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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 秋 壱師の花 いちしろく ~


登場人物

芹沢鴨、沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]




「道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は [或る本の歌に日く いちしろく 人知りにけり 継ぎして思へば]」

「万葉集 第十一巻 二四八〇番」より

作者:柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)




今は秋。



ここは、京の町。



日中は暑さを感じても、陽が沈むと暑さは感じなくなってきた。



ここは、屯所。



縁。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。



沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。秋の花がたくさん咲き始めたように感じます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。単刀直入に話せ。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に苦笑して話し出す。

「鈴ちゃんの喜ぶ花の咲く場所を知りたいです。私は、花にも、京の町にも、疎いです。斉藤さんに相談したいと思いました。話の切り出し方が分からなくて、先程の状況になりました。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんの見たい花を教えろ。」

沖田総司は斉藤一に恥ずかしく話し出す。

「鈴ちゃんは、京の町で生まれ育っています。鈴ちゃんは、花にも、京の町にも、詳しいです。鈴ちゃんは私に花の説明などを丁寧に教えてくれます。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「花に歌を添えて贈る。花の登場する歌。さり気なく話せ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「さすが斉藤さんです。早速で申し訳ありませんが、季節の花の登場する歌について教えてください。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「歌といえば、土方さんだ。土方さんに歌を教えてもらえ。」

沖田総司は斉藤一に微笑んで話し出す。

「土方さんに、歌を教えて欲しい理由を、上手に説明する自信がありません。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんのためだ。今から土方さんへの説明を練習する。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんのためだ。苦笑するな。照れるな。」

沖田総司は斉藤一を苦笑して困惑して見た。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。



障子が勢い良く開いた。



沖田総司は障子の開く様子を僅かに驚いた表情で見た。

斉藤一は障子の開く様子を普通の表情で見た。



芹沢鴨が部屋から笑顔で出てきた。



沖田総司は芹沢鴨に僅かに慌てた様子で軽く礼をした。

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司と斉藤一に笑顔で話し出す。

「総司! 斉藤! 楽しい様子だな!」

斉藤一は芹沢鴨に普通に話し出す。

「総司が、季節の花の咲く場所、季節の花の登場する歌、について質問していました。」

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見た。

芹沢鴨は沖田総司に笑顔で話し出す。

「総司は、壬生浪士組の中で、花と歌について遠い場所に居る! 総司が風流な内容を質問していたのか! 物凄く興味深い!」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は斉藤一を驚いた表情で見ている。

芹沢鴨は沖田総司に笑顔で話し出す。

「総司! 土方に相談する考えなのだろ!」

沖田総司は芹沢鴨を困惑して見た。

芹沢鴨は沖田総司に笑顔で話し出す。

「総司! 今の表情は、俺の答えが当たっていると判断して良いのか?!」

沖田総司は芹沢鴨に慌てて話し出す。

「違います!」

芹沢鴨は沖田総司に笑顔で話し出す。

「俺は、総司の比較にならない程の歌の知識がある! 俺が、季節の花の登場する歌を教える!」

沖田総司は芹沢鴨を驚いた表情で見た。

芹沢鴨は沖田総司を怪訝な様子で見た。

沖田総司は芹沢鴨に慌てて話し出す。

「芹沢さん! お願いします!」

芹沢鴨は沖田総司に笑顔で頷いた。

沖田総司は芹沢鴨を苦笑して見た。

芹沢鴨は斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤! 良い機会だ! 総司と一緒に歌について覚えろ!」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司に笑顔で話し出す。

「総司! 斉藤が傍に居る! 安心して覚えられるだろ!」

沖田総司は芹沢鴨を苦笑して見た。

芹沢鴨は沖田総司と斉藤一に笑顔で話し出す。

「総司! 斉藤! 歌を教える! 俺の部屋に行くぞ!」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は芹沢鴨に苦笑して軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司と斉藤一を笑顔で見た。



少し後の事。



ここは、屯所。



芹沢鴨の部屋。



芹沢鴨は微笑んで居る。

沖田総司は苦笑して居る。

斉藤一は普通に居る。



芹沢鴨は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤。今から歌を教える。」

沖田総司は芹沢鴨に苦笑して軽く礼をした。

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「“道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は”。掲載は、“万葉集 第十一巻 二四八〇番”。作者は、“柿本人麻呂”。以上だ。」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は芹沢鴨に苦笑して軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。復唱しろ。」

沖田総司は芹沢鴨に困惑して考えながら話し出す。

「万葉集。第十一巻。作者。柿本人麻呂。道の辺の、いちしの花の。」

芹沢鴨は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は芹沢鴨と斉藤一を真剣な表情で考えながら見た。

芹沢鴨は沖田総司に怪訝な様子で話し出す。

「総司。今の話のみしか覚えていないのか?」

沖田総司は芹沢鴨と斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は芹沢鴨に普通に話し出す。

「総司が、一度のみの説明を聞いた中では、かなり覚えている状況になります。」

芹沢鴨は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。総司をかばうのか?」

斉藤一は芹沢鴨に普通に話し出す。

「かばっていません。事実を話しました。」

芹沢鴨は斉藤一に微笑んで話し出す。

「確かに、斉藤は事実を話している。」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

芹沢鴨は斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤。復唱しろ。」

斉藤一は芹沢鴨に普通に話し出す。

「“道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は”。掲載は、“万葉集 第十一巻 二四八〇番”。作者は、“柿本人麻呂”。以上です。」

芹沢鴨は斉藤一に微笑んで話し出す。

「合っている。」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。“道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は”。掲載は、“万葉集 第十一巻 二四八〇番”。作者は、“柿本人麻呂”。以上だ。復唱しろ。」

沖田総司は芹沢鴨を緊張して見た。

芹沢鴨は沖田総司を真剣な表情で見た。

沖田総司は芹沢鴨に緊張して考えながら話し出す。

「“道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は”。掲載は、“万葉集、第十一巻、二四八〇番”。作者は、“柿本人麻呂”。以上です。」

芹沢鴨は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司。やれば出来る。良かったな。」

沖田総司は芹沢鴨を苦笑して見た。

芹沢鴨は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「総司。斉藤。次は歌の文字などを書いて覚える。」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。

沖田総司は芹沢鴨に苦笑して軽く礼をした。

芹沢鴨は沖田総司と斉藤一に微笑んで話し出す。

「歌についての説明が終わった後は、三人で酒を飲みに行く。酒を飲む時間は、総司の覚える時間に係っている。総司。俺と斉藤のために、気合を入れて覚えろ。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は芹沢鴨と斉藤一を苦笑して見た。



翌日の事。



ここは、町中。



少女は微笑んで歩いている。



少女の後ろから、芹沢鴨の普通の声が聞こえた。

「総司の彼女。話がある。止まれ。」



少女は不思議な様子で止まった。



少女は後ろを不思議な様子で見た。



芹沢鴨は少女の前に普通の表情で来た。



少女は芹沢鴨に心配して軽く礼をした。

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「総司の彼女と呼び止めたら、立ち止まった。総司の彼女だと認めたと考えて良いのかな?」

少女は芹沢鴨に心配して小さい声で話し出す。

「総司さんの女性のお知り合いを呼び止めたと思いました。私の近くに、総司さんの女性のお知り合いは、私のみのように思いました。立ち止まりました。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「総司の彼女。後ろに居る人達を全て把握しているのか? さすが総司の彼女だ。」

少女は芹沢鴨に心配して小さい声で話し出す。

「全ての人達を把握していません。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「辺りに居る全ての人物を把握していないのに、何故、立ち止まった? 悪意を抱く人物が呼び止めた時に立ち止まれば、物凄く危険だ。曖昧な状況で立ち止まるな。」

少女は芹沢鴨に心配して小さい声で話し出す。

「総司さんの上役さんが呼び止めていました。立ち止まりました。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「俺の声を覚えていたのか。」

少女は芹沢鴨に心配して小さい声で話し出す。

「はい。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「見直した。」

少女は芹沢鴨を微笑んで見た。

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「笑顔が可愛いな。」

少女は芹沢鴨を恥ずかしく見た。

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「恥ずかしがる姿も可愛いな。」

少女は芹沢鴨を恥ずかしく見ている。

芹沢鴨は懐から紙を普通に取り出した。

少女は芹沢鴨を不思議な様子で見た。

芹沢鴨は少女に紙を差し出すと、少女に普通に話し出す。

「総司が、あんたに喜んでもらうために、季節の花の登場する歌を覚えた。総司とあんたが逢った時に話題になる。あんたは歌について勉強している雰囲気がある。良い機会だ。事前に勉強しろ。」

少女は芹沢鴨から紙を受け取ると、芹沢鴨に微笑んで小さい声で話し出す。

「ありがとうございます。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「俺が総司に今回の歌を教えた。秋の花の登場する歌の中で、話題にしない歌を選んだ。総司が歌について話した時は、総司を笑顔で褒めてやれ。」

少女は紙を持ち、芹沢鴨に微笑んで軽く礼をした。

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「あんたは総司の詠んだ歌を喜んで受け取っているらしいな。俺がわざわざ話す必要もなかったな。」

少女は紙を持ち、芹沢鴨に微笑んで小さい声で話し出す。

「歌について教えて頂いてありがとうございます。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「今の返事は、俺への感謝と考えて良いのかな?」

少女は紙を持ち、芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「はい。」

芹沢鴨は少女に普通に話し出す。

「またな。」

少女は紙を持ち、芹沢鴨に微笑んで軽く礼をした。



芹沢鴨は普通に居なくなった。



少女は紙を持ち、紙を不思議な様子で見た。



紙には、沖田総司の筆跡で一首の歌について書いてある。

道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は

掲載 万葉集 第十一巻 二四八〇番

作者 柿本人麻呂

意味 道端のいちしの花が目立つように、私の恋しい妻のことをみんなに知られてしまいました。



少女は紙を微笑んで丁寧にたたんだ。

少女は懐に紙を微笑んで仕舞った。



少女は微笑んで歩き出した。



暫く後の事。



ここは、屯所。



一室。



斉藤一は普通に居る。



沖田総司は紙を持ち、真剣な表情で部屋の中に入ってきた。



斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は斉藤一に紙を渡すと、斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「斉藤さん。明日は、鈴ちゃんに逢う日です。確認をお願いします。」

斉藤一は沖田総司から紙を受け取ると、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「“道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は”。掲載は、“万葉集 第十一巻 二四八〇番”。作者は、“柿本人麻呂”。歌の意味は、“道端のいちしの花が目立つように、私の恋しい妻のことをみんなに知られてしまいました。”以上です。」

斉藤一は紙を持ち、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一を安心した表情で見た。

斉藤一は沖田総司に紙を渡すと、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。安心するのは、美鈴さんに歌について話し終わった後だ。」

沖田総司は斉藤一から紙を受け取ると、斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。緊張するな。緊張し過ぎると、大切な時に疲れてしまう。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に真剣な表情で話し出す。

「芹沢さんが、歌についてしっかりと話すように、幾度も話します。鈴ちゃんに歌についてしっかりと話せない時を想像したくないです。歌についてしっかりと話せるように努力しています。」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。息をはけ。」

沖田総司は紙を持ち、斉藤一を見ながら、軽く息をはいた。

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は紙を持ち、斉藤一に微笑んで話し出す。

「気持ちが落ち着きました。さすが斉藤さんです。」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は紙を持ち、紙を微笑んで見た。



数日後の事。



ここは、町中。



少女は微笑んで歩いている。



少女の後ろから、芹沢鴨の普通の声が聞こえた。

「総司の彼女。話がある。止まれ。」



少女は不思議な様子で止まった。



少女は後ろを不思議な様子で見た。



芹沢鴨は少女の前に普通に来た。



少女は芹沢鴨に心配して軽く礼をした。

芹沢鴨は少女に微笑んで話し出す。

「総司はしっかりと歌について説明できたらしいな。」

少女は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「はい。」

芹沢鴨は少女に微笑んで話し出す。

「嬉しい様子だな。」

少女は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「はい。」

芹沢鴨は少女に微笑んで話し出す。

「総司が、あんたに歌について説明したら、喜んだと話した。」

少女は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「総司さんに逢う前に、歌について勉強しました。総司さんと楽しく話せました。」

芹沢鴨は少女に微笑んで話し出す。

「知らないふりをしたのか?」

少女は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「総司さんには、私も同じ歌について勉強したと話しました。」

芹沢鴨は少女に微笑んで話し出す。

「総司が俺に笑顔で感謝した。」

少女は芹沢鴨を微笑んで見た。

芹沢鴨は少女に微笑んで話し出す。

「あんたは俺に感謝しないのか?」

少女は芹沢鴨に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

芹沢鴨は少女に微笑んで頷いた。

少女は芹沢鴨を微笑んで見た。



芹沢鴨は微笑んで歩き出した。



少し後の事。



ここは、町中。



芹沢鴨は普通の表情で考えながら歩いている。



芹沢鴨は普通に止まった。



芹沢鴨は後ろを残念な様子で見た。



斉藤一は芹沢鴨の前に普通に来た。



芹沢鴨は斉藤一に普通に話し出す。

「斉藤。あの子の気付かない適度な距離で、俺を睨んでいたな。あの子と短い時間しか話せなかった。」

斉藤一は芹沢鴨に普通に話し出す。

「あの子に意味もなく近付いたら、総司が物凄く怒ります。」

芹沢鴨は斉藤一に普通に話し出す。

「分かっている。」

斉藤一は芹沢鴨を普通の表情で見た。

芹沢鴨は斉藤一に普通に話し出す。

「あの子と話して楽しい気持ちになったのに、斉藤と話したら気持ちが元に戻ってしまった。今から、楽しい気持ちになるために、酒を飲みに行く。俺の相手を務めろ。」

斉藤一は芹沢鴨に普通の表情で軽く礼をした。



芹沢鴨は普通に歩き出した。

斉藤一も普通に歩き出した。



「道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は」

壱師の紅色の花の彩る季節。

芹沢鴨が沖田総司と少女を想って起こした言動。

幾重の想いが、鮮やかに、強引に、印象的に、秋の季節を彩っていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十一巻 二四八〇番」

「道の辺の いちしの花の いちしろく 人皆知りぬ 我が恋妻は [或る本の歌に日く いちしろく 人知りにけり 継ぎして思へば]」

作者は「柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)」

ひらがなの読み方は「みちのへの いちしのはなの いちしろく ひとみなしりぬ わがこひづまは [あるほんのうたにいわく いちしろく ひとしりにけり つぎしておもへば]」

歌の意味は「道端のいちしの花が目立つように、私の恋しい妻のことをみんなに知られてしまいました。」となるそうです。

原文は「路邊 壹師花 灼然 人皆知 我戀■(女偏に麗) [或本歌日 灼然 人知尓家里、継而之念者]」

「■」は文字変換のできない字でした。

「いちしろく」とは、「はっきりと」とか「目立って」というような意味だそうです。

「いちし」と「いちしろく」を掛けて詠んでいます。

「壱師(いちし)」は、「彼岸花(ひがんばな)」、「羊蹄(ぎしぎし)」、「虎杖(いたどり)」、「苺(いちご)」、「エゴノキ」など幾つか説があり、具体的に何をさすのかは確定していないそうです。

その中で「彼岸花」が有力候補だといわれているそうです。

「壱師」は万葉集に一首だけ登場するそうです。

この物語では「壱師」は「彼岸花」として書きました。

この物語に登場する歌は「道の辺の、いちしの花の、いちしろく、人皆知りぬ、我が恋妻は」としました。

「彼岸花(ひがんばな)」についてです。

ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。

秋の季語です。

「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」の別名があります。

現在の暦で、9月~10月に掛けて咲きます。

特に現在の暦でお彼岸の頃には、赤色や白色の花を咲かせます。

田んぼの畦、植物園、寺院、などで見掛けます。

有毒植物として知られています。

栽培方法を含めた詳細は、各自でご確認ください。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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