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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 晩秋模様 来まさぬ君をころくとぞ鳴く ~


登場人物

沖田総司、斉藤一、藤堂平助、お雪、お孝、手伝いの人、少女[美鈴・鈴]




「烏とふ 大をそ鳥の まさにでも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く」

「万葉集 第十四巻 三五二一番」より

作者:詠み人知らず




今は秋の終わりを迎えている。



ここは、京の町。



暦が次の月に移ると秋から冬になる。

京の町では、寒さを感じない。

穏やかな気候の日が続いている。



お雪は体調が悪い。

医者は、お雪は治らない診立てをしている。

寒くない気候は、お雪の体に負担にならず、楽に過ごせる。

お雪は穏やかに毎日を過ごしている。



ここは、お雪の住む家。



今日は、少女がお雪に逢いに来る。

お雪の体調を考えて、手伝いの人や妹のお孝が、準備をしている。

お雪は準備の様子を微笑んで見ている。



少し後の事。



ここは、お雪の住む家。



お雪の部屋。



お雪は微笑んで居る。

お孝は普通に居る。

手伝いの人は普通に居る。



お孝はお雪に普通に話し出す。

「姉さん。美鈴さんを迎える準備は終わったわ。」

お雪はお孝に微笑んで話し出す。

「ありがとう。」

お孝はお雪に普通に話し出す。

「私は少し経ったら外出するわ。後は、手伝いの人に頼んでね。」

お雪は手伝いの人に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

手伝いの人はお雪に普通の表情で軽く礼をした。



玄関から誰かが訪ねた音が聞こえた。



手伝いの人はお雪に普通の表情で軽く礼をした。

お雪は手伝いの人に微笑んで頷いた。



手伝いの人は部屋を普通に出て行った。



お孝はお雪に普通に話し出す。

「到着したみたい。お姉さん。私は行くわね。」

お雪はお孝に微笑んで話し出す。

「行ってらっしゃい。」

お孝はお雪に普通の表情で頷いた。



お孝は部屋を普通に出て行った。



僅かに後の事。



ここは、お雪の住む家。



玄関。



藤堂平助が微笑んで居る。



お孝は微笑んで来た。



藤堂平助はお孝に微笑んで軽く礼をした。

お孝は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

藤堂平助はお孝に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

お孝は藤堂平助の腕を掴むと、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「張り切って行きましょう。」

藤堂平助はお孝を苦笑して見た。



お孝は藤堂平助の腕を掴んで、家から微笑んで出て行った。

藤堂平助は家を苦笑しながら出て行った。



少し後の事。



ここは、町中。



お孝は藤堂平助の腕を掴んで、微笑んで歩いている。

藤堂平助は苦笑して歩いている。



藤堂平助はお孝に苦笑して話し出す。

「今日は何処に行きますか?」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「美味しい物が食べたい。」

藤堂平助はお孝に苦笑して話し出す。

「今の時間ならば、甘い物が良いですか?」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「私は待ち合わせが無いの。藤堂さんが費用を払うと考えて良いのかしら? 藤堂さんが費用を払うならば、安い値段の物で良いわ。」

藤堂平助はお孝に苦笑して話し出す。

「近藤さんから費用を預かっています。安心してください。」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「費用が足りない時は、藤堂さんが費用を払うの?」

藤堂平助はお孝に苦笑して話し出す。

「近藤さんは、不足した費用は後で用意すると話しています。近藤さんには言い難いので、私が残りの費用を払いたいと考えています。」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「今回は、甘い物で良いわ。残る費用は、次に逢う時に使いましょう。次回は、更に美味しい物が食べられるわね。」

藤堂平助はお孝に苦笑して話し出す。

「分かりました。」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂さん。甘い物を食べ終わった後に、歌を教えて欲しいの。」

藤堂平助はお孝に不思議な様子で話し出す。

「私の歌の知識は、土方さんやお雪さんの比較になりません。良いのですか?」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に微笑んで話し出す。

「大丈夫よ。」

藤堂平助はお孝に微笑んで話し出す。

「分かりました。お孝さんに喜んでもらえるように努力します。」

お孝は藤堂平助に微笑んで話し出す。

「藤堂さん。珍しい物を詠んでいる歌を教えて。」

藤堂平助はお孝に微笑んで話し出す。

「烏を詠んだ歌があります。良いですか?」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助に不思議な様子で話し出す。

「烏?」

藤堂平助はお孝に微笑んで話し出す。

「烏は、良く見掛ける鳥ですが、詠まれた歌は少ないです。」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂井へ助に微笑んで話し出す。

「藤堂さん。烏を詠んだ歌を教えて。」

藤堂平助はお孝に微笑んで話し出す。

「分かりました。」

お孝は藤堂平助の腕を掴んで、藤堂平助を微笑んで見た。



少し後の事。



ここは、お雪の住む家。



玄関。



斉藤一が普通に訪ねてきた。

少女は微笑んで訪ねてきた。



お雪は微笑んで来た。



少女はお雪に微笑んで話し出す。

「こんにちは。今日もお願いします。」

斉藤一はお雪に普通の表情で軽く礼をした。

お雪は斉藤一と少女に微笑んで話し出す。

「お願いします。」

少女はお雪を微笑んで見た。

斉藤一はお雪を普通の表情で見た。

お雪は斉藤一と少女に微笑んで話し出す。

「家に上がってください。」

斉藤一はお雪に普通の表情で軽く礼をした。

少女はお雪に微笑んで軽く礼をした。

お雪は斉藤一と少女を微笑んで見た。



斉藤一は家の中に普通に入って行った。

少女は家の中に微笑んで入って行った。

お雪も家の中に微笑んで入って行った。



少し後の事。



ここは、お雪の住む家。



客間。



お雪はお菓子を微笑んで食べている。

斉藤一はお茶を普通の表情で食べている。

少女はお菓子を微笑んで食べている。



お雪はお菓子を食べながら、少女に微笑んで話し出す。

「以前に、歌を教えて欲しい話があったと思うの。良い歌が有るか調べたの。烏を詠んだ歌を見付けたの。烏は、普段から良く見掛けるけれど、歌に詠まれる機会が少ないと思うの。」

少女はお菓子を食べながら、お雪に微笑んで話し出す。

「烏を詠んだお歌。教えてください。」

お雪はお菓子を食べながら、少女に微笑んで話し出す。

「お菓子を食べ終わった後に、烏を詠んだ歌について話しましょう。」

少女はお菓子を食べながら、お雪に微笑んで話し出す。

「はい。」

お雪はお菓子を食べながら、少女を微笑んで見た。

斉藤一はお茶を飲みながら、お雪と少女を普通の表情で見た。



少し後の事。



ここは、お雪の住む家。



お雪の部屋。



お雪は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。

お雪の傍と少女の傍には、歌集が置いてある。

机の上には、紙が置いてある。



お雪は少女に微笑んで話し出す。

「烏を詠んだ歌を紙に書いたの。」

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「ありがとうございます。」

お雪は紙を取ると、少女に紙を微笑んで渡した。

少女はお雪から紙を微笑んで受け取った。

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「“烏とふ 大をそ鳥の まさにでも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く”。“ころく”と“子ろ来”を掛けているそうなの。」

少女は紙を膝の上に置くと、お雪に寂しく話し出す。

「お雪さん。烏が“ころく”と鳴いたら、寂しい気持ちになりませんか?」

お雪は少女を不思議な様子で見た。

斉藤一はお雪と少女を普通の表情で見た。

少女はお雪に寂しく話し出す。

「今のお歌を詠んだら、烏が“ころく”と鳴く声を聞いて、総司さんが来たと期待して、でも、総司さんは来ていなくて、残念に思う私の姿を想像してしまいました。」

お雪は少女を心配して見た。

少女はお雪に寂しく話し出す。

「お雪さんは寂しい気持ちになりませんか?」

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「少し寂しい気持ちになると思うわ。」

少女はお雪に寂しく話し出す。

「私はとても寂しい気持ちになります。」

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「美鈴さんが寂しい気持ちになる。良く分かるわ。」

少女はお雪を寂しく見た。

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「沖田さんも寂しい気持ちになるはずよ。」

少女はお雪に寂しく見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「今日、総司は任務の日になる。総司は美鈴さんと共に過ごせない。総司は、俺に、俺と美鈴さんが共に過ごせて羨ましい、などと幾度も話した。総司も美鈴さんに逢える時間を楽しみに待っている。」

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんは、沖田さんをたくさん理解しているわ。斉藤さんが、沖田さんの気持ちも美鈴さんの気持ちと同じだと思っているわ。美鈴さんが笑顔ならば、沖田さんも笑顔になるわ。美鈴さんが明るい気持ちならば、沖田さんも明るい気持ちになるわ。美鈴さん。笑顔で過ごしましょう。」

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。

少女は斉藤一とお雪を微笑んで見た。

斉藤一はお雪と少女を普通の表情で見た。



玄関から誰かが訪ねてきた音が聞こえた。



手伝いの人が玄関に行く足音が聞こえた。



お雪は少女に微笑んで話し出す。

「誰かが訪ねてきたみたい。」

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「はい。」

お雪は少女を微笑んで見た。



部屋の外から、手伝いの人の普通の声が聞こえた。

「沖田様が訪ねてきました。客間にお通ししても良いですか?」



少女は斉藤一とお雪を驚いた表情で見た。

お雪は少女に微笑んで話し出す。

「美鈴さん。一緒に玄関に行く?」

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「総司さんはお仕事で直ぐに戻るかも知れません。お雪さんにお仕事について話すかも知れません。私が一緒に居たら迷惑になるかも知れません。私は斉藤さんと一緒に部屋に残ります。」

お雪は斉藤一と少女に微笑んで話し出す。

「私は玄関に行きます。」

斉藤一はお雪に普通の表情で頷いた。

少女はお雪に微笑んで話し出す。

「はい。」

お雪は少女と斉藤一を微笑んで見た。



お雪は部屋の外に微笑んで出て行った。



少し後の事。



ここは、お雪の住む家。



お雪の部屋。



斉藤一は普通に居る。

少女はお雪の歌を書いた紙を寂しく見ている。



部屋の外から、沖田総司の明るい足音が聞こえた。



少女は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通の表情で頷いた。



障子が開いた。



沖田総司の姿が見えた。



沖田総司は空色の羽織を着ていない。



沖田総司が部屋の中に微笑んで入ってきた。

お雪が部屋の中に微笑んで入ってきた。



少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は斉藤一と少女を微笑んで見た。

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんにちは。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「予定より早く任務が終わったんだ。屯所に戻ったら、お雪さんの家に文を届ける話があったんだ。今日は、斉藤さんと鈴ちゃんが、お雪さんの家を訪ねているよね。斉藤さんと鈴ちゃんに、逢えると思って、私が文を届けると話したんだ。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。今日はお雪さんと何を話していたの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「お雪さんからお歌を教えてもらいました。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。お雪さんから何の歌を教えてもらったの?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「烏を詠んだお歌です。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃん。烏を詠んだ歌。教えてくれるかな?」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「“烏とふ 大をそ鳥の まさにでも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く”。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「歌の意味も教えてくれるかな?」

少女はお雪を困惑して見た。

お雪は沖田総司に微笑んで話し出す。

「今日の沖田さんは違うわ。」

沖田総司はお雪と斉藤一を不思議な様子で見た。

お雪は沖田総司を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は斉藤一とお雪を見ながら、不思議な様子で考えた。

お雪は、沖田総司、斉藤一、少女を微笑んで見た。

少女は、沖田総司、斉藤一、お雪を微笑んで見た。

斉藤一は、沖田総司、お雪、少女を普通の表情で見た。



「烏とふ 大をそ鳥の まさにでも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く」

あわてんぼうの烏が、今日は珍しくあわてんぼうではなかった様子。

晩秋の時間は、烏の歌と共に、ゆっくりと過ぎていく。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十四巻 三五二一番」

「烏とふ 大をそ鳥の まさにでも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く」

ひらがなの読み方は「からすとふ おほをそとりの まさにでも きまさぬきみを ころくとぞなく」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は、『あわてんぼうの烏が、確かにいらっしゃるという訳でもないあの方が、「来たよ、来たよ」と鳴いています。』となるそうです。

原文は「可良須等布 於保乎曽里能 麻左■(人偏+弖)尓毛 伎麻左奴伎美乎 許呂久等曽奈久」

「■」は文字変換できない字のために、記号で代用しました。

ご了承ください。

「ころく」は烏の鳴き声で、「子ろ来(あの人が来る)」に掛けて詠んでいるそうです。

万葉集には、烏を詠んだ歌が四首あります。

万葉の時代から烏はいた事になります。

そして、余り好まれていなかった事になるのかなと思いました。

「晩秋(ばんしゅう)」についてです。

「秋の終わり」、「陰暦九月の異称」、の意味です。

この物語は、「秋の終わり」、陰暦九月の異称」、の両方の意味で使用しました。

この物語の補足です。

この歌を知って最初に思い浮かんだのが鈴ちゃんでした。

鈴ちゃんについて考えながら物語を書こうとしたら、お雪さんについても考えました。

何時の頃の物語にするか考えました。

季節は秋だと思いました。

近藤勇さん、土方歳三さん、沖田総司さん、斉藤一さん、お孝さんは、お雪さんは既に病気のために年末までもつかどうか、という状況を知る設定です。

鈴ちゃんは、知らない設定です。

お雪さんは、体調は万全ではありませんが、元気なので、鈴ちゃんと笑顔で話しています。

お雪さんと鈴ちゃんについて考えながら、物語を書きました。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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