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〜 雪月花 新撰組異聞 〜
〜 冬月に見る夢 時雨 君が黄葉をかざしつるかも 〜
登場人物
沖田総司、斉藤一、少女[鈴・美鈴]
夜の国の住人、夢、謎の男性
「黄葉を 散らす時雨に 濡れて来て 君が黄葉を かざしつるかも」
「万葉集 第八巻 一五八三番」より
作者:久米女王(くめのおおきみ)
冬の季節を迎えた。
京の町では、紅葉は緑色から紅色へ、銀杏は緑色から黄色へと、それぞれ綺麗に色付いている。
本格的な冬の寒さを感じるのは、僅かに後の事になるのかも知れない。
沖田総司と少女は、いつも訪れる寺に居る。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。山南さんが一緒に出掛けないかと誘ってくれたんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「良かったですね。みなさんで楽しんできてください。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃんも一緒に出掛けるんだよ。」
少女は沖田総司を不思議そうに見た。
沖田総司は少女に心配そうに話し出す。
「鈴ちゃんは、都合が悪い日が多いのかな?」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「私の都合は大丈夫です。私も一緒にお出掛け出来るのですか?」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「もちろん。鈴ちゃんも一緒だよ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「私まで誘いのお話しがあるとは思っていませんでした。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「言い方が悪くてごめんね。」
少女は沖田総司を見ながら微笑んで首を横に振った。
それから数日後の事。
山南敬助、沖田総司、斉藤一、少女の四人で出掛ける日の前日となった。
沖田総司の部屋には、既に床の用意が出来ている。
部屋の外へと出て行った。
沖田総司は縁に立った。
部屋の外も中も夜の静けさに包まれている。
沖田総司は微笑んで夜空を見上げた。
月は綺麗な姿で輝いている。
沖田総司は月を見ながら笑顔で呟いた。
「明日が楽しみだな〜」
月は綺麗な姿で輝いている。
沖田総司は視線を元に戻すと、嬉しそうに部屋へと戻っていった。
沖田総司は部屋の中に入ると、直ぐに床に着いた。
部屋の中の外も夜の静けさに包まれている。
沖田総司は床に着くと同時に、直ぐに眠りへ誘われていった。
沖田総司は床の中で静かに寝ている。
部屋の中が、時折感じる不思議な気配に包まれた。
沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。
沖田総司の目の前には、少女が笑顔で覗き込んでいる姿がある。
沖田総司は床に横になったまま、少女に微笑んで話し出す。
「夢ちゃん。こんばんは。」
夢と呼ばれた少女は、沖田総司からゆっくりと顔を離した。
沖田総司は床からゆっくりと体を起こすと、夢に微笑んで話し出す。
「夢ちゃん。何かあったの?」
夢は沖田総司に寂しそうに話し出す。
「私は総司さんに用がないと、逢ってはいけないのですか? 美鈴さんが羨ましいです。」
沖田総司は夢を心配そうに見た。
夢は沖田総司に寂しそうに話し出す。
「総司さんは、用が無いのに来る私の事を、迷惑に思っていたのですね。」
沖田総司は夢に心配そうに話し出す。
「夢ちゃん。言い方が悪くてごめんね。迷惑だと思った事は一度も無いよ。」
夢は沖田総司を寂しそうに見た。
沖田総司は夢を心配そうに見た。
夢は沖田総司に寂しそうに話し出す。
「今夜は帰ります。」
沖田総司は夢を驚いた表情で見た。
夢は沖田総司に寂しそうに話し出す。
「夜の国には、斉藤さんも美鈴さんも来ます。お二人には、沖田さんから、用が無いなら来るなと言って追い返されたと、伝えておきます。」
沖田総司は夢に慌てた様子で話し出す。
「夢ちゃん。誤解だ。私は用が無いなら来るなとは、一言も言っていない。」
夢は沖田総司を寂しそうに見た。
沖田総司は夢に心配そうに話し出す。
「私を夜の国に連れて行ってくれ。」
夢は沖田総司を寂しそうに見ている。
沖田総司は夢に心配そうに話し出す。
「やっぱり駄目なのかな?」
夢は沖田総司に微笑んで小さく首を振った。
沖田総司は夢の仕草を見て顔を赤くした。
夢は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さん。何かあったのですか?」
沖田総司は夢に顔を赤くしながら話し出す。
「何も無いと思う。」
夢は沖田総司に微笑んで抱きついた。
沖田総司は顔を真っ赤にして夢の腕の中に居る。
夢は沖田総司に微笑んで抱きついている。
沖田総司は顔を赤くしたまま、動きが止まっている。
沖田総司と夢は、暖かい部屋の中に居る。
沖田総司は顔を赤くしたまま、夢の腕の中で動きが止まっている。
夢は沖田総司からゆっくりと離れた。
沖田総司は顔を赤くしたまま、夢に不思議そうに話し出す。
「夢ちゃん。もしかして、私の事をからかったのか?」
夢は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さんが抱きついて夜の国に来る時に、いつも突然に抱きつくとお話しをされていたので、突然にならないように抱きついてみました。」
沖田総司は顔を赤くしたまま、夢を複雑な表情で見た。
夢は沖田総司に微笑んで話し出す。
「総司さん。今回は、いかがでしたか?」
沖田総司は顔を赤くしたまま、夢を複雑な表情で見ている。
夢は沖田総司に微笑んで話し出す。
「では、次回も突然ではない抱きつき方を考えておきます。楽しみに待っていてくださいね。」
沖田総司は顔を赤くしたまま、夢を複雑な表情で見ている。
夢は沖田総司を微笑んで見ながら、静かに居なくなった。
沖田総司は部屋の中を不思議そうに見回した。
夢の姿は既にない。
沖田総司は不思議そうに呟いた。
「もしかして、からかわれたのかな?」
部屋の中には沖田総司しか居ないため、返事をする者は誰も居ない。
沖田総司は不思議そうに考え込んでしまった。
後ろから、少女の心配そうな声が聞こえてきた。
「総司さん。大丈夫ですか?」
沖田総司は振り向く事なく、後ろに居る少女に僅かに不機嫌そうに話し出す。
「うるさいな。人の事をからかうのが、そんなに面白いのか?」
後ろに居るはずの少女からは返事が無い。
沖田総司は慌てて後ろを振り向いた。
少女は沖田総司を悲しそうな表情で見ている。
斉藤一は沖田総司を少女の横で睨んでいる。
沖田総司は少女に慌てた様子で話し出す。
「鈴ちゃん! ごめんね! 鈴ちゃんに言った訳ではないんだ! 先程まで話しをしていた人が、私に話し掛けてきたと思ったんだ!」
少女は下を向くと、静かに泣き出した。
沖田総司は少女に心配そうに話し出す。
「鈴ちゃん。ごめんね。」
少女は下を向いたまま、静かに泣き続けている。
沖田総司は少女に心配そうに何かを話し出そうとした。
少女は静かに泣きながら、部屋の中から姿を消した。
沖田総司は斉藤一に強い調子で話し出す。
「斉藤さん! 鈴ちゃんが後ろに居ると、なぜ教えてくれなかったのですか?!」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺が話しを始める間もなく、総司が先に話を始めたんだ。」
沖田総司は斉藤一を不機嫌そうに見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「俺に対して怒っている暇があったら、美鈴さんを早く探せ。」
沖田総司は斉藤一を不機嫌そうに見ている。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司は、美鈴さんを泣かせたまま放っておいても平気なのか?」
沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「総司。見損なったぞ。」
沖田総司は斉藤一に慌てた様子で話し出す。
「鈴ちゃんを探しに行ってきます!」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。
沖田総司は部屋から静かに居なくなった。
斉藤一は一人で部屋の中に居る。
夢が部屋の中に静かに現れた。
斉藤一は夢を普通の表情で見た。
夢は斉藤一に微笑んで話し出す。
「いつも大変ですね。」
斉藤一は夢を普通の表情で黙って見ている。
夢は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。もしよろしかったら一緒に飲みませんか? という伝言を頼まれました。」
斉藤一は夢に普通の表情で黙って頷いた。
斉藤一と夢は、静かに居なくなった。
綺麗な黄色に色付き始めた木が、月の光を受けて淡い光を放っている。
少女は綺麗な黄色に色付いた木の下に座りながら静かに泣いている。
少女の横に、いつも一緒に居たい青年と凄く似た気配を感じた。
少女は周りの様子を気にする事もなく、座りながら静かに泣き続けている。
いつも一緒に居たい青年と凄く似た気配は、少女の横へと静かに動いた。
少女は周りの様子を機にする事なく、座りながら静かに泣き続けている。
青年は少女に微笑んで話し出す。
「きっと勘違いだと思うよ。だから、泣いては駄目だよ。」
少女は静かに泣きながら、青年に話し出す。
「私の気が利かないから、総司さんのご機嫌を損ねてしまいました。」
青年は少女に微笑んで話し出す。
「その人は、直ぐに美鈴さんに謝ったんだよね。勘違いをしたとわかったから、直ぐに謝ったんだと思うよ。」
少女は静かに泣きながら、青年を見た。
青年は少女に微笑んで話し出す。
「美鈴さんは笑顔が可愛いのだから、泣いていては駄目だよ。」
少女は瞳に涙を浮かべたままだが、何とか泣き止んだ。
青年は少女を微笑んで見た。
少女は涙が残っている瞳で、青年を不思議そうに見た。
青年は少女に微笑んで話し出す。
「美鈴さん。その調子。」
少女は涙が残っている瞳で、青年を微笑んで見た。
青年は少女に微笑んで頷いた。
少女は涙が残っている瞳で、青年に微笑んで話し出す。
「ありがとうございます。」
青年は少女を微笑んで見ながら、その場から静かに居なくなった。
少女は再び一人だけになった。
軽く下を向くと、瞳に残っている涙を手で軽く拭った。
月の光は、綺麗な黄色に色付いた木と少女を、静かに照らしている。
少女は寂しそうに下を向いた。
目の前に沖田総司が居る気配を突然に感じた。
少女はゆっくりと顔を上げると、驚く様子も無く目の前を見た。
少女の目の前に居たのは、沖田総司だった。
沖田総司はしゃがみ込みながら、少女を心配そうに見ている。
少女は沖田総司を僅かに涙で濡れた瞳で見た。
沖田総司が少女の横に座ると、心配そうに様子を見た。
沖田総司は少女に心配そうに話し出す。
「鈴ちゃん。悲しい思いをさせてしまってごめんね。鈴ちゃんが来る前に、他の人と話しをしていたんだ。それと、考え事をしていたから、直ぐに鈴ちゃんだとわからなかったんだ。私の注意が足りなかった。鈴ちゃんは何も悪くないんだよ。」
少女は僅かに涙に濡れた瞳で沖田総司を見ている。
沖田総司は少女に悲しそうに話し出す。
「鈴ちゃんの瞳が涙で濡れている。私のせいだね。ごめんね。」
少女は再び瞳に残った涙を拭うと、沖田総司に微笑んで話し出す。
「私は大丈夫です。少し驚いてしまっただけです。総司さんにご迷惑をお掛けしてしまいました。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「部屋に戻ろう。斉藤さんが心配をして待っているかもしれない。」
少女は沖田総司に微笑んで頷いた。
沖田総司と少女は、その場から静かに居なくなった。
ここは、先程まで、沖田総司と斉藤一と少女の三人が居た部屋の中。
沖田総司と少女は、部屋の中に静かに表れた。
沖田総司は部屋の中を見回すと、少女に不思議そうに話し出す。
「斉藤さんが居ないね。」
少女は沖田総司に不思議そうに頷いた。
沖田総司は少女に不思議そうに話し出す。
「どこかに出掛けたみたいだね。」
少女は沖田総司に不思議そうに頷いた。
沖田総司と少女の後ろに、斉藤一が居る気配を突然に感じた。
沖田総司と少女は、驚く様子も無く後ろを振り向いた。
斉藤一は沖田総司と少女を普通の表情で見ている。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。どこかに出掛けたかと思いました。」
斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。
「さっきまで飲んでいた。相手が席を外したから、少しだけ戻ってきた。」
沖田総司は斉藤一を不思議そうに見た。
斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。
沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。
「斉藤さん。少し出掛けたい所があります。鈴ちゃんの傍に居てくれませんか?」
斉藤一は沖田総司に普通の表情で黙って頷いた。
沖田総司は少女を見ると、微笑んで話し出す。
「直ぐに戻って来るからね。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「行ってらっしゃい。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「行ってきます。」
少女は沖田総司を微笑んで見た。
沖田総司は微笑みながら、静かに居なくなった。
沖田総司は、冬の花がたくさん咲いている場所に、静かに現れた。
辺りを見回すと、不思議そうに呟いた。
「京では咲き始めの花とか、もう少し後に咲き始める花まで、夜の国では咲いているような気がする。不思議だけど、夜の国で起こる事は、気にしてはいけないんだよね。」
再び辺りを見回すと、元気良く声を出した。
「鈴ちゃんが喜ぶ花を見つけるぞ〜!」
たくさんの冬の花が咲く中を、元気良く探し始めた。
沖田総司は冬の花を探しているが、納得できる花が見付らない。
困った様子で辺りを見回した。
辺りが少し暗くなった気がした。
沖田総司は不思議そうに夜空を見上げた。
月も星も隠れてしまっている。
月や星が隠れていたら真っ暗になっても良いはずなのに、なぜだか暗くならない。
沖田総司は夜空を見上げながら、不思議そうに呟いた。
「雨でも降るのかな?」
顔に冷たい物が当たった。
少し驚いた様子で夜空を見続けていると、次々に顔に冷たい物が当たってくる。
夜空を見続けたまま、慌てた様子で呟いた。
「雨だ。」
雨は少しずつ強く降ってくる。
沖田総司は視線を元に戻すと、辺りを見回しながら慌てた様子で呟いた。
「良い花が見つかっていない。早く見つけないと、鈴ちゃんの笑顔が見られない。」
雨の降る中を、困った様子で辺りを見回した。
沖田総司の近くに、綺麗な黄色に色付いた木を見つけた。
綺麗な黄色に色付いた木は、辺りを淡く照らしている。
沖田総司は綺麗な黄色に色付いている木へと歩き出した。
沖田総司は綺麗な黄色に色付いた木の前に来た。
綺麗な黄色く色付いた葉は、雨の雫に濡れ始めている。
雨の雫の付いた黄色く色付いている葉は、更に綺麗に見える。
沖田総司は、綺麗な黄色に色付いた小枝の中から、一本の小枝を手折ると、静かに居なくなった。
斉藤一と少女は、部屋の中に居る。
少女は不安そうに黙っている。
斉藤一は少女を普通の表情で黙って見ている。
少女は斉藤一を見ると、微笑んで話し出す。
「すいません。お話ししていませんでした。」
斉藤一は少女に普通に話し出す。
「ここは夜の国だ。危険は無いに等しい。総司は元気に戻って来る。だから余り心配するな。」
少女は斉藤一に微笑んで頷いた。
沖田総司は斉藤一と少女の前に静かに現れた。
少女は沖田総司を微笑んで見たが、直ぐに心配そうな表情に変わった。
沖田総司は少し濡れた姿をしている。
少女は沖田総司の前に心配そうな表情で歩み寄った。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。遅くなってごめんね。」
少女は沖田総司に心配そうに話し出す。
「総司さん。お体が濡れています。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「この程度は濡れた内に入らないよ。」
少女は沖田総司に心配そうに話し出す。
「総司さんが風邪をひくと困ります。お体を拭く物を探してきます。少し待っていてください。」
沖田総司は少女に慌てた様子で話し出す。
「鈴ちゃん! 大丈夫だと言っているだろ!」
少女は沖田総司に申し訳なさそうに話し出す。
「すいません。」
沖田総司は少女に慌てた様子で話し出す。
「鈴ちゃん?! 大丈夫?! 言い方が悪かったのかな?! ごめんね!」
少女は悲しそうに下を向いてしまった。
沖田総司は少女に心配そうに話し出す。
「鈴ちゃん。ごめんね。」
少女は下を向いたまま、小さく首を横に振った。
沖田総司は少女の様子を心配そうに見ていたが、何かを思い出した表情になった。
少女は悲しそうに、下を向き続けている。
沖田総司は手に持っていた綺麗な黄色に色付いた小枝を、少女の髪に挿した。
少女は顔を上げると、沖田総司を不思議そうに見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「綺麗な黄色に色付いている木があったんだ。鈴ちゃんの髪に挿したら似合うと思って、小枝を少しだけ折ったんだ。」
少女は沖田総司を心配そうに見た。
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「途中で雨が降ったから、少し雫が付いているんだ。雫が付いた小枝は、更に綺麗に見えたんだ。」
少女は沖田総司に微笑んで話し出す。
「綺麗な黄色の葉に雫が付いたら、更に綺麗になりますね。」
沖田総司は少女に微笑んで話し出す。
「綺麗なのは、黄色い葉のかんざしを挿している鈴ちゃんだよ。」
少女は恥ずかしそうに下を向いてしまった。
沖田総司は顔を赤くして少女を見た。
少女は恥ずかしそうに下を向き続けている。
沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。
「明日になってから出掛けると場所にも、綺麗に色付いている葉があると思うんだ。」
少女は恥ずかしそうに下を向き続けている。
沖田総司は少女に顔を赤くしながら話し出す。
「綺麗に色付いている葉を見つけるね。鈴ちゃんにかんざし代わりに挿すからね。今夜と同じく似合うはずだよ。」
少女は顔を上げて沖田総司を見ると、恥ずかしそうに話し出す。
「ありがとうございます。」
沖田総司は顔を赤くしながら少女を見た。
少女は沖田総司に恥ずかしそうに話し出す。
「総司さん。お体が濡れています。何か拭く物を持ってきます。少し待っていてください。」
沖田総司は少女に顔を赤くしながら黙って頷いた。
少女は部屋から静かに居なくなった。
沖田総司は顔を赤くしたまま、部屋の中を見回した。
先程まで部屋に居たはずの斉藤一の姿がない。
沖田総司は部屋の中を不思議そうに見回した。
それから僅かに後の事。
少女は手拭を持って部屋の中に静かに現れた。
沖田総司は少女を微笑んで見た。
少女は沖田総司を心配そうに手拭で拭き始めた。
沖田総司は少女から手拭を優しく取ると、微笑んで話し出す。
「鈴ちゃん。手拭をありがとう。後は自分で拭くよ。」
少女は沖田総司に微笑んで頷いた。
ここは夢の家。
斉藤一と夢は、部屋の外に居る。
夢は斉藤一に微笑んで話し出す。
「黄葉を 散らす時雨に 濡れて来て 君が黄葉を かざしつるかも」
斉藤一は夢を普通の表情で見た。
夢は斉藤一に微笑んで話し出す。
「今の総司さんと美鈴さんを現すのに、良い歌だと思いませんか?」
斉藤一は夢に普通の表情で頷いた。
沖田総司が見つけてきた、少女の髪に挿してある綺麗な黄色の葉の小枝のかんざし。
黄色い葉は時雨に濡れて更に綺麗な姿で、少女の髪を飾っています。
少女の瞳にも時雨が降りましたが、たくさんの優しい思いに包まれて直ぐに止みました。
沖田総司さん。
鈴ちゃんの綺麗な瞳に、時雨を降らせては駄目ですよ。
* * * * * *
ここからは後書きになります。
今回は二つの「時雨」の物語です。
「時雨」ですが、「しぐれ」と読みます。
「秋の終わりから冬の初めにかけて、ぱらぱらと通り雨のように降る雨。涙を落としてなくこと。」という意味だそうです。
この物語に登場する歌は、「万葉集 第八巻 一五八三番」からになります。
「黄葉を 散らす時雨に 濡れて来て 君が黄葉を かざしつるかも」
ひらがなの読み方は、「もみちばを ちらすしぐれに ぬれてきて きみがみもちを かざしつるかも」となります。
作者は、「久米女王(くめのおおきみ)」です。
意味は、「黄葉(もみちば)を散らす時雨(しぐれ)に濡れてきて、あなたがくださった黄葉(もみち)を髪飾りにしましたことよ。」とるそうです。
原文は、「黄葉乎 令落鐘礼尓 所沾而来而 君之黄葉乎 挿頭鶴鴨」です。
この歌は、「天平10年(738年)10月17日に、橘奈良麻呂(たちばなのならまろ)の邸宅で宴席がもたれた時の歌」だそうです。
楽しんで頂けると嬉しいです。
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