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~ 雪月花 新撰組異聞 編 ~


~ 秋の夜長の夢語り 楓 もみつまで 温泉で ~


登場人物

沖田総司、斉藤一、少女[美鈴・鈴]

夜の国の住人 夢




「万葉集 第十四巻 三四九四番」より

「子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ」

作者:詠み人知らず




今は秋。



ここは、京の町。



日中や天気の良い日は、暖かさを感じる時がある。

陽が沈むと寒さを感じるようになった。



屯所。



沖田総司の部屋。



沖田総司は床の中で静かに寝ている。



部屋の中が不思議な空気に包まれた。



沖田総司は床の中でゆっくりと目を開けた。



少女が沖田総司を笑顔で見ている。



沖田総司は、夜の国の住人で少女と同じ顔の“夢”だと直ぐに分かった。



沖田総司は床の中で、夢に微笑んで話し出す。

「夢ちゃん。こんばんは。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。こんばんは。」

沖田総司は床の上に体を微笑んで起こした。

夢は沖田総司に微笑んで抱き付いた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して動きを止めた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、不思議な空気に包まれた。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して、不思議な空気に包まれた。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに居なくなった。

沖田総司は床の上に体を起こして、赤面して、静かに居なくなった。



一瞬の後の事。



ここは、夜の国。



夜空には、月と満天の星が輝いている。



心地好い空気に包まれている。



温泉地。



山に覆われている。

木々の葉が、緑色、黄色、紅色を含む模様に見える。

川の水が絶え間なく流れている。

瀧の音が絶え間なく聞こえる。



宿。



木々の葉が、緑色、黄色、紅色を含む模様に見える。

川が見える。

瀧が見える。

川の流れる音が絶え間なく聞こえる。

瀧の音が絶え間なく聞える。



一室。



暖かい空気に包まれている。



夢は沖田総司を微笑んで抱いて、静かに現れた。

沖田総司は動きを止めて、赤面して、静かに現れた。



夢は沖田総司から微笑んで放れた。

沖田総司は夢を赤面して見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。夜の国へようこそ。」

沖田総司は部屋の中を赤面して不思議な様子で見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「夜の国で温泉を楽しんで頂くためにご招待しました。総司さんに夜の国の温泉を長く楽しんで頂くために、私の家には寄らずに、宿に来ました。」

沖田総司は夢に赤面して微笑んで話し出す。

「今回も夜の国の温泉を楽しめるんだ。」

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は夢を赤面して微笑んで見た。

夢は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。私は戻ります。暫く後に再び逢いましょう。」

沖田総司は夢に赤面して微笑んで頷いた。



夢は微笑んで、静かに居なくなった。



沖田総司は部屋の中を微笑んで見た。



斉藤一が沖田総司を普通の表情で見ている。



沖田総司は斉藤一を驚いて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。今回も俺を見て驚いた。今の状況の総司は、同じ会話を繰り返すから、先に話す。俺は、今回も、総司より前から居る。総司は抱き付かれる状況になって、勘が鈍っている。」

沖田総司は斉藤一を拗ねて見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺は事実を話している。拗ねるな。」

沖田総司は斉藤一を複雑な表情で見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに総司が抱き付かれた状況は、今回も話さない。安心しろ。」

沖田総司は斉藤一に動揺して話し出す。

「鈴ちゃんも宿に居るのですか?!」

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんは温泉に浸かっている。安心しろ。」

沖田総司は斉藤一を安心して見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。温泉に浸かるぞ。」

沖田総司は斉藤一に笑顔で話し出す。

「はい!」

斉藤一は沖田総司に普通の表情で頷いた。



少し後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



宿。



露天の温泉。



木々の葉が、緑色、黄色、紅色を含む模様に見える。

瀧が見える。

川が見える。

瀧から水が落ちる音も川の流れる音も、絶え間なく聞こえる。



沖田総司は露天の温泉に笑顔で浸かっている。

斉藤一は露天の温泉に普通の表情で浸かっている。



沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を見ると、斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 絶景ですね!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、景色を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を見ると、沖田総司に普通の表情で頷いた。



寒さを感じる風が吹いた。



沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を見ると、斉藤一に笑顔で話し出す。

「温泉が温かいので、風の寒さを感じませんね!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、景色を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司と景色を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を見ると、斉藤一に笑顔で話し出す。

「斉藤さん! 紅葉の見頃には少し早いですね!」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を笑顔で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「“子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ”。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「歌の意味は、“子持山の若い楓の葉が紅葉するまで、寝ようと私は思います。あなたはどう思いますか?”、となるそうだ。万葉集に掲載している歌だ。作者は不明だ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に考え込んで話し出す。

「質問を含む歌なのですね。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。子持山には関係無いが、前に見える山々を子持山に置き換えて答えろ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に僅かに怪訝な様子で話し出す。

「斉藤さん。答えの内容によって、何か起きませんよね。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司の答えが知りたいから、話の中に歌を登場させた。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に微笑んで話し出す。

「若い楓が紅葉するまでの様子も良いです。寝て待ったら、楽しくないです。私と斉藤さんと鈴ちゃんと話しながら、若い楓が紅葉を待ちます。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「斉藤さんは寝て待ちたいと考えているのですか?」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通の表情で頷いた。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に僅かに寂しく話し出す。

「寂しいです。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「俺は寝て待つ。総司は寝ている俺を楽しませてくれ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に不思議な様子で話し出す。

「私が寝ている斉藤さんを楽しませても、斉藤さんは分からないですよね。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司が本当に俺を楽しませたら、俺は寝ていても分かる。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を不思議な様子で見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に微笑んで話し出す。

「鈴ちゃんに今の歌を使って同じ質問をします。鈴ちゃんが斉藤さんの答えを知ったら寂しくなります。答えを訂正するのは、今の内ですよ。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司が本気で楽しませれば、美鈴さんは楽しくなり、寝ている俺も分かる。答えは訂正しない。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を僅かに寂しく見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司は寝ている俺を楽しませる能力がある。総司は寝ている美鈴さんも楽しませる能力がある。安心しろ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を苦笑して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。



暫く後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



山に覆われている。

木々の葉が、緑色、黄色、紅色を含む模様に見える。

川の水が絶え間なく流れている。

瀧の音が絶え間なく聞こえる。



宿。



一室。



木々の葉が、緑色、黄色、紅色を含む模様が見える。

川が見える。

瀧が見える。

川の水の流れる音が絶え間なく聞こえる。

瀧の音が絶え間なく聞える。



暖かい空気に包まれている。



沖田総司は微笑んで居る。

斉藤一は普通に居る。

少女は微笑んで居る。



沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「今回も気持ちの良い温泉だね。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「はい。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「露天の温泉から、木々の葉の色付く様子が見えたんだ。温泉に浸かる最中に、寒さを感じる風が吹いたんだ。温泉に浸かりながら、季節の移る様子が分かったんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「総司さん。素適な経験をされたのですね。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが温泉に浸かりながら歌を詠んだんだ。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「温泉に浸かりながら詠んだお歌。知りたいです。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「“子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ”。」

少女は沖田総司に微笑んで話し出す。

「紅葉の見頃には少し早いです。時季を合わせて詠んだ歌ですね。」

沖田総司は少女に微笑んで頷いた。

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんが私に、“子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ”、の返事を質問したんだ。私は、斉藤さんと鈴ちゃんと話しながら、楓が紅葉するまで待つと答えたんだ。斉藤さんは、楓が紅葉するまで、寝て待つと答えたんだ。私は斉藤さんに寂しいと話したんだ。私は斉藤さんに鈴ちゃんも寂しいと答えると話したんだ。」

少女は斉藤一に寂しく話し出す。

「私も、楓が紅葉するまで、総司さんと斉藤さんと話しながら過ごしたいです。寂しいです。」

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司と共に過ごすと面白い。総司は楽しませる能力に優れている。俺が楓の紅葉を寝て待っても、総司は寝る俺を楽しませる。」

少女は斉藤一を微笑んで見た。

斉藤一は少女に普通に話し出す。

「総司は寝ている美鈴さんも楽しませる能力がある。美鈴さんも楓の紅葉を寝て待とう。」

沖田総司は少女に微笑んで話し出す。

「斉藤さんの話を聞いて、斉藤さんは寂しがり屋だと思ったんだ。斉藤さんにはたくさん世話になっている。斉藤さんは寝て待ちたいと思っている。斉藤さんにはゆっくりと寝て待ってもらおう。私と鈴ちゃんで、寝ている斉藤さんを楽しませながら、楓の紅葉を待とう。」

少女は沖田総司を微笑んで見た。

沖田総司も少女を微笑んで見た。

斉藤一は沖田総司に普通に話し出す。

「総司。突然だが、少し経ったら、温泉に浸かろう。」

沖田総司は斉藤一を見ると、斉藤一に微笑んで話し出す。

「はい。」

斉藤一は沖田総司を普通の表情で見た。

少女は沖田総司と斉藤一を微笑んで見た。



暫く後の事。



ここは、夜の国。



温泉地。



宿。



露天の温泉。



木々の葉が、緑色、黄色、紅色を含む模様が見える。

瀧が見える。

川が見える。

瀧から水が落ちる音も川の流れる音も、絶え間なく聞こえる。



沖田総司は露天の温泉に笑顔で浸かっている。

斉藤一は露天の温泉に普通の表情で浸かっている。



斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。俺を寂しがり屋だと話したな。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に微笑んで話し出す。

「夜の国に居ます。鈴ちゃんは良い子なので他言しません。安心して話しました。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「俺は寂しがり屋ではない。寂しがり屋は、総司だ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に微笑んで話し出す。

「斉藤さん。素直になりましょう。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。物凄く面白い。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を僅かに動揺して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「美鈴さんが、俺を寂しがり屋だと誤解すると、いろいろと都合の良い状況になる。何かが起きると、俺が便利に感じる回数が増える。何かが起きると、美鈴さんが俺を気遣う回数が増える。何かが起きると、美鈴さんが総司より俺を優先する可能性が高くなる。何かが起きた時に、美鈴さんが総司より俺の傍に居る時間が増える。総司。良く考えると、否定の必要が無い。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に僅かに動揺して話し出す。

「斉藤さん。何かが起きた時を具体的に説明してください。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「拒否する。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を僅かに動揺して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一に僅かに動揺して話し出す。

「私が鈴ちゃんに早急に訂正します。夜の国の住人が勘違いをしていたら、私が早急に訂正します。鈴ちゃんと斉藤さんの間に、何かが起きないようにしてください。」

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司に普通に話し出す。

「総司。美鈴さんに、夜の国の住人達に、訂正してくれるのか。感謝する。俺と美鈴さんの間に、何かが起きないようにする。安心しろ。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を僅かに安心して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司の耳元で普通の表情で囁いた。

「総司。物凄く面白い。」

沖田総司は露天の温泉に浸かり、斉藤一を僅かに動揺して見た。

斉藤一は露天の温泉に浸かり、沖田総司を普通の表情で見た。



「子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ」

若い楓の葉が紅葉するまで寝て待つのか。

若い楓の葉が紅葉するまで起きて待つのか。

斉藤一の答えは変わるのか。

沖田総司、斉藤一、少女は、秋の夜の国の温泉に浸かりながら、楽しく過ごしている。




*      *      *      *      *      *




ここからは後書きになります。

この物語に登場する歌は「万葉集 第十四巻 三四九四番」

「子持山 若かへるでの もみつまで 寝もと我は思ふ 汝はあどか思ふ」

ひらがなの読み方は「こもちやま わかかへるでの もみつまで ねもとわはもふ なはあどかもふ」

作者は「詠み人知らず」

歌の意味は「子持山(こもちやま)の若い楓(かえで)の葉が紅葉するまで、寝ようと私は思います。あなたはどう思いますか?」となるそうです。

原文は「兒毛知夜麻 和可加敝流弖能 毛美都麻弖 宿毛等和波毛布 汝波安杼可毛布」

「子持山(こもちやま)」は、群馬県北部の標高1296mの山です。

楽しんで頂けると嬉しいです。





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