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〜 雪月花 新撰組異聞 編 〜


〜 桃月の頃 下照る道に出でたつ少女 〜


〜 改訂版 〜


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]




「春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出でたつ少女」

「万葉集 第十九巻 四一三九番」より

作者:詠み人知らず




今は春。



ここは、京の町。



過ごし易い日が続いている。



桃の花が綺麗に咲く頃になる。



ここは、桃の花が綺麗に咲く場所。



紅色、白色、桃色、たくさんの桃の花が咲いている。



沖田総司は微笑んで来た。

少女は微笑んで来た。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。綺麗です。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は桃の花を微笑んで見た。

沖田総司は桃の花を不思議な様子で見た。

少女は桃の花を微笑んで見ている。

沖田総司は少女を見ると、少女に恥ずかしく話し出す。

「鈴ちゃん。八重の花がたくさん咲いているね。花の種類は分かるかな?」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「桃の花です。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「桃の花なんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「最初は、八重の花だから、八重桜かなと思ったんだ。白色の八重や紅色の八重だから、八重桜ではないと思ったんだ。梅の花は季節外れだよね。何の花かなと思ったんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「桃の節句には、桃の花を飾ります。今の季節は、桃の花を見る機会が多いと思います。」

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「私は男性だから、桃の節句について疎いんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に恥ずかしく話し出す。

「鈴ちゃんの話すとおり、姉さんが桃の節句に用意していた花と同じだね。」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。



沖田総司の後ろと少女の後ろから、女性達の笑いを堪える話し声が聞こえた。

「今の話。聞いた?」

「桃の花が八重桜に見えたのね。」

「八重桜と思った後に、梅の花と思ったらしいわよ。季節的に、譲歩が出来ない勘違いよね。可笑しいわ。」

「花について知らないわね。風流から遠い所に居る人物ね。」

「田舎で育ったのね。」

「江戸の言葉を話していたわね。」

「江戸は、将軍さんの居る所よね。」

「将軍さんが居る江戸の育ちなのに、風流を理解していないのね。」

「江戸は、想像より田舎なのね。」



沖田総司は少女を困惑して見た。

少女は沖田総司を心配して見た。



沖田総司の後ろと少女の後ろから、女性達の笑いを堪える話し声が聞こえる。

「花について知らない武家と一緒に居る子。花について詳しいわね。言葉や身なりから、京の町の育ちで、お嬢様だと分かるわ。」

「お嬢様は、風流を分かっているわね。」

「田舎育ちの風流を知らない武士。雅な町で育つ風流を知るお嬢様。不釣り合いね。」

「田舎で育つ武家に真実を話すと、斬られるかも知れないわよ。」

「斬られるのは嫌だわ。真実を話すのは止めましょう。」

「話を戻しましょう。」

「桃の花が綺麗に咲いているわね。」



沖田総司は下を見ると、手を悔しい表情で強く握った。

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さん。別の場所に行きたいです。」

沖田総司は手を強く握り締めるのを止めると、少女を見て、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。疲れた?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「少しだけ疲れました。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「落ち着いた場所で少し休もうね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。



沖田総司は微笑んで歩き出した。

少女も微笑んで歩き出した。



少し後の事。



ここは、小さな寺。



本堂。



沖田総司は微笑んで来た。

少女も微笑んで来た。



沖田総司は少女に申し訳なく話し出す。

「鈴ちゃん。ご免ね。」

少女は沖田総司に申し訳なく話し出す。

「私が桃の花を見たいと話したから、総司さんに迷惑を掛けてしまいました。すいません。」

沖田総司は少女に悲しく話し出す。

「鈴ちゃんは悪くないよ。」

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さんは、男性です。植物関係のお仕事に就いていない男性が、お花について詳しくないのは当然です。」

沖田総司は少女に落ち込んで話し出す。

「斉藤さんと土方さんは、男性で、植物関係の仕事に就いていないけれど、花について詳しいよ。」

少女は沖田総司に心配して話し出す。

「総司さんは、剣術などが強いです、剣のお稽古をたくさんしています、お仕事も忙しいです。お花について知らないのは普通です。」

沖田総司は少女に落ち込んで話し出す。

「斉藤さんは、剣術などが強くて、仕事は忙しいけれど、花について詳しい。土方さんは、私から見れば剣術などの技術はまだまだだけど強い噂がある、仕事は忙しいけれど、花について詳しい。」

少女は沖田総司を心配して見た。

沖田総司は少女を悲しい表情で優しく抱いた。

少女は沖田総司を心配して見た。

沖田総司は少女を抱いて、少女に悲しく話し出す。

「私のために、鈴ちゃんまで酷い内容を言われた。ご免ね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「私は気にしていません。大丈夫です。」

沖田総司は少女を抱いて、少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。ありがとう。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女を微笑んでゆっくりと放した。

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「愚痴を話してしまった。鈴ちゃんの気遣いがあったから、気持ちが明るくなった。」

少女は沖田総司を微笑んで見ている。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。桃の花を見に行く?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お寺で総司さんと話したいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今日は寺で楽しく話そうね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。



暫く後の事。



今は夜。



ここは、屯所。



斉藤一の居る部屋。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は部屋に落ち込んで来た。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に落ち込んで話し出す。

「斉藤さん。今日、鈴ちゃんと一緒に桃の花を見ました。私は桃の花だと分からなかったので、鈴ちゃんに質問しました。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見ている。

沖田総司は斉藤一に落ち込んで話し出す。

「私を笑って見る女性達が居ました。女性達は、私を、田舎で育った、風流が分からない、江戸は想像より田舎だ、などの内容を、笑いを堪えて話しました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、植物関係の仕事に就いていない、男性、武士、だ。花について知らない状況は、落ち込む内容に該当しない。気にするな。」

沖田総司は斉藤一に落ち込んで話し出す。

「私がいろいろと言われる状況は、仕方が無いです。鈴ちゃんは私を心配して見ていました。鈴ちゃんは私を気遣っていました。鈴ちゃんは悪くないのに、鈴ちゃんに不快な思いをさせてしまいました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司が、歌についてたくさん学んでも、花についてたくさん学んでも、京の町の人達から見れば、壬生狼だ。総司が京に居る間は、壬生狼や田舎で育つなどの表現は、付いて回る。総司が京に居る間は、何かしらの内容は言われる状況は仕方が無い。」

沖田総司は斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は沖田総司を普通に話し出す。

「美鈴さんは総司の笑顔を見れば安心する。周りの話す内容を気にするな。美鈴さんの前では笑顔で居ろ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司は、花や歌などの風流な内容の勉強が足りない。美鈴さんの歌と花の知識と総司の歌と花の知識の差が開き過ぎている。総司は、美鈴さんのためにも、花と歌について、更に更に覚える必要がある。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さん。話の前半と話の後半を思い返すと、話の内容が矛盾しています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「話の内容は矛盾していない。」

沖田総司は斉藤一を考えながら見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。近い内に、美鈴さんに逢うのだろ。美鈴さんに笑顔で逢え。忘れるな。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「今日は遅い。明日に改めて話す。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



数日後の事。



ここは、京の町。



辺りは、少しずつ夕日が見える時間に近付く気配が分かる。



ここは、町中。



沖田総司は微笑んで歩いている。



少し後の事。



ここは、数日前に沖田総司と少女が訪れた桃の花が綺麗に咲く場所。



紅色、白色、桃色、たくさんの桃の花が咲いている。



綺麗な夕日が見られる気配が少しずつ近付いている。



時間の関係だと思うが、人の姿は少ない。



沖田総司は微笑んで来た。

少女も微笑んで来た。



少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。桃の花が夕日の始まりの光で輝いています。綺麗です。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は桃の花を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。私は花について疎い。今後も変な内容を質問すると思う。呆れないで質問に答えてくれるかな?」

少女は沖田総司を見ると、沖田総司に微笑んで話し出す。

「私の話が総司さんのお役に立つのですね。嬉しいです。私の分かる範囲で答えます。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。ありがとう。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。桃の花を分けてもらえる場所を見付けたんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「桃の花が欲しいです。お願いします。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「一緒に行こう。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。



沖田総司は微笑んで歩き出した。

少女も微笑んで歩き出した。



少し後の事。



ここは、桃の花が綺麗に咲く場所。



紅色、白色、桃色、たくさんの桃の花がん咲いている。



綺麗な夕日が見られる気配が少しずつ近付いている。



時間の関係だと思うが、人の姿は少ない。



沖田総司は桃の花の咲く小枝を微笑んで持っている。

少女は沖田総司と桃の花の咲く小枝を微笑んで見ている。



沖田総司は桃の花の咲く小枝を持ち、少女に桃の花の咲く小枝を微笑んで渡した。

少女は沖田総司から桃の花の咲く小枝を微笑んで受け取った。

沖田総司は懐から紙を取り出すと、桃の花の咲く小枝に紙を微笑んで巻いた。

少女は桃の花の小枝を持ち、沖田総司を不思議な様子で見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「紙には歌が書いてあるんだ。紙は家に帰ってから見てね。」

少女は桃の花の咲く小枝を持ち、沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、少女の住む家。



少女の部屋。



少女は桃の花の咲く小枝を持ち、部屋の中に微笑んで入ってきた。



少女は桃の花の咲く小枝を持ち、紙を微笑んで取った。

少女は桃の花の咲く小枝を持ち、紙を微笑んで見た。

少女は桃の花の咲く小枝を持ち、紙を持ち、微笑んで呟いた。

「“春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出でたつ少女”。」

少女は桃の花の咲く小枝と紙を持ち、桃の花を恥ずかしく見た。



桃の花は綺麗に咲いている。



少女は桃の花の咲く小枝と紙を持ち、桃の花を見て、桃の花に恥ずかしく呟いた。

「総司さんに次に逢った時のお礼の内容を悩むわ。」

少女は桃の花の咲く小枝と紙を持ち、桃の花を見て、桃の花に恥ずかしく呟いた。

「総司さん。私にはもったいないお歌を贈り物に頂きました。ありがとうございます。」



桃の花は綺麗に咲いている。



少女は桃の花の咲く小枝と紙を持ち、桃の花を見て、桃の花に恥ずかしく呟いた。

「今の内容のお礼で良いかしら?」



桃の花が一瞬だけ、更に綺麗に咲いたように感じた。



少女は桃の花の咲く小枝と紙を持ち、桃の花を微笑んで見た。



私は、桃の花です。

私の話し声は、沖田総司さんに聞こえませんが話します。

今は桃の花の咲く季節です。

京の町には、白色の桃の花、紅色の桃の花、桃色の桃の花、様々な桃の花が咲いています。

斉藤一さんに、花に関して、歌に関して、しっかりと質問してくださいね。

「春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出でたつ少女」

美鈴さんに次に逢った時には、桜の花と桃の花を間違えずに話してくださいね。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語は既に掲載している物語の改訂版です。

改訂前物語の展開や雰囲気を出来るだけ残して改訂しました。

改訂前の物語を掲載するのは止めました。

以上、ご了承願います。

ここからは改訂前の後書きを加筆訂正して書きます。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十九巻 四一三九番」

「春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出でたつ少女」

作者は「詠み人知らず」

ひらがなの読み方は「はるのその くれないにほふ もものはな したてるみちに いでたつおとめ」

原文は「春苑 紅尓保布 桃花 下照道尓 出立■(女偏に感)嬬」

歌の意味は「春の苑は桃の花で紅に輝いています。その下に立つ少女も輝いています。」となるそうです。

「■」は文字変換が出来ない字でした。

「桃(もも)」についてです。

バラ科の落葉高木です。

中国原産です。

かなり古い時代に日本に渡来したようです。

昔は、桃は鬼や悪霊をやっつける木だと考えられていました。

三月三日の節句には、桃の花を神様に供えたそうです。

葉を見るより先に、花が咲きます。

桃の花は、現在の暦で、三月中旬から四月上旬に掛けて見る事が出来ます。

旧暦の桃の節句(三月三日)が、現在の暦で、三月下旬から四月の初めになる事からも分かると思います。

桃の花とほうき性の真っ直ぐな桃を見掛けます。

梅や桜のようにほうき性ではない枝に咲く桃の花もあります。

桃色の桃の花の他に、白色の桃の花、紅色の桃の花、もあります。

この物語は、桃の花が咲く頃、現在の暦にすると、三月の終わりから四月の初め頃を想定して書きました。

「桃月(ももつき)」についてです。

「陰暦三月の異称」です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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