉藤と仲が良いし立場もあるから、尋ね難い隊士が多いんだ。俺は何人かの隊士に頼まれて尋ねにきたんだ。」

藤堂平助は沖田総司に僅かに慌てた様子で話し出す

「原田さんの言う通りです。」

沖田総司は藤堂平助と原田左之助に微笑んで話し出す。

「原田さん。平助。引っ掛りましたね。」

原田左之助は沖田総司を驚いた表情で見た。

藤堂平助も沖田総司を驚いた表情で見た。

沖田総司は藤堂平助と原田左之助に微笑んで話し出す。

「と、言ってみただけです。なぜ驚いているのですか?」

原田左之助は沖田総司を驚いた表情で見ている。

藤堂平助も沖田総司を驚いた表情で見ている。

沖田総司は藤堂平助と原田左之助に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは私にとって大切な友達です。理由を知っていたとしても教えません。」

原田左之助は藤堂平助を困惑した様子で見た。

藤堂平助も原田左之助を困惑した様子で見た。

沖田総司は藤堂平助と原田左之助を微笑んで見た。



原田左之助は部屋を困惑した様子で出て行った。

藤堂平助は部屋を普通に出て行った。



それから少し後の事。



ここは、屯所。



縁。



原田左之助は残念そうに歩いている。

藤堂平助は普通に歩いている。



原田左之助は藤堂平助に残念そうに話し出す。

「総司の微笑みから想像すると、あの子も関係しているな。」

藤堂平助は原田左之助に普通の表情で軽く礼をした。

原田左之助は藤堂平助に残念そうに話し出す。

「平助。俺は命が惜しいから諦めるよ。」

藤堂平助は原田左之助を苦笑した表情で見た。

原田左之助は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「平助。騒ぎに巻き込んだ詫びを兼ねて酒を奢るよ。一緒に飲みに行こう。」

藤堂平助に原田左之助に微笑んで話し出す。

「ありとうございます。」

原田左之助は藤堂平助を微笑んで見た。

藤堂平助も原田左之助を微笑んで見た。



その翌日の事。



ここは、お雪の家。



斉藤一はお雪とお孝に呼ばれて普通に訪ねてきている。



ここは、客間。



斉藤一は普通に居る。

お雪は文を持ちながら、微笑んで居る。

お孝は文を持ちながら、普通に居る。



お雪は斉藤一に文を差し出すと、微笑んで話し出す。

「近藤さん宛ての文です。よろしくお願いします。」

斉藤一はお雪から文を受け取ると、懐に普通に仕舞った。

お孝は斉藤一に文を差し出すと、微笑んで話し出す。

「土方さん宛ての文です。しっかりと届けてね。」

斉藤一はお孝から文を受け取ると、懐に普通に仕舞った。

お雪はお孝に僅かに困惑した様子で話し出す。

「お孝。斉藤さんはしっかりと任務を務める方よ。失礼な言い方は止めなさい。」

お孝はお雪に不思議そうに話し出す。

「しっかりと届けて欲しいから言っただけよ。失礼なの?」

お雪は斉藤一に僅かに困惑した様子で話し出す。

「申し訳ありません。」

斉藤一はお雪に普通の表情で軽く礼をした。

お孝は斉藤一に微笑んで話し出す。

「土方さん宛ての文には歌が書いてあるの。文に書いた歌は、“音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ”よ。知っているかしら?」

斉藤一はお孝を普通の表情で見た。

お雪はお孝を僅かに困惑した表情で見た。

お孝は斉藤一に微笑んで話し出す。

「人斬りに感想や説明を求めても無駄よね。」

お雪は斉藤一を心配そうに見た。

斉藤一はお雪に普通に話し出す。

「お雪さんが手伝って選んだ歌ですか?」

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「私が数首ほどの候補の歌を選んで、お孝には簡単ですが歌の説明をしました。歌はお孝が選びました。良い機会なので、遠慮せずに感想や説明をお願いします。」

斉藤一はお雪とお孝に普通に話し出す。

「歌に関する説明だけをします。“音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ”。“小倉百人一首 七十二番”の歌。出典基は“金葉集”。作者は“祐子内親王家紀伊”。母親は歌人として知られている“小弁”。恋の歌。歌会での相手への返歌。以上です。」

お雪は斉藤一に微笑んで話し出す。

「しっかりと覚えていらっしゃるのですね。さすが斉藤さんですね。」

斉藤一はお雪に普通に話し出す。

「小倉百人一首を含めた歌の解釈などを以前も今も教えてくれる人がいます。俺は忘れずに覚えているだけです。お雪さんや土方さんの知識には遠く及びません。」

お雪はお孝に微笑んで話し出す。

「お孝。斉藤さんに謝りなさい。」

お孝は斉藤一に困惑した様子で話し出す。

「ごめんなさい。」

斉藤一はお孝に普通の表情で頷いた。

お孝は落ち込んだ様子で軽く息をはいた。

お雪は斉藤一とお孝を微笑んで見た。



それから暫く後の事。



ここは、屯所。



土方歳三の部屋。



土方歳三は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「お孝さんから土方さん宛ての文を預かりました。」

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「お雪さんからは、俺宛ての文を預かっていないのか?」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「お雪さんからは、近藤さん宛ての文だけを預かりました。」

土方歳三は斉藤一に僅かに寂しそうに話し出す。

「少し寂しいな。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「土方さん。俺の前で寂しがっても何も起きません。話しを戻します。文を渡しても良いですか?」

土方歳三は斉藤一に苦笑しながら頷いた。

斉藤一は懐から文を取り出すと、土方歳三に普通に差し出した。

土方歳三は斉藤一から苦笑した表情で文を受け取った。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は文を微笑んで読んだ。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。



土方歳三は文を微笑んで読み終わった。

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「“音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ”。さすがお雪さんが選んだ歌だな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。感想があったらぜひ聞きたい。」

斉藤一は土方歳三に普通に話し出す。

「歌会で詠まれた恋の歌の返歌を先に贈っています。相手がお雪さんならば、返歌だと知っている、返歌だと知らない、どちらも考えられます。お雪さんが土方さんからの高度な内容の返歌を期待しているとも考えられます。しかし、今回の歌の贈り主はお孝さんです。お雪さんはお孝さんに詳細な説明はしていないと思われるため、お孝さんは深読みをせずに贈ったと思います。さすがお雪さんだと思います。」

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「さすが斉藤。俺の考えとほぼ同じだ。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「記憶力、観察力、洞察力に関しては、斉藤が新撰組一番と表現して良いな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「お孝さんが屯所を訪れて斉藤に謝った出来事に関して、隊士達の間で密かな話題になっている。隊士達は斉藤とお孝さんが相手だから騒げないんだな。」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見た。

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤も隊士達の間で密かな話題になっているのに気付いているんだ。俺は確認のために聞いただけだ。お孝さんが謝った理由を聞くつもりはない。」

斉藤一は土方歳三を普通の表情で見ている。

土方歳三は斉藤一に微笑んで話し出す。

「今回のお孝さん宛ての文を渡す役目は、総司に頼む。斉藤。構わないよな。」

斉藤一は土方歳三に普通の表情で軽く礼をした。

土方歳三は文を持ちながら、斉藤一を微笑んで見た。



斉藤一は普通に部屋を出て行った。



その翌日の事。



ここは、お雪の家。



玄関。



沖田総司が微笑んで訪れた。



お雪は沖田総司の前に微笑んで訪れた。

お孝も沖田総司の前に微笑んで訪れた。



沖田総司は懐から文を取り出すと、お雪とお孝に微笑んで話し出す。

「近藤さんからはお雪さん宛ての文を、土方さんからはお孝さん宛ての文を、それぞれ預かりました。」

お孝は沖田総司を微笑んで見た。

お雪は沖田総司に微笑んで話し出す。

「ありがどうございます。」

沖田総司はお雪に微笑んで文を差し出した。

お雪は沖田総司から微笑んで文を受け取った。

沖田総司はお孝に微笑んで文を差し出した。

お孝は沖田総司から微笑んで文を受け取った。

お雪は文を持ちながら、沖田総司に微笑んで話し出す。

「文の返事を書くかも知れません。お部屋を用意します。お休みを兼ねてお待ちください。」

沖田総司はお雪に微笑んで話し出す。

「これから寄りたい所があります。少し経ったら来ます。」

お雪は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お菓子を食べたくなったので、お孝が買い物に出掛けます。差し支えなければ、沖田さんと美鈴さんも一緒にいかがですか? 文の返事を頼む場合は、沖田さんと美鈴さんが帰る時に渡します。」

お孝は文を持ちながら、沖田総司とお雪に僅かに慌てた様子で頷いた。

沖田総司はお雪に微笑んで話し出す。

「分かりました。鈴ちゃんに確認をとります。鈴ちゃんが了承すれば、一緒に来ます。」

お雪は文を持ちながら、沖田総司を微笑んで見た。



沖田総司は微笑んで去って行った。



お孝は文を微笑んで読み始めた。

お雪は文を持ちながら、お孝を微笑んで見た。



お孝は文を読み終わると、残念そうに軽く息をはいた。

お雪は文を持ちながら、お孝を微笑んで見た。

お孝は文を持ちながら、お雪を見ると、普通に話し出す。

「姉さん。都合の良い時で構わないから、土方さんに贈った歌と前の歌について教えて。」

お雪は文を持ちながら、お孝に微笑んで頷いた。



それから少し後の事。



ここは、京の町。



お孝はお菓子を買うために普通に歩いている。



お孝は立ち止まると、空を普通の表情で見た。



空は夏の気配が僅かに残っている。



お孝は空を見ながら呟いた。

「土方さん。私は負けないわ。」



お孝は前を向くと、お菓子を買うために歩き出した。



「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」

小倉百人一首と金葉集に掲載されている歌だな。

俺はこの歌の作者のように、幾つになっても艶や魅力のある歌を詠みたくて勉強を続けている。

俺宛ての文を書いてくれた人に直接に会う機会があったら、この歌の作者のように、幾つになっても艶や魅力のある歌を詠めるように勉強を続けて欲しいと言いたい。

お雪さんに無理をさせないように、歌の勉強に励んでくれ。

新たな文が届く時を楽しみにしている。




〜 完 〜





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